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第3章 旅立ちの時
第16話 リンリッドの修行
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「あのくそじじぃ~~~~~!!」
「ぼやく暇があったらサクサク倒せ!!」
立入禁止区域ランク1。
リヒテルは初めて魔砲を放ってからというもの、この場所で修行の日々に追われていた。
それに付き合う形でガルラも戦闘に巻き込まれている状況だった。
目の前からは次々と機械魔が襲い掛かって来た。
いくらランク1の機械魔とはいえ数に限度というものがあるだろうと、リヒテルはこめかみに青筋を浮かべながら、ひたすら倒し続けていた。
襲い掛かってきている機械魔は、小型機械魔で、4足歩行の野犬タイプやイノシシタイプ。
果ては鳥類タイプまで様々だった。
しかしここまでリヒテルたちに問答無用で向かってくるのには訳があった。
「ホレホレ二人とも、まだ無駄口が叩けるほど余裕があるようだねぇ~。追加でもいこうかねぇ~。」
森の奥から聞こえてくる通信に、リヒテルはさらに怒りメーターを上昇させていた。
その森の奥にはリンリッドが相棒の銃を構えつつも、リヒテルたちがいる方角に向かに何かを投げ入れていた。
投げ入れているものは赤く鈍く光る宝石……
魔石だった。
地面に落ちた魔石は徐々にその様相を変化させていく。
周囲に漂う魔素を吸収しながらその形を形成していった。
その近くには使われなくなったであろう機械がそこかしこにばらまかれている。
魔素を吸収しながら魔石はふわりふらりと移動を開始し、手頃の機械の残骸を見つけると最後の形態変化を起こす。
そこに現れたのは一体の機械魔……
そう、リンリッドは強制的に機械魔を生み出していたのだ。
この技術は秘匿技術とされているもので、NGT確立の際の研究段階で生まれた副産物の一つであった。
しかし、人為的に機械魔を生み出す行為は禁忌とされた。
ではなぜその秘匿技術〝機械魔製造〟を知り得るのか。
それはリンリッドが科学者でもあるからだ。
リンリッドが最初に得た技能は【分析】【解析】のダブルであった。
そして適性診断の結果が科学者だったのだ。
リンリッド自身それを誇りと思っていた。
日々集められる魔石や素材の数々。
特に気にすることなく、研究に明け暮れた。
そのおかげもあり、リンリッドが20歳になるころには魔石や魔素の特性について、複数の発見をすることになった。
そしてその中の一つが、機械魔製造だったのだ。
それは偶然の産物に過ぎなかったが、リンリッドが失脚するには十分すぎる理由であった。
すべての条件が〝たまたま〟そろったに過ぎなかった。
科学者としての才能。
尽きる事の無い魔石。
技能の使用による、魔素制御の技術習得。
あまりにも出来過ぎた環境で、再現されてしまったのだ。
そしてそれがリンリッドの失脚を狙った作為的なものだと知ったのは、研究所を追放されてから10年の時を経た後だった。
その事実を知ったリンリッドは自暴自棄となり、技能習得を受けたところ、技能【ブラックスミス】を得る事に成功していしまったのだ。
元の技能【分析】【解析】と合わせリンリッドはその頭角を現し、ランク5の狩猟者に上り詰めたのだった。
———閑話休題———
リンリッドから生み出された機械魔は次々に近場にいるリンリッドに向けて殺気を放つ。
しかし倍返しで返って来た殺気に当てられ機械魔は半狂乱となりあたかもスタンピードでも起こすがごとくリヒテルたちに向かって動き出していたのだ。
修行開始からすでに3か月が経過しようとしていた。
リヒテルは当初拳銃型を一丁作るのが精いっぱいの能力しか発揮できなかった。
そして持ち前の器用さを活かし、今ではその両手に魔砲を創造出来るまでに成長を遂げていた。
しかし、通常の弾丸作成では一発づつしか作成することは出来なく、汎用性に乏しいという欠点があった。
そこで魔砲使いたちは長年の研鑽の末一つの技術体系を生み出した。
それが〝武装属性付与〟である。
弾丸に属性・特性を付与するものではなく、武器そのものに付与してしまうというものだった。
この技術自体は、【職業:魔剣士】なども使用している技術と近いものがあった。
相違点も存在する。
魔剣士が使用する属性付与は一つだけしか付与できなかったのだ。
その点魔砲使いたちの武装属性付与はその上限が存在しなかった。
才能さえあればいくらでも付与できてしまうのだ。
一説によれば、周囲の魔素を使って使用しているからともいわれていた。
弾丸に付与した場合とは違い、威力は劣るもののその連射速度は比では無かった。
魔砲使いたちは二つの技術を用いる事で無類の殲滅力を得る事に成功したのであった。
「これじゃキリが無い!!」
「なんで俺まで巻き込まれるんだよ!!」
リヒテルはその両手に装備した魔砲の引き金を引き続ける。
魔砲にはただ一つの武装属性付与が施されていた。
それは【貫通】。
威力の劣る武装属性付与を使用する際には基本となるものだ。
お陰で連なりながら突撃を仕掛けてくる機械魔には、すこぶる順調に効果を発揮していた。
リヒテルが放った弾丸は、野犬型機械魔の脳天を貫き、そのまま後ろを追走する機械魔にも被害を及ぼす。
それでもなおその数の暴力のおかげで接近を許す羽目になってしまった。
そこで役立ったのが学び続けてきた戦闘術であった。
特に体術に至っては両手が塞がった状態でも機械魔をいなすことなど問題無くこなせていたのだった。
ガルラも負けじとその剣速を加速させていく。
両手持ちの大剣を巧みに使い、機械魔から放たれる弾丸を器用にさばいていく。
捌いては斬り捌いては斬る。
いつまで続くか分からない、人為的スタンピードを文句たらたら言いながらも処理していったのであった。
「なんだいなんだい、もうギブアップかい?」
木々を渡りリンリッドが地面に大の字になって寝転ぶリヒテルに近づいてきた。
何とかリンリッドが生み出した機械魔の殲滅に成功したリヒテルたちは既に立っていられないほどの消耗を強いられていたのである。
それを見たリンリッドは呆れつつも、少しだけ感心したような表情を見せていた。
「り、リンリッドさん……。さすがに……、これ……は、きついって。」
身体を起こしながら息も絶え絶えな様子のガルラ。
剣を支えに何とか立ち上がることが出来ていた。
ただしその足元は生まれたての小鹿レベルではあったが。
「なっさけないのぉ~、この程度で音を上げるとは……。この数倍の機械魔を相手に敗走戦なんぞ、基本中の基本。出来なきゃこれ以上は無理だと思うしかないねぇ~。」
その言葉にガルラの眉が一瞬動く。
どうやら何かガルラの思いに引っ掛かったようである。
そんなこんな二人が会話している間も、リヒテルは立ち上がる事すらできずにいた。
二人の会話も問題無く聞き取れる、でも身体が言う事を聞いてくれない。
起こそうとしても全く起きてこないのだ。
「リヒテルの坊主、聞こえているんだろう?今回の修業はこれで終わりさね。次はランクアップの試験を受けてもらおうかねぇ~。まあ、受かって当然の試験だから問題無いだろうけど……。もし落ちたら……、何かバツを考えておかないといけないかもしれないねぇ~。」
ニヤニヤと笑いながらそう語るリンリッドを、ジト目で見つめるガルラ。
リヒテルもまたジト目で睨み付けたい気持ちでいっぱいだったが、それは叶わなかった。
「それじゃあ、狩猟者連合協同組合に戻ったら早速申請と行こうじゃないか。」
やっと上半身を起こすことが出来たリヒテルは、ガルラの肩をかりつつ、何とか立入禁止区域ランク1を脱出することが出来たのであった。
狩猟者連合協同組合に戻った二人を見た受付嬢たちは何事かと驚いていたが、事情を説明すると何かを察したのか二人を生暖かな目で見つめるだけであった。
「ぼやく暇があったらサクサク倒せ!!」
立入禁止区域ランク1。
リヒテルは初めて魔砲を放ってからというもの、この場所で修行の日々に追われていた。
それに付き合う形でガルラも戦闘に巻き込まれている状況だった。
目の前からは次々と機械魔が襲い掛かって来た。
いくらランク1の機械魔とはいえ数に限度というものがあるだろうと、リヒテルはこめかみに青筋を浮かべながら、ひたすら倒し続けていた。
襲い掛かってきている機械魔は、小型機械魔で、4足歩行の野犬タイプやイノシシタイプ。
果ては鳥類タイプまで様々だった。
しかしここまでリヒテルたちに問答無用で向かってくるのには訳があった。
「ホレホレ二人とも、まだ無駄口が叩けるほど余裕があるようだねぇ~。追加でもいこうかねぇ~。」
森の奥から聞こえてくる通信に、リヒテルはさらに怒りメーターを上昇させていた。
その森の奥にはリンリッドが相棒の銃を構えつつも、リヒテルたちがいる方角に向かに何かを投げ入れていた。
投げ入れているものは赤く鈍く光る宝石……
魔石だった。
地面に落ちた魔石は徐々にその様相を変化させていく。
周囲に漂う魔素を吸収しながらその形を形成していった。
その近くには使われなくなったであろう機械がそこかしこにばらまかれている。
魔素を吸収しながら魔石はふわりふらりと移動を開始し、手頃の機械の残骸を見つけると最後の形態変化を起こす。
そこに現れたのは一体の機械魔……
そう、リンリッドは強制的に機械魔を生み出していたのだ。
この技術は秘匿技術とされているもので、NGT確立の際の研究段階で生まれた副産物の一つであった。
しかし、人為的に機械魔を生み出す行為は禁忌とされた。
ではなぜその秘匿技術〝機械魔製造〟を知り得るのか。
それはリンリッドが科学者でもあるからだ。
リンリッドが最初に得た技能は【分析】【解析】のダブルであった。
そして適性診断の結果が科学者だったのだ。
リンリッド自身それを誇りと思っていた。
日々集められる魔石や素材の数々。
特に気にすることなく、研究に明け暮れた。
そのおかげもあり、リンリッドが20歳になるころには魔石や魔素の特性について、複数の発見をすることになった。
そしてその中の一つが、機械魔製造だったのだ。
それは偶然の産物に過ぎなかったが、リンリッドが失脚するには十分すぎる理由であった。
すべての条件が〝たまたま〟そろったに過ぎなかった。
科学者としての才能。
尽きる事の無い魔石。
技能の使用による、魔素制御の技術習得。
あまりにも出来過ぎた環境で、再現されてしまったのだ。
そしてそれがリンリッドの失脚を狙った作為的なものだと知ったのは、研究所を追放されてから10年の時を経た後だった。
その事実を知ったリンリッドは自暴自棄となり、技能習得を受けたところ、技能【ブラックスミス】を得る事に成功していしまったのだ。
元の技能【分析】【解析】と合わせリンリッドはその頭角を現し、ランク5の狩猟者に上り詰めたのだった。
———閑話休題———
リンリッドから生み出された機械魔は次々に近場にいるリンリッドに向けて殺気を放つ。
しかし倍返しで返って来た殺気に当てられ機械魔は半狂乱となりあたかもスタンピードでも起こすがごとくリヒテルたちに向かって動き出していたのだ。
修行開始からすでに3か月が経過しようとしていた。
リヒテルは当初拳銃型を一丁作るのが精いっぱいの能力しか発揮できなかった。
そして持ち前の器用さを活かし、今ではその両手に魔砲を創造出来るまでに成長を遂げていた。
しかし、通常の弾丸作成では一発づつしか作成することは出来なく、汎用性に乏しいという欠点があった。
そこで魔砲使いたちは長年の研鑽の末一つの技術体系を生み出した。
それが〝武装属性付与〟である。
弾丸に属性・特性を付与するものではなく、武器そのものに付与してしまうというものだった。
この技術自体は、【職業:魔剣士】なども使用している技術と近いものがあった。
相違点も存在する。
魔剣士が使用する属性付与は一つだけしか付与できなかったのだ。
その点魔砲使いたちの武装属性付与はその上限が存在しなかった。
才能さえあればいくらでも付与できてしまうのだ。
一説によれば、周囲の魔素を使って使用しているからともいわれていた。
弾丸に付与した場合とは違い、威力は劣るもののその連射速度は比では無かった。
魔砲使いたちは二つの技術を用いる事で無類の殲滅力を得る事に成功したのであった。
「これじゃキリが無い!!」
「なんで俺まで巻き込まれるんだよ!!」
リヒテルはその両手に装備した魔砲の引き金を引き続ける。
魔砲にはただ一つの武装属性付与が施されていた。
それは【貫通】。
威力の劣る武装属性付与を使用する際には基本となるものだ。
お陰で連なりながら突撃を仕掛けてくる機械魔には、すこぶる順調に効果を発揮していた。
リヒテルが放った弾丸は、野犬型機械魔の脳天を貫き、そのまま後ろを追走する機械魔にも被害を及ぼす。
それでもなおその数の暴力のおかげで接近を許す羽目になってしまった。
そこで役立ったのが学び続けてきた戦闘術であった。
特に体術に至っては両手が塞がった状態でも機械魔をいなすことなど問題無くこなせていたのだった。
ガルラも負けじとその剣速を加速させていく。
両手持ちの大剣を巧みに使い、機械魔から放たれる弾丸を器用にさばいていく。
捌いては斬り捌いては斬る。
いつまで続くか分からない、人為的スタンピードを文句たらたら言いながらも処理していったのであった。
「なんだいなんだい、もうギブアップかい?」
木々を渡りリンリッドが地面に大の字になって寝転ぶリヒテルに近づいてきた。
何とかリンリッドが生み出した機械魔の殲滅に成功したリヒテルたちは既に立っていられないほどの消耗を強いられていたのである。
それを見たリンリッドは呆れつつも、少しだけ感心したような表情を見せていた。
「り、リンリッドさん……。さすがに……、これ……は、きついって。」
身体を起こしながら息も絶え絶えな様子のガルラ。
剣を支えに何とか立ち上がることが出来ていた。
ただしその足元は生まれたての小鹿レベルではあったが。
「なっさけないのぉ~、この程度で音を上げるとは……。この数倍の機械魔を相手に敗走戦なんぞ、基本中の基本。出来なきゃこれ以上は無理だと思うしかないねぇ~。」
その言葉にガルラの眉が一瞬動く。
どうやら何かガルラの思いに引っ掛かったようである。
そんなこんな二人が会話している間も、リヒテルは立ち上がる事すらできずにいた。
二人の会話も問題無く聞き取れる、でも身体が言う事を聞いてくれない。
起こそうとしても全く起きてこないのだ。
「リヒテルの坊主、聞こえているんだろう?今回の修業はこれで終わりさね。次はランクアップの試験を受けてもらおうかねぇ~。まあ、受かって当然の試験だから問題無いだろうけど……。もし落ちたら……、何かバツを考えておかないといけないかもしれないねぇ~。」
ニヤニヤと笑いながらそう語るリンリッドを、ジト目で見つめるガルラ。
リヒテルもまたジト目で睨み付けたい気持ちでいっぱいだったが、それは叶わなかった。
「それじゃあ、狩猟者連合協同組合に戻ったら早速申請と行こうじゃないか。」
やっと上半身を起こすことが出来たリヒテルは、ガルラの肩をかりつつ、何とか立入禁止区域ランク1を脱出することが出来たのであった。
狩猟者連合協同組合に戻った二人を見た受付嬢たちは何事かと驚いていたが、事情を説明すると何かを察したのか二人を生暖かな目で見つめるだけであった。
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