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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十七日目⑯ 不測の事態
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「それじゃあ行くとしますか。」
「そうだな。忘れ物もないはずだし、問題ないだろう。買い物も万全だったんだろ?」
冒険者ギルドを後にした俺たちは、荷物の最終確認を行い東門へと向かった。
ちなみに、ジルさんたちにはそっと解毒ポーション(低)を渡しておいた。
そうしないといつまでも酒場に屍が転がっていることになりそうだったから。
エルダの目が尊敬から虫を見る目に変わっていたのは気にしてはいけないのだろう。
【湿原のダンジョン】に到着した俺たちは、受付を済ませるとすぐに中に入ることにした。
その際受付の魔族の男性から耳打ちをされたんだけど、どうやら中で問題が発生していそうなんだとか。
それも魔物が関係している事ではないという話だった。
つまり人族同士の問題。
うん、絶対面倒ごとだ。
俺たちは互いに目を合わせると、言葉をかけることなく意思疎通を完了させた。
〝絶対関わらない〟
そう心に誓ったのだった。
それから順調に第3層まで進むことが出来、俺の中でさっきの話が頭の片隅に追いやられていった。
此処まで順調なんだから、その問題というやつも解決したんじゃないかって。
でも油断は禁物、忘れたころにやってくるって言うのはまさにこのことだったんだろうな。
どう見ても人族同士での戦闘行為が行われていたのだった。
「くそ油断した!!」
「アレックス!!こいつら普通じゃない!!」
俺たちはさすがに見て見ぬふりは出来ないと感じ、とりあえず様子見をすることにした。
明らかにヤバそうなら介入はさせてもらうつもりでいた。
そんな中緊迫した会話が続く。
アレックスと呼ばれた男性は……うん、獣人族、それも狼とか犬とかそんな感じだな。
もう一人の女性も獣人族で、こっちは恐らく猫。
どっちも既に傷を負っており、大分劣勢だ。
その後ろには後衛職の弓士……こっちも獣人族だろうね。
ただ気になるのは……あれは……羽?
あとさらにその後ろに倒れている盾持ちとそれを介抱している回復職かな?
あとは一人……こっちはすきを窺っているからどっちの仲間かは分からない。
「ちっ!!ミリア!!ジャックの回復は間に合うか⁈」
「アレックス慌てさせないで!!あと少しよ!!ジャック行ける⁈」
後方支援でも緊迫状態で、大分いら立っているようだった。
盾職がジャックで回復職がミリアか。
そんな感じで状況確認していると、相手方の様子がおかしいって話に合点がいった。
なんせ目が血走り、口から泡を吹いている。
どう見ても普通じゃない。
これはどっちに味方するかは一目瞭然だな。
「ただいま。」
「おかえりカイト、どうだった。」
俺はスキルを全発動させて状況偵察を行っていた。
その甲斐もあって判断材料には事欠かない。
「エルダ、皆、あっちの獣人族たちのパーティーのフォローをしよう。どうもあっちの人族パーティーは普通じゃない。薬でも決めてるんじゃないかってくらい異常だ。」
「そうだね、私が見ても異常なのはわかったよ。はっきりとは見えなかったけど、どうも操られているって感じもするね。」
俺の意見に賛成したデイジーが追加で情報を上げてくれた。
さすがデイジー、良い目をしているよ。
「それでは私の出番というわけですね。」
やる気満々のナンディーは何か不敵な笑みを浮かべていた。
まさかと思うけど、ここでも勧誘活動をしようって言うんじゃないだろうな?
あれだけおとなしくしろって陛下に言われたばかりじゃないか……
「よし、一気に介入して制圧するぞ。相手は正気じゃない。無理に生け捕りにしようとは考えなくていい。こちらの損害はなるべく出さないように!!」
ポールの言葉に一瞬緊張が走る。
それはそうだ、言外に〝生死問わず〟と言っているんだから。
ナンディーもエルダもデイジーも覚悟は決まっているようだった。
あとは俺とアリサ。
でもそれも杞憂に終わった。
アリサの目にも迷いはなかった。
うん、大丈夫、行ける!!
「俺とカイトで人族パーティーを抑える。アリサとナンディーは獣人族パーティーの保護と回復。エルダとデイジーは各自援護を。行くぞ!!」
「おう!!」
こうして突発的な対人戦闘が始まったのだった。
見事にフラグ改修となったわけだ。
だけどこの時俺は重大なミスを犯していた。
そう、もう一人の存在。
獣人パーティーは5人。
人族パーティーは6人。
もう一人は〝獣人族パーティーの残り一人〟と思い込んでしまっていたのだ。
これが後になって俺たちを苦しめるとはこの時の俺は予想だにしていなかった。
「助太刀する!!」
ポールがタワーシールドでシールドバッシュを行い、人族パーティーの前衛を一気に押し出した。
俺もそれに追従し、剣を振るう。
さすがに対人戦だけあって魔物とは違った感じがしたけど、操られているせいなのか、こいつらの動きはかなり単調だった。
そのおかげで俺もその攻撃を捌き切ることが出来たんだけど。
後方ではナンディーが回復を行っており、アリサもポーションを使いまくっていた。
そのおかげで獣人族パーティーのメンバーは回復が完了し、戦線に復帰する事が出来た。
「助力感謝する!!パーティーメンバー5人全員無事だ!!」
「さっさと制圧するぞ!!」
こうして戦力が一気に増した俺たちは、人族パーティーを制圧したのだった。
「そうだな。忘れ物もないはずだし、問題ないだろう。買い物も万全だったんだろ?」
冒険者ギルドを後にした俺たちは、荷物の最終確認を行い東門へと向かった。
ちなみに、ジルさんたちにはそっと解毒ポーション(低)を渡しておいた。
そうしないといつまでも酒場に屍が転がっていることになりそうだったから。
エルダの目が尊敬から虫を見る目に変わっていたのは気にしてはいけないのだろう。
【湿原のダンジョン】に到着した俺たちは、受付を済ませるとすぐに中に入ることにした。
その際受付の魔族の男性から耳打ちをされたんだけど、どうやら中で問題が発生していそうなんだとか。
それも魔物が関係している事ではないという話だった。
つまり人族同士の問題。
うん、絶対面倒ごとだ。
俺たちは互いに目を合わせると、言葉をかけることなく意思疎通を完了させた。
〝絶対関わらない〟
そう心に誓ったのだった。
それから順調に第3層まで進むことが出来、俺の中でさっきの話が頭の片隅に追いやられていった。
此処まで順調なんだから、その問題というやつも解決したんじゃないかって。
でも油断は禁物、忘れたころにやってくるって言うのはまさにこのことだったんだろうな。
どう見ても人族同士での戦闘行為が行われていたのだった。
「くそ油断した!!」
「アレックス!!こいつら普通じゃない!!」
俺たちはさすがに見て見ぬふりは出来ないと感じ、とりあえず様子見をすることにした。
明らかにヤバそうなら介入はさせてもらうつもりでいた。
そんな中緊迫した会話が続く。
アレックスと呼ばれた男性は……うん、獣人族、それも狼とか犬とかそんな感じだな。
もう一人の女性も獣人族で、こっちは恐らく猫。
どっちも既に傷を負っており、大分劣勢だ。
その後ろには後衛職の弓士……こっちも獣人族だろうね。
ただ気になるのは……あれは……羽?
あとさらにその後ろに倒れている盾持ちとそれを介抱している回復職かな?
あとは一人……こっちはすきを窺っているからどっちの仲間かは分からない。
「ちっ!!ミリア!!ジャックの回復は間に合うか⁈」
「アレックス慌てさせないで!!あと少しよ!!ジャック行ける⁈」
後方支援でも緊迫状態で、大分いら立っているようだった。
盾職がジャックで回復職がミリアか。
そんな感じで状況確認していると、相手方の様子がおかしいって話に合点がいった。
なんせ目が血走り、口から泡を吹いている。
どう見ても普通じゃない。
これはどっちに味方するかは一目瞭然だな。
「ただいま。」
「おかえりカイト、どうだった。」
俺はスキルを全発動させて状況偵察を行っていた。
その甲斐もあって判断材料には事欠かない。
「エルダ、皆、あっちの獣人族たちのパーティーのフォローをしよう。どうもあっちの人族パーティーは普通じゃない。薬でも決めてるんじゃないかってくらい異常だ。」
「そうだね、私が見ても異常なのはわかったよ。はっきりとは見えなかったけど、どうも操られているって感じもするね。」
俺の意見に賛成したデイジーが追加で情報を上げてくれた。
さすがデイジー、良い目をしているよ。
「それでは私の出番というわけですね。」
やる気満々のナンディーは何か不敵な笑みを浮かべていた。
まさかと思うけど、ここでも勧誘活動をしようって言うんじゃないだろうな?
あれだけおとなしくしろって陛下に言われたばかりじゃないか……
「よし、一気に介入して制圧するぞ。相手は正気じゃない。無理に生け捕りにしようとは考えなくていい。こちらの損害はなるべく出さないように!!」
ポールの言葉に一瞬緊張が走る。
それはそうだ、言外に〝生死問わず〟と言っているんだから。
ナンディーもエルダもデイジーも覚悟は決まっているようだった。
あとは俺とアリサ。
でもそれも杞憂に終わった。
アリサの目にも迷いはなかった。
うん、大丈夫、行ける!!
「俺とカイトで人族パーティーを抑える。アリサとナンディーは獣人族パーティーの保護と回復。エルダとデイジーは各自援護を。行くぞ!!」
「おう!!」
こうして突発的な対人戦闘が始まったのだった。
見事にフラグ改修となったわけだ。
だけどこの時俺は重大なミスを犯していた。
そう、もう一人の存在。
獣人パーティーは5人。
人族パーティーは6人。
もう一人は〝獣人族パーティーの残り一人〟と思い込んでしまっていたのだ。
これが後になって俺たちを苦しめるとはこの時の俺は予想だにしていなかった。
「助太刀する!!」
ポールがタワーシールドでシールドバッシュを行い、人族パーティーの前衛を一気に押し出した。
俺もそれに追従し、剣を振るう。
さすがに対人戦だけあって魔物とは違った感じがしたけど、操られているせいなのか、こいつらの動きはかなり単調だった。
そのおかげで俺もその攻撃を捌き切ることが出来たんだけど。
後方ではナンディーが回復を行っており、アリサもポーションを使いまくっていた。
そのおかげで獣人族パーティーのメンバーは回復が完了し、戦線に復帰する事が出来た。
「助力感謝する!!パーティーメンバー5人全員無事だ!!」
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こうして戦力が一気に増した俺たちは、人族パーティーを制圧したのだった。
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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