後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~

華音 楓

文字の大きさ
上 下
60 / 142
第6章 落日

第60話 魔素汚染の模倣?

しおりを挟む
「ほんと!!この糸が鬱陶しい!!」

 エイミーが騒ぐのも無理はなかった。
 リヒテル小隊の面々は早朝に北門の詰め所に集合し、調査班のリズとともにランク3の立入禁止区域デッドエリアを調査していた。
 緑色の小人型機械魔デモニクスのほかにも、二足歩行の豚型機械魔デモニクス
 さらには擬態種機械魔デモニクスに似た、ぷよぷよとした軟体の機械魔デモニクスまで出現していた。
 そして、リヒテルたちが探していた昆虫型機械魔デモニクスは、すぐに見つけることが出来た。
 というよりも、立入禁止区域デッドエリア内の木や草などに無数に絡みついていたのだ。
 それを見ただけでぞわっとしたリヒテルだったが、むしろエイミーのほうが過剰に反応していた。

「ちょっと待ってね……。うん、やっぱりそうね、この糸ただの糸じゃないわ。若干だけど魔素マナを含んでいるわね。」
「本当なのリズ?」

 木の棒の先にくるくると器用にクモの糸を巻き付けると、技能スキル【鑑定】を発動させたリズ。
 その様子を若干引き気味に見ていたエイミーだったが、リズの鑑定結果に驚いていた。
 つまりこの糸は〝素材〟になるということだからだ。
 狩猟者ハンターはこれを〝素材〟として収集するだろうが、これでできた布生地が市販されたとき、抵抗なく着られる自信がエイミーには無かった。

「やはり、機械魔デモニクス化していたのか……。」
「そうとも限らないわ。リヒテル隊長も資料に目を通したのでしょ?機械魔デモニクス化というよりは〝市街地の虫の魔物化〟が正しいと思うわ。」

 リヒテルはリズの考えに納得がいった。
 必ずしも機械魔デモニクス化しているとは限らない。
 むしろ、魔素マナが世界を汚染したときには魔物モンスターがはびこっていた史実がある。
 ならば今回もそれに近い状況なのではないだろうかと考えるに至った。

「隊長、これを見てくれ。」

 クリストフが二匹のクモの死骸をもってリヒテルに近づいてきた。
 それに気が付いたエイミーはとっさにリズの後ろに隠れ、見ないように顔を背けていた。
 そんなエイミーを横に置いて、リヒテルは手渡されたクモの死骸を確認した。
 リズも気になったようで、覗き込むようにその死骸を見つめる。

「ここを見てくれ。」
「これは……どういうことだ?」

 二匹のクモの死骸には決定的な違いがあった。
 一匹は昆虫の身体を真っ二つにした生き物のような断面をしていた。
 しかし、もう一匹のほうは違った。
 中が機械仕掛けになっていたのだ。

「これで確定ね。昆虫が魔物モンスター化して、さらにもう一段階の機械魔デモニクス化をしている。つまり昆虫が一気に機械魔デモニクスになったわけではないという事ね。」
「だがこれは……魔石崩壊マナブレイクの際の魔素汚染マナコンタミネーションの生物の強制変異を立入禁止区域デッドエリア内で起こしているってことなのか?」

 クモをまじまじと確認していたリズが、確信めいてつぶやいた。
 それに反応したのはクリストフであった。
 クリストフは自慢のひげを撫でながら何か考えているようだったが、思案に余ったのか一人ため息を漏らしていた。

「これは本部へ報告をしないといけないな。みんなサンプルの回収と周辺警戒を。〝虫の魔物化〟がこのエリアだけであることを祈ろう。」
「リヒテル君……それフラグっていうんじゃない?」

 リヒテルが何の気なしに発した言葉に、エミリーが軽口をたたく。
 それを聞いていたメンバーも重苦しい空気から解放されたのか、笑みがこぼれていた。
 手分けして探し出した〝魔物モンスター化した昆虫〟と〝機械魔デモニクスかした昆虫型魔物モンスター〟をインベントリにしまうと、リヒテルたちは撤収の準備を始めた。
 だが世界はそれほど簡単ではないことを、立入禁止区域デッドエリアはリヒテルたちに突き付けてきた。

「リヒテル隊長。周囲に敵の気配が……おそらく数は10……いえ20はいるかと。」

 周辺警戒に当たっていたケントが、少し緊張気味に報告を行った。
 そしてエイミーは、驚きを隠せずにいた。
 自分の張っていた警戒網に、一切引っかかっていないからだ。
 慌てたエイミーは、近場の木に登り周囲を見渡す。
 するとかなり離れた場所に、敵の気配を感じ取ることができた。
 だがそれは、かなり注意深く探らないといけないほどの微弱なものだった。
 それを発見したケントに対し、エイミーは動揺を隠せずにいた。
 それほどまでに、自分の索敵能力に自信を持っていたのだ。

「ケントさん……よくわかりましたね……。」

 自信を無くしたのか、エイミーの声に覇気がのっていなかった。
 むしろ、今にでも膝をついてしまうのではないかと思うほどであった。

「いえ、自分の能力がそっちに最適化されているだけですから。それにエイミーさんみたいに敵を射抜いたりもできません。できるといえば先に見つけて先制攻撃を仕掛けるくらいですよ。」

 謙遜なのか自慢なのか。
 エイミーはケントの規格外さに、ただただ呆れるばかりであった。
 そんな二人と気にしてか、リチャードが二人の肩をポンと叩く。

「お二人さん、先に見付けられたことは良いことだ。早速だけど迎撃の用意をしようか?隊長、今回はどうします?」
「そうだな。ここはスタンダードで行った方が良いだろうな。リチャードが前衛守備。前衛攻撃をクリストフお願いするよ。エイミーと俺が中衛。アレックスは適時回復を頼む。最後にケントは遊撃を頼む。できればヒット&アウェイで相手方の陣形を崩してほしい。まぁ、陣形が無いようであればその場判断で任せる。」

 全員がリヒテルの指示に頷いて肯定する。
 早速準備に取り掛かるところで、ケントが何かを取り出していた。

「ん?それは?」

 ケントの持つものに興味を示したのがリズだった。
 ケントは何やら丸い物体を二つほど手にしていたのだ。

「これですか?これはいわゆるドローンってやつです。名前は無人爆撃機【煉獄】。とはいうものの、上空から援護射撃をするだけです。」

 何のことないという感じで説明するケントだったが、リズはその性能に唖然としていた。
 〝今の技術では到底作りえないもの〟だったからだ。
 確かに無人砲撃装置は作ることに成功していた。
 しかし、そこには問題があったのだ。
 できた無人機は、多脚型戦車くらいだったからだ。
 それが上空で待機するなど、夢のまた夢であった。
 一部プロペラを複数つけて浮遊に成功していたが、それは戦闘で使えるレベルではなかったのだ。

 ケントは何やらまずったと言わんばかりの表情を浮かべた。
 そんなケントをじっと見つめるリズ。
 何やら見つめあう二人に恋が芽生えるのか?とも思われそうだったが、リズが手をかけているものを見るとそうではないことがよくわかる。
 リズは無意識なのか、ケントの持つ【煉獄】に手をかけていたのだ。

 ケントは慌ててリズの手をのけると、すぐさま【煉獄】を上空へ解き放った。
 【煉獄】は鎖を解かれたかのように、一気に上空へと舞い上がる。
 どういう原理で浮いているかも検討が付かないリズは、口惜しそうにケントを睨み付けたのだった。

 それを知ってか知らずか、ケントはリヒテルに頭を下げるとすぐに行動に移した。
 ガサガサと茂みから音が聞こえると、すぐに姿が見えなくなっていた。

 腕輪のレーダーにはその位置がはっきりと確認できるので、リヒテルはあまり心配してはいなかった。
 自分たちからおおよそ50mほど離れた位置で息を殺して潜んでいるようであった。

「エイミー、あとどの位の距離なんだい?」
「1kmは切ってるわ。」

 リヒテルがエイミーの答えに頷くと、相棒の魔銃を取り出し構えた。
 今回取り出したのは2丁の拳銃だった。
 これはマリリンとリンリッドのアドバイスによるもので、集団戦では誤射を防ぐために近距離射撃がメインになるだろうという理由からだ。
 本来はアドリアーノのがいるため中・長距離の戦闘をメインとしていたが、アドリアーノが抜けケントが加入したことにより、近・中距離が主戦となったのだ。

 リヒテルは魔石マナコアを手に、少し集中をあげる。
 2丁の拳銃に【武装属性付与ウェポンエンチャント】を発動させる。
 付与したものは【追尾】。
 これは、リヒテルが狙い定めた敵を間違いなく撃ち落とすことを目的に付与されたものだ。
 誤射を減らす意味も含まれているが、リヒテルの腕であればそれほど問題となるものではなかった。

「来るわ!!」

 エイミーの叫び声とともに、戦いの火ぶたが切って落とされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...