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第2章 転生したらしい

第6話 恐ろしい子!?

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「おおきいね……」

 それがルーズハルトの感想だった。
 ハウエル商会本店のやってきたルーズハルトは、思わず呟いてしまう。
 正直なところ田舎の商会だと聞いていたので、こじんまりとした個人商店をイメージしていた。
 しかし今もの前にあるのは、現代日本で言うところのスーパーマーケットに近い形態をもした店構えであった。
 今のルーズハルトたちは子供の背丈……ついこの前100センチを越えたばかりで、なおの事大きく感じてしまっていた。

「驚いたでしょ?本当は王都に本店を置くようにって商業ギルドの上層部から再三言われてるようだけど、エルモンドが頑なにこの街から移そうとしないのよ。それで仕方なしにここまで大きな店構えにしたんだって。」
「あいつの商才は異常だからな。」

 そこまで評価される商人……
 ルーズハルトはどんな人物なのか気になって仕方なかった。

 

 「やぁ、いらっしゃい。よく来てくれた。さぁ、上がってくれオーフェリア……とルーハス。」
「おい、エル。あからさますぎやしないか?それに人の女房に目を輝かせるな。ケイトさんに言いつけるぞ?」

 母屋のドアをノックした途端現れたのは、小奇麗な衣装を身に纏って男性だった。
 黒髪の長髪を後ろ手に縛り、その縛り目にも蝶を模した飾りが付けられていた。
 背丈はルーハスと同じくらいか若干低いようで、身体の線もそれほど太いわけではなかった。
 だが、たれ目がそうさせるのか、細面の頼りなさそうな表情とは裏腹に、貫禄と言えばいいのだろうか、人をその行動一つでなぜか納得させてしまいそうになるほどのオーラを身に纏っていた。
 オーフェリアを見つけた途端、その表情には笑みがあふれ出しすぐさまオーフェリアの手を取って中へと案内しようとしていた。
 それを割って止めたのは、他ならぬルーハスだった。

「おいおい、ここでケイトを出すのはマナー違反だろ?それに幼馴染の来訪を喜んでどこが悪いというのだ?」
「じゃあ、俺の来訪も喜んだらどうだ?ん?」

 何やらバチバチと火花が散りそうなほど睨みあう二人。
 そんな二人を呆れた面持ちで見つめるオーフェリア。

 ルーズハルトとエミリアはこの状況についていけず、どうしたものかと頭を抱えそうになっていた。

「ほらほら、あんた。そんなとこに突っ立ってないで、お客様を案内しな!!」

 何やら肝の据わったような気さえ感じさせる女性が、エルモンドの後ろから姿を現した。
 赤みがかった長髪を左右二つに結び、後ろ髪はそのままきれいにそろえられていた。
 結び目にはエルモンドとおそろいの蝶を模した髪飾りがつけられており、仲の良さが一目でわかるほどであった。
 そして何よりもオーフェリアに引けを取らない程の美貌を持ち、スタイルもオーフェリア同様に万人を魅了してしまいそうなほどの美しさを誇っていた。
 その身体を包み込むように身に纏った衣装は、動きやすさを重視したパンツスタイルで、ひらひらとした飾りは多用されていなかった。

「お邪魔してるわ、ケイト。」
「ハァイ、リア。いらっしゃい。立ち話もなんだから中に入って頂戴。それと後ろのお二人さん、初めまして。あなたたちのお母さんとお父さんのお友達のケイト・ハウエルよ。よろしくね。」

 ケイトはオーフェリアへの挨拶もそこそこに、オーフェリアの後ろに隠れていた二人を見つけ声をかける。
 その時ケイトは自然な流れでしゃがみ込み、ルーズハルトとエミリアの目線の高さに合わせていた。
 その所作は違和感が無く、普段からそういったことを行っているのだと伝えるには十分すぎるモノであった。

「は、はじめまして。ルーズハルトです。」
「エミリアです。」
「そう、ルーズハルト君にエミリアちゃんね。えらいわねぇ~。きちんとご挨拶が出来て。」

 そう言うと、ケイトはルーズハルトとエミリアを引き寄せて、軽く抱きしめる。
 その力加減はいたわりを感じ、ここでも暖かなぬくもりを感じていたルーズハルトであった。


 
「二人とも改めて紹介する。こちらの女性がケイト・ハウエル。父さんたちの友人だ。で、こっちの奴がエルモンド。昔からの腐れ縁だ。」

 どこか不貞腐れ気味のルーハス。
 それもそのはずで、応接間に通されるとルーズハルトとエミリアはソファーに座るよう促された。
 ケイトは準備してあったジュースやお菓子をテーブルに並べ、大人同士の話があると3人を連れ立って別室へ移動していった。
 そして話し合いが終わったのか、戻ってきた際のルーハスとエルモンドの意気消沈ぶりを見て、ルーズハルトは察することにした。
 そして改めて肝に銘じることにした。
 女性を怒らせてはいけないと……

「はじめまして、ルーズハルトです。」
「は、はじめましゅて!!え、えみゅりあでしゅ!!」

 ルーズハルトの挨拶に合わせるように慌てて挨拶をしたエミリアだった。
 だが、ここでも天然が発揮されてしまった。
 慌てすぎたのかカミカミの挨拶となってしまったのだ。

 慌てふためいて恥ずかしそうに俯いたエミリア。
 それをフォローするかのように、大人たちは微笑ましくも優しく声をかけていた。
 若干1名「うちの子は天使だ!!」と壊れかけていたが、オーフェリアに〝困ったら大抵叩いたら治る〟をされていた。

 しかしこのときルーズハルトだけは戦慄の表情を浮かべていた。
 ルーズハルトは見てしまったのだ……
 エミリアがうつむく際、一瞬だけどねにやりと笑みをこぼしたことを……
 エミリア……恐ろしい子……
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