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第2章 リベンジ!!

027 リベンジ!!

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 階段を下りた先に広がる光景は、いつ見てもダンジョンとは思えなかった。
 空は晴れ渡り、太陽が昇っている。
 そよぐ風は心地よく、草木を薙ぎ新緑の香りを運んでくれる。
 思いっきり深呼吸をして、改めて気合を入れなおす。
 ここから先は、気を抜くとケガでは済まない場所だ。
 心なしか3人の顔が暗く見える。
 おそらくこの前の事だろうか……

「それじゃあ、行こうか。目標は集落一つの殲滅かな?」

 僕はあえて明るく振舞った。
 何でもないように、それが普通であるかのように。
 僕の意を察したのか、一番の被害者のカイリが元気よく返事をしてくれた。

「はい!!今度こそ絶対に負けません!!」
「だね!!」
「ですねぇ~」

 カイリの声に二人は顔を上げ、前を見据えた。
 どうやら覚悟は決まったらしい。

「行こう!!」

 三人に声をかけ、草原を歩き始めた。
 歩きつつ周辺の警戒をしていると、遠目に集落らしき建物が見えた。
 おそらくゴブリンの集落だと思う。
 ゆっくりと近づき様子を窺っていると、ゴブリンの姿が見えた。
 カイリ達と顔を見合わせ作戦を立てる。

 結果、ここでもほぼ同じようなパターンとなった。
 僕の投擲からの魔法攻撃。

 まずは集落のゴブリンの数の確認だ。
 見つからないように、さらに慎重に近づいていく。
 それからしばらく時間をかけて周囲から観察し、ようやく中の確認が取れた。
 ホブゴブリン1匹にゴブリンが5匹。そのうち1匹は門番役だ。
 僕はその辺の石を拾い集め、インベントリに収納していく。
 
 そして準備が整い3人を見やると、頷きかえしてくれた。

 戦闘開始だ。

 当たればラッキーのつもりで、門番のゴブリンへ全力で投擲を行った。
 石はそのままゴブリンの胴体へめり込み、腹を押さえながら倒れこんでしまった。
 その音を聞きつけたほかのゴブリンが、何やら騒いでいる。
 そして、武器を構えながら周囲の警戒を始めた。
 確認した通り、残り4匹が外へと顔をだした。
 警戒中のゴブリン達へ再度投擲を行う。
 さすがにこれは命中とはいかず、集落の柵に強くぶつかった。
 とはいえ、集落の柵は見事に破壊されたんだけど……僕の投擲威力がおかしくなってるんじゃないか?
 
 ゴブリンはこちらに気が付き、奇声を上げながら駆けだしてきた。
 それを見た、カイリは準備しておいた土魔法を放つ。
 いつも通りの土の針だ。
 今回は時間があったため、少し範囲を広めに設定していたようで、4匹まとめて移動阻害ができたようだ。
 待ってましたとばかりに、カレンが風の刃を解き放った。
 コントロール良くゴブリン達に襲い掛かり、その首や胴を切り裂いていく。
 さすがに倒し切れなかったのか、2匹がいまだ蠢いていた。
 アスカから強化バフをもらった僕は、全力で近づき今にも襲い掛かりそうなゴブリンの首をはねた。
 転がる生首は、どこか恨めしそうであった。

 これでゴブリンはいないはず。

 のそりのそりとホブゴブリンが顔を出した。
 そして倒れるゴブリンを確認すると、威圧の咆哮を放った。
 僕は何とか耐えれたが、アスカが少し顔が青ざめていた。
 これはまずい、テンパらないといいんだけど。

 ホブゴブリンがこちらへ駆け出すのを確認した僕は、盾と剣を構え迎撃態勢を整えた。
 今だバフは効いている状態。
 二人の魔法でのフォローもある。
 これで何とかならなければ、男が廃るってもんだ。
 僕を敵と見据えたホブゴブリンは、その手にした大きな棍棒を軽々と振り回し襲い掛かる。

 少しでも威力を下げようと、カイリとカレンが魔法で牽制を行う。
 カイリは今度は土の壁を出現させる。
 ホブゴブリンは鬱陶しそうに棍棒を振り回し破壊していく。
 カレンは得意の風魔法を放ち、援護射撃を行ってくれた。
 僕の脇を通り抜けていく風の刃は、ホブゴブリンに無数の切り傷を作っていく。
 しかしホブゴブリンは、「魔法など効かぬ!!』とばかりに棍棒を振り回してくる。

 ついにホブゴブリンとの制空権が重なり合った。
 目標を僕に定めたホブゴブリンは、思いっきり振り上げた棍棒を叩きつけてきた。
 気合を入れて構えた盾に「ゴガン!!」っという音とともに衝撃が走った。
 ガードに成功したものの、左腕はしびれて使いものにならなくなってしまった。

 やっぱりこのホブゴブリンも個体差があるモンスターだ。
 前に受けた攻撃よりも段違いの威力だ。
 僕は左腕を後ろに引き、右手の剣を前に構えなおす。
 ここから先は一撃貰えば命がない決闘だ。
 だが、ホブゴブリンはにたりと笑うと、そのまま後ろへ後退していしまう。
 敢えて攻撃を仕掛けないことで、僕を挑発しているようだった。
 しかし、その隙を逃がす二人ではなかった。
 カイリが火属性+の爆発系魔法をホブゴブリンの目の前で発動させた。
 ホブゴブリンは目の前で突然爆発が発生したものでガードが間に合わず、ふらつきながら片膝をついてしまった。
 カレンはここぞとばかりに風属性+の風の刃でホブゴブリンを切り刻む。
 その数はすでに10を越していた。
 ホブゴブリンはやっとのことで立ち上がるも、その全身から体液をまき散らしていた。
 僕は瀕死の状態のホブゴブリンに全身でチャージを仕掛け転倒させると、その首に剣を突き立てた。
 というか……二人とも容赦ないな……


 ゴブリン集落の殲滅を完了した僕たちは、集落を調べて回った。
 中には特にこれといって重要なものはなかったものの、打ち捨てられた防具や武器を発見した。
 どれも、すでに使いものにはならない状態で、戦利品としての回収はあきらめた。
 ただ、僕は嫌な感じをぬぐえなかった。
 ”これ”はどこから来たものなのか……

 敢えてこの考えについて、3人に話さなかった。
 話してしまえば、今後の行動が鈍るかもしれないから。
 それに、憶測でしかないことで不安がらせる必要などないのだから。

 調査を終えた僕たちは、一度休息を挟むことにした。
 戦闘後回復魔法をかけてはもらったけど、まだ左腕が本調子とは言い難い状況だった。

 休憩がてら、先ほどの戦闘についての反省会を行った。
 出てくる内容は、やはり前衛の安定感不足と魔法依存の戦闘方法である。
 これについて、僕としても異論はなかった。
 もっと安定してゴブリンを押し留めておければ、カイリは移動阻害ではなく純粋に攻撃に参加することができるから。
 正直、僕の戦闘スタイルは遊撃型であり、壁役は荷が重い。
 このまま下層を目指すならば、とても危険であると受付の自衛官からも言われていた。
 欲を言えば、物理系遠距離攻撃のメンバーも必要である。
 カイリ達に追加メンバーをつけるとしたら

①がっちり守れるタンク。
②斥候役をこなせる遊撃手。
③物理系遠距離攻撃のダメージディーラー。

 この3つが必要そうだ。

 あれ?これって僕はいらない子では?と思ってしまったのは内緒だ。
 一応遊撃手ではあるが、斥候役をこなせるかと言われれば疑問が残る。
 このままスキルをレベルと引き換えに取りまくればできなくはないけど、その場合はレベルが彼女たちとかけ離れてしまう。
 結果、彼女たちとはパーティーを組むのは難しいと判断せざるを得ないのだ。

 さすがに、彼女たちに伝えてはいないけど。

 少しの休憩を終え、先ほどの戦闘領域へと戻ってきた。
 周囲にはドロップアイテムが転がっており、急いで回収作業を行った。

・魔石(極小) 2
・魔石(小) 1
・錆びた剣 1
・棍棒 2
・腰布(ボロ) 6

 なかなかの戦果だと思う。
 4人で分けたらそれほどでもないかもしれないが、それでも安心感を持って戦闘ができていると思う。
 やはりパーティー戦の強みだと感じた。

 全員のSP残量を確認すると、大体5割を切ったくらいだった。
 話し合いの結果、あと1集落を回ってから帰還しようということになった。



 討伐完了した集落から、歩いて20分くらいが過ぎたころだった。
 僕たちは少し小高い丘の上で、眼下のゴブリン集落を観察していた。
 見る限りではホブゴブリン1匹にゴブリンが10匹。
 くしくも、彼女たちが逃げ帰った集落と同じ規模だった。
 ただし、前回よりもホブゴブリンが強くなっている可能性がある。
 あの時もカイリと力を合わせて何とか倒すことができた。
 今回も同様にいければ問題ないが、どうなるかはわからないとしか言いようがなかった。
 3人にどうするか尋ねてみた。
 もちろんリスクも含めて、きちんと説明をしたうえで……だ。
 ただ、3人とも答えは決まっていたようだ。

「「「もちろんリベンジで!!」」」

 3人の顔を見ると、相応の覚悟を持っているようだった。
 思うに、ここで逃げてしまえばもう立ち向かえないのかもしれない。
 ならば僕は、3人を全力で守るしかない。
 そして、一つ約束をしてもらった。
 〝危険と判断したら全力で戦闘領域を離脱すること〟


 今回は準備を念入りに行った。
 スタート前に強化バフをかけてもらう。
 そして全力で投擲をしまくる。
 カイリにはゴブリンが釣れ次第、事前に準備してもらっている移動阻害用の大規模な土の針を形成してもらう。
 カレンはゴブリンが逃げ出さないように、端から風の刃で切り裂いてもらう。
 出来る限り投擲と風魔法でゴブリンの数を減らし、残った群れに対して僕が突撃。
 カイリとカレンが魔法で牽制し、殲滅を目指す。
 アスカは回復とバフの継続。
 周辺警戒をお願いした。
 うん、基本的にはこれまでとあまり変わり映えがしなかな。

 準備を終えた僕たちは高らかに宣言をする。
 
 「僕たちのリベンジマッチはこれからだ!!」
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