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第4章 少年は昇り行く
第24話 鍛冶師ラミア
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「まあいいわ。ここへ来たのもなんとなく察してるしね。リンリッドの坊やでしょう?ここを教えたのは。二人の師匠をしているみたいじゃないの。えらくなったわ……ね‼」
コン‼
最後の言葉とともに金属音が響き渡る。
そこには頭を抑えてうずくまるガルラの姿があった。
ラミアは蔑んだ目でガルラを見やると、フンと鼻を鳴らしようやくガルラから降りたのだった。
「私を見た途端に品定めするように視姦したんだからその程度受け入れなさい。全く下品で仕方がないわね。その点リヒテル君は初心そうで合格よ。」
今だ若干混乱中のリヒテルの顎に向けて煙管を伸ばし、ニヤリと微笑むラミア。
見た目に反した妖艶さを醸し出すラミアに、リヒテルはひきつった顔で答えるしかなかったのであった。
「で、要件は武具の購入でしょ?良いわ、見繕ってあげる。今使っている武器を出して頂戴。」
スタスタとリヒテルの横を通り過ぎると、ラミアはカウンターに座り直し、店主然とした姿を見せた。
それは堂にいっていた。
やっと動揺から立ち直ったリヒテルは、今だ痛みでうずくまるガルラを立ち上がらせて本題にはいることにした。
「こいつの武器を見繕ってもらえますか。ってほら、ガルラ。剣を出す。」
リヒテルに促されながら、ガルラは床に倒れていた愛剣をカウンターの上においた。
既にところどころヒビが入っており、いつ折れてもおかしくないことは素人目にもよく分かるものだった。
その剣を見たラミアは顔をしかめ、何度も剣とガルラに視線を移した。
最後は何か呆れたように、剣を触り慈しむように撫でていた。
「こんなになってまで主人を守るとはね……。お前もよく頑張ったわね。お疲れ様……ここでもうお休みなさいな……」
ラミアが剣にそう語りかけると、緊張の糸がキレたとでも言うのか、剣のヒビが次第に広がっていき、ついには砕けてしまったのだ。
その様子を見ていたガルラは意味がわからなかった。
さっきまでそこにあった愛剣が、変わり果てた姿になったのだから仕方がない。
あっけにとられているガルラをよそに、ラミアは話を続けた。
今までどんな戦い方をしたのか。
どうして剣がこんな状態になったのか。
そのほかにも剣の長さや重さ、重心など、ガルラの好みを事細かく聞いていく。
「なるほどね。うん、わかったわ。この子に免じてこの子を混ぜ込んで造ってあげるわ。そうね……うん、30万ってところかしら。」
駆け出しのリヒテルとしては高額だと感じたが、ガルラはその金額に即応じた。
その潔さに一瞬目を丸くしたラミア。
その後すぐに目を細め、何か優しい視線へと変わっていた。
ガルラとしては愛剣を素材として使ってくれるなら安いものだと考えていた。
それだけ愛着のある剣だったのだ。
リヒテルには話していなかったが、この剣はロイドに最初に紹介してもらった武器屋の店主のイチオシの剣だった。
当初は高額すぎて買うことが出来なかったが、狩猟免許証3に上がった際についに購入することが出来たのだ。
ロイドとの約束でも有った剣を手に入れ、さらなる高みを誓ったのだった。
しかしその剣も、この前の酷使で見るも無惨な姿へと変えてしまった。
ガルラは表情には出さなかったものの、己の未熟さにヘドが出そうであった。
その後悔の念が即断へと向かわせたのだ。
「ついておいで。ガルラの剣の再誕よ。」
布袋にかき集められた剣の残骸を持って、ラミアは店の奥の工房へと移動した。
軽々と持ち歩くラミアにリヒテルは驚きを隠せなかった。
それがどれだけの重量があるか知っていたからだ。
ラミアの後をついて歩くリヒテルとガルラ。
ガルラの表情には一抹の不安が見て取れた。
しばらく石畳の通路を歩くと、前方からむせ返るほどの熱気が襲ってきた。
中からは金属の叩きつける音や、職人と思われる怒号が聞こえてくる。
戦場と言われても納得できてしまいそうな雰囲気がそこには有った。
重厚な鉄の扉を開けると、そこにはいくつもの機械や素材が所狭しと置かれていた。
見たこともない機械も並んでおり、何に使うかはリヒテルにはわからなかった。
そんな作業場で職人たちがバタバタと忙しそうに作業を行っていた。
金属に向かうその姿勢はまさに職人であり、真剣そのものだった。
その空気に飲まれたのか、リヒテルとガルラは言葉を失った。
それほどまでの緊張感だったのだ。
「お、親方。早かったっすね。」
「手を止めんじゃないよ‼鉄が泣いてるだろ‼」
一人の青年がラミアに声をかけるも、ラミアは一喝し作業に戻らせた。
青年は一瞬ビクッとしながらも納得してなのかすぐに作業に没頭し始めた。
青年は一心不乱に金槌を振るう。
そのたびに手にしていた金属塊が姿形を変えていく。
その姿に魅入られたリヒテルとガルラは、食い入るように作業を見つめていた。
カンキンコン
カンキンコン
カンキンコン
何度も何度も青年の手にした金槌が振り下ろされる。
そして最初白を思わせる色をしていた金属は徐々に朱となり、そして黒く変わる。
シュコシュコシュコ
そして青年は黒く変わった金属をまたも炉に焚べる。
金属はまた熱を帯び白く変わる。
カンキンコン
カンキンコン
カンキンコン
何度も何度も繰り返される作業。
そして終わりは訪れた。
キン……
最後の一振りを終えた青年は納得したのか、ついに手にした金槌を工具台へと戻した。
全身から滴り落ちる汗が作業の過酷さを物語っていた。
よく見ると全身が筋肉で覆われており、戦士としても一流であることが伺えた。
「んお?何だ見られてたのか。いやはやお見せ出来る程の物でもないんですけどね。」
青年はそう言うと照れくさそうに笑っていたのだった
ラミアは出来上がったばかりの剣を手に取ると、品定めをするかのようにじっくりと観察していた。
そして出来栄えに納得したようで、優しくその剣を扱って青年へと返したのだった。
「70点。合格だよ。後は焼入れと研ぎに出しな。」
「ありがとうございます。」
青年は心底嬉しそうに受け取ると、ダッシュでその場を後にした。
別な作業場所へ移動したようで、奥からは全力の叫びが聞こえてきた。
「全く……70点だっていったろうに。まだまだだねあいつも。あら、つい口が悪くなってしまったわね。とまあ、こんな感じの作業場よ。これから作業に移るけど、今のとはちょっと違うから驚かないでいてほしいかな。」
ラミアはそう言うとウインクを交えて冗談めかして話を進める。
更に作業場の奥に進むと、新しい扉が姿を現した。
ここが目的地だったようで、ラミアが扉に手をかざすと扉が淡い青色に輝く。
なにかの仕掛けが施されたのか、光が落ち着くとともに扉が左右へと分かれて行く。
「これは防犯対策よ。秘密ってわけじゃないけれど、貴重な資材とかもあるからね。盗まれても扱える人間は限られているわ。まあ、流石に値がはるものだからこうして防犯対策をしているのよ。」
そう言いつつラミアは部屋へと足を踏み入れた。
リヒテルとガルラも同じように中へと入っていった。
中は先程までとうってかわって、静かで厳かな雰囲気が漂っていた。
部屋はすべて石造りで覆われており、中央には作業台の様なものが有った。
周囲の壁に設置された棚は資材で埋め尽くされていた。
その中にまリヒテルも見覚えのあるものもあり、多種多様な鉱石とは異彩を放っていた。
「もしかしてラミアさんは【機械魔練成師】なんですか?」
「そうよ。【金属加工】【再精錬】のダブルを授かったんだけど……。まあ、リンリッドと同じ穴の狢だね。とりあえず、ガルラ。あんたの望みを強くイメージして。祈りがあんたの相棒をより強くしてくれるわ。」
ラミアの言葉に半信半疑のリヒテルだったが、ガルラは言われるがままに祈りを込め始めた。
片膝をつき、胸の前で手を組む。
それを見たラミアは作業へと取り掛かったのだった。
コン‼
最後の言葉とともに金属音が響き渡る。
そこには頭を抑えてうずくまるガルラの姿があった。
ラミアは蔑んだ目でガルラを見やると、フンと鼻を鳴らしようやくガルラから降りたのだった。
「私を見た途端に品定めするように視姦したんだからその程度受け入れなさい。全く下品で仕方がないわね。その点リヒテル君は初心そうで合格よ。」
今だ若干混乱中のリヒテルの顎に向けて煙管を伸ばし、ニヤリと微笑むラミア。
見た目に反した妖艶さを醸し出すラミアに、リヒテルはひきつった顔で答えるしかなかったのであった。
「で、要件は武具の購入でしょ?良いわ、見繕ってあげる。今使っている武器を出して頂戴。」
スタスタとリヒテルの横を通り過ぎると、ラミアはカウンターに座り直し、店主然とした姿を見せた。
それは堂にいっていた。
やっと動揺から立ち直ったリヒテルは、今だ痛みでうずくまるガルラを立ち上がらせて本題にはいることにした。
「こいつの武器を見繕ってもらえますか。ってほら、ガルラ。剣を出す。」
リヒテルに促されながら、ガルラは床に倒れていた愛剣をカウンターの上においた。
既にところどころヒビが入っており、いつ折れてもおかしくないことは素人目にもよく分かるものだった。
その剣を見たラミアは顔をしかめ、何度も剣とガルラに視線を移した。
最後は何か呆れたように、剣を触り慈しむように撫でていた。
「こんなになってまで主人を守るとはね……。お前もよく頑張ったわね。お疲れ様……ここでもうお休みなさいな……」
ラミアが剣にそう語りかけると、緊張の糸がキレたとでも言うのか、剣のヒビが次第に広がっていき、ついには砕けてしまったのだ。
その様子を見ていたガルラは意味がわからなかった。
さっきまでそこにあった愛剣が、変わり果てた姿になったのだから仕方がない。
あっけにとられているガルラをよそに、ラミアは話を続けた。
今までどんな戦い方をしたのか。
どうして剣がこんな状態になったのか。
そのほかにも剣の長さや重さ、重心など、ガルラの好みを事細かく聞いていく。
「なるほどね。うん、わかったわ。この子に免じてこの子を混ぜ込んで造ってあげるわ。そうね……うん、30万ってところかしら。」
駆け出しのリヒテルとしては高額だと感じたが、ガルラはその金額に即応じた。
その潔さに一瞬目を丸くしたラミア。
その後すぐに目を細め、何か優しい視線へと変わっていた。
ガルラとしては愛剣を素材として使ってくれるなら安いものだと考えていた。
それだけ愛着のある剣だったのだ。
リヒテルには話していなかったが、この剣はロイドに最初に紹介してもらった武器屋の店主のイチオシの剣だった。
当初は高額すぎて買うことが出来なかったが、狩猟免許証3に上がった際についに購入することが出来たのだ。
ロイドとの約束でも有った剣を手に入れ、さらなる高みを誓ったのだった。
しかしその剣も、この前の酷使で見るも無惨な姿へと変えてしまった。
ガルラは表情には出さなかったものの、己の未熟さにヘドが出そうであった。
その後悔の念が即断へと向かわせたのだ。
「ついておいで。ガルラの剣の再誕よ。」
布袋にかき集められた剣の残骸を持って、ラミアは店の奥の工房へと移動した。
軽々と持ち歩くラミアにリヒテルは驚きを隠せなかった。
それがどれだけの重量があるか知っていたからだ。
ラミアの後をついて歩くリヒテルとガルラ。
ガルラの表情には一抹の不安が見て取れた。
しばらく石畳の通路を歩くと、前方からむせ返るほどの熱気が襲ってきた。
中からは金属の叩きつける音や、職人と思われる怒号が聞こえてくる。
戦場と言われても納得できてしまいそうな雰囲気がそこには有った。
重厚な鉄の扉を開けると、そこにはいくつもの機械や素材が所狭しと置かれていた。
見たこともない機械も並んでおり、何に使うかはリヒテルにはわからなかった。
そんな作業場で職人たちがバタバタと忙しそうに作業を行っていた。
金属に向かうその姿勢はまさに職人であり、真剣そのものだった。
その空気に飲まれたのか、リヒテルとガルラは言葉を失った。
それほどまでの緊張感だったのだ。
「お、親方。早かったっすね。」
「手を止めんじゃないよ‼鉄が泣いてるだろ‼」
一人の青年がラミアに声をかけるも、ラミアは一喝し作業に戻らせた。
青年は一瞬ビクッとしながらも納得してなのかすぐに作業に没頭し始めた。
青年は一心不乱に金槌を振るう。
そのたびに手にしていた金属塊が姿形を変えていく。
その姿に魅入られたリヒテルとガルラは、食い入るように作業を見つめていた。
カンキンコン
カンキンコン
カンキンコン
何度も何度も青年の手にした金槌が振り下ろされる。
そして最初白を思わせる色をしていた金属は徐々に朱となり、そして黒く変わる。
シュコシュコシュコ
そして青年は黒く変わった金属をまたも炉に焚べる。
金属はまた熱を帯び白く変わる。
カンキンコン
カンキンコン
カンキンコン
何度も何度も繰り返される作業。
そして終わりは訪れた。
キン……
最後の一振りを終えた青年は納得したのか、ついに手にした金槌を工具台へと戻した。
全身から滴り落ちる汗が作業の過酷さを物語っていた。
よく見ると全身が筋肉で覆われており、戦士としても一流であることが伺えた。
「んお?何だ見られてたのか。いやはやお見せ出来る程の物でもないんですけどね。」
青年はそう言うと照れくさそうに笑っていたのだった
ラミアは出来上がったばかりの剣を手に取ると、品定めをするかのようにじっくりと観察していた。
そして出来栄えに納得したようで、優しくその剣を扱って青年へと返したのだった。
「70点。合格だよ。後は焼入れと研ぎに出しな。」
「ありがとうございます。」
青年は心底嬉しそうに受け取ると、ダッシュでその場を後にした。
別な作業場所へ移動したようで、奥からは全力の叫びが聞こえてきた。
「全く……70点だっていったろうに。まだまだだねあいつも。あら、つい口が悪くなってしまったわね。とまあ、こんな感じの作業場よ。これから作業に移るけど、今のとはちょっと違うから驚かないでいてほしいかな。」
ラミアはそう言うとウインクを交えて冗談めかして話を進める。
更に作業場の奥に進むと、新しい扉が姿を現した。
ここが目的地だったようで、ラミアが扉に手をかざすと扉が淡い青色に輝く。
なにかの仕掛けが施されたのか、光が落ち着くとともに扉が左右へと分かれて行く。
「これは防犯対策よ。秘密ってわけじゃないけれど、貴重な資材とかもあるからね。盗まれても扱える人間は限られているわ。まあ、流石に値がはるものだからこうして防犯対策をしているのよ。」
そう言いつつラミアは部屋へと足を踏み入れた。
リヒテルとガルラも同じように中へと入っていった。
中は先程までとうってかわって、静かで厳かな雰囲気が漂っていた。
部屋はすべて石造りで覆われており、中央には作業台の様なものが有った。
周囲の壁に設置された棚は資材で埋め尽くされていた。
その中にまリヒテルも見覚えのあるものもあり、多種多様な鉱石とは異彩を放っていた。
「もしかしてラミアさんは【機械魔練成師】なんですか?」
「そうよ。【金属加工】【再精錬】のダブルを授かったんだけど……。まあ、リンリッドと同じ穴の狢だね。とりあえず、ガルラ。あんたの望みを強くイメージして。祈りがあんたの相棒をより強くしてくれるわ。」
ラミアの言葉に半信半疑のリヒテルだったが、ガルラは言われるがままに祈りを込め始めた。
片膝をつき、胸の前で手を組む。
それを見たラミアは作業へと取り掛かったのだった。
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