勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第7章 ここから始まる雁字搦め

五十八日目③ 第4層への覚悟

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「ふぅ~、とりあえずこんなところかな?」
「上出来じゃないか?」

 俺たちは【湿原のダンジョン】を順調に攻略していた。
 第3層でも問題なく行動する事が出来るようになってきた。
 俺とアリサの連携も問題ないレベルになってきたようだ。
 これについてはポールから及第点が出たようだった。

「それにしてもアリサはすごいね。攻撃をしつつ、バフデバフでずっとフル稼働だよね?」
「そうですね、スキル【並列思考】のおかげでしょうか。最近さらに精度が上がってきている気がしています。」

 どうやら皆にはスキルのレベルという概念がないようで、どちらかと言うと熟練度?的なものらしい。
 どれだけ使い込んだかでその威力だったり精度だったりが増すようだ。
 少し前にレベルの話をしたときのみんなの様子がおかしかったからなんでだろうと思ったら、これが原因だったみたいだ。
 俺と一緒にいると世界の常識が常識では何のでは?と思ってしまうらしい。
 
「第3層は問題ないみたいだな。」
「そうですね。やはり問題は第4層でしょうか。カイトさんとアリサの連携は問題ないですが、我々との練度の溝はいかんせん埋めがたいものがありますからね。」

 俺たちはあらかた第3層での戦闘を終えて、第4層への階段付近で簡易休息をとっていた。
 ポールとナンディーは第4層に進むか否かを悩んでいるようだった。
 当然その対象は俺とアリサ。
 前回同様の展開になった場合、うまく退避できるとは限らないからだ。
 
「一応ギルドが巡回してこの前のように【イレギュラー】の出没ってことはないみたいだけど、万が一の事があるしね。第4層は厳しいって言わざるを得ないよね。」
「そうね……こればかりは贔屓目に見ても厳しいわよね……」

 デイジーとエルダも同様に、俺たちを心配していた。
 こればっかりは経験の差だけあって埋めようにも埋められるものじゃない。
 アリサも何か言いたげだったけど、その言葉を飲み込むように沈黙を貫いた。
 
「八方ふさがりって感じか……」

 ポールの言葉が重くのしかかった。
 それだけ前回の失敗が俺たちに傷をつけていた。
 だけど……ここで止まって良いのか……
 これから俺はもっともっと冒険したいんじゃないのか?
 
「ごめん皆。もう一度チャンスをもらえないかな。皆の心配も分かるんだ。だけどこの剣の性能を信じてみたいんだ。ここまで戦ってみて、この剣の性能が今までとは段違いだってよくわかった。それにここを超えないと俺は前に進めないんだろ?だったら進むしかないと思う。」

 俺は腰に下げた新し相棒にそっと手を添える。
 第3層での戦闘力は格段に上がった。
 移動速度とか上がったわけじゃない。
 手数だって同じだ。
 だけどその一撃一撃の攻撃力は比ではなかった。
 だから俺はこの剣を……ココットを信じることにした。

 ナンディーが俺に視線を向けてきた。
 何か確認するような……そして探るように。
 俺はナンディーが何を考えているのかは分からない。
 だけどナンディー的に何か感じるものがあったのか、ふむと一つ頷くと、ポールにまた視線を移した。
 
「そうですね……カイトさんの覚悟も決まったようですし、ここはひとつ試しに進んでみませんか?」

 ナンディーはそう言うとにこやかに笑みを浮かべる。
 そこにはすでに俺を止めようという意思は感じられなかった。
  
「ナンディーもこう言ってることだし、エルダ……どうする?俺はナンディーに賛成するが。」
「分かったわ。この前の二の前にならないように、私たちが全力でフォローする。アリサも頑張って!!」

 ポールも諦めたというよりは、納得してくれたんだと思う。
 小さくため息を吐くポール。
 なんか今度胃薬準備してあげた方が良いのかな?
 むしろポーションで治りそうな気もしなくはないな。

 エルダはポールとナンディーにこうまで言われれば反対するつもりはないらしい。
 俺をってよりもアリサに向けてエールを送っていた。
 デイジーはうんうんと頷いていたから、同意と受け取っていいと思う。

 そしてそんなこんなで俺たちは第4層に足を踏み入れたんだけど……



「なあ、ポール……」
「なんだ、カイト……」

 第4層に降りると、そこには数匹のスライムたちがいた。
 この前であった【スライムヘッジホッグ】と【マッドスライム】なんだが……俺たちは肩透かしを食らっていた。
 確かに第3層に比べてスライムたちの連携は強さを増していた。
 だけど、この前のあの惨状に比べたら可愛さすら感じる。
 
「あの時の状況って本当に【イレギュラー】のせいだったんだな……」
「そうだな……」

 おそらく俺たちが見ていない所で【イレギュラー】個体がこの群れを成業していたんだろうって答えに落ち着いた。
 そうでも考えなければこの落差は説明がつかなすぎる。
 しかもさっきから【ヒーリングスライム】にすらほとんど出会わない。
 出没数から考えても前回が異常だったってことは理解できた。

 そのおかげもあってか俺たちは順調に第4層を探索していく。
 時折見かける群に少してこずったりしたものの、全体通してみれば無難に戦闘をこなせるようになってきていた。

 この階に降りるまでの俺の覚悟と決意を返してほしいって心の底から思ってしまったのは内緒だ。
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