最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
上 下
22 / 131
第2章 リベンジ!!

022 裏切りと偽り

しおりを挟む
 僕たちは第1層を目指して移動を開始した。

 あらかた打ち合わせた通りに戦闘をすると、とても戦いやすかった。
 カイリが魔法で牽制してくれるおかげで、倒す順番を明確にしやすかったからだ。
 そもそも僕が一人で戻れるくらいのモンスターの強さなんだから、二人で動けば楽になるのは当然かなとも思えた。

 それから数度の戦闘を行い、お互いの実力を理解する事が出来た。
 正直彼女は僕よりも戦闘がうまい。
 おそらくパーティー戦の経験の違いだと思う。
 僕の動きに合わせて的確に牽制をしてくれるから。

 そして帰り道は

 ハンティングウルフ3匹
 ゴブリン2匹
 スライム7匹

 を討伐した。
 後衛がいるだけで、これほど戦闘が変わるのかと驚いた。
 ほんと、パーティーが組みたい……
 そんな思いが強くなってしまったのだった。



 そんなこんなで無事トランスゲートへ到着できた。

 二人で顔をみあわせると、どこからともなく笑顔がこぼれた。
 彼女の笑顔がとても印象的だった。
 きっとこの笑顔が彼女の本当の顔なんだと思う。
 その分だけあの剣士が許せないと感じてしまう。

 トランスゲートを抜けると、すでに日は傾いており、夕方過ぎだった。
 早く帰りたいからという思いもあり、すぐに受付窓口に顔を出した。
 そして事の顛末を受付担当者に伝えていく。
 彼女は時折涙を浮かべ、がんばって事情を説明をしていた。
 自衛官もその話を真剣に聞き、メモを残していた。

 他の自衛官に確認を取ったところ、どうやら彼女のパーティーメンバーも無事ダンジョンを脱出していたようだった。
 その話を聞いた彼女の少しほっとしたような表情が印象的だった。
 囮にされたとはいえ心配だったのだと思う。
 
 そして、彼らは今回の件について自衛官にこう説明をしていたのだ。

 ”海里が、自ら殿を買って出てくれた。そのおかげでメンバー全員が無事に帰還できた”と。

 それを聞いたカイリはその場にうずくまって涙を流していた……
 声にならない声が聞こえてきそうだった。
 それもそのはずだ、彼らの裏切りが決定的になったからだ。
 彼女の中でどこかで間違いであってほしいと願っていたのだと思う。

 僕はそっとその背中をさすって、彼女が泣き止むまで待つことにした。
 どのくらいたっただろうか、彼女も少し落ち着いたようでようやく立ち上がることができた。
 話を聞いていた自衛官は彼女から聞いた話と、先に聞いていた話の確認作業を行うということだ。
 場合によっては、後日事情聴取を行うかもしれないとのことだった。
 それとパーティーメンバーは治療の為、現在医務室にいるとのことだった。
 カイリに会いに行くのか尋ねると、今は会う気はないそうだ。
 まあ、当たり前と言えば当たり前だな。

 一通り説明を終えて買取所でドロップアイテムの換金を終えた時の事だった。
 取り分の分配についてカイリから辞退の申し出があった。
 今回助けてもらわなければ自分はここにいなかっただろうからと。
 さすがに僕も受け取れなかった。
 しかし、助けてくれたお礼だといわれてしまえば、これ以上押し付けることができなくなってしまった。

 そして帰り際に改めてお礼を言われてしまった。
 僕としてはもうお礼を受け取った以上、頭を下げられると困ってしまう。
 カイリにそれを伝えると、やっと頭を上げてくれた。
 周囲の目がとても痛かったのは言うまでもない。

「で、君はこれからどうするの?」
「あのパーティーは抜けようと思います。」
 
 カイリはそういうと、痛々しいような笑みを浮かべていた。
 当然と言えば当然かもしれないな。
 誰が好き好んで信用できない相手に命を預けなければならないのかって話だ。
 
 それから他愛のない話をしながら二人で出口に向かうと、若い探索者パーティーが医務室から出てきた。
 それを見たカイリの表情が固まっていた。

 カイリを見つけた少女二人が駆け寄ってきた。
 カイリのことを本気で心配していたようで、抱き合って涙を流していた。
 カイリも一瞬戸惑ったものの、二人の無事を改めて確認でき、二人を抱きしめて涙を流していた。
 うん、この子たちは悪い子ではないのかもしれない。

 その後ろから男の子3人がやってきて、カイリに向かって頭を下げた。
 少ししたらまた一緒に探索に戻ろうと話が出てきた。
 今回はうまくいかなかったが次は問題ないと、意味の分からない自信をのぞかせていた。
 だがカイリはパーティーに戻る気がないと告げた。
 その返答が予想外だったのか、焦ったリーダーらしき剣士が無理やりカイリの腕をつかみ連れ去ろうとした。
 さすがに嫌がるカイリを見た女の子二人も怒りをあらわにする。

 本当は介入するべきことじゃないんだろうけど、見かねた僕は嫌がるカイリを助けることにした。

 「みっともないマネはやめようか?彼女嫌がってるでしょう?」
 「おっさんには関係ないだろ!!これはだ!!部外者は黙ってろ!!」

 剣士は怒気を孕んだ声で僕を睨んでくるも、大して怖くはなかった。
 あのホブゴブリンに比べたらどうってことは無いと思えた。
 確かにパーティー間の問題だと言われればそうかもしれない。
 だが、今ここにあるのは砂上の楼閣の様な偽りのパーティーだ。
 だからこそ僕もここで引き分けにはいかなかった。

「部外者ってわけではないよ?彼女を助けたのが僕だからね?それに彼女を囮にしたのは君だろ?そんな君が戻って来いって言ったって信用できると思う?」

 僕の言葉を聞いた女の子二人は、驚きを隠せなかった。
 黒髪のロングヘアの女の子が剣士……シンかな?に詰め寄っていった。
 その表情は怒りと憎しみにあふれていた。

「ねぇ、シン!!どういうこと?カイリが自分から殿を務めたんじゃないの?!ダイスケだってそういったよね!!まさか……本気でそんなことしたの?!」

 シンと呼ばれた剣士はどうやら二人の女の子に「彼女が自ら囮になった」と説明したらしい。
 どこまでもくそ野郎だった。
 他の二人に視線を向けると目をそらしていた。
 これは確定だな。

 もう一人の女の子は、カイリを抱きしめて震えていた。
 ずっと「ごめんなさい」と小さな声で呟き、涙していた。
 カイリが自分たちのせいで死んでいたかもしれないことに気が付いたみたいだ。
 だからこそ、そこで何が起こったのか彼女たちは知らなくてはいけないと思った。

「僕が見たときは、君たちは戦闘中だった。君たちはかなりチームワークがよくて、手出しは無用と思えた。だけどゴブリンの奇襲でそこの女の子二人が気絶してしまった。そこからが問題だったんだ。そこの剣士君……えっとシンだったかな?君があの時すぐに撤退の指示を出したのはよかったと思うよ?あの状況ならその選択が一分一秒早い方が、全員の生存率が上がるから。でもね、まさか一緒に逃げていた彼女を蹴り飛ばすとは思わなかったよ。僕が駆け付けなければ彼女はあそこで死んでいた。それが事実だよ。」

 僕の話を聞いた女の子たちは泣き崩れていた。
 後ろの男の子二人はうつむいたまま震えている。
 おそらく自責の念が生まれたのだろう。
 うん、彼らは大丈夫だろうね。
 これから先必ずやり直せる。
 だけど、シンはそうはならなかった。

「嘘つくんじゃね!!俺がなんでそんなことしなきゃならないんだよ!!なあ、カレン、アスカ。こんなおっさんの言うことなんて信じんじゃねぇよ!!」
「どこまでも救えない馬鹿がいるもんだね。彼女が生きている時点で、君の発言は嘘だとばれるんだよ?それなのにまだ醜態をさらすのかい?それと、後日自衛隊から出頭要請があると思うよ?おそらく今回の件はかなり問題になると思う。覚悟はしておくといいよ。」

ドサリ

 後ろの二人が膝から崩れ落ちた。
 自分たちが犯した罪を理解したのか、顔が青ざめていた。
 シンという男の子はそれでも怒りが収まらないらしい。
 僕を睨みつけ、今にも襲い掛かろうかとしていた。

パン!!

 夜空に何かが爆ぜる乾いた音が鳴り響いた。
 シンのほほをカレンが叩いていたのだ。

「私たちはシン達を信用できない。そんな中でパーティで活動するのは無理。だから、私たちはパーティを抜ける。これは決定事項。ダイスケ、リョウ、あなた達だって同罪よ。そして私たちも同じ。カイリを生贄にしたんだから。シン、もうこれ以上失望させないで。せめて幼馴染として潔く受け入れて。」

 カレンの目には今にも零れ落ちそうな涙が溜まっていた。
 覚悟の決まったカレンの強いまなざしと相まって、悲壮感が漂っていた。
 カレンから告げられた決別の言葉に、シンはあっけにとられていた。
 おそらく自分が思い描いた結末にならなかったのだろう。
 どこまでも自分勝手な男だ。
 ダイスケとリョウと呼ばれた二人は力なく立ち上がると、シンの肩に手をやりその場を去っていった。
 何の言葉もなく……
 謝るでもなく、怒るわけでもなく。
 言葉が見つからなかったのだろう。

 二人が去るとシンは改めて僕を睨みつけて「覚えてろよ!!」と捨て台詞を吐いて立ち去っていった。

 ほんと、もう勘弁してほしい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...