後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~

華音 楓

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第5章 壁の先にあるもの

第54話 その先へ

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 深く深く集中していくリヒテル。
 するとどうだろうか、射撃管制補助装置バイザーから聞こえる音声が少し間延びしている……
 射撃管制補助装置バイザーの性能が、リヒテルの時間軸についていけなくなっていたのだ。
 射撃管制補助装置バイザーからのアシストをあきらめたリヒテルは、さらに集中をあげていく。
 周りを見れば、ほぼ止まっているように思えた。

 選んだ属性は加速・誘導・徹甲・滞留・放電。
 だが、リヒテルに何か予感めいたものが働いていた。
 さらに集中をあげていく。

「これは……もしかして……やってみるか……」

 ぼそりとつぶやくと、リヒテルはさらにを試みた。

 今まで誰も行ったことのない、
 魔砲使いガンナーは際限なく属性を付与できると
 しかし、そこに到達したものはこれまで誰もいなかった。
 付与しようとしてところで、体内の魔石マナコアが拒絶反応を起こすのだ。
 そのため、5つが人間の限界点だと長らく言われてきた。
 そして、リヒテルもそう思っていた。
 しかしここにきて、それを超えていける気がしたのだ。

 リヒテルが選んだ属性は範囲収束。
 おそらくこういったこともできるだろうと思っていたが、戦い方を考えるとなかなか試すこともできずにいた。
 だからこその選択であった。

 そして6つ目の光の円環がリヒテルの魔砲へと構築されていく。

「これが熟練マスターってことなんだろうか……。いや、今はそれどころじゃないな。」

 リヒテルの時間軸が、周囲の時間軸と重なり合う。
 急速に手持ちの魔石マナコアと周囲から魔素マナを食らっていく魔砲。
 不快音が鳴り響く中、リヒテルは狙いを定める。

「エイミー!!奴の核の位置は!?」
「待って……うん、おそらく下半身にあるわ!!」

 こちらに向かってくる大型機械魔デモニクス
 ビル4階相当の巨体が、その移動と共に大地を揺るがす。
 既に見える上半身は、人型ともとれるものだった。
 右の手には巨大な剣を掲げていた。
 左の手には何かが握られていた。
 しかしリヒテルたちが陣取っている場所からはそれが何なのかまでは確認することができなかった。
 ギラリと睨みつける機械魔デモニクスの視線と、狙い澄ましたリヒテルの視線が空中で交錯する。

「さあ、まずは最初の一当て!!これでも……」
『攻撃中止!!攻撃中止!!機械魔デモニクスが人を連れています!!』

 リヒテルは、かけた指を引き金から慌てて離した。
 射撃管制補助装置バイザーから見える視界にはそれらしいのもが見えない。

「それは間違いないの?!」
『はい!!鎖につながれた人らしき影が複数確認って、やめろ!!』

 突然叫び出した監視塔の監視官。
 何事かと思うと、さらに叫び声が聞こえる。

『総員退避!!』

 その後聞こえる激しい爆発音。
 リヒテルたちがいる場所からさほど離れていない場所へ、機械魔デモニクスからの砲撃が命中したのだ。
 そのためか熱風や衝撃がリヒテル小隊を襲った。

「攻撃か!!」
「みんな無事?」

 土埃が舞う中で周囲に目を配ると、またも血の匂いが風に乗って流れてきた。
 そして確信した。
 連れられた人々は砲撃の弾丸だということを。

「くそ!!あの外道めが!!」
「どうするよリヒテル。このままでは巻き込むこと確定だぞ?」

 クリストフは顔を顰めながら、リヒテルに指示を仰ぐ。
 おそらく総攻撃を仕掛ければ、大型機械魔デモニクスを討伐又は撃退することは可能だろう。
 むしろリヒテルも、魔砲をもってすればそれが可能であろうと確信していた。
 しかし、それに伴って起こる悲劇……巻き込まれた人々は間違いなくその命を散らすことになる。

「どうにかしてあの繋がれた人たちを解放できれば……」
「そこは頼ってほしかったなリヒテル。」

 聞こえてきたのは友の声。
 第3中隊が増援に来てくれたのだ。

「さすがに第1中隊……ってよりお前の小隊だけで、あれをどうこう出来るわけねぇ~だろうがよ……。ほんとお前は馬鹿か?」

 あきれた様子で悪態をつくガルラ。
 待機命令が出ていたはずの第3中隊がなぜここにきているのか、リヒテルには理解できなかった。
 それの答えをもたらしたのがザック・川西だった。

「辰之進からアドリアーノ中隊が補給準備段階だから、防衛に行ってほしいって話が来たんだが……。来てみりゃ戦闘開始してやがるし、どうしたもんかと持ったぞ?それにしてもリヒテル……仲間を犬死させる気か?」

 ザックからもたらされる冷たい視線が、リヒテルに突き刺さる。
 その言葉に自分自身冷静ではなかったと思いなおしていた。
 だが、そのまま放っておけるほどリヒテルはドライな性分ではなかったのだ。

「だが……その心意気、俺は好きだぞ?辰之進も同じだ。だから俺たちが来た、だろ?ガルラ。」
「ちょ、隊長!!」

 ガルラは、ザックからの突然のカミングアウトに焦りを覚える。
 リヒテルを見るも少し照れ臭い気がしてならなかった。

「というわけでザック中隊、これよりリヒテル小隊の援護に回る。各自戦闘準備完了後、機械魔デモニクスとの距離を詰める。監視塔からの情報だと、人質を取っている状況だ。早急に人質を解放する。あとはリヒテルが何とかする。そうだろリヒテル!!」
「はい!!」

 リヒテルは、ザックの作戦に力強く答える。
 仲間たちも同じように頷いていた。

「ザック中隊出る!!接敵後即時左右展開し、ヘイトを稼ぐぞ!!後方支援部隊は各自判断で攻撃を行う様に!!遊撃隊は隙を見て人質を解放する!!行くぞ!!」

 ザックの掛け声で第3中隊が戦場へと躍り出る。
 その姿は一つの生命体であるかの如く統率がとれている。
 それほどまでにザックの指揮能力が優れており、さらには訓練の賜物でもあった。
 
 そしてすぐに戦闘が開始される。
 轟音と悲鳴。
 戦闘領域に鳴り響く激しい戦闘音フルオーケストラ
 指揮者ザック指揮棒大剣が振り回されるたびに、皆が舞い踊る。
 緩急織り交ぜた巧みな指揮は、まさに協奏曲コンチェルト
 リヒテルは、素直にザック中隊のすばらしさに魅入られていた。
 自分にはあんな芸当は出来ない。
 だからこそ、そこが戦闘領域であることを忘れさせられていた。



 しばらくしてザックから通信が入った。

『リヒテル!!人質の回収完了した!!これから10カウントで退避完了させる!!お前がとどめを刺せ!!』
『しくんじゃねぇ~ぞ!!』

 友からのヤジに、二マリと笑みを浮かべるリヒテル。
 カチャリと魔砲を構えなおす。
 改めて展開を開始した光の円環が、魔砲陣マナバレルを構成していく。
 ふと、リヒテルは気が付いた。
 辺りに静寂が訪れていることを。
 周りでは仲間たちが心配そうに見つめていた。

『リヒテルいまだ!!』

 ザックの声に呼応するように引き金を引いたリヒテル。
 その魔砲陣マナバレルから一筋の光の帯が大型機械魔デモニクスに到達する。
 反応が遅れた機械魔デモニクスは、無防備に己の弱点を晒していた。
 上半身の心臓付近ではなく、下半身の……8本多脚型の胴体部分。
 そこに向かって魔弾が飛んでいく。
 あまりの速さに一筋の光となっていたのだ。

 後に見ていた隊員たちが証言をしていた。
 あれは人が扱う兵器の概念を嘲笑うかの様なものだと。

 着弾し胴体に大穴を開けてもなお突き進む魔弾。
 さらにそこから変化が起こっていく。

 ある程度の深さまで潜った魔弾は、突如その大きさを増やしてく。
 機械魔デモニクスは、体内に停滞している魔弾異物に不快感をあらわにする。
 手にした鎖には誰もおらず、その鎖を怒りに任せて振り回す。
 そのたびに土埃が舞い、視界がふさがれていく。

Gogyaaaaaaaaaaaaaaaa!!

 あまりの不快感に、叫び暴れまわる機械魔デモニクス
 ほどなくして次の変化が開始する。
 バリバリと音を立てて、青白い閃光が周囲へとまき散らされる。
 激しい放電現象は、機械魔デモニクスの躯体が金属製だったからなのかもしれない。
 激しいスパークが周囲を問答無用で焦がしていく。
 その激しさからなのか、空気が焼ける匂いがあたりに立ち込めてきた。
 それでもなお終わろうとしない放電現象に、機械魔デモニクスもたまらず倒れこみのたうち回る。

 そして最後の変化が訪れた。
 魔弾を中心とした球体が機械魔デモニクスを包み込んだ。
 いまだ続く放電現象は、その球体に遮られ、外へと漏れ出すことはなかった。
 そして徐々に縮まっていく球体に押し込められていく機械魔デモニクス
 逃れようと暴れまわるも、放電現象で本体の躯体が思う様に動かず、脱出することはかなわなかった。

 そして最後一塊の鉄塊にまで圧縮され、魔弾は効力を終了させたのだった。

 唖然として見つめていた隊員たち。
 ザックたちも同様であった。
 ガルラだけは、リヒテルだからと諦めの表情を浮かべていたのだった。
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