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第1章 未来の物語
第2話 大型機械魔(デモニクス)戦の事後処理
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「腹壊すほど喰らいやがれ!!」
カチン
ゴオン!!
リヒテルがライフル型魔砲の引き金を引くと、激しい射出音と共に高エネルギー体が閃光となって直進して行く。
もちろんその先に居るのは大型機械魔である。
飛来するエネルギー体の気が付いた機械魔は、そのエネルギー体に向けて胴体から2本の副椀を伸ばした。
その副椀は根元から左右三方に分割され、六角の面を形成し、その副椀の先を頂点として透明な板が形成されていく。
ここでもまた、先程と同様の不快音が鳴り響く。
機械魔もまた、リヒテル同様に周囲の魔素を吸い上げて障壁を形成していたのである。
ドッゴォ~~~~~~~ン!!
その障壁が形成し終わるや否や、リヒテルの放った魔弾が到達したのだ。
激しくぶつかり合う魔弾と障壁。
近くに居れば、その衝撃だけで吹き飛ばされる勢いだ。
そのせいもあり、機械魔の周辺はその余波で地面が抉られていく。
「あめぇ~よ……」
リヒテルの呟きが、大きな衝突音によって掻き消されていた。
障壁にぶつかった魔弾は、一つ目の特性を発動させた。
それは吸着。
電撃の属性を備えた魔弾は、バリバリと音を立てながら粘土の様に障壁へ張り付き、全ての衝撃をその障壁に伝えていく。
ミシリ……ミシリと音を立てる障壁。
その障壁に徐々にひびが入り始めていく。
そして魔弾は二つ目の特性を発動させる。
それは爆発。
先程までの衝撃をも上回る大きな爆発が、周囲を巻き込んでいく。
その爆発は炎を纏うのでは無く、バリバリという雷撃音が周囲に木霊していた。
言うなればそれは〝爆雷〟……
凄まじい衝撃と電撃の雨に晒された大地は、至る所で放電現象により焼け焦げていく。
機械魔の副椀も無事では済まず、その衝撃で全損してしまった。
障壁を失った機械魔に、爆雷と衝撃が一斉に襲い掛かる。
身を守る術を失った機械魔は、瞬時に後方に飛び退こうとするも、自身の副椀で発生した電磁界により、その場に縫い留められてしまう。
それほどまでに電撃の属性が強力だったのだ。
幾秒の時間が経過したのか。
周囲の土煙や木々の焼けた煙が、徐々に晴れていく。
辺りに立ち籠める、空気と木々と大地が焼ける匂い。
黒く煤けた躯体を晒す機械魔。
周囲はクレーターでも出来たかの様に抉れていた。
更に至る所で、融解温度を超えた地面がガラスの様に変質していた。
そこに倒された木々の合間から太陽の光が降り注ぎ、キラキラと眩いばかりに光り輝いていた。
現状とはうって変わって、そこだけ幻想的な空間となっていた。
魔砲を構えたまま警戒を続けるリヒテルは、徐々に機械魔との距離を詰めていく。
そこに慢心は一切無く、いつでも次弾を撃てる様にと既に魔弾は展開済みだ。
機械魔まで残り100m……
先程まで静止していた機械魔はリヒテルに気が付いたのか、ギシギシと音を立てて稼働を始めた。
しかしメインとなる駆動脚はほぼ全損しており、まともに動く事は出来ずにいた。
武装のほとんどが焼け落ち、既に死に体と言っても過言ではなかった。
それでもなお機械魔の頭部は、リヒテルに照準を合わせていた。
何度も何度もピピピと音を鳴らし、目を赤く光らせる。
そのたびに武装が装着されていた場所のパーツが動こうと必死に藻掻いていた。
しかし、溶接でもされたかの様に動く事は叶わなかった。
次第に動きは緩慢になり、最後は頭部の目の光が失われた。
プシュー……
全身に行き渡っていた蒸気が抜けるかの様に、魔素が機械魔から抜け落ちていく。
それは大型機械魔の最後であった。
ピッ
「こちらリヒテル。応答願う。」
リヒテルは大型機械魔の亡骸に背を預け、一人煙草を燻らせる。
一息ついてから、仲間に無事を知らせる為に通信機の電源を入れなおすも、応答は無かった。
「ん?誰も出ねぇって……。まさかあっちでなんかあったか?」
リヒテルの独り言を拾ったかの様に、無線機から女性の声が聞こえてくる。
その声は今にも泣きそうでいて、それでも堪えに堪えた、そんな声だった。
「……ヒテル!!リヒテル無事なの!!返事をして!!」
声の主は、副隊長のレイラだ。
あまりの大音量に、リヒテルは通信機のイヤホンを自身の耳から遠ざけていた。
危うく鼓膜が破れるんじゃないかと思うほどの大音量だったのだ。
「聞こえてるよ。あまりでけぇ~声だすんじゃねぇよ。耳イカれたらどうすんだよ。」
レイラの悲痛な声を聴いて、あえて悪態を吐くリヒテル。
そんなリヒテルの声を聴いて、レイラは安堵の声を漏らしてた。
「よかった……無事でよかった……」
通信機越しに聞こえるレイラの声は、既に涙で震えていた。
リヒテルはその声に自身の生存を実感していた。
「ほう、つまり俺が死んじまうって思ってたのか?それは何とも嘆かわしい。」
それでもなお悪態を吐くリヒテルに、次第に苛立ちを覚えるレイラ。
その涙は既に止まっており、今はリヒテルに文句の一つでも言ってやろうかと憤りを顕わにしていた。
「レイラ。部隊をありがとう。それとただいま。」
リヒテルの不意打ちに、レイラはまた涙を流した。
リヒテルは通信機越しに聞こえるレイラの嗚咽に、苦笑いを浮かべていた。
いじめ過ぎたかと、少し反省をしていたリヒテルだった。
「わりい、いま正門に居るのか?」
「隊長、レイラ副隊長は使い物にならないので私が対応します。」
レイラに代わって通信してきたのは、年配の男性の声だった。
いかにも堅物と思われる言葉遣いと、若干の威圧を孕んだ声にリヒテルはものすごく嫌そうな表情を浮かべていた。
「げっ、劉も居たのかよ。」
「げとは何ですか、げとは。まあいいでしょう。レイラ副隊長から連絡を貰い駆け付けたまでです。それよりも赤字になるとかなんとか……どういう事か説明頂けますか?」
文句の一つも言わせるつもりもないと、劉と呼ばれた男性はリヒテルに対して説明を求めた。
リヒテルもまた今は疲れているので説明は後にしてほしかった。
「おっと、劉がいるんだったら話が早いな。すまんが回収部隊を派遣してくれ。座標を送信する。」
「やはり隊長でしたか。先ほどこちらにも爆音が聞こえて来たので、そうだろうと思い、すでに準備は整えてあります。」
劉は呆れ声でリヒテルに返答をした。
リヒテルは何が〝やはり隊長〟なのか小一時間問い正したい気分にかられたが、話だしたら完全に負けるのを理解していたのでグッと堪えたのだった。
「では、対応に移ります。」の言葉を最後に劉の通信が途切れた。
レイラの通信機のマイクからかすかに聞こえてくる劉の指示に、リヒテルはさすが劉だと感心してしまった。
そしてリヒテルは、右腕に装着していた機械を立ち上げる。
ブオンという音と共に、半透明の仮想ディスプレイが装置から浮き上がるようにして表示される。
「拡大展開」
リヒテルの声に反応するように、仮想ディスプレイが縦横50cmまで拡大される。
そのディスプレイに表示されたアプリケーションを、左手一本で器用に操作する。
そしてマップを開くと、今いる場所が表示されていた。
〝立入禁止区域ランク5〟
そこは、人類が長い年月をかけて機械魔を追い込んだ領域。
魔素が濃い場所には、それに合わせて強力な機械魔が存在する。
その為、魔素の薄い場所から徐々に機械魔の隔離を進めていったのだ。
そして今リヒテルがいる場所こそ、最高難易度を誇る立入禁止区域ランク5の地域なのだ。
立入禁止区域の周囲には対機械魔防壁(※以後ADW)と呼ばれる防壁が張り巡らされていた。
ADWは機械魔が嫌う周波数の音波を出すことによって近づかせないというものだ。
むろん人間には害はないが、人間の出入りが自由に行われては立入禁止区域の管理が出来ない為、更に周囲をコンクリート壁で覆い隠している。
出入りに関してはメインゲートと呼ばれる門からのみ行う事が出来るのだ。
リヒテルは表示されたマップに、自身の座標をピン打ちし、劉に送信する。
劉からも回収部隊の情報が送られてきており、マップには随時更新される回収部隊の状況が映し出されていた。
「これで完了だな。さてと……」
そう言うと、展開していた機械を収納し自身の影に目を落とした。
「そろそろ出てきたらどうだよ沢村教官。」
カチン
ゴオン!!
リヒテルがライフル型魔砲の引き金を引くと、激しい射出音と共に高エネルギー体が閃光となって直進して行く。
もちろんその先に居るのは大型機械魔である。
飛来するエネルギー体の気が付いた機械魔は、そのエネルギー体に向けて胴体から2本の副椀を伸ばした。
その副椀は根元から左右三方に分割され、六角の面を形成し、その副椀の先を頂点として透明な板が形成されていく。
ここでもまた、先程と同様の不快音が鳴り響く。
機械魔もまた、リヒテル同様に周囲の魔素を吸い上げて障壁を形成していたのである。
ドッゴォ~~~~~~~ン!!
その障壁が形成し終わるや否や、リヒテルの放った魔弾が到達したのだ。
激しくぶつかり合う魔弾と障壁。
近くに居れば、その衝撃だけで吹き飛ばされる勢いだ。
そのせいもあり、機械魔の周辺はその余波で地面が抉られていく。
「あめぇ~よ……」
リヒテルの呟きが、大きな衝突音によって掻き消されていた。
障壁にぶつかった魔弾は、一つ目の特性を発動させた。
それは吸着。
電撃の属性を備えた魔弾は、バリバリと音を立てながら粘土の様に障壁へ張り付き、全ての衝撃をその障壁に伝えていく。
ミシリ……ミシリと音を立てる障壁。
その障壁に徐々にひびが入り始めていく。
そして魔弾は二つ目の特性を発動させる。
それは爆発。
先程までの衝撃をも上回る大きな爆発が、周囲を巻き込んでいく。
その爆発は炎を纏うのでは無く、バリバリという雷撃音が周囲に木霊していた。
言うなればそれは〝爆雷〟……
凄まじい衝撃と電撃の雨に晒された大地は、至る所で放電現象により焼け焦げていく。
機械魔の副椀も無事では済まず、その衝撃で全損してしまった。
障壁を失った機械魔に、爆雷と衝撃が一斉に襲い掛かる。
身を守る術を失った機械魔は、瞬時に後方に飛び退こうとするも、自身の副椀で発生した電磁界により、その場に縫い留められてしまう。
それほどまでに電撃の属性が強力だったのだ。
幾秒の時間が経過したのか。
周囲の土煙や木々の焼けた煙が、徐々に晴れていく。
辺りに立ち籠める、空気と木々と大地が焼ける匂い。
黒く煤けた躯体を晒す機械魔。
周囲はクレーターでも出来たかの様に抉れていた。
更に至る所で、融解温度を超えた地面がガラスの様に変質していた。
そこに倒された木々の合間から太陽の光が降り注ぎ、キラキラと眩いばかりに光り輝いていた。
現状とはうって変わって、そこだけ幻想的な空間となっていた。
魔砲を構えたまま警戒を続けるリヒテルは、徐々に機械魔との距離を詰めていく。
そこに慢心は一切無く、いつでも次弾を撃てる様にと既に魔弾は展開済みだ。
機械魔まで残り100m……
先程まで静止していた機械魔はリヒテルに気が付いたのか、ギシギシと音を立てて稼働を始めた。
しかしメインとなる駆動脚はほぼ全損しており、まともに動く事は出来ずにいた。
武装のほとんどが焼け落ち、既に死に体と言っても過言ではなかった。
それでもなお機械魔の頭部は、リヒテルに照準を合わせていた。
何度も何度もピピピと音を鳴らし、目を赤く光らせる。
そのたびに武装が装着されていた場所のパーツが動こうと必死に藻掻いていた。
しかし、溶接でもされたかの様に動く事は叶わなかった。
次第に動きは緩慢になり、最後は頭部の目の光が失われた。
プシュー……
全身に行き渡っていた蒸気が抜けるかの様に、魔素が機械魔から抜け落ちていく。
それは大型機械魔の最後であった。
ピッ
「こちらリヒテル。応答願う。」
リヒテルは大型機械魔の亡骸に背を預け、一人煙草を燻らせる。
一息ついてから、仲間に無事を知らせる為に通信機の電源を入れなおすも、応答は無かった。
「ん?誰も出ねぇって……。まさかあっちでなんかあったか?」
リヒテルの独り言を拾ったかの様に、無線機から女性の声が聞こえてくる。
その声は今にも泣きそうでいて、それでも堪えに堪えた、そんな声だった。
「……ヒテル!!リヒテル無事なの!!返事をして!!」
声の主は、副隊長のレイラだ。
あまりの大音量に、リヒテルは通信機のイヤホンを自身の耳から遠ざけていた。
危うく鼓膜が破れるんじゃないかと思うほどの大音量だったのだ。
「聞こえてるよ。あまりでけぇ~声だすんじゃねぇよ。耳イカれたらどうすんだよ。」
レイラの悲痛な声を聴いて、あえて悪態を吐くリヒテル。
そんなリヒテルの声を聴いて、レイラは安堵の声を漏らしてた。
「よかった……無事でよかった……」
通信機越しに聞こえるレイラの声は、既に涙で震えていた。
リヒテルはその声に自身の生存を実感していた。
「ほう、つまり俺が死んじまうって思ってたのか?それは何とも嘆かわしい。」
それでもなお悪態を吐くリヒテルに、次第に苛立ちを覚えるレイラ。
その涙は既に止まっており、今はリヒテルに文句の一つでも言ってやろうかと憤りを顕わにしていた。
「レイラ。部隊をありがとう。それとただいま。」
リヒテルの不意打ちに、レイラはまた涙を流した。
リヒテルは通信機越しに聞こえるレイラの嗚咽に、苦笑いを浮かべていた。
いじめ過ぎたかと、少し反省をしていたリヒテルだった。
「わりい、いま正門に居るのか?」
「隊長、レイラ副隊長は使い物にならないので私が対応します。」
レイラに代わって通信してきたのは、年配の男性の声だった。
いかにも堅物と思われる言葉遣いと、若干の威圧を孕んだ声にリヒテルはものすごく嫌そうな表情を浮かべていた。
「げっ、劉も居たのかよ。」
「げとは何ですか、げとは。まあいいでしょう。レイラ副隊長から連絡を貰い駆け付けたまでです。それよりも赤字になるとかなんとか……どういう事か説明頂けますか?」
文句の一つも言わせるつもりもないと、劉と呼ばれた男性はリヒテルに対して説明を求めた。
リヒテルもまた今は疲れているので説明は後にしてほしかった。
「おっと、劉がいるんだったら話が早いな。すまんが回収部隊を派遣してくれ。座標を送信する。」
「やはり隊長でしたか。先ほどこちらにも爆音が聞こえて来たので、そうだろうと思い、すでに準備は整えてあります。」
劉は呆れ声でリヒテルに返答をした。
リヒテルは何が〝やはり隊長〟なのか小一時間問い正したい気分にかられたが、話だしたら完全に負けるのを理解していたのでグッと堪えたのだった。
「では、対応に移ります。」の言葉を最後に劉の通信が途切れた。
レイラの通信機のマイクからかすかに聞こえてくる劉の指示に、リヒテルはさすが劉だと感心してしまった。
そしてリヒテルは、右腕に装着していた機械を立ち上げる。
ブオンという音と共に、半透明の仮想ディスプレイが装置から浮き上がるようにして表示される。
「拡大展開」
リヒテルの声に反応するように、仮想ディスプレイが縦横50cmまで拡大される。
そのディスプレイに表示されたアプリケーションを、左手一本で器用に操作する。
そしてマップを開くと、今いる場所が表示されていた。
〝立入禁止区域ランク5〟
そこは、人類が長い年月をかけて機械魔を追い込んだ領域。
魔素が濃い場所には、それに合わせて強力な機械魔が存在する。
その為、魔素の薄い場所から徐々に機械魔の隔離を進めていったのだ。
そして今リヒテルがいる場所こそ、最高難易度を誇る立入禁止区域ランク5の地域なのだ。
立入禁止区域の周囲には対機械魔防壁(※以後ADW)と呼ばれる防壁が張り巡らされていた。
ADWは機械魔が嫌う周波数の音波を出すことによって近づかせないというものだ。
むろん人間には害はないが、人間の出入りが自由に行われては立入禁止区域の管理が出来ない為、更に周囲をコンクリート壁で覆い隠している。
出入りに関してはメインゲートと呼ばれる門からのみ行う事が出来るのだ。
リヒテルは表示されたマップに、自身の座標をピン打ちし、劉に送信する。
劉からも回収部隊の情報が送られてきており、マップには随時更新される回収部隊の状況が映し出されていた。
「これで完了だな。さてと……」
そう言うと、展開していた機械を収納し自身の影に目を落とした。
「そろそろ出てきたらどうだよ沢村教官。」
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