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第2章 始まりの物語
第11話 新たなる魔砲使い
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バチバチと激しい音が施設に響き渡る。
このような事は、今までかつてコーネリアスも体験した事は無かった。
「いったい何が起こったのだ?!観測班!!どうなっていますか?!」
慌てたコーネリアスは、離れた場所でデータの収集・解析を行っていた研究員に状況の確認を行った。
リヒテルのいた場所は既に黒い膜で覆われてしまい、中の様子が全く見えなくなっていたのだ。
その膜からは、已然としてバチバチと激しい音が鳴り響く。
電気でもショートしているのではないかと思わせる程の激しい音だ。
「わかりません!!装置は正常に稼働している事を数値は示しています!!ただ、魔素の値が普段より極端に高く出ています!!おそらくですが、魔石との相性が良過ぎるのかもしれません!!」
「皆さん!!正確にデータを収集・解析してください!!こんなこと今まで一度もありませんでしたから、今後の参考になるはずです!!」
何処まで行っても、コーネリアスは研究者だった。
装置中のリヒテルの安全よりも、研究を取るのだから。
だが、この技能習得はあくまでも自己責任で行われる行為である。
ここでその者が死のうが、それらはコーネリアスの知った事ではないのだ。
コーネリアスたちは、あくまでも研究の為に此処にいるのだから。
なおも激しく反応する装置は、いまだ稼働を止めようとはしなかった。
外部からの停止命令もすべてキャンセルされてしまい、装置が自ら止まるのを待つ事しか出来ないのだ。
「素晴らしい!!実に素晴らしいサンプルだ!!」
コーネリアスの興奮は、覚める事を知らないようだった。
——————
「ここは……」
リヒテルは真っ白な世界に、一人佇んでいた。
その場所は、リヒテルにとって見覚えのない場所だった。
そして余りの白さに、前後左右の間隔も怪しい。
「確か俺は技能習得をしに来て……。あれ?前にもこんなことが……。」
リヒテルは、自身の記憶を遡る。
そして行き着いたのは、7歳の時の適性診断の時だ。
「思い出した……。あの時もひどい耳鳴りが続いて、気が付いたらこの場所にいたんだ……。でもなんで忘れていたんだ?」
リヒテルは7歳の時もこの場所に来ていたことを思い出した。
なぜかずっとずっと忘れていた事。
「確かあの時は……そう、目の前に魔石が突然現れて……。そうだ!!俺の体に入っていったんだ!!」
それを思い出した途端、リヒテルは右の胸に熱い鼓動を感じた。
左の心臓ではなく、右胸に。
ドクリドクリと何かが脈打つのが分かる。
リヒテルは確信していた。
それはあの時の魔石だと。
右胸にそっと手を当てると、その脈動が良く伝わってくる。
その力強い脈動に導かれるように、目の前に新たな魔石が姿を現した。
それは飯塚から託された、【イレギュラー】の魔石だ。
「どうしてここに……?」
リヒテルが疑問に思ったのも束の間、リヒテルの右胸の魔石と飯塚の魔石が激しく反応し始める。
お互いがお互いを確かめるように、ドクリドクリと脈動している。
次第にそのリズムが揃い、一つの脈動に変わっていく。
リヒテルはその様子を見守るしかなかった。
先程から体の自由が利かないのだ。
そして飯塚の魔石は、徐々にリヒテルに近づいてくる。
もとからある右胸の魔石と重なり、さらに大きな魔石へと進化を遂げる。
それのサイズは明らかにランク4を超えている事を、リヒテルは直感的に理解した。
まさにランク5相当であると。
融合した魔石は、その鼓動の激しさを増していく。
リヒテルに魔力を次々に供給し始めたのだ。
今までに経験の無い痛みが、リヒテルの体全体を駆け巡る。
今にも意識が飛びそうになるも、その痛みでまた覚醒する。
失神と覚醒を繰り返すうちに、徐々にその痛みが和らいでいく。
そしてリヒテルはある事に気が付いたのだ。
自身に魔力が宿っているという事を。
つまり魔法が使えるという事だ。
先程まで全く体が動かなかったが、今は問題無く動く事が出来た。
いったい何だったのか……
ただ分かることは、自分の体が既に普通ではないという事だけだった。
そして次第に襲い来る睡魔。
前回も同じような事が起こったなと、リヒテルは感じていた。
抗いきれない睡魔についに陥落したリヒテル。
この真っ白な空間はついにその役目を終え、崩壊を始めていったのだった。
——————
真っ白な空間が崩壊していく中で、一人の青年がそこに現れた。
『リヒテル・蒔苗……。彼もまた【神々の書庫】の住人になるであろうか……。ねぇ、レイ?』
その言葉と共に真っ白な空間は完全に崩壊したのだった。
——————
「う、ここは……?」
「おめでとう!!」
リヒテルが目覚めたのは、技能習得の装置の上だった。
円の中心に横たわっていたリヒテルは、重い体を何とか起こし、自身の体の調子を確かめる。
特に変わった様子は無く、これと言って違和感は無かった。
「ところで、おめでとうって?」
「あぁ!!君はついに成し遂げたのだよ!!だからおめでとう!!魔砲使いの誕生だ!!」
リヒテルの思考は完全に停止していた。
コーネリアスの言っている意味が理解できなかったのだ。
魔砲使いの誕生?
誰が?
いつ?
そんな思いでいっぱいになっていた。
「おや?聞こえませんでしたか?魔砲使いの誕生ですよ?快挙ですよ!!最高戦力がまた新たに誕生したのですよ!?」
「いや、だれがその魔砲使いなんですか?」
コーネリアスは、可笑しなモノを見る目でリヒテルを凝視する。
テンションが爆上がりしていたのが、急降下しているのが良く見て取れた。
「何を言ってるんです?あなた以外誰がいるのですか?今この装置を使ったのはあなたでしょう?」
「俺……が?」
リヒテルはコーネリアスの言葉を疑っていた。
まさか魔砲使いになれるなんて、思ってもみなかったからだ。
つまりは技能【ブラックスミス】が発現してことに他ならない。
「それにしてもあなたの技能は面白いですね。よくぞここまで増やしたものです。」
コーネリアスは手元の資料を基に話し出した。
ペラリペラリと捲りつつ、今の状況を説明した。
「まずは今回の技能習得は大成功に終わりました。これをもってあなたの適性診断の結果は変更されます。一つは今まで通りの技能【マスター】を生かした職業。もう一つは今手に入れた技能【ブラックスミス】を生かした狩猟者。あなたのタイムリミットは今日を含めて4日間です。この後ご両親とよく話し合って決めてください。」
リヒテルはようやく理解できた。
自分が目指して夢見、恋焦がれていた狩猟者になれる切符を手に入れた事に。
あまりの嬉しさに、その後どうやって自宅に帰ったか分からなかった。
気が付いた時には自宅前の玄関にいたのだから。
「ただいま。父さん、母さん話があるんだ。」
リヒテルは帰宅後、すぐに両親に事の顛末を話して聞かせた。
両親は涙を流して喜ぶと同時に、自分たちに相談もなく技能習得を行った事を叱責した。
リヒテルも、それについては悪い事をしたという事は重々承知していた。
両親の心配も、もっともだからだ。
しかし、後悔はしていない。
恐らく今回技能習得をしていなかったら、後々もっと後悔していただろうと確信があったからだ。
それから両親と話し合ったリヒテルは念願だった狩猟者への道を選択したのだった。
翌日、リヒテルはその報告をしに【Survive】を訪れていた。
【Survive】はいつも通り平常運転。
何ら変わりなく動いていた。
リヒテルは、自分の代わりに店長代行をしていたマリアに、事の顛末の報告を行った。
マリアも涙を流して喜んでくれた。
そしてリヒテルの選択を、快く受け入れてくれたのだ。
「最後に一つ約束してください。狩猟後、必ずここに帰ってくると……」
リヒテルはマリアの手を取るとそっと握り、必ず帰ると約束を交わしたのだった。
このような事は、今までかつてコーネリアスも体験した事は無かった。
「いったい何が起こったのだ?!観測班!!どうなっていますか?!」
慌てたコーネリアスは、離れた場所でデータの収集・解析を行っていた研究員に状況の確認を行った。
リヒテルのいた場所は既に黒い膜で覆われてしまい、中の様子が全く見えなくなっていたのだ。
その膜からは、已然としてバチバチと激しい音が鳴り響く。
電気でもショートしているのではないかと思わせる程の激しい音だ。
「わかりません!!装置は正常に稼働している事を数値は示しています!!ただ、魔素の値が普段より極端に高く出ています!!おそらくですが、魔石との相性が良過ぎるのかもしれません!!」
「皆さん!!正確にデータを収集・解析してください!!こんなこと今まで一度もありませんでしたから、今後の参考になるはずです!!」
何処まで行っても、コーネリアスは研究者だった。
装置中のリヒテルの安全よりも、研究を取るのだから。
だが、この技能習得はあくまでも自己責任で行われる行為である。
ここでその者が死のうが、それらはコーネリアスの知った事ではないのだ。
コーネリアスたちは、あくまでも研究の為に此処にいるのだから。
なおも激しく反応する装置は、いまだ稼働を止めようとはしなかった。
外部からの停止命令もすべてキャンセルされてしまい、装置が自ら止まるのを待つ事しか出来ないのだ。
「素晴らしい!!実に素晴らしいサンプルだ!!」
コーネリアスの興奮は、覚める事を知らないようだった。
——————
「ここは……」
リヒテルは真っ白な世界に、一人佇んでいた。
その場所は、リヒテルにとって見覚えのない場所だった。
そして余りの白さに、前後左右の間隔も怪しい。
「確か俺は技能習得をしに来て……。あれ?前にもこんなことが……。」
リヒテルは、自身の記憶を遡る。
そして行き着いたのは、7歳の時の適性診断の時だ。
「思い出した……。あの時もひどい耳鳴りが続いて、気が付いたらこの場所にいたんだ……。でもなんで忘れていたんだ?」
リヒテルは7歳の時もこの場所に来ていたことを思い出した。
なぜかずっとずっと忘れていた事。
「確かあの時は……そう、目の前に魔石が突然現れて……。そうだ!!俺の体に入っていったんだ!!」
それを思い出した途端、リヒテルは右の胸に熱い鼓動を感じた。
左の心臓ではなく、右胸に。
ドクリドクリと何かが脈打つのが分かる。
リヒテルは確信していた。
それはあの時の魔石だと。
右胸にそっと手を当てると、その脈動が良く伝わってくる。
その力強い脈動に導かれるように、目の前に新たな魔石が姿を現した。
それは飯塚から託された、【イレギュラー】の魔石だ。
「どうしてここに……?」
リヒテルが疑問に思ったのも束の間、リヒテルの右胸の魔石と飯塚の魔石が激しく反応し始める。
お互いがお互いを確かめるように、ドクリドクリと脈動している。
次第にそのリズムが揃い、一つの脈動に変わっていく。
リヒテルはその様子を見守るしかなかった。
先程から体の自由が利かないのだ。
そして飯塚の魔石は、徐々にリヒテルに近づいてくる。
もとからある右胸の魔石と重なり、さらに大きな魔石へと進化を遂げる。
それのサイズは明らかにランク4を超えている事を、リヒテルは直感的に理解した。
まさにランク5相当であると。
融合した魔石は、その鼓動の激しさを増していく。
リヒテルに魔力を次々に供給し始めたのだ。
今までに経験の無い痛みが、リヒテルの体全体を駆け巡る。
今にも意識が飛びそうになるも、その痛みでまた覚醒する。
失神と覚醒を繰り返すうちに、徐々にその痛みが和らいでいく。
そしてリヒテルはある事に気が付いたのだ。
自身に魔力が宿っているという事を。
つまり魔法が使えるという事だ。
先程まで全く体が動かなかったが、今は問題無く動く事が出来た。
いったい何だったのか……
ただ分かることは、自分の体が既に普通ではないという事だけだった。
そして次第に襲い来る睡魔。
前回も同じような事が起こったなと、リヒテルは感じていた。
抗いきれない睡魔についに陥落したリヒテル。
この真っ白な空間はついにその役目を終え、崩壊を始めていったのだった。
——————
真っ白な空間が崩壊していく中で、一人の青年がそこに現れた。
『リヒテル・蒔苗……。彼もまた【神々の書庫】の住人になるであろうか……。ねぇ、レイ?』
その言葉と共に真っ白な空間は完全に崩壊したのだった。
——————
「う、ここは……?」
「おめでとう!!」
リヒテルが目覚めたのは、技能習得の装置の上だった。
円の中心に横たわっていたリヒテルは、重い体を何とか起こし、自身の体の調子を確かめる。
特に変わった様子は無く、これと言って違和感は無かった。
「ところで、おめでとうって?」
「あぁ!!君はついに成し遂げたのだよ!!だからおめでとう!!魔砲使いの誕生だ!!」
リヒテルの思考は完全に停止していた。
コーネリアスの言っている意味が理解できなかったのだ。
魔砲使いの誕生?
誰が?
いつ?
そんな思いでいっぱいになっていた。
「おや?聞こえませんでしたか?魔砲使いの誕生ですよ?快挙ですよ!!最高戦力がまた新たに誕生したのですよ!?」
「いや、だれがその魔砲使いなんですか?」
コーネリアスは、可笑しなモノを見る目でリヒテルを凝視する。
テンションが爆上がりしていたのが、急降下しているのが良く見て取れた。
「何を言ってるんです?あなた以外誰がいるのですか?今この装置を使ったのはあなたでしょう?」
「俺……が?」
リヒテルはコーネリアスの言葉を疑っていた。
まさか魔砲使いになれるなんて、思ってもみなかったからだ。
つまりは技能【ブラックスミス】が発現してことに他ならない。
「それにしてもあなたの技能は面白いですね。よくぞここまで増やしたものです。」
コーネリアスは手元の資料を基に話し出した。
ペラリペラリと捲りつつ、今の状況を説明した。
「まずは今回の技能習得は大成功に終わりました。これをもってあなたの適性診断の結果は変更されます。一つは今まで通りの技能【マスター】を生かした職業。もう一つは今手に入れた技能【ブラックスミス】を生かした狩猟者。あなたのタイムリミットは今日を含めて4日間です。この後ご両親とよく話し合って決めてください。」
リヒテルはようやく理解できた。
自分が目指して夢見、恋焦がれていた狩猟者になれる切符を手に入れた事に。
あまりの嬉しさに、その後どうやって自宅に帰ったか分からなかった。
気が付いた時には自宅前の玄関にいたのだから。
「ただいま。父さん、母さん話があるんだ。」
リヒテルは帰宅後、すぐに両親に事の顛末を話して聞かせた。
両親は涙を流して喜ぶと同時に、自分たちに相談もなく技能習得を行った事を叱責した。
リヒテルも、それについては悪い事をしたという事は重々承知していた。
両親の心配も、もっともだからだ。
しかし、後悔はしていない。
恐らく今回技能習得をしていなかったら、後々もっと後悔していただろうと確信があったからだ。
それから両親と話し合ったリヒテルは念願だった狩猟者への道を選択したのだった。
翌日、リヒテルはその報告をしに【Survive】を訪れていた。
【Survive】はいつも通り平常運転。
何ら変わりなく動いていた。
リヒテルは、自分の代わりに店長代行をしていたマリアに、事の顛末の報告を行った。
マリアも涙を流して喜んでくれた。
そしてリヒテルの選択を、快く受け入れてくれたのだ。
「最後に一つ約束してください。狩猟後、必ずここに帰ってくると……」
リヒテルはマリアの手を取るとそっと握り、必ず帰ると約束を交わしたのだった。
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