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第3章 旅立ちの時
第19話 ランク2の森
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ギャーギャーと野鳥と思しき生物が鳴き声を上げる。
鬱蒼と生い茂る森林をかき分けてリヒテルは森へと入っていく。
今いる場所はすでに立入禁止区域ランク2の森。
リヒテルが手にしているのは普通の拳銃。
と言っても改造は施されており、通常であれば9MMフルメタル・ジャケット弾を打ち出すところを7MM徹甲弾を打ち出せるようにしてあった。
連射性能は良くないものの、護身用としては十分な威力を発揮する。
しかし、機械魔相手では心許ないのは代わりわなかった。
できることならば早めに低ランク機械魔を一体倒して魔石を回収したいところであった。
しかし、そうはうまくはいかず、なかなか見つけることが出来ないでいた。
そのせいもあってまだ1時間も進んでいないのにも関わらず精神はかなりすり減ってきていた。
「やばいな……早めに魔石をある程度集めたかったんだけど。これでランク2の機械魔になんて見つかったら目も当てられないな。」
誰に向けた言葉でははなかった。
しかしその言葉を試験官であるヨースケには伝わっていた。
リヒテルは支給されたヘッドセットを装着しており、万が一を想定して通信はオン状態になっていた。
そこで呟いた言葉はすべてヨースケに筒抜けであった。
「大丈夫です。焦らずじっくりことを勧めてください。急いでは危険が増大しますから。」
リヒテルの耳にヨースケの言葉が届く。
それは焦りから集中力をかいていたリヒテルにとって不意打ちに近かった。
危うく声を出しそうになったところをなんとか気合で乗り切ったのであった。
もしこれで声を上げていればたちまち機械魔に発見されていた可能性が高い。
そうなれば武器が心許ないリヒテルでは対応がかなり難しくなり、最悪試験失敗になりかねなかった。
大きく静かにゆっくりと深呼吸をしていくリヒテル。
その甲斐あってか、焦る心が静まっていくのを感じていた。
「よし、ゆっくり探そう。大丈夫、なんとかなるさ。」
自分にそう言い聞かせたリヒテルは、更に森を進んでいくのであった。
しばらく探索していると、前方に1体の昆虫型機械魔が姿を表した。
その機械魔はカブトムシの様な姿をしており、その外皮が硬質であることが見て取らた。
外翼の内側には金属の様な内翼の様なものも見えており、いかにも機械魔であると物語っていた。
昆虫時代の名残なのか、その機械魔は太い幹にしがみつき樹液をすすっていた。
「硬いのは間違いないな……。狙いは胴体と頭部の関節か……。行けるっしょ。」
そう言うとリヒテルは武装属性付与ではなく弾丸属性付与を発動させる。
これは手持ちに魔石がなくとも、自身の魔石と周囲の魔素さえあれば問題なく発動が可能であった。
ただし手持ちがあれば更に効率が上がることは間違いはなかった。
リヒテルが選択した弾丸属性付与は【精密】。
今回の弾丸は徹甲弾であるために貫通性的には関節を狙えば問題なく貫ける。
しかし、それがきちんと関節に当たればという絶対条件付きであった。
そのために【精密】を選択したのだ。
本来であれば加速時間内で行う工程を通常の時間軸で行うために、機械魔に気づかれないよう慎重に行動を起こす。
カチャリと機械魔に向けて構えられた拳銃が淡い光を放つ。
拳銃の先端に光が集まり、魔砲陣を形成する。
キュイーンという耳障りな音が漏れ出す。
その音に反応したのかカブトムシ型機械魔は周囲を見回し、警戒を始めた。
なんとか気付かれずに付与し終えて安堵を漏らすリヒテル。
そして拳銃の先端をカブトムシ型機械魔へ向けて静かに集中する。
静かに引き絞られたトリガーが弾丸を押し出し、魔砲陣を通過していく。
通過する段階で弾丸に文様が刻まれていく。
そして魔砲陣から飛び出した弾丸は正確無比にカブトムシ型機械魔の胴体と頭の関節を捉えた。
ガシュンという音とともに地面へと落ちるカブトムシ型機械魔。
警戒しながら近づいていくリヒテル。
しかしカブトムシ型機械魔は動く気配はなく、活動を停止していた。
「これで1体。あと数体倒せばなんとかなるか。しかし、この試験実はかなりきついな。休むタイミングも考えないといつまでも休めない状況になりそうだ。流石に1回分の対機械魔領域発生装置は準備してくれているけど、一日は確実に自分でどうにかしなきゃいけないしな。よし、まずはこの魔石で魔砲を一つ作成しないとな。そうすれば少しはましになるだろうし。」
対機械魔領域通称ADF……
立入禁止区域を覆うように設置された対機械魔防壁の簡易版である。
これを設置すれば周囲10mは安全地帯となる。
リヒテルが出発時に渡された背負袋に入ったものの一つでもあった。
他にはサバイバル道具一式が入っており、食料も非常食が3食分入っていたのだ。
ーーー閑話休題ーーー
そう言うとリヒテルは早速魔砲の制作に取り掛かった。
とは言うものの、素材はランク1の魔石。
できるものといえば拳銃くらいだ。
しかし、通常の銃に比べても魔砲は破格の威力を誇る。
ただの銃型魔砲ですら、ライフル銃クラスの威力を誇るのだから。
リヒテルが集中していると手に一つの拳銃が出来上がる。
その銃は小型自動拳銃と呼ばれるもので、装弾数は24発。
リヒテルのイメージにより、7MM徹甲弾が装填可能であった。
「これで弾丸を無駄にしなくて済むな。早速次の獲物を狩りに行くか。」
リヒテルはその言葉とともに森を分け入っていったのだった。
暫く進むと運がいいのか悪いのか、3匹ほどの中型犬型機械魔の群れを発見し、武装属性付与【精密】を施したピストル型魔砲で蹴散らしていく。
おかげで魔石の数も増え、なんとか安定して狩猟が出来るようになりそうであった。
その後も魔砲を駆使し、狩猟を続けていく。
流石に日も暮れ出し、狩猟するには危険を伴う状況になってきていた。
しかしリヒテルはここで決断を迫られていた。
対機械魔領域を使用するかどうかである。
使用すれば間違いなく安眠が約束される。
機械魔から襲われる心配がないからである。
しかし、これは1回分しかなく、今ここで使用した場合、あとは自力でなんとかする必要があるのだ。
ならば使わないかというとそれも問題であった。
初のランク2の森であることにより、普段よりも精神的消耗が激しいのだ。
つまりミスを生みやすい状況になっていた。
この状況で無理をしても命を危険に晒すことになる。
どちらを選択するにせよリスクが存在するということだ。
迷えば迷うほど無駄に時間が過ぎていく。
それと同時に、選択肢が狭まっていくのをリヒテルは感じていた。
もっと早くに決断していれば寝床の確保なども出来たはずであった。
おそらくこの試験の3日間篭もるという内容の本当の狙いであるとリヒテルはこのときようやく気がつくことが出来たのであった。
「やられたな……。仕方ない使うしか無いな。」
すでに日は落ちかけ今から寝床確保は無理であると判断したリヒテルは、ADF派生発生装置を地面に設置し発動させた。
ADF発生装置から半球状の光の壁が形成され、淡く赤い光を放っていた。
リヒテルは少し落ち着けたのか、地面に背負袋をおろし食事にすることにした。
よくよく考えると昼を取ってすらいなかったのだ。
それほどまでに自分の状況を判断できない精神状態であったことを強制的に理解させられたリヒテルであった。
遠目からリヒテルを監視していたヨースケはあまり納得の行っていない雰囲気であった。
昨日見た限りであればリヒテルはすぐに気がつくと考えていたからだ。
しかし蓋を開けてみればいきあたりばったりでまるで計画性が見られなかった。
戦闘面よりも狩猟者としての基礎を叩き込まなくては行けないと感じていた。
これから先リヒテルが生き残るために。
鬱蒼と生い茂る森林をかき分けてリヒテルは森へと入っていく。
今いる場所はすでに立入禁止区域ランク2の森。
リヒテルが手にしているのは普通の拳銃。
と言っても改造は施されており、通常であれば9MMフルメタル・ジャケット弾を打ち出すところを7MM徹甲弾を打ち出せるようにしてあった。
連射性能は良くないものの、護身用としては十分な威力を発揮する。
しかし、機械魔相手では心許ないのは代わりわなかった。
できることならば早めに低ランク機械魔を一体倒して魔石を回収したいところであった。
しかし、そうはうまくはいかず、なかなか見つけることが出来ないでいた。
そのせいもあってまだ1時間も進んでいないのにも関わらず精神はかなりすり減ってきていた。
「やばいな……早めに魔石をある程度集めたかったんだけど。これでランク2の機械魔になんて見つかったら目も当てられないな。」
誰に向けた言葉でははなかった。
しかしその言葉を試験官であるヨースケには伝わっていた。
リヒテルは支給されたヘッドセットを装着しており、万が一を想定して通信はオン状態になっていた。
そこで呟いた言葉はすべてヨースケに筒抜けであった。
「大丈夫です。焦らずじっくりことを勧めてください。急いでは危険が増大しますから。」
リヒテルの耳にヨースケの言葉が届く。
それは焦りから集中力をかいていたリヒテルにとって不意打ちに近かった。
危うく声を出しそうになったところをなんとか気合で乗り切ったのであった。
もしこれで声を上げていればたちまち機械魔に発見されていた可能性が高い。
そうなれば武器が心許ないリヒテルでは対応がかなり難しくなり、最悪試験失敗になりかねなかった。
大きく静かにゆっくりと深呼吸をしていくリヒテル。
その甲斐あってか、焦る心が静まっていくのを感じていた。
「よし、ゆっくり探そう。大丈夫、なんとかなるさ。」
自分にそう言い聞かせたリヒテルは、更に森を進んでいくのであった。
しばらく探索していると、前方に1体の昆虫型機械魔が姿を表した。
その機械魔はカブトムシの様な姿をしており、その外皮が硬質であることが見て取らた。
外翼の内側には金属の様な内翼の様なものも見えており、いかにも機械魔であると物語っていた。
昆虫時代の名残なのか、その機械魔は太い幹にしがみつき樹液をすすっていた。
「硬いのは間違いないな……。狙いは胴体と頭部の関節か……。行けるっしょ。」
そう言うとリヒテルは武装属性付与ではなく弾丸属性付与を発動させる。
これは手持ちに魔石がなくとも、自身の魔石と周囲の魔素さえあれば問題なく発動が可能であった。
ただし手持ちがあれば更に効率が上がることは間違いはなかった。
リヒテルが選択した弾丸属性付与は【精密】。
今回の弾丸は徹甲弾であるために貫通性的には関節を狙えば問題なく貫ける。
しかし、それがきちんと関節に当たればという絶対条件付きであった。
そのために【精密】を選択したのだ。
本来であれば加速時間内で行う工程を通常の時間軸で行うために、機械魔に気づかれないよう慎重に行動を起こす。
カチャリと機械魔に向けて構えられた拳銃が淡い光を放つ。
拳銃の先端に光が集まり、魔砲陣を形成する。
キュイーンという耳障りな音が漏れ出す。
その音に反応したのかカブトムシ型機械魔は周囲を見回し、警戒を始めた。
なんとか気付かれずに付与し終えて安堵を漏らすリヒテル。
そして拳銃の先端をカブトムシ型機械魔へ向けて静かに集中する。
静かに引き絞られたトリガーが弾丸を押し出し、魔砲陣を通過していく。
通過する段階で弾丸に文様が刻まれていく。
そして魔砲陣から飛び出した弾丸は正確無比にカブトムシ型機械魔の胴体と頭の関節を捉えた。
ガシュンという音とともに地面へと落ちるカブトムシ型機械魔。
警戒しながら近づいていくリヒテル。
しかしカブトムシ型機械魔は動く気配はなく、活動を停止していた。
「これで1体。あと数体倒せばなんとかなるか。しかし、この試験実はかなりきついな。休むタイミングも考えないといつまでも休めない状況になりそうだ。流石に1回分の対機械魔領域発生装置は準備してくれているけど、一日は確実に自分でどうにかしなきゃいけないしな。よし、まずはこの魔石で魔砲を一つ作成しないとな。そうすれば少しはましになるだろうし。」
対機械魔領域通称ADF……
立入禁止区域を覆うように設置された対機械魔防壁の簡易版である。
これを設置すれば周囲10mは安全地帯となる。
リヒテルが出発時に渡された背負袋に入ったものの一つでもあった。
他にはサバイバル道具一式が入っており、食料も非常食が3食分入っていたのだ。
ーーー閑話休題ーーー
そう言うとリヒテルは早速魔砲の制作に取り掛かった。
とは言うものの、素材はランク1の魔石。
できるものといえば拳銃くらいだ。
しかし、通常の銃に比べても魔砲は破格の威力を誇る。
ただの銃型魔砲ですら、ライフル銃クラスの威力を誇るのだから。
リヒテルが集中していると手に一つの拳銃が出来上がる。
その銃は小型自動拳銃と呼ばれるもので、装弾数は24発。
リヒテルのイメージにより、7MM徹甲弾が装填可能であった。
「これで弾丸を無駄にしなくて済むな。早速次の獲物を狩りに行くか。」
リヒテルはその言葉とともに森を分け入っていったのだった。
暫く進むと運がいいのか悪いのか、3匹ほどの中型犬型機械魔の群れを発見し、武装属性付与【精密】を施したピストル型魔砲で蹴散らしていく。
おかげで魔石の数も増え、なんとか安定して狩猟が出来るようになりそうであった。
その後も魔砲を駆使し、狩猟を続けていく。
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しかしリヒテルはここで決断を迫られていた。
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使用すれば間違いなく安眠が約束される。
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しかし、これは1回分しかなく、今ここで使用した場合、あとは自力でなんとかする必要があるのだ。
ならば使わないかというとそれも問題であった。
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つまりミスを生みやすい状況になっていた。
この状況で無理をしても命を危険に晒すことになる。
どちらを選択するにせよリスクが存在するということだ。
迷えば迷うほど無駄に時間が過ぎていく。
それと同時に、選択肢が狭まっていくのをリヒテルは感じていた。
もっと早くに決断していれば寝床の確保なども出来たはずであった。
おそらくこの試験の3日間篭もるという内容の本当の狙いであるとリヒテルはこのときようやく気がつくことが出来たのであった。
「やられたな……。仕方ない使うしか無いな。」
すでに日は落ちかけ今から寝床確保は無理であると判断したリヒテルは、ADF派生発生装置を地面に設置し発動させた。
ADF発生装置から半球状の光の壁が形成され、淡く赤い光を放っていた。
リヒテルは少し落ち着けたのか、地面に背負袋をおろし食事にすることにした。
よくよく考えると昼を取ってすらいなかったのだ。
それほどまでに自分の状況を判断できない精神状態であったことを強制的に理解させられたリヒテルであった。
遠目からリヒテルを監視していたヨースケはあまり納得の行っていない雰囲気であった。
昨日見た限りであればリヒテルはすぐに気がつくと考えていたからだ。
しかし蓋を開けてみればいきあたりばったりでまるで計画性が見られなかった。
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