後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~

華音 楓

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第4章 少年は昇り行く

第21話 おのぼりさん?

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「すげ~~~~~!!」
「何子供みたいなことしてんだよ。」

 リヒテルは昇級試験を受けたものの飛び級とはいかず、狩猟免許証ハンターランクのランク2へ上がることが出来た。
 これは討伐記録からもたらされたもので、正直な話リンリッドの修行の段階でランク2は確定していたも同然だったのだ。
 そんなリヒテルは今、リンリッドとガルラとともに帝都へと向かう車両の中にいた。
 旧世代機械技術ロストテクノロジー※LT時代のバスという乗り物を発掘し、新世代機械技術ニュージェネレーションテクノロジー※NGTを使って改良・改修した乗り物である。
 動力には魔素発電装置マナジェネレーターが使用されており、発生した電力によってモーターを稼働させている。

ーーー閑話休題ーーー

 そしてバスに揺られること2日。
 リヒテルは産まれた街を出て、ついに帝都へとたどり着いた。
 その間には色々な出来事が発生していた。
 移動の車列には狩猟者ハンターも護衛についており、移動用のバスが6台と護衛用の車両が4台の計10台なっていた。
 別段これは不思議ではなく、当たり前の光景でもあった。
 この時代野党へと見をやつした者たちもおり、移動の護衛は必須である。
 己の命が軽い世界。
 それがこの世界だった。

 目の前には広がるのは広大な黄金色の小麦の農地と、それを貫く真っ直ぐな舗装路。
 その先にそびえ立つは街一つ囲む高い壁であった。
 この壁は今は立入禁止区域デッドエリアが囲まれているが、戦況が落ち着く前は生活可能区域リビングエリアのほうが安全確保のために囲まれていたのだ。
 そしてその名残がこの高い壁だ。
 壁には東西南北に大きな門が設置されており、その門も今ではNGTの発展によって証明書さえ通せば自動で開門してくれるようになる。
 バスの乗車時点で乗客は身元確認も行われているため、、身元確認はパスされていた。
 運転手が次々に証明書を提示し、車列は滞ることなく帝都内へと入っていったのだった。
 
「すげ~‼すげ~‼すげ~‼」
「リヒテル落ち着け。田舎モン丸出しだぞ?」

 バスから降りたリヒテルは、興奮冷めやらぬ様子で町並みを見回していた。
 今まで見たことのない高い建物。
 きらびやかな街並み。
 行き交う大勢の人々。
 どれを取ってみてもリヒテルにとっては初めての経験だった。
 あまりの興奮のために語彙力がかなり低下していた。

「ガルラだって初めてだろ?何大人ぶってんだよ?」
「俺は大人なんだ。いいか、ここでは大人しくしてないと恥かくぞ?」

 リヒテルは少し不満げにガルラに話しかけた。
 ガルラはガルラで視線が泳いでいた。
 至るところに目を奪われそうになり必死で耐えていた。

「あ、きれいなお姉さんがこっちに手を降ってるよ?」
「まじかよ!!」

 リヒテルは悪戯心を刺激されたのか、仕返しとばかりにガルラに話しかけた。
 リヒテルの言葉に即反応したガルラは、リヒテルが指差す方に視線を向ける。
 しかしそこにはなんとも言えない感じに頭をカクカクと揺らす人形が佇んでいた。

「くっそ‼おいリヒテル、てめぇ~‼」
「カッコつけるガルラが悪いんだよ。」

 そんなこんなでじゃれ合う二人に呆れ返るリンリッド。
 流石にこれ以上は悪目立ちすると感じたのか、二人に向けて殺気を放つ。
 殺気を当てられた二人は一瞬ブルリと震えると、大量の汗を流し始めた。
 ゆっくりと、油の切れた機械のように頭だけ振り返ると、超不機嫌なリンリッドの姿があった。
 二人はやっちまったと感じたのか、一瞬にして縮こまってしまったのだった。

「全く何をやってるのかねぇ~。ふたりともさっさと狩猟者連合協同組合ハンターギルド帝都支部へ顔を出しに行くぞ。」
「「はい。」」

 二人の弱々しい返事が、冷えた空気を纏う帝都の街並みへと消えていったのだった。



ピッ
プシュ~

 リンリッドが狩猟免許証ハンターランクカードをかざすと、自動で会館のドアが開閉した。
 恐る恐るという感じでリヒテルとガルラも真似をして狩猟免許証ハンターランクカードを読み取り機にかざす。
 読み取り機の画面には氏名とランクが表示され、本人確認がされるようになっていた。

 今いる場所は狩猟者連合協同組合ハンターギルド帝都支部の狩猟者連合協同組合ハンターギルド会館である。
 リヒテルが今まで見てきた狩猟者連合協同組合ハンターギルド会館と比べても、張り合うのもバカバカしく思えるほどの大きさであった。
 入り口は鉄の扉で出来ており、建物自体もおそらくコンクリートで覆われている。
 どうやらこれも昔の名残で避難所としての機能も有しているようだった。
 そして壁には至るところに弾痕が残っていた。
 修繕で直せるだろうが、おそらくこのまま残して後世へ伝える目的もあるようだった。

 そんな狩猟者連合協同組合ハンターギルド会館の中に入ると、これまた今まで見たことのない設備が所狭しと並んでいた。
 受付窓口がいくつも並び、狩猟者ハンターたちが何か相談したり談笑したりしていた。
 中には泣き出す者もおり、この窓口一つとっても物語があるのだろうとリヒテルとガルラは感じていた。

「ほれこっちだ。この機械で移動届けを出すぞい。」

 リンリッドが狩猟免許証ハンターランクカードをかざすと、機械が反応しすぐさま処理が開始される。
 数秒カードに光が当たると、次第に光は弱くなり、最後は消えてしまった。
 リンリッドはカードを持ち上げるとリヒテルたちに向き直った。

「これで登録完了だぁ~ね。二人もさっさとやったやった。」

 リンリッドに促されるように二人も機械に狩猟免許証ハンターランクカードをかざし、移動登録を済ませたのだった。
 次に向かったのは受付窓口であった。
 そこには何人もの職員が忙しそうに動き回っていた。
 リンリッドはその中のひとりを捕まえると何やら話し込み始めた。
 その職員は恭しくリンリッドに頭を下げると、すぐに奥の部屋へと入っていった。
 それから待つこと少し。
 奥の部屋から何やら恰幅の良い男性が姿を現したのだ。
 その男性の姿を見たガルラは一瞬であったがなぜが驚いた顔を浮かべていた。

「老師‼来るなら来ると連絡を入れてください‼全くいつもいつも……」
「あぁ~、すまんすまん。今回は急だったからのぉ~。後日改めて顔をだすわい。あやつにもそう伝えてくれ。」

 何やら親しげに話を始めたリンリッド。
 その態度に呆れ顔の男性が、ふとリヒテルとガルラに視線を向けた。
 その視線はやはり品定めでもしているかのようなもので、リヒテルは少しだけ不快を顕にした。

「おっとすまんな。警戒させたようだ。老師、彼らは弟子でいいんですね?」
「ん?あぁ~そうだなぁ~。うん、そっちのちっこいやつは弟子で間違いないかのぉ~。そっちのでかいのはついでだ。」

 その言葉に反応したのはガルラだった。
 憤りを顕にしながらリンリッドへと食って掛かったのだ。

「ちょっとリンリッドさん。そりゃねぇ~だろうがよ。こいつと一緒にあんたの地獄につきあっただろうがよぉ~。」

 そう話すガルラの言葉は次第に弱々しくなり、ついには震えだした。
 リヒテルもまた同じでガルラの言葉で地獄の修行を思い出して震えていた。
 その様子を見た男性は、なるほどと言わんばかりに納得の表情を浮かべていた。

「で、老師。そろそろ紹介してもらえますか?」
「すまんすまん。そのちっこいのがリヒテル・牧苗。ロイド・牧苗の倅だぁ~ね。で、こっちのでかいのがガルラ。まあ、言わなくてもわかるわな。」

 リヒテルはリンリッドからの紹介を受けて頭を下げた。
 男性はどこか懐かしそうにリヒテルを見つめ、手を差し伸べてきた。

「私はこの狩猟者連合協同組合ハンターギルド帝都支部を預かる組合長ギルドマスターのロバート・ウィリアム・テイラーだ。」
「リヒテル・牧苗です。宜しくおねがいします。」

 目の前の人物が組合長ギルドマスターだとは思っていなかったリヒテルは、驚きながらも握手に応じた。
 その手は今だ引き締まっており、見た目の体格とは全く似ても似つかなかった。

「ガルラ・グリゴールです。当時はその……。」
「あの事故以来か……。風のうわさでは聞いていたよ。よく頑張ってここまで登ってきた。当時がランク2に上がったところだったかな?」

 ガルラは申し訳無さそうに顔を歪めていた。
 その表情には後悔が伺い知れる。
 ロバートもまた当時を思い出したのか、同じように後悔の念に掴まれてしまっていた。

パンパンパン‼

 そんな空気を察してかリンリッドが手を打ち鳴らし、自身に注意を強制的に向けさせたのだ。

「その話はあとにしようかねぇ~。それよりもロバート、頼みがあるんだがいいかいのぉ~?」
「良いも悪いも拒否権なんて無いでしょうに……」

 ニヤリとしながらロバートを見つめるリンリッド。
 ロバートもまた、諦めたように要件を伺った。

「リヒテルの坊主も狩猟免許証ハンターランク2に上がったんでのぉ~、丁度いいのをみつくろってほしいんじゃよ。」
「わかりました。明日までには見繕います。むしろそのまま森に入ってもらってもいいですよ。どうせ狩っても狩っても溢れ出てくるんですから。今じゃ依頼受けるほうが少ないですから。」
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