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第1章 最強の近距離魔導騎士
第9話 駄女神【フェイルノルド】
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「ここは……」
「その声は伊織君?」
真一が意識を取り戻すと、真っ白な空間にいることが理解できた。
そして耳に飛び込んできたのは伊織と綾の声。
だが周囲を確認すれども、二人の姿は見当たらなかった。
「二人とも無事か?」
「僕は無事だよ。綾は?」
「私も大丈夫……でも二人の声は聞こえるけど、姿が見えないよ?もしかしてかくれんぼ?」
真一と伊織はここにきても綾の天然っぷりに、転びそうになってしまった。
しかしそのおかげで二人には心の余裕が生まれていた。
「なあ伊織、俺の姿確認できるか?」
「いや、出来ないかな。というより真っ白過ぎて何が何だか……」
伊織も感じている通り、周囲は真っ白な空間でおおわれており、上下左右前後のすべての感覚がくるっているかのようであった。
真一は周囲を見渡し、再度伊織たちを探してみたが、やはりその姿を確認するには至らなかった。
しばらくそんなやり取りを続けていると、三人の前に光の柱が降りてきた。
中からは一人の女性の姿が……
「よくぞ参られた人の子よ。我が名は、【フェイルノルド】。そなたら二人を……二人を……二……。三人?!」
荘厳なる声と共に聞こえる驚きの声。
それはその場の空気を一変させるには十分すぎるモノだった。
「え、ちょっと待って、私二人しか召喚してないわよ?!どうなってるの?召喚魔法の失敗?って、陣は間違ってないわよね?どうなってるのよ!!そこのあなた!!どうして無関係な人間が紛れ込んでるのよ!!」
あまりのパニックに素が出てしまったのか、フェイルノルドは慌てふためき周囲に当たり散らした。
終いには真一を指さしてなぜか怒っているようだった。
「そんなこと俺に言われても……。確か伊織と綾が変な光に捕まって、気が付いたら押し出そうとしてたな。うん。」
真一は当時の状況を必死に思い出した。
覚えてるのは光に包まれた二人の驚いた顔。
真一が慌てて行動するには十分すぎる理由だった。
なんだかんだ言って真一は二人を親友だと思っていた。
「何てことしてくれたのよ!!おかげで神力が足りなくなってしまったじゃない!!もうどうしましょう……これじゃあ契約を守れないじゃない……。契約不履行……、だめよ絶対。そんなことしたらまた何を要求されるか分かったものじゃないわ。これ以上賭けに負けて持っていかれたら、主様にばれるじゃないの……。」
フェイルノルドのつぶやきから、真一はいろいろと理解することが出来た。
1つ目は、この召喚によって伊織と綾が狙われたこと。
2つ目は、それを助けようとしたことで自分が巻き込まれたこと。
3つ目は、込められた神力なるモノが真一という異物のせいで不足してしまったこと。
4つ目は、こいつの賭けのカタに伊織たちが狙われたという事実。
「おい、フェイルノルド……話を聞かせてもらおうじゃないか?」
フェイルノルドはあまりのイレギュラーさに思考が一瞬遅れてしまった。
そこに、ドスの利いた真一の言葉。
さらにフェイルノルドは顔をしかめていった。
「あ、あなたが邪魔さえしなければ、この子たちの身体はそのまま強化して異世界に転移させるつもりだったの。あなたが邪魔したおかげで、あなたを含めて三人とも魂だけの存在になってしまったのよ!!」
「あ、それでみんな光の玉になってたんだね?可愛い妖精さんかな?って思ってたのに残念。あ、でもシンちゃんも伊織君も可愛い妖精さんになったんだったらそれはそれでいいのかな?ねえ、どうかなシンちゃん?」
怒りをあらわにしているフェイルノルドをよそにマイペースな綾。
真一はそのせいか一気に気が抜けてしまった。
伊織は今この状況を静観していた。
何か考えがあるのか……
それは分からないが。
「なぁ駄女神、そっちの事情はわかった……。だけど俺たちには一切関係ないことだよな?だったら元に」
「ちょっと待って真一。ねぇ、フェイル……ノルド……様?本来は異世界に行くはずだったって本当?」
真一の話を遮って伊織が話に入ってきた。
伊織の表情は真剣そのもので、目は輝きを帯びていた。
このとき真一は、この状況の不味さに気がついた。
伊織の趣味を忘れていたことに。
「その世界には魔法とか剣とかモンスターとかあるの?」
興奮をなんとか抑え込んでいる伊織だったが、かなり食い気味となり、フェルドノルトでさえ引き気味であった。
「そ、そうね。そういった世界よ。転移先の世界では別の世界の魂を欲しているわ。そこであなたたち二人に目をつけたのよ……。なのにあなたが……」
再度真一を睨みつけるフェイルノルド。
だが真一には恐れる気持ちはすでになかった。
この状況下でどうしたものかと一人頭を抱えていたのだった。
「……仕方ないわね……、肉体がないなら魂のまま転生してもらいましょう……」
深いため息のあと、フェイルノルドは虚空に手をやると何かを話し始めた。
その言葉は真一たちの理解の範疇外だったようで、全く分からなかった。
「じゃあ、これからサクッと転生してもらいましょうか。」
突如告げられた言葉に、三者三様の反応を見せたのだった。
綾はキョトンとし、伊織はワクワクを隠しきれず、真一の表情は既に能面とかしていたのだった。
「その声は伊織君?」
真一が意識を取り戻すと、真っ白な空間にいることが理解できた。
そして耳に飛び込んできたのは伊織と綾の声。
だが周囲を確認すれども、二人の姿は見当たらなかった。
「二人とも無事か?」
「僕は無事だよ。綾は?」
「私も大丈夫……でも二人の声は聞こえるけど、姿が見えないよ?もしかしてかくれんぼ?」
真一と伊織はここにきても綾の天然っぷりに、転びそうになってしまった。
しかしそのおかげで二人には心の余裕が生まれていた。
「なあ伊織、俺の姿確認できるか?」
「いや、出来ないかな。というより真っ白過ぎて何が何だか……」
伊織も感じている通り、周囲は真っ白な空間でおおわれており、上下左右前後のすべての感覚がくるっているかのようであった。
真一は周囲を見渡し、再度伊織たちを探してみたが、やはりその姿を確認するには至らなかった。
しばらくそんなやり取りを続けていると、三人の前に光の柱が降りてきた。
中からは一人の女性の姿が……
「よくぞ参られた人の子よ。我が名は、【フェイルノルド】。そなたら二人を……二人を……二……。三人?!」
荘厳なる声と共に聞こえる驚きの声。
それはその場の空気を一変させるには十分すぎるモノだった。
「え、ちょっと待って、私二人しか召喚してないわよ?!どうなってるの?召喚魔法の失敗?って、陣は間違ってないわよね?どうなってるのよ!!そこのあなた!!どうして無関係な人間が紛れ込んでるのよ!!」
あまりのパニックに素が出てしまったのか、フェイルノルドは慌てふためき周囲に当たり散らした。
終いには真一を指さしてなぜか怒っているようだった。
「そんなこと俺に言われても……。確か伊織と綾が変な光に捕まって、気が付いたら押し出そうとしてたな。うん。」
真一は当時の状況を必死に思い出した。
覚えてるのは光に包まれた二人の驚いた顔。
真一が慌てて行動するには十分すぎる理由だった。
なんだかんだ言って真一は二人を親友だと思っていた。
「何てことしてくれたのよ!!おかげで神力が足りなくなってしまったじゃない!!もうどうしましょう……これじゃあ契約を守れないじゃない……。契約不履行……、だめよ絶対。そんなことしたらまた何を要求されるか分かったものじゃないわ。これ以上賭けに負けて持っていかれたら、主様にばれるじゃないの……。」
フェイルノルドのつぶやきから、真一はいろいろと理解することが出来た。
1つ目は、この召喚によって伊織と綾が狙われたこと。
2つ目は、それを助けようとしたことで自分が巻き込まれたこと。
3つ目は、込められた神力なるモノが真一という異物のせいで不足してしまったこと。
4つ目は、こいつの賭けのカタに伊織たちが狙われたという事実。
「おい、フェイルノルド……話を聞かせてもらおうじゃないか?」
フェイルノルドはあまりのイレギュラーさに思考が一瞬遅れてしまった。
そこに、ドスの利いた真一の言葉。
さらにフェイルノルドは顔をしかめていった。
「あ、あなたが邪魔さえしなければ、この子たちの身体はそのまま強化して異世界に転移させるつもりだったの。あなたが邪魔したおかげで、あなたを含めて三人とも魂だけの存在になってしまったのよ!!」
「あ、それでみんな光の玉になってたんだね?可愛い妖精さんかな?って思ってたのに残念。あ、でもシンちゃんも伊織君も可愛い妖精さんになったんだったらそれはそれでいいのかな?ねえ、どうかなシンちゃん?」
怒りをあらわにしているフェイルノルドをよそにマイペースな綾。
真一はそのせいか一気に気が抜けてしまった。
伊織は今この状況を静観していた。
何か考えがあるのか……
それは分からないが。
「なぁ駄女神、そっちの事情はわかった……。だけど俺たちには一切関係ないことだよな?だったら元に」
「ちょっと待って真一。ねぇ、フェイル……ノルド……様?本来は異世界に行くはずだったって本当?」
真一の話を遮って伊織が話に入ってきた。
伊織の表情は真剣そのもので、目は輝きを帯びていた。
このとき真一は、この状況の不味さに気がついた。
伊織の趣味を忘れていたことに。
「その世界には魔法とか剣とかモンスターとかあるの?」
興奮をなんとか抑え込んでいる伊織だったが、かなり食い気味となり、フェルドノルトでさえ引き気味であった。
「そ、そうね。そういった世界よ。転移先の世界では別の世界の魂を欲しているわ。そこであなたたち二人に目をつけたのよ……。なのにあなたが……」
再度真一を睨みつけるフェイルノルド。
だが真一には恐れる気持ちはすでになかった。
この状況下でどうしたものかと一人頭を抱えていたのだった。
「……仕方ないわね……、肉体がないなら魂のまま転生してもらいましょう……」
深いため息のあと、フェイルノルドは虚空に手をやると何かを話し始めた。
その言葉は真一たちの理解の範疇外だったようで、全く分からなかった。
「じゃあ、これからサクッと転生してもらいましょうか。」
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