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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十七日目⑳ お姫様?
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「って言うことがあったんだ。」
「お前は……また面倒ごとを持ってきたな……」
俺たちは冒険者ギルドへとんぼ返りし、今目の前でシャバズのおっちゃんが頭を抱えている。
もちろん【ワイルドクロウ】にも一緒に来てもらっているんだけど……まさかCランク冒険者だったとは……
先輩!!お世話になります!!
って冗談を言える空気じゃなかった。
説明を聞いたおっちゃんはすぐに俺が持ってきた遺体を調べるように職員さんに手配していた。
遺体については俺がアイテムボックスの中の収納箱(簡易)にしまって持ってきてあった。
まさか遺体もちゃんと収納できるとは思わなかったけど。
それでも放置すればあのままダンジョンに吸収されていた可能性もある。
証拠品って言えば聞こえが悪いけど、現にそんな感じになってしまった。
「我々は一度本国に帰ってこの件について族長会議に上げるつもりです。ロレット……ローラルシュレット・グル・ルクルーシス姫が襲われたとなればなおのことですから。」
え?今なって言った?
姫って言わなかった?
俺は機械油が切れたロボットのように、ギギギと音が鳴りそうな感じで、首を横に向けた。
そう、俺の隣に座るっているのが当の本人だった。
ロレットはバツの悪そうな顔で、ポリポリと頬を掻いていた。
なんで姫が冒険者なんてやってんのよ。
しかも他国で!!
「なんと……これは失礼いたしました。礼を失したこれまでの言動平にご容赦願いたい。」
姫と知ってからおっちゃんの態度が一気に変わった。
そりゃそうか、相手は他国の姫様。
いくら王政を取ってないとはいえ、族長娘ってことはそれなりの地位にあるってことだしね。
うん、俺帰っていいかな?
とりあえずおっちゃんとロレット……王女?姫?まいっかどっちでも、が話し合いを重ねていた。
俺たちはどちらかと言うと巻き込まれたかんじだから、とりあえず置物と化しておこう。
「では、私たちはこれより本国へ帰還いたします。ギルドマスターよりシュミット陛下へのご報告をお願いいたします。」
「分かりました。元老院議員の一人として対応いたします。」
どうやら大人の話し合い?は終わったようで、何か握手を交わしていた。
正直政治の話はさっぱりだ。
特に王国制だったり部族制だったり、現代日本で生活していた俺からしたらなじみが無さすぎる。
むしろ物語の中の話でしか理解していない。
「カイト、お前たちにはこの後まだ話があるから残ってくれ。キャサリン、殿下たちをお送りして差し上げろ。」
「いえ、ここからは一介の冒険者に戻ります。」
それを固辞したのはロレットだった。
あくまでもこの部屋を出たらCランク冒険者【ワイルドクロウ】のロレットってことにしたいみたいだ。
でもなんでお姫様が冒険者なんか?って思ったのは俺だけじゃないはずだ。
まあ、その辺はお国事情だったり、本人たちの意思なんかもあるだろうから、俺が詮索したって意味はないんだけどね。
「カイトさん、今回のご助力感謝いたします。」
「いえ、たまたま通りかかっただけですから。」
俺たちはこうして【ワイルドクロウ】と握手を交わして別れたのだった。
「で、シャバズのおっちゃん。俺たちに残れって言ってのって、【トリスタン王国】の剣だよな?」
「そうだ。姫にはその件も併せて書状を手渡す。これで国際問題はあらかた防げるだろうが、【トリスタン王国】との問題は何ら解決していない。」
おっちゃんはそう言うとテーブルに置かれたお茶に手を伸ばした。
さすがに少し時間が経っていたのか、すでにぬるくなっていたみたいで、一気に煽り飲んでいた。
「でだ、お前たちにこの件に口をつぐんでほしい。まあ理由は……わかるわな。」
おっちゃんはそう言うとアリサに視線を送った。
アリサもその視線に気が付いたようで、一瞬びくりとしていたが、その目には覚悟の灯が灯っていた。
「そうですね、おそらく【トリスタン王国】と【ゴーヨクォート正教国】の合同作戦だと思います。」
「理由はどう考える?」
アリサの答えに一つ頷いたおっちゃんはさらに答えを求めた。
なんかほんときな臭すぎませんかこれ。
「ギルドの連携不全を狙ったんではないでしょうか。【シュミット王国】と獣王国【ライオット】の不仲は、そのまま【エルフィンド】にも及びます。そんな状況を【ユグドラシア帝国】が見逃すはずはありません。」
「だろうな……」
なんかアリサの受け答えが、年相応に見えないんだけど……
これが教育格差ってやつなんだろうか。
デイジーも俺と同じで話に付いて行けてないようだ。
うんうんと分かったようにうなずいてはいるけど、目が泳ぎまくっている。
「今回はお前たちが対応してくれたことで、なんとか体裁は保てた。だが裏工作がこの国で行われていると考えていいだろうな。」
「狙いはやっぱり……」
おっちゃんはめんどくさそうに頭を掻いていた。
ポールも話の内容が分かっているのか、おっちゃんに確認しようとしていた。
あれ?もしかしてポールって実はインテリ?脳筋と見せかけてのインテリだったの⁈
うん、この流れなんとなくわかる。
この国の衰退を狙ってるってことだけは、政治に疎い俺でもわかるさ。
俺のスローライフはまだまだ先の様だ。
「お前は……また面倒ごとを持ってきたな……」
俺たちは冒険者ギルドへとんぼ返りし、今目の前でシャバズのおっちゃんが頭を抱えている。
もちろん【ワイルドクロウ】にも一緒に来てもらっているんだけど……まさかCランク冒険者だったとは……
先輩!!お世話になります!!
って冗談を言える空気じゃなかった。
説明を聞いたおっちゃんはすぐに俺が持ってきた遺体を調べるように職員さんに手配していた。
遺体については俺がアイテムボックスの中の収納箱(簡易)にしまって持ってきてあった。
まさか遺体もちゃんと収納できるとは思わなかったけど。
それでも放置すればあのままダンジョンに吸収されていた可能性もある。
証拠品って言えば聞こえが悪いけど、現にそんな感じになってしまった。
「我々は一度本国に帰ってこの件について族長会議に上げるつもりです。ロレット……ローラルシュレット・グル・ルクルーシス姫が襲われたとなればなおのことですから。」
え?今なって言った?
姫って言わなかった?
俺は機械油が切れたロボットのように、ギギギと音が鳴りそうな感じで、首を横に向けた。
そう、俺の隣に座るっているのが当の本人だった。
ロレットはバツの悪そうな顔で、ポリポリと頬を掻いていた。
なんで姫が冒険者なんてやってんのよ。
しかも他国で!!
「なんと……これは失礼いたしました。礼を失したこれまでの言動平にご容赦願いたい。」
姫と知ってからおっちゃんの態度が一気に変わった。
そりゃそうか、相手は他国の姫様。
いくら王政を取ってないとはいえ、族長娘ってことはそれなりの地位にあるってことだしね。
うん、俺帰っていいかな?
とりあえずおっちゃんとロレット……王女?姫?まいっかどっちでも、が話し合いを重ねていた。
俺たちはどちらかと言うと巻き込まれたかんじだから、とりあえず置物と化しておこう。
「では、私たちはこれより本国へ帰還いたします。ギルドマスターよりシュミット陛下へのご報告をお願いいたします。」
「分かりました。元老院議員の一人として対応いたします。」
どうやら大人の話し合い?は終わったようで、何か握手を交わしていた。
正直政治の話はさっぱりだ。
特に王国制だったり部族制だったり、現代日本で生活していた俺からしたらなじみが無さすぎる。
むしろ物語の中の話でしか理解していない。
「カイト、お前たちにはこの後まだ話があるから残ってくれ。キャサリン、殿下たちをお送りして差し上げろ。」
「いえ、ここからは一介の冒険者に戻ります。」
それを固辞したのはロレットだった。
あくまでもこの部屋を出たらCランク冒険者【ワイルドクロウ】のロレットってことにしたいみたいだ。
でもなんでお姫様が冒険者なんか?って思ったのは俺だけじゃないはずだ。
まあ、その辺はお国事情だったり、本人たちの意思なんかもあるだろうから、俺が詮索したって意味はないんだけどね。
「カイトさん、今回のご助力感謝いたします。」
「いえ、たまたま通りかかっただけですから。」
俺たちはこうして【ワイルドクロウ】と握手を交わして別れたのだった。
「で、シャバズのおっちゃん。俺たちに残れって言ってのって、【トリスタン王国】の剣だよな?」
「そうだ。姫にはその件も併せて書状を手渡す。これで国際問題はあらかた防げるだろうが、【トリスタン王国】との問題は何ら解決していない。」
おっちゃんはそう言うとテーブルに置かれたお茶に手を伸ばした。
さすがに少し時間が経っていたのか、すでにぬるくなっていたみたいで、一気に煽り飲んでいた。
「でだ、お前たちにこの件に口をつぐんでほしい。まあ理由は……わかるわな。」
おっちゃんはそう言うとアリサに視線を送った。
アリサもその視線に気が付いたようで、一瞬びくりとしていたが、その目には覚悟の灯が灯っていた。
「そうですね、おそらく【トリスタン王国】と【ゴーヨクォート正教国】の合同作戦だと思います。」
「理由はどう考える?」
アリサの答えに一つ頷いたおっちゃんはさらに答えを求めた。
なんかほんときな臭すぎませんかこれ。
「ギルドの連携不全を狙ったんではないでしょうか。【シュミット王国】と獣王国【ライオット】の不仲は、そのまま【エルフィンド】にも及びます。そんな状況を【ユグドラシア帝国】が見逃すはずはありません。」
「だろうな……」
なんかアリサの受け答えが、年相応に見えないんだけど……
これが教育格差ってやつなんだろうか。
デイジーも俺と同じで話に付いて行けてないようだ。
うんうんと分かったようにうなずいてはいるけど、目が泳ぎまくっている。
「今回はお前たちが対応してくれたことで、なんとか体裁は保てた。だが裏工作がこの国で行われていると考えていいだろうな。」
「狙いはやっぱり……」
おっちゃんはめんどくさそうに頭を掻いていた。
ポールも話の内容が分かっているのか、おっちゃんに確認しようとしていた。
あれ?もしかしてポールって実はインテリ?脳筋と見せかけてのインテリだったの⁈
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俺のスローライフはまだまだ先の様だ。
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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