勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

文字の大きさ
上 下
318 / 322
第7章 ここから始まる雁字搦め

五十七日目⑳ お姫様?

しおりを挟む
「って言うことがあったんだ。」
「お前は……また面倒ごとを持ってきたな……」

 俺たちは冒険者ギルドへとんぼ返りし、今目の前でシャバズのおっちゃんが頭を抱えている。
 もちろん【ワイルドクロウ】にも一緒に来てもらっているんだけど……まさかCランク冒険者だったとは……
 先輩!!お世話になります!!

 って冗談を言える空気じゃなかった。

 説明を聞いたおっちゃんはすぐに俺が持ってきた遺体を調べるように職員さんに手配していた。
 遺体については俺がアイテムボックスの中の収納箱(簡易)にしまって持ってきてあった。
 まさか遺体もちゃんと収納できるとは思わなかったけど。
 それでも放置すればあのままダンジョンに吸収されていた可能性もある。
 って言えば聞こえが悪いけど、現にそんな感じになってしまった。

「我々は一度本国に帰ってこの件について族長会議に上げるつもりです。ロレット……ローラルシュレット・グル・ルクルーシス姫が襲われたとなればなおのことですから。」

 え?今なって言った?
 姫って言わなかった?
 俺は機械油が切れたロボットのように、ギギギと音が鳴りそうな感じで、首を横に向けた。
 そう、俺の隣に座るっているのが当の本人だった。
 ロレットはバツの悪そうな顔で、ポリポリと頬を掻いていた。
 
 なんで姫が冒険者なんてやってんのよ。
 しかも他国で!!

「なんと……これは失礼いたしました。礼を失したこれまでの言動平にご容赦願いたい。」

 姫と知ってからおっちゃんの態度が一気に変わった。
 そりゃそうか、相手は他国の姫様。
 いくら王政を取ってないとはいえ、族長娘ってことはそれなりの地位にあるってことだしね。

 うん、俺帰っていいかな?
 とりあえずおっちゃんとロレット……王女?姫?まいっかどっちでも、が話し合いを重ねていた。
 俺たちはどちらかと言うと巻き込まれたかんじだから、とりあえず置物と化しておこう。

「では、私たちはこれより本国へ帰還いたします。ギルドマスターよりシュミット陛下へのご報告をお願いいたします。」
「分かりました。元老院議員の一人として対応いたします。」

 どうやら大人の話し合い?は終わったようで、何か握手を交わしていた。
 正直政治の話はさっぱりだ。
 特に王国制だったり部族制だったり、現代日本で生活していた俺からしたらなじみが無さすぎる。
 むしろ物語の中の話でしか理解していない。

「カイト、お前たちにはこの後まだ話があるから残ってくれ。キャサリン、殿下たちをお送りして差し上げろ。」
「いえ、ここからは一介の冒険者に戻ります。」

 それを固辞したのはロレットだった。
 あくまでもこの部屋を出たらCランク冒険者【ワイルドクロウ】のロレットってことにしたいみたいだ。
 でもなんでお姫様が冒険者なんか?って思ったのは俺だけじゃないはずだ。
 まあ、その辺はお国事情だったり、本人たちの意思なんかもあるだろうから、俺が詮索したって意味はないんだけどね。

「カイトさん、今回のご助力感謝いたします。」
「いえ、たまたま通りかかっただけですから。」

 俺たちはこうして【ワイルドクロウ】と握手を交わして別れたのだった。


「で、シャバズのおっちゃん。俺たちに残れって言ってのって、【トリスタン王国】の剣だよな?」
「そうだ。姫にはその件も併せて書状を手渡す。これで国際問題はあらかた防げるだろうが、【トリスタン王国】との問題は何ら解決していない。」

 おっちゃんはそう言うとテーブルに置かれたお茶に手を伸ばした。
 さすがに少し時間が経っていたのか、すでにぬるくなっていたみたいで、一気に煽り飲んでいた。

「でだ、お前たちにこの件に口をつぐんでほしい。まあ理由は……わかるわな。」

 おっちゃんはそう言うとアリサに視線を送った。
 アリサもその視線に気が付いたようで、一瞬びくりとしていたが、その目には覚悟の灯が灯っていた。

「そうですね、おそらく【トリスタン王国】と【ゴーヨクォート正教国】の合同作戦だと思います。」
「理由はどう考える?」

 アリサの答えに一つ頷いたおっちゃんはさらに答えを求めた。
 なんかほんときな臭すぎませんかこれ。

「ギルドの連携不全を狙ったんではないでしょうか。【シュミット王国】と獣王国【ライオット】の不仲は、そのまま【エルフィンド】にも及びます。そんな状況を【ユグドラシア帝国】が見逃すはずはありません。」
「だろうな……」

 なんかアリサの受け答えが、年相応に見えないんだけど……
 これが教育格差ってやつなんだろうか。
 デイジーも俺と同じで話に付いて行けてないようだ。
 うんうんと分かったようにうなずいてはいるけど、目が泳ぎまくっている。

「今回はお前たちが対応してくれたことで、なんとか体裁は保てた。だが裏工作がこの国で行われていると考えていいだろうな。」
「狙いはやっぱり……」

 おっちゃんはめんどくさそうに頭を掻いていた。
 ポールも話の内容が分かっているのか、おっちゃんに確認しようとしていた。
 あれ?もしかしてポールって実はインテリ?脳筋と見せかけてのインテリだったの⁈

 うん、この流れなんとなくわかる。
 この国の衰退を狙ってるってことだけは、政治に疎い俺でもわかるさ。
 
 俺のスローライフはまだまだ先の様だ。
しおりを挟む
本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
感想 77

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。