後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~

華音 楓

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第2章 始まりの物語

第7話 狩猟者(ハンター)

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 男性は慌てたように身を乗り出すと、手にした相棒を乱射する。
 乱射してはいるがその精度はかなり高く、的確に機械魔デモニクスを捉える。
 ガキンガキンと音を立てて弾かれる弾丸に、軽く舌打ちをする男性。

「くそ!!かってぇっつうの!!」

 悪態をつきながらも、次々とマガジンとカートリッジを交換しながら機械魔デモニクスとの距離を詰めていく。
 それにより機械魔デモニクスの興味はその男性に向いたのだ。

「やっと釣れやがったか!!」

 男性は機械魔デモニクスの釣りに成功した事に安堵した。
 そして左腕の装置へ相棒をしまうと同時に、ライフル銃【形式名称:DFR229】を取り出す。

 腰だめに構えたかと思うや否や、射出される弾丸。
 先程までと打って変わって弾丸は弾かれる事は無く、機械魔デモニクスを貫通していく。
 数発放たれた弾丸は、全て機械魔デモニクスの各関節へと飲み込まれていった。

「こいつで終わりだ!!」

 関節を壊され動きの鈍った機械魔デモニクスに向けて、男性は片膝をついて狙いを定める。
 そして放たれた弾丸は、機械魔デモニクスの急所とでもいうべき場所……魔石マナコアを見事に撃ち抜いた。

 徐々にその活動を止める機械魔デモニクスを、注意深く観察する男性。
 そして完全停止を確認すると、その警戒を解いたのだった。

「なんでまた、こんなところにガキが居んだよ……」

 男性は、少し離れた場所でこちらを見つめる少年に声をかける。
 少年は何があったのか分からず、ただただ震えていた。
 よく見れば、全身あざだらけで泥まみれ。
 明らかに訳アリに見えた。

「おい!!なんか言ったらどうだ!?」

 男性は徐々に苛立ちを顕わにしていく。
 男性の剣幕に恐れを覚えたのか、少年はさらに体を縮こまらせていく。
 苛立ちの限界に達してようで、男性は深い溜め息をついて煙草を手にする。

 シュボッっと言う音と共に、匂い立つ煙草の薫り。
 その煙を少年は、じっと見つめていた。
 男性は、冗談のつもりで煙草を少年にそっと差し出した。
 少年は恐る恐るといった様子で煙草を受け取り、口に咥えると一気に吸い込んだ。

「がはっ!!ゴホッゴホッ!!」

 少年は盛大に咳き込み、上手く呼吸が出来ずにいた。
 男性はさすがにやり過ぎたと反省したようで、少年の背中をそっとさすってやっていた。

「あぁ~なんだか、その……わりいな……」

 男性はそう言いながら、ばつの悪そうな顔を浮かべていたのだった。

——————

 リヒテルが森を逃げ惑っていると、突如として銃声が響き渡った。
 それは機械魔デモニクスからの砲撃音ではなく、明らかに銃声だった。

「助かった……のかな……」

 安堵と同時に不安が沸き上がる。
 本当に味方かわからないからだ。

 リヒテルの前で繰り広げられる、激しい銃撃戦。
 さっきまでリヒテルを目の敵のように追いかけまわしていた機械魔デモニクスは、リヒテルに興味をなくしたかのようにその銃声がする方へと走り出した。

「たす……かった……」

 リヒテルはその場にへたり込んでしまった。
 足場の悪い森の中を、無我夢中で走り回っていたのだ。
 まだ7歳になったばかりのリヒテルにとって、それは過酷以外に表現のしようがなかった。
 荒れた息を整えながら、銃声がする方へと視線を向ける。
 そこには、リヒテルが憧れて止まなかった戦いが繰り広げられていた。
 男性狩猟者ハンターの戦いだ。
 リヒテルは息をするのも忘れるほど、その戦いに見惚れていた。
 自分が今まで逃げ回っていた機械魔デモニクスと、ダンスでもするかのように戦うその姿に、リヒテルは一瞬で心奪われていた。
 と、同時にその力が自分に向けられるのではないかという恐怖も感じていた。

 そしてとうとう数発の銃声の後、その戦いに終止符が打たれた。
 徐々に動きが緩慢になり、動きを止める機械魔デモニクス
 その戦っていた男性狩猟者ハンター機械魔デモニクスの完全停止を確認すると、残心を解き戦いの終了を告げた。

「なんでまたこんなところにガキが居んだよ……」

 こちらに歩いてきた男性狩猟者ハンターは、リヒテルを心配するでもなく悪態をついていた。
 リヒテルはその態度に警戒心を顕わにし、怯える体に鞭を打ち立ち上がる。
 言葉を発しようとしてもリヒテルの喉から声が出ることは無かった。
 その態度に男性狩猟者ハンターも徐々にイラつきを増していき、さらに態度を悪化させていた。

 リヒテルに去来する思いは〝憧れ〟と〝恐れ〟ただそれだけだった。
 そしてリヒテルは決意をする。
 自分の人生を決める為の大きな決断を……

 

「お、おじさん!!僕を……僕を弟子にしてください!!」

 リヒテルは、自身の思いの丈をその言葉に託し叫んだ。
 それを聞いた男性狩猟者ハンターは、顔を引きつらせていた。
 自分の言葉が伝わらなかったのかと思い、リヒテルはさらに言葉を重ねる。

「おじさん、狩猟者ハンターでしょ?僕は狩猟者ハンターになりたいんだ!!だから僕をおじさんの弟子にして!!」
「お、おじ、おじさ、おじさん……」

 男性狩猟者ハンターは、さらに顔を引きつらせる。
 ついに我慢が出来なくなったのか、男性狩猟者ハンターは声を大にして話だした。

「俺はおじさんじゃねぇ~っての!!それにだ、坊主は何歳だ?」
「僕は……7歳……」

 さらに男性狩猟者ハンターの顔が引きつっていく。
 気分を落ち着かせる為に煙草に手を伸ばし、プカリと一服をしていた。
 何度か煙草を吸いながら気分を落ち着かせた男性狩猟者ハンターは、リヒテルに向かってめんどくさそうに説明をし始めた。

「あのな坊主。確かに、7歳過ぎりゃ弟子になる資格を得る事が出来る。ただし、それは適性診断ジョブダイアグノースで資格ありと言われた奴だけだ。そして資格ありとなったら、狩猟者連合協同組合ハンターギルド狩猟者ハンター養成所で3年基礎勉強をする事になる。坊主が俺に弟子にしてくれって懇願したって事は、適性が無かったって事だろ?それで坊主を弟子にしたら、俺が今度は捕まっちまう。それに、両親にきちんと話をしてないだろ?」

 リヒテルは反論する事が出来なかった。
 男性狩猟者ハンターが言う通り、リヒテルにその資格は無かった。
 だからこその懇願であった。
 しかし、それも男性狩猟者ハンターには通じなかった。
 それでも諦め切れないリヒテルは男性狩猟者ハンターをじっと見つめていた。

「ダメだったらダメだ。ほら、ゲートまで送ってやる。ついてこい。」

 男性狩猟者ハンターはそう言うと、右腕の装置を操作して地図アプリを起動する。
 しかし何かおかしかったのか、何度も首をひねっていた。
 そして何か腑に落ちたのか、リヒテルの方へ向き直りマジマジとその顔を見ていた。

「あぁ~、なるほどな。そう言う事だったか。やっと理解できたぞ。坊主……諦めなければ叶う夢もある。坊主は坊主で今やれる事をやるんだ。それが坊主のこれからの人生を大きく変えていくからな。じゃあ行くぞ。」

 男性狩猟者ハンターはそう言うと、リヒテルの頭をガシガシとなでつけゲートに向かって歩き始めた。
 リヒテルは納得いかない顔でその後を追っていく。
 何とも奇妙な光景がそこにあったのだ。
 先行く男性狩猟者ハンターの顔には何やら笑みがこぼれていた。


 それからしばらくすると、行く手に高い壁が見えてくる。
 ADWを覆う外壁だ。
 そしてその中に大きな鉄の門が姿を現した。

「おい守衛!!どうなってる!!なんでガキがこんなところにいやがんだよ!!」
「そんなはず……は……。なんだって!?」

 男性狩猟者ハンターはゲートにつくなり、その場にいた守衛に怒鳴り散らす。
 ゲートで見張りをしていた男性は、男性狩猟者ハンターの言葉に耳を疑った。
 自分が見ている段階で子供は入り込んでいなかったはずだからだ。
 それなのに男性狩猟者ハンターの後ろには確かに少年が立っていた。

「それとな、こっから壁沿いに3kmくらい行った所の外壁に穴が開いてるぞ。ちゃんと補修しとけ。」
「本当ですか!?おい誰か、今の聞いてたな?早速調査してきてくれ!!」

 守衛の男性が待機室で寛いでいた別の守衛に声をかけ、現地に向かわせた。

「じゃあ、このガキを頼むぞ。それじゃあな坊主。絶対に無理だけはすんじゃねぇ~ぞ。この業界は自分を大事に出来ねぇ~奴は早死にしちまう。いいな?」
「はい……」

 リヒテルは守衛の男性に手を引かれ、門の外へと連れ出されていった。
 その間にも何度も何度も後ろを振り返り、男性狩猟者ハンターの顔を見つめる。

「頑張れよリヒテル・蒔苗!!」

 最後に聞こえた言葉にリヒテルは驚いた。
 どうして自分の名前を知っているのかと。
 一度も名のったことなど無かったのに……
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