最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
上 下
110 / 131
第5章 首都圏解放戦線

106 目指す先に有るもの

しおりを挟む
「ケントさん……それって……」

 佐藤さんが困惑気味に訪ねてきたが、まぁ当然の反応と言える。
 ついさっきまで命を狙われていたのに、いきなり大丈夫ですと言われても「はいそうですか」と、すぐに信じられるわけはないしね。

「取り敢えず馬場については片を付けてきた。これからは馬場から襲われることは無いよ。」

 察しの良い佐藤さんは、俺の言葉の裏側にあるものに気が付いたみたいだ。
 なんとも言えない表情を浮かべていた。
 悲しみとも憐れみとも言えない……確かに暴君だったとは言え、知人の命が消え去ったのだから思うところはあるはずだ。

「これで、救われた人間もいたはずです。ありがとうございます。」

 佐藤さんは深く俺に向かって頭を下げた。
 それがどんな思いからなのか俺には分からない。
 ただ、ほんの少しだけ心が軽くなったのは確かだった。
 俺としては、今後の憂いを払う意味でも、倒しておくべき相手だった。
 あくまでも〝俺の敵〟として殺したに過ぎないのだから。

「お礼を言われることではないよ。」
「それでもです。」

 ニコリと笑顔を作る佐藤さんを見て、俺は少しだけ救われた気がした。
 人殺しは人殺し。
 それは紛れもない事実だから。
 
 俺は自分自身でも……そして、タケシ君やタクマに命じてそれなりの人数を殺してきた。
 それについて後悔したこともあったが、大概は何も感じなかった。
 ほとんどが、モンスターを倒すのと同じ感覚でしかなかったから。

『主よ……、気にするでない。【神の権能】を得た時点で仕方が無い事なのだからな。そして主は吾を取り込んだ。つまりは二つ目の【神の権能】をその身に宿したのだ。人ならざる者になるもの仕方があるまいて。』
「わかってる。」

 タクマから引き継いだ【神の権能】は【不動不屈】。
 何事にも揺るがず、何事にも屈せず、己を貫く精神。
 その奥に秘めるは、己の精神構造への干渉であった。
 俺自身の【神の権能】は【情報改編】。
 物質に対する情報構造への干渉。
 二つを手にしたことで、俺自身を作り替える形となってしまった。
 そしてタクマを取り込んだ際に俺は完全に人を……人種であることに終わりを告げた。

——————

基本情報

 氏名  :中村なかむら 剣斗けんと
 年齢  :36歳
 職業  :探索者B
 称号  :神へと至る者
 種族  :亜神

——————

「取り敢えず職業が探索者って事は、まだこの世界の住人だってのは間違いないみたいだしね。まあ、これが無くなったら俺は人ではないって事なんだろうな。」

 なんて会話をタクマとしていたら、慌てた様子でタケシ君から通信が入った。
 
『ケントさん!!自衛隊の一部がそっちに向かってます!!おそらく加賀谷の手の物だと思います!!』
「ちっ!!手回しが早すぎるな!!ごめん、俺はこれで失礼するよ。あそこのテント使っていいから回収しておいて!!じゃ!!」

 俺は佐藤さんにそう告げると、周囲の視線も気にすることなくその場から宙に飛び上がった。

「【結界】!!」
 
 すぐさま向かう方向に【結界】による足場が形成され、全力で空を駆けていった。

「ケントさん!!」

 後方で聞こえる佐藤さんの声に気が付いたけど、その足を止める事は無かった。
 さらにその速度を上げ俺はその場を去ったのだった。

 残されたのは、パリンパリンと崩れ行く【結界】の残滓の美しい煌めきだけであった。

—————— 

 ケントが去ったあと、佐藤は自衛官からいろいろと事情聴取を受けたが、ケントについては一切語ろうとはしなかった。
 【ボルテージ】のメンバー含め、周囲の探索者たちの自衛隊に対する視線が疑わしい物を見るものに変わっていく。
 そのことに気が付いた自衛官は、取り調べを終えると、そそくさと逃げ帰る様に去っていったのだった。

 佐藤はケントの去っていった方角を見上げ、そして改めて頭を下げたのだった。

——————
 
『で、ケントさん。これからどうしますか?』

 俺がタケシ君に【送還 】を行い合流してから、3日が経過していた。
 第29駐留部隊駐屯地からは大分離れており、おそらく追手を巻く事には成功したようだ。
 そして今は身を隠すため、モンスターの襲撃で廃墟と化しているビル群の屋上に陣取っている。
 廃墟と言ってもその頑強さは相変わらずで、こうして拠点として利用可能な状況なんだけどね。
 どうやらここも解放区だったみたいで、モンスターの襲撃を気にしなくて良いのはかなり助かった。

「どうするもこうするも……この第29駐留部隊駐屯地がどれだけ加賀谷……【魔王】軍の指揮下にあるか分からない以上、迂闊にダンジョンにも近づけないよな。」
『何とも面倒なことよな。神もまた面倒な試練をお与えになったものだ。まあ、だからこそ乗越え甲斐があるというものだかの。』

 タクマは豪快に笑っていたが、俺は少し頭を抱えていた。
 どう動こうにも、ダンジョンは自衛隊に抑えられており、これ以上の探索が難しいからだ。

『だったら神宮寺准尉を頼りませんか?そこから一ノ瀬一等陸尉へ渡りを付けるのが無難だと思います。』

 タケシ君の提案が、おそらく無難なんだけどね。
 だけどそこに加賀谷の手が伸びていないと確証が持てない。
 下手に動いて感づかれても、面倒この上なかった。
 ゴロゴロと固いコンクリートの床の上を寝転がりながらだらだらとしていたけど、なかなかいい案が出ず、その日も暮れていったのだった。

「うん、もう面倒臭いな。樹海に向かおう。」

 俺は思い立ったが吉日とばかりにおもむろに立ち上がる、と体についた埃を叩き落とした。
 おそらく加賀谷の部隊のと思われる集団から襲撃を受けかけてから、おおよそ1週間が経過していた。
 ここでグジグジしてても仕方ないしね。
 むしろ食料が心もとない……

『樹海ですか?もしかして……』
「あぁ、もう考えるのが面倒くさくなってきた。どうせ俺は人間じゃないんだ。だったら思うようにやらせてもらおうかなって。」

 俺が開き直りともとれる結論に達したことを話すと、それを聞いていたタクマが何か震えだした。
 
『くははははっ!!ようやく決心がついたようだの。ようこそというべきかの?』
「いらん!!」

 うっさい、俺は人間だ!!
 だよね?
 ヤバイちょっと自信が無くなってきた……
 
 周辺警戒に当たっていたタケシ君は、飛ばしていた【煉獄】を戻すと、すぐに収納し出発の準備を始める。
 俺も片付け……と言ってもテントも何もないんだが、散らかしたままにするのも気が引けたので、軽く掃除をした。
 『律儀だのぉ。』とタクマが呟いていたが、俺はそれを無視するように作業を進めていた。

「まあ、移動中にコミュニティー見つけたら食料調達したりすればいいでしょ。それに野良ダンジョン見つけたらそのまま攻略してもいいだろうし。なんとなくだけど、縛られないだけ気が楽かもしれないな。」

 さっきまでのモヤモヤがウソみたいに晴れていくのを感じていた。

 周囲の片付けも終わると、俺は少ない荷物を全てインベントリに収納する。
 そしてスマホの地図アプリを起動させ、行き先を再度確認してた。
 ふと思ったけど、このスマホから位置情報割り出されたりしないよね?
 まぁ、考えても仕方がないか……

「まずは目指すは富士の珠海ダンジョン……の手前の日本最大拠点の最前線基地【富士急ハイランド跡地】だ。」

 俺は西南西の方角を指さした。
 東京都心を抜けた先にある、日本における最前線基地と言って過言ではない場所だ。
 ただし、いまだ東京都の中心部はダンジョンが多数存在し、突っ切っていくことは不可能であった。
 今回のルートは埼玉県を経由して山梨県に入る事になる。
 恐らく移動に1か月近くかかることになるが、まあ何とかなるでしょ。
 旅行の代わりじゃないけど、修行かねて野良ダンジョン漁りでもしましょうかね。

「カイリ……、カレン、アスカ、谷浦、虹花さん。待っててくださいね……」

 その視線の先にある最難関ダンジョンを目指し、俺たちの最後の旅が始まろうとしていた。

——————

 はい、これで第2部が終了となります。
 世界が様変わりし、日常が非日常になったあの日から、ケントの旅が始まりました。
 そして第3部……ついにケントの旅が終わりを迎えます。
 それがどんな形で終わるのか……楽しんでいただければ幸いです

 これからも「ワクワク・ドキドキ・ちょっぴりクスリ」をお届けしてまいります

 では、第3部でお会いできるのを楽しみにしております。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...