勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第7章 ここから始まる雁字搦め

五十七日目⑲ 暗躍

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 俺の剣が何かにぶつかった気がした。
 俺は構わず剣を振りぬく。

パギャン!!
 
 何かが割れる音と共に、俺の右手が妙に軽くなった。
 答えは簡単だ。
 ついに魔法に耐えきれなくなった剣が、自壊したのだ。
 根本から粉々になってしまった剣は、今は柄以外何も残っていない。
 ごめん……相棒。

「バカな!!【黒鎖】が砕かれるだと⁈ありえない!!ありえない!!こんな小国の低ランク冒険者風情に!!この私の【黒鎖】が敗れるはずはない!!私は帝国のエリートだぞ!!」

 そんなにそれが破られたことが悔しかったのだろうか。
 黒ローブの男はべらべらと何かを話し始めた。
 しかも〝帝国のエリート〟って言っちゃってるし……
 あほなの?
 それともわざと?
 まあどっちでもいいか、これが本当ならば、国際問題じゃないんだろうか……
 なんか違う意味で眩暈がしてきた。

「で、そのエリートさんがこんな場所までわざわざ来て、いやがらせでもしてこうってことかな?」

 俺は新しく買った剣をアイテムボックスから取り出し、ローブ男へとむける。
 
 奴が言っていた【黒鎖】ってモノが破壊されたせいか、さっきまで生き生き?と動いていた人族の遺体はぱたりとその動きを止め、地面へと崩れ落ちていた。
 しかも武器として自分の骨を抜き出して形成していたせいで、遺体はふにゃふにゃになっていた。
 くそグロテスクなんですけど⁈

「くそ!!まさかこんなことで作戦が中断されるとは……覚えていろ!!」

 男はそう言うと、懐から何かを取り出すと、地面へたたきつけた。
 それと同時に激しい光の渦と轟音が俺たちの目と耳を機能不全に陥らせる。

 やられた!!
 ってなると思ってるんだろうか

 俺はスキル【マッピング】を発動させ、そいつをマーキングする。
 いくら目や耳が使えなくとも、思考までは奪えなかったようだ。
 そのおかげで、奴に気付かれることなく印をつける事が出来た。
 これについては一度ギルドに報告が必要だろうな。

 全く、せっかくの合宿が台無しだ。


 しばらくして全員の感覚が戻り、念の為ナンディーとミリアが回復魔法を施してくれた。
 全員それほど大きな傷を負っているわけではなかったが、まあ本当に念の為だ。

「それにしても奴の狙いが分からないな。」

 ぐにゃぐにゃになった人族の遺体を前にポールとナンディー、ロレットが首をかしげていた。
 人族の首には冒険者証がぶら下がていて、それによってCランク冒険者パーティーであることは確認できた。
 しかし、Cランク冒険者がなぜ遅れをとって殺害されたのか。
 そしてなぜ【ビーストクロウ】を襲ったのか。
 完全に謎となってしまった。

「さすがにこの件は本国に連絡しないとだめだろうな。」
「本国……獣人国【ライアット】か?」

 獣人国【ライアット】……
 それは獣人たちが住まう国。
 と言っても、国王がいるわけではなく、あくまでも実力主義の部族制。
 各部族間は緊密に連携しており、意思決定も部族長会議で行われている。
 脳筋というわけではないそうだ。
 なぜそれほどまでに緊密に連携しているのか。
 それはあの【ゴーヨクォート正教国】が関係してくる。
 彼らは純粋に人族主義。
 しかも一神教だ。
 自然の中に神がいるとういう自然崇拝の獣人国【ライアット】やエルフが住まう国【エルフィンド】は、存在自体があり得ない。
 そう言った思想なんだそうな。

「そうだ。今でこそこうやって人族と手を取り合ってはいるが、こういう状況であれば報告せざるを得ないな。」

 何やら渋い顔のアレックスがその会話に入ってきた。
 それを肯定するようにルーカスもやってきた。

「アレックス、今回の件は何かきな臭いわね。」
「確かにな。俺たちがやられていたら〝人族に獣人族が襲われて死んだ〟っていう状況だけが残るからな。」

 おっとアレックスって脳筋じゃなかったのか……ってごめんなさい。
 どうやら俺の顔に何かが出ていたようで、アレックスにめっちゃ睨まれてしまった。
 話の腰を折ってすみません……

「そう言えばさっきの黒ローブの男〝帝国のエリート〟って口走っていたけど、それってなんか関係あるかな?」

 俺が聞いたワード〝帝国のエリート〟。
 この辺で〝帝国のエリート〟って言えば【ユグドラシア帝国】ってことなんだけど、今って不可侵条約とか締結してるんじゃなかったの?
 冒険者都市【アポカリテ】の関係上で。

「〝帝国〟……本当にそうなのか……」

 ポールは何か引っかかりのようなものを感じているようだった。
 その状況を一般させたのはアリサだった。

「あの、さっきの男……もしかして【黒鎖】って言ってませんでしたか?」
「そうだね、確かに【黒鎖】って言ってた。それがどうかしたの?」

 アリサからの質問に、俺が聞いた言葉と一致していたことを伝えた。
 それを聞いたアリサは驚きと同時に何か考え込んでしまった。
 つまりあれか、アリサも関係しているってことか?

「カイト様……おそらくですが相手は【トリスタン王国】の暗部です。そしてその【黒鎖】はうわさにしか聞いたことはありませんが、暗部が使う暗器魔導具【黒鎖】だと思います。」

 初めて聞いた〝暗器魔導具〟……
 おそらく暗器の分類だとは思いうんだけど、それの魔導具バージョンってことかな?
 それにしてもあの【黒鎖】、まさに攻防一体って感じがした。
 攻撃をアンデットの操作で行い、自分は鎖で防御。
 俺も剣を一本犠牲にしてやっと壊せた感じだし。
 もしダメだったらと思うとぞっとする。

「だがなぜ【トリスタン王国】が?」

 結果として謎が深まるばかりであった。
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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