勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第7章 ここから始まる雁字搦め

五十七日目① これからの事

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 昨日は緊張しっぱなしの一日だった。
 各ギルドとの調整はシャバズのおっちゃんがしてくれるみたいだから、ある程度はぶん投げてもいいとは思うけど、さすがにレティシア教についてはぶん投げられないな。
 ある程度はこっちで何とかしないといけないけど、結局はナンディーとアリサ……あとはヘティ殿下次第だってのがなぁ~
 やっと面倒ごとが解決すると思ったんだけど、やっぱりそうは問屋が卸さなかったみたいだ。
 とはいえ、それもこれも全てはこれから。
 だったらうだうだ考えても仕方がないな。



 ベットから起きた俺いつものように朝の身支度をしてリビングに向かった。
 
「おはようみんな。」
「……おはよう……」

 あれ?エルダの様子が変?
 もしかして……昨日の話をまだひきづってるの⁈
 え?ちょっと待って、誤解だって言ったよね?
 俺、エルダ一筋なんだけど⁈

 俺は慌ててエルダに駆け寄ると、エルダはうつむいたまま小刻みに震えていた。
 待って、俺エルダ泣かせるつもりなんてこれっぽちもないのに……
 
「エルダ……」
「うっ……ふふっ……あははははっ。ごめんカイト……昨日の仕返し!!すぐにごはん準備するね。」

 え?え?え?

 俺はポールたちに油の切れた機械のように視線を送る。
 皆そっと俺から視線を外していた。

 うん、グルかよ!!
 でもよかった……嫌われてなくて。
 
 それからいつものように朝食を始めると、いつもより少し豪華な気がした。
 俺の好きな卵焼きなんかもついていた。
 エルダの笑顔も戻ってるし、ひと段落と言って良いだろうか。



「それじゃあ、今日からの目標なんだけど、いよいよ【鉱山跡地ダンジョン】を進めようと思う。」
「そうだな、装備も第10層に対応しているだろうし、これなら問題ないだろう。」

 朝食を終えた俺たちは、今日からの目標について話し合った。
 出来る事なら数日中には【鉱山跡地ダンジョン】の第10層ボス部屋の【リザードマン】討伐まではいきたいけど、それも俺とアリサ次第だろうな。

「エルダはどう思う?」
「そうね、あとは【鉱山跡地ダンジョン】を第9層まで潜ってみて連携確認をして考えるしかないかしらね。防具は問題ないでしょうけど、武器が少し心もとない気もしなくはないわ。」

 そう言えばそうだった。
 防具の更新はしていたけど、武器の更新はそんなにしてなかった気がする。
 というよりも、俺の【DIY】スキルのレシピにそれらしいものがないんだよね。
 恐らく【鉱山跡地ダンジョン】を進めて鉱石関連が増えればそっちも増えるだろうけど……こればっかりは俺が同行できないんだよな。
 いっそギルドに行って鉱石を触ってきた方が良いんだろうか?
 でもそれは俺の流儀に半数気もするし……でも仲間の命には代えられないよな……
 どうしたもんかね……

「カイト……また何か良くないこと考えてるでしょ?」
「いや、そんなんじゃないんだけど……武器のレシピってどうやって増やせばいいんだろうなって。」

 なんだそんなことかって呆れ顔のデイジー。
 此処まで沈黙していたナンディーも同様に呆れ顔だった。

「そこは買ってもよいのではないですか?別にカイトさんが造った武器防具しか使ってはいけないルールなど無いんですから。無い物をどうしようと悩むより、さっさと手に入れて別なことに時間を使った方がよいのではないですか?」
「あ……そう言えばそうだ。なんで俺無駄にこだわってたんだろ?うん、ポールとナンディー、このあと少し付き合ってくれるか?」

 俺はいきなり思考がクリアになった気がした。
 何か霞が買っていた物が取れる、そんな感じだった。

「それじゃあ、カイトの武器の調達とか準備が終わり次第【鉱山跡地ダンジョン】の探索ってことでいい?」
「ですが、連携の確認はまだ必要となるでしょうね。そうなれば合宿を行うことを提案します。ランクが上がればダンジョン内で野営なんかもするでしょうし。ですよねエルダさん。」

 デイジーがなんかいい感じにしめようとしたけど、それをナンディーが遮る形となった。

「そうね、高ランクになればダンジョン内に数か月潜ることもあるわ。さすがにそんなときはサポートパーティーを雇ったり、自分たちのクランでそれをまかなったりするけど、さすがに物資が足りなくなるわ。その点私たちはカイトとデイジーのおかげで物資の不足はそうそう怒らないでしょうけど、疲労はどうにもできないわ。こればかりはなれが必要だもの。」

 エルダの言っていることはもっともだと思う。
 あの閉鎖された空間で、全員気を抜いて爆睡したら確実にモンスターたちの餌食になってしまう。
 それを避けるためにも野営訓練は必要不可欠ってことだよな。

 そう言う訳で、俺たちは【湿原のダンジョン】で3日間の合宿を行うことにしたのだ。
 物資関連は俺とデイジーで手分けすることにした。
 どちらかに偏らせると、不測の事態になった時対応できないからだ。
 互いに回復薬や食料を分担することにした。
 そう、物資については問題ない。
 ただ、【湿原のダンジョン】の第4層……
 俺は若干のトラウマを抱えてしまった。
 この状態で戦えるか不安がある。
 それを払拭するための合宿でもあるんだけど……

「カイト、準備は大丈夫?」

 不安が俺の顔に現れていてのか、エルダが話しかけてくれた。

「あぁ、大丈夫。大丈夫……」

 俺は強がってみたものの、自分でもわかるくらいに声が震えていた。
 どんだけ頑張っても、どこかで緊張が募ってしまったようだった。

「大丈夫よ。今回は第3層……、というよりは第2層での合宿だもの。問題無いわよ。」
「そうだな。なんとしてもみんなとの連携をつかんで、【リザードマン】までたどり着かないと。」

 俺の返答にエルダはどこか困った顔をしていた。
 なんでだろうか?

「ほらまた。〝しないといけない〟って思っちゃだめだから。カイトはカイト。カイトが出来る事をしたらいいわ。むしろ出来ない事までしようとしない事。良いわね?」
「……?!」

 なんだか俺が考えている事を見透かされている気がしてしまった。
 俺がみんなの連携の足を引っ張っているのは、自分が良く分かってる。
 だからこそ〝頑張らないといけない〟んだから……と。
 それを見透かされていたのだろうか……

「ほらまた。そうやって怖い顔をしない事。」

 そう言うとエルダは俺に近寄ってきてグイっと顔を近づけると……
 グリグリと俺の眉間のしわを伸ばし始めた。
 少し怒ったような、それでいて少し困ったような顔をしていた。

「カイト、そろそろ行くぞ。」
「行きましょうカイトさん。」

 ポールとアリサが、【森のアナグマ亭】の扉をくぐり出ていった。

「おいてくよ~。」
「さて、では参りましょうか。」

 デイジーは元気よくポールを追いかけていった。
 ナンディーもレティシアに挨拶を終えたようで、そのまま出て行ってしまった。

「行くわよカイト。」
「あぁ。」

 俺の焦る気持ちは既にどこか行ったようで、少しだけ元気が出た。
 エルダはそんな俺を見て、「よし」と言いながら俺の前を歩いていた。

「いってらっしゃい、おねぇ~ちゃん!!」
「リリーちゃん行ってきます!!」

 リリーちゃんの見送りを背に、俺たちは冒険者ギルドへと向かったのだった。
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