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第1章 最強の近距離魔導騎士
第7話 名将【単騎駆のラインバッハ】
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「休んでいたところ申し訳ない。少しいいかな?」
「どうされましたラインバッハ殿。」
野営地のテントで休んでいたルーズハルトの元にラインバッハとその部下が訪ねてきた。
ラインバッハは戦場に居たときとは打って変わって好々爺然とした雰囲気を身にまとっていた。
騎士として対応すべきか迷っていたルーズハルトに不要だと言わんばかりににこやかに笑いかけていた。
言葉にはない否を言わせぬ空気感に折れたルーズハルトは、後頭部をガシガシとかき一息はいたのだった。
「じゃあ改めて、ラインバッハさん。一体どうしたんです?」
「敬語も不要。互いに農民出身者同士気楽でよかろう?」
生え揃えた顎ひげを撫でつけながらニヤリと笑みを浮かべるラインバッハ。
ルーズハルトはすでにお手上げ状態だった。
「りょーかい。で、ライン爺さん、用件はなんだい?」
「うむ、若いのはそうでなくてわな。改めて礼を述べに来た。ありがとう。お主達……お主があと数分到着が遅れておれば儂はあのトカゲ野郎に殺されておったじゃろうな。」
そう言うとラインバッハはルーズハルトの奥に視線を投げた。
そこには誰も居ないはずであった。
ラインバッハの部下もそれを確認しております、ラインバッハの行動が読めないでいた。
「さすがは名将【単騎駆のラインバッハ】様だ。もういいよイザベル。」
ラインバッハの行動に笑みを浮かべるルーズハルト。
その背後では影が揺らぎ始めていた。
揺らぎは徐々に大きくなり、その影には一人の少女が姿を表した。
「ラインバッハ様、お言葉ですがあの劣化龍種は雌です。」
「そうであったか、ではトカゲ女郎といったところかの?」
にこやかに交わされる挨拶について行けない部下は、困惑の色を隠せずにいた。
「おっと、すまなんだな。ルーズハルト、コヤツは儂の孫のゲイルだ。孫の命も助けてもらったのじゃから一人の人として礼を述べねば示しがつかんというわけだ。」
「ゲイルです。ラインバッハ様共々救っていただき感謝いたします。」
部下改ゲイルは頭を下げる深く下げる。
その背をバンバンと叩くラインバッハ。
なんとも変な空気となってしまった。
「それとだ……これでいいだろう。」
そう言うとラインバッハは腰に下げていた箱型の装置に魔力を流した。
するとなにかの魔法が展開されてテントを包み込んでいった。
「遮音と人払いの魔導具……。なかなか上質なの手に入れたみたいだな。」
ラインバッハが展開したものは会談などに用いられる定番の魔導具であった。
しかもルーズハルトが指摘した通り、魔導具にもランクがあり、ラインバッハが使用したものは上位に数えられる一品であった。
「なに、昔陛下とサシで飲んだ時に頂いたものだ。」
「あのジイサン……宰相様も大変だな……」
ルーズハルトはつい小声で漏らしてしまった……ジイサンはと。
「やはりの……」
ルーズハルトはこのとき自分の失態を初めて気がついた。
あくまでも自分は騎士団の一兵士。
そのように行動していたにも関わらず、ここに来てそれを崩してしまったのだ。
「だからこその魔道具ですよ?ルーズハルト様。」
澄ました顔でそう言ってのけるイザベルに、ラインバッハはまたしても関心したように笑いかけ目を細めていた。
「お主は【第0騎士団】の所属だな?」
「どこまで知ってんの?」
諦めたかのようにルーズハルトは憮然とした態度取っていた。
その子供じみた態度に愉快な気持ちになったラインバッハだったが、表情をすぐに引き締めた。
「噂程度は……といったところかの。お主が現れなんたら眉唾と思っていたところじゃて。」
「ナンバー11……」
ルーズハルトはいまだ不機嫌を体現していた。
そこからポツリとこぼれた言葉。
ラインバッハはそれが何を意味するのか察しがついた。
「そうか……噂は本当だったと言うことかの。国王直属の精鋭騎士団。通称第0騎士団。その幹部はその実力に合わせて数字が充てがわれる。」
「そ、俺はその11番目ってわけ。秘密でもなんでもないんだけど、あのジイサンの趣味だそうだ。元々第5騎士団に所属していたんだけどね……。何がまかり間違ったか、爺さんの目に止まって今は第0騎士団だよ。」
いまだその態度を崩さないルーズハルトにラインバッハは目を細める。
ラインバッハの中に映ったルーズハルトは、屋っと年相応に見えたのだった。
「ではイザベル殿も第0騎士団なのか?」
「はい。第0騎士団第8大隊所属です。団長からルーズハルト様のブレーキとして派遣されています。」
ちらりとイザベルはルーズハルトに視線を送る。
その目はやはり冷たく冷ややかなものであった。
「こいつこれでも大隊長だからね。最初本気で驚いたよ。いきなり団長から部下にって充てがわれて、話を聞いたら大隊長。俺より階級が上だったんだからさ。」
「中隊長クラスではルーズハルト様を制御できませんので当然の措置かと。」
いまだツンした態度を崩さない態度のイザベルに、苦笑いを浮かべるルーズハルト。
ほぼほぼ空気となりつつあったゲイツは、そんなイザベルに視線を奪われていたのだった。
「それにしてもだいぶ濃い体験をしてきたんだのぉ。ゲイツにもいい体験談となろう。どれ、話して聞かせてくれんかな?お主のこれまでの歩みを。」
「別にいけど……長いぞ?いいよ、話してやるよ……俺の物語を……」
「どうされましたラインバッハ殿。」
野営地のテントで休んでいたルーズハルトの元にラインバッハとその部下が訪ねてきた。
ラインバッハは戦場に居たときとは打って変わって好々爺然とした雰囲気を身にまとっていた。
騎士として対応すべきか迷っていたルーズハルトに不要だと言わんばかりににこやかに笑いかけていた。
言葉にはない否を言わせぬ空気感に折れたルーズハルトは、後頭部をガシガシとかき一息はいたのだった。
「じゃあ改めて、ラインバッハさん。一体どうしたんです?」
「敬語も不要。互いに農民出身者同士気楽でよかろう?」
生え揃えた顎ひげを撫でつけながらニヤリと笑みを浮かべるラインバッハ。
ルーズハルトはすでにお手上げ状態だった。
「りょーかい。で、ライン爺さん、用件はなんだい?」
「うむ、若いのはそうでなくてわな。改めて礼を述べに来た。ありがとう。お主達……お主があと数分到着が遅れておれば儂はあのトカゲ野郎に殺されておったじゃろうな。」
そう言うとラインバッハはルーズハルトの奥に視線を投げた。
そこには誰も居ないはずであった。
ラインバッハの部下もそれを確認しております、ラインバッハの行動が読めないでいた。
「さすがは名将【単騎駆のラインバッハ】様だ。もういいよイザベル。」
ラインバッハの行動に笑みを浮かべるルーズハルト。
その背後では影が揺らぎ始めていた。
揺らぎは徐々に大きくなり、その影には一人の少女が姿を表した。
「ラインバッハ様、お言葉ですがあの劣化龍種は雌です。」
「そうであったか、ではトカゲ女郎といったところかの?」
にこやかに交わされる挨拶について行けない部下は、困惑の色を隠せずにいた。
「おっと、すまなんだな。ルーズハルト、コヤツは儂の孫のゲイルだ。孫の命も助けてもらったのじゃから一人の人として礼を述べねば示しがつかんというわけだ。」
「ゲイルです。ラインバッハ様共々救っていただき感謝いたします。」
部下改ゲイルは頭を下げる深く下げる。
その背をバンバンと叩くラインバッハ。
なんとも変な空気となってしまった。
「それとだ……これでいいだろう。」
そう言うとラインバッハは腰に下げていた箱型の装置に魔力を流した。
するとなにかの魔法が展開されてテントを包み込んでいった。
「遮音と人払いの魔導具……。なかなか上質なの手に入れたみたいだな。」
ラインバッハが展開したものは会談などに用いられる定番の魔導具であった。
しかもルーズハルトが指摘した通り、魔導具にもランクがあり、ラインバッハが使用したものは上位に数えられる一品であった。
「なに、昔陛下とサシで飲んだ時に頂いたものだ。」
「あのジイサン……宰相様も大変だな……」
ルーズハルトはつい小声で漏らしてしまった……ジイサンはと。
「やはりの……」
ルーズハルトはこのとき自分の失態を初めて気がついた。
あくまでも自分は騎士団の一兵士。
そのように行動していたにも関わらず、ここに来てそれを崩してしまったのだ。
「だからこその魔道具ですよ?ルーズハルト様。」
澄ました顔でそう言ってのけるイザベルに、ラインバッハはまたしても関心したように笑いかけ目を細めていた。
「お主は【第0騎士団】の所属だな?」
「どこまで知ってんの?」
諦めたかのようにルーズハルトは憮然とした態度取っていた。
その子供じみた態度に愉快な気持ちになったラインバッハだったが、表情をすぐに引き締めた。
「噂程度は……といったところかの。お主が現れなんたら眉唾と思っていたところじゃて。」
「ナンバー11……」
ルーズハルトはいまだ不機嫌を体現していた。
そこからポツリとこぼれた言葉。
ラインバッハはそれが何を意味するのか察しがついた。
「そうか……噂は本当だったと言うことかの。国王直属の精鋭騎士団。通称第0騎士団。その幹部はその実力に合わせて数字が充てがわれる。」
「そ、俺はその11番目ってわけ。秘密でもなんでもないんだけど、あのジイサンの趣味だそうだ。元々第5騎士団に所属していたんだけどね……。何がまかり間違ったか、爺さんの目に止まって今は第0騎士団だよ。」
いまだその態度を崩さないルーズハルトにラインバッハは目を細める。
ラインバッハの中に映ったルーズハルトは、屋っと年相応に見えたのだった。
「ではイザベル殿も第0騎士団なのか?」
「はい。第0騎士団第8大隊所属です。団長からルーズハルト様のブレーキとして派遣されています。」
ちらりとイザベルはルーズハルトに視線を送る。
その目はやはり冷たく冷ややかなものであった。
「こいつこれでも大隊長だからね。最初本気で驚いたよ。いきなり団長から部下にって充てがわれて、話を聞いたら大隊長。俺より階級が上だったんだからさ。」
「中隊長クラスではルーズハルト様を制御できませんので当然の措置かと。」
いまだツンした態度を崩さない態度のイザベルに、苦笑いを浮かべるルーズハルト。
ほぼほぼ空気となりつつあったゲイツは、そんなイザベルに視線を奪われていたのだった。
「それにしてもだいぶ濃い体験をしてきたんだのぉ。ゲイツにもいい体験談となろう。どれ、話して聞かせてくれんかな?お主のこれまでの歩みを。」
「別にいけど……長いぞ?いいよ、話してやるよ……俺の物語を……」
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