近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓

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第1章 最強の近距離魔導騎士

第4話 対劣化龍種

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「お、見えてきたな。やっぱ劣化龍種と言っても龍種は龍種か。それなりのでかさだな。」

 木々の上の枝を飛び移りながら状況を確認していたルーズハルトは、前方に見える頭一つとびぬけた巨体の持ち主を観察していた。
 徐々に近づくたびにその大きさがより理解できた。

「あの辺は……そうか……。マナ溜まりか。おそらくあの場所を狙ってやってきただけで、人間がいることを知らなかった感じだな。つまりとんだとばっちりを喰らった状況か。」

 ルーズハルトはすでに視界にとらえていた劣化龍種の足元に広がる空間に目をやった。
 そこでは騎士たちが懸命に戦っていた。
 だがすでに結果は決まっており、劣化龍種が掃除をしているという感じにも見えた。

「ったく、フェンガーのやろう……一回泣かす!!」

 ルーズハルトは全力で木々の上を飛んでいく。
 少しでも早く現場に着きたいからと。

 そして距離は一気に縮まり、あと少しのところまで近づいていた。

 聞こえてくる怒号と悲鳴。
 ルーズハルトの中に怒りがこみあげてくる。
 そして気合一閃。
 その戦いに介入したのだった。

「来たれよ厄災の業火!!カラミティ・フェルファイア!!」

 ルーズハルトの左手の手甲に魔法が……灼熱の業火が集中する。
 それは拳から魔法の剣へと移り、強烈な熱波を周囲にまき散らす渦と化す。
 
「どぉ~~~ッセイ!!」

 そして、なんとも間抜けな掛け声が戦場に木霊した。
 
 ルーズハルトは木の上から飛び上がり、上空から一気に劣化龍種へと襲い掛かる。
 落下速度も加わり、その一撃は劣化龍種の胴体に深々と突き刺さる。
 だが、それだけにとどまらないのがルーズハルトである。
 イザベル曰く、「ルーズハルト様ほどはた迷惑な魔導騎士は存在しません」と……
 そして強烈な熱を帯びた拳が轟音と共に一気に爆ぜた。
 その爆発力はすさまじく、ルーズハルトの前方にある地面をえぐりながら放射状に広がっていった。
 そんな中爆心地にされてしまった龍種はたまったものではなかった。
 いくら劣化版とは言え龍種。
 その装甲は並みの剣など歯が立たなかった。
 その為ラインハルトの部隊も近接武器での攻撃を諦めて、魔法の直接攻撃や矢への付与魔法などで対応していたくらいなのだから。
 だが実際にはルーズハルトの魔法の剣が深く突き刺さり、灼熱の業火でその肉は焼けただれ、すさまじい爆発力で一気に後退させられてしまった。
 劣化龍種はこれにプライドを刺激されたのか、一気に後退させられた地で何とか踏みとどまり、倒れ伏すことはなかった。
 その怒りに満ちた瞳が原因を作ったであろう人間に集中する。

「あれ?意外と柔らかいな。攻撃通らないと思ったんだけど。まぁ、ラッキーっつうことで。」

 それがルーズハルトの感想であった。
 特に気にする様子もなく、劣化龍種を見つめていた。



「な、何があった!?」

 ラインバッハは夢を見ているようだった。
 自分は今まさに決死の覚悟で劣化龍種に挑もうとしていた。
 しかしそれはかなわなかった。
 突然の間抜けな掛け声と爆発により、その期を逸してしまったのだ。
 だからこそ漏れ出た心の声だったのかもしれない。

 ラインバッハは土煙が立ち込める中、遠くに吹き飛ばされた劣化龍種に見やると、それなりに距離があるものの、劣化龍種はすでに息も絶え絶えの状況であることが伺い知れた。
 これが戦力が無事な部隊であったらここぞとばかりに勇んで最後のとどめを刺しに行ったはずだ。
 しかしラインハルトの今の部隊は負傷兵を多数抱えたいわば生贄部隊であった。
 そのせいか、四肢を欠損している者も珍しくはなかった。
 それに魔導騎士は四肢が欠損していようとも言葉が発せられさえすれば、問題無く魔法を発動することが出来る。
 固定砲台代わりに、残す魔力を全て捧げる覚悟の者もいた。
 だからこそ今自分にできることを死ぬ間際まで精いっぱいやろうと心に誓っていた魔導騎士も、呆けた顔で戦場を見つめていた。

「ラインバッハ様……これはいったい。」

 動揺を隠せない部下は、傷ついた身体にムチ打ってラインハルトへと駆け寄った。
 ラインハルトも同様から抜け出せてはおらず、今現在の状況を追いかけているだけに過ぎなかった。

「何なんだあれは……」
「人?味方……でしょうか……?」

 疑問に疑問で返す。
 それは時にして失礼に当たる行為であった。
 だがこの場にはそれを咎めるものは居なかった。
 ここにいる全員がその気分だったからだ。

 立ち込める土煙が落ち着きだし、人の姿が辛うじて確認できた。
 そこにいるものすべてが固唾を呑んで見守っていた。
 あまりの静けさに誰かの喉が鳴る音さえ聞こえてしまいそうなほどの緊張感が漂っていた。


 
「間に合ってよかった。とりあえず全滅はしていないっと。えっとここの隊長さんは誰ですか?」

 ルーズハルトは緊張感の漂う空気の中、一人平然としていた。
 もちろんそれはこの騒ぎを起こした張本人だからで間違いないのだが、あまりにも緊張感がなさすぎて本当にこいつが?という思いのを抱かせていた。

「あ、あぁ、すまない。第3騎士団第3大隊第5中隊副隊長のラインバッハだ。農民上がりのため家名はない。」

 ラインバッハはやっとのことで名乗りを上げる。
 いまだ状況が把握できず困惑の色を見せていたが、なんとか現場指揮官としての矜持といえばいいのか、声を絞り出したのだった。
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