近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓

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第2章 転生したらしい

第7話 バイト・ハウエル

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「あぁんもう!!あの子はどこいったの!?バイト~~?バイト!!聞こえているなら返事をして頂戴!!」

 ケイトは我が子をルーズハルトたちに合わせるために、おそらくいるはずであろう中庭に探しに来ていた。
 しかしそこには息子はおらず、書斎にもその姿を確認することはできなかった。

 何度目かのかけた声に薄っすらと反応が聞こえた。

「もしかして……倉庫かしら……」

 ケイトは声の聞こえた方に、引き寄せられるように向かっていった。



「うぅ~ん。ダメだね……」

 薄暗い灯りの少ない部屋で、一人の少年が唸り声とともにため息をついていた。
 少年の足元には何やら模様が書き込まれていた。
 手にはチョークのようなものを持っております、その模様を書いたのが少年だということを指し示していた。

「やっぱり発動しないな。おかしいところは一つもない。父さんの書斎にあった魔導書らしきものに従って書いては見たものの……、その本がでたらめだってことか……。父さん確実に偽物掴まされたな。だから本棚の本奥に隠してあったのか……」

 少年の後ろには簡単な机が置かれており、その上には如何にもというような少し曇ったような赤色の表装の本がとあるページを表にして開かれていた。
 そのタイトルは……「拘束魔法陣」

 効果の説明も掲載されております、魔法陣の中心にあるものをスライム形状の特需拘束具で拘束するものだった。
 更にその魔法陣の維持には拘束されたものの魔力を使用するため、発動者は発動時以外魔力を消費しないという、夢のような性能となっていた。

「せっかく発動したら僕の願いが叶うところだったのに……。仕方がないね、こればっかりは。」

 少年は落胆したかのように肩を落とす。
 そして側に立て掛けておいた箒を手にすると、床に書かれた魔法陣をきれいに掃除し始めた。

「それにしても、父さんはなんであんな本を買ったんだ?まさか……いや、やめておこう。考えるだけで、般若の面が浮かんできそうだ。」

 バサバサと小さな体でした箒を動かしながら、ブルリと体を震わせる少年。
 その顔からは血の気が引いているようにも見えて、今にも倒れるのではないかと見たものが心配しそうなほどであった。

ガチャリ

「バイトいるのぉ~?」

 部屋の扉が開くと外から入ってきたのはケイトだった。
 慌てた少年は返事をするよりも先に、机に開いてあった本を隠すように机の引き出しにしまい込んだ。

「あ、おかあさん。どうしたのこんなところに。」

 少年は引きつる顔を何とか気力で抑えこみ、声が若干上ずりながらも返事をしていた。

「バイト……やっぱりここだったのね。もう、今日は合わせたい人がいるからすぐ近くにいるように言ってたでしょ?」
「ご、ごめんさない。きになることがあったからつい……」
 
 バイトは完全にケイトとの約束を忘れていたようだった。
 そのこともありバイトは申し訳なさそうに頭を掻きながら誤っていた。

「急いでちょうだい。待たせてるんだからね。」
「はい!!」

 バイトは先に行くケイトの後を追って部屋を出ていくい。
 机に鍵をかけるのも忘れてはいなかった。



「お待たせ。」

 ケイトがバイトを探しに出かけてすでに30分は過ぎていた。
 そのせいもありケイトがみんなに頭を下げていた。
 自分のせいでケイトの頭を下げさせてしまったことに、バイトは申し訳なく思っていた。

「やっと来たか。バイト、約束を忘れるとは商人の息子として自覚が足りなさすぎやしないか?」
「まぁ、良いじゃないか。まだ4歳の子供だ。その子供に約束を守れというほうが難しいんじゃないか?」

 バイトを叱ろうとしていたエルモンドに待ったをかけたのはルーハスであった。
 まさか知らない男性から助け船が出るとは思わず、バイトは驚きを隠せなかった。
 その為尽くせで、左の耳を触ってしまったのだ。

 そのしぐさを見ていたルーズハルトは、推測が確信に変わっていた。
 間違いなく伊織であると。

「それじゃあ改めて、息子のバイトだ。よろしく頼むよルーズハルト君にエミリアちゃん。」

 エルモンドは振り上げたこぶしを素直に下ろし、バイトを紹介した。
 
「は、はじめまして。バイト・ハウエルです。」
「こちらこそはじめまして。ルーズハルトです。」
「エミリアです。」

 エルモンドからの紹介を受けて、バイトは前に出ると自己紹介をして頭を下げた。
 それに合わせてルーズハルトとエミリアも頭を下げる。
 そしてルーズハルトは頭を上げると自分の鼻を2回左手人差し指でこすって見せる。
 それを見たバイトは驚きのあまり目を白黒させていた。

 それは真一の照れた時の癖であり、伊織には懐かしい仕草だったからだ。

「しん……」
「ねえパパ。ぼくたちバイトくんとおななししてきていい?」

 バイトが自分を真一と呼ぼうとしていたことに気が付いたルーズハルトは、慌ててそれを遮りながらルーハスにこの場を離れる事の許可を取った。

「いいんじゃないか?エルモンドはどうだ?」
「なら、バイト。自分の部屋に案内しなさい。」

 ルーズハルトたちは許可が出ると、3人仲良く部屋を飛び出していく。
 親たちからはこれなら心配はないだろうと太鼓判を押されていたのだった。
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