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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十六日目⑪ 爆弾投下!!
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「まず議題内容だが……。ヘンリエッテ、お前の輿入れ先についてだ。皆にもある程度話はしたと思うが、東武国の次期王帝に決めておった。」
「お父様!!それは私がお断りしたはずです!!」
ヘティ殿下はこれまた強い語気で真っ向から否定した。
普通こういうのって自分の意見がほぼ通らないんじゃないの?って思ってしまった。
政略結婚ってのが貴族の中での通例なわけだし……って言ったらこれ偏見なのかな?
「まぁ、待ちなさいヘンリエッテ。属国というわけでも無く、友好国として考えた場合、お前の嫁ぎ先としては最適と考えておったのだがな。」
陛下の考えはもっともだった。
本来は王家筋の直系ではないヘティ殿下が家格的にも最適だったのだろう。
しかし、王家直系となった今は家格が問題になってきてしまったようだ。
もしヘティ殿下が嫁げば東武国に強い影響力を持ってしまう。
それでは他国との釣り合いが取れなくなってしまう可能性が高い。
だからこその、公爵家としてのヘティ殿下がちょうどよかったとも言えるわけだ。
さすが政略結婚だな。
若干不満そうに話を聞いていた魔道具ギルドギルドマスターのマイさんだったが、不用意な発言は避けた様だ。
マイさんとしては格下扱いされたようにも見えなくはないわけだし。
そんなタイミングでマイさんの視線が俺に向けられる。
なんで俺が毎度毎度睨まれるの?!
俺何も悪くないからね⁈
クラクネルさんとロイドさんからはエルフィンドではダメかと話が上がったが、あそこは王政を取っておらず、族長会議で運営されている。
だからこそどこかの族長に輿入れするとなると、バランスが崩れてしまう恐れがあった。
西方諸国連合も同様で、小さい国の集まりであるがために難しい。
獣人国ライオネルは力がすべてで、人族を受け入れるとは到底思えない。
正教国・トリスタンは現在仮想敵国になる為論外。
帝国は……うん、完全に生贄だね。
帝国そのものは今は沈黙を保っていた。
昔は〝全てを帝国に〟って侵略戦争をしていたらしいけど。
今はそれが落ち着いており、それが逆に不気味さを醸し出していた。
そこにヘティ殿下が輿入れとなると、話は変わってくる。
〝シュミット王国はユグドラシア帝国に下った〟と見えるからだそうだ。
俺には政治的力学とか分からないけど、とりあえず東武国一択だったってのは良く分かった。
それからもああでもないこうでもないとヘティ殿下の嫁ぎ先について話し合いは続いたが、結論は出ずにいた。
さすがに疲れてきたのか、隣で話を聞いていたアリサがあくびを始めてしまった。
どうやら緊張感も途切れてしまい、疲れが表立ってしまったらしい。
そんな時、陛下の悪い癖が出てきた。
「これはもういっそのことカイトの嫁に出すのも一つかの?なぁ、ヘンリエッテよ。」
なんつう事言い出すんだよ!!
見ろみんなが……
皆が……
あれ?
なんで反対意見が出ないんだ?
「お、お父様!!な、な、何をいきなり!!わ、私にだって心の準備というものが!!」
なんでそんなに狼狽してんのさ殿下?!
そしてそこのおっさん!!何ニヤニヤしてやがる!!仮にも国王だろうが!!
マジでここにエルダ連れてこなくて正解だった。
絶対に俺殺される……
「陛下、さすがに戯れが過ぎます。殿下も困っておいでではありませんか。」
俺はよそ行きの言葉で陛下に苦言を呈してみた。
しかし陛下には暖簾に腕押し。
そう言われるのは分かっていたとでも言いたげな顔をいしていた。
「すまぬすまぬ。どうも状況が打開出来ぬものでな。それと良いものが見れたので良しとしようではないか。」
「お父様!!」
そう言うと陛下は、機嫌よく豪快に笑って見せた。
ヘティ殿下もそんな陛下に普段の口調が表に出ていた。
和やかと言えばいいのか、二人の普段のやり取りが垣間見えた気がする。
「だがなカイトよ、お主ならば任せてもいいと思っているのは本当だ。お主の人柄は〝人畜無害〟〝ヘタレ〟と報告を受けておる。しかも惚れた女の為にはその命を懸ける覚悟すらあると聞いておる。そんな男に嫁げるのは、ある意味で幸せかもしれんからの。」
「陛下……さすがにそれは盛り過ぎです。俺はあくまでもゆったりまったり生きていきたいんです。その為にする努力は惜しみませんが、俺から問題ごとの首を突っ込む気は有りませんよ?」
全く、俺を正義のヒーローみたく担ごうとするのはやめてほしものだな。
「(ですが……カイト様なら……)」
ん?ヘティ殿下が何かつぶやいた気がしたけど、聞き取れなかったな。
とりあえずこの話はきっぱり断らないとな。
「それにです、俺はエルダが好きです。他の女性に目を向ける気は有りませんよ?」
「それはそれは……ヘンリエッテよ、こういった一途な男もよかろう?」
全く諦める様子もない陛下。
さすがにこれ以上は俺も怒っていいよね?
「陛下……そろそろカイトがキレるからやめといた方が得策ですよ?」
「そうであったな。すまんすまん、つい面白くなってしまっての。カイトよ、すまなんだな。」
陛下はくつくつと笑いを堪えつつ、謝辞を述べていた。
どうやら俺は陛下に遊ばれていたらしいな。
俺の純情を返せ!!
「それにしてもエルダも幸せ者だの、これだけ思ってもらえるだからな。」
そんなこんなでグダグダなまま元老院議会は終了したのだった。
ただ一人、ヘティ殿下は終始うつむいたままだったけど。
「お父様!!それは私がお断りしたはずです!!」
ヘティ殿下はこれまた強い語気で真っ向から否定した。
普通こういうのって自分の意見がほぼ通らないんじゃないの?って思ってしまった。
政略結婚ってのが貴族の中での通例なわけだし……って言ったらこれ偏見なのかな?
「まぁ、待ちなさいヘンリエッテ。属国というわけでも無く、友好国として考えた場合、お前の嫁ぎ先としては最適と考えておったのだがな。」
陛下の考えはもっともだった。
本来は王家筋の直系ではないヘティ殿下が家格的にも最適だったのだろう。
しかし、王家直系となった今は家格が問題になってきてしまったようだ。
もしヘティ殿下が嫁げば東武国に強い影響力を持ってしまう。
それでは他国との釣り合いが取れなくなってしまう可能性が高い。
だからこその、公爵家としてのヘティ殿下がちょうどよかったとも言えるわけだ。
さすが政略結婚だな。
若干不満そうに話を聞いていた魔道具ギルドギルドマスターのマイさんだったが、不用意な発言は避けた様だ。
マイさんとしては格下扱いされたようにも見えなくはないわけだし。
そんなタイミングでマイさんの視線が俺に向けられる。
なんで俺が毎度毎度睨まれるの?!
俺何も悪くないからね⁈
クラクネルさんとロイドさんからはエルフィンドではダメかと話が上がったが、あそこは王政を取っておらず、族長会議で運営されている。
だからこそどこかの族長に輿入れするとなると、バランスが崩れてしまう恐れがあった。
西方諸国連合も同様で、小さい国の集まりであるがために難しい。
獣人国ライオネルは力がすべてで、人族を受け入れるとは到底思えない。
正教国・トリスタンは現在仮想敵国になる為論外。
帝国は……うん、完全に生贄だね。
帝国そのものは今は沈黙を保っていた。
昔は〝全てを帝国に〟って侵略戦争をしていたらしいけど。
今はそれが落ち着いており、それが逆に不気味さを醸し出していた。
そこにヘティ殿下が輿入れとなると、話は変わってくる。
〝シュミット王国はユグドラシア帝国に下った〟と見えるからだそうだ。
俺には政治的力学とか分からないけど、とりあえず東武国一択だったってのは良く分かった。
それからもああでもないこうでもないとヘティ殿下の嫁ぎ先について話し合いは続いたが、結論は出ずにいた。
さすがに疲れてきたのか、隣で話を聞いていたアリサがあくびを始めてしまった。
どうやら緊張感も途切れてしまい、疲れが表立ってしまったらしい。
そんな時、陛下の悪い癖が出てきた。
「これはもういっそのことカイトの嫁に出すのも一つかの?なぁ、ヘンリエッテよ。」
なんつう事言い出すんだよ!!
見ろみんなが……
皆が……
あれ?
なんで反対意見が出ないんだ?
「お、お父様!!な、な、何をいきなり!!わ、私にだって心の準備というものが!!」
なんでそんなに狼狽してんのさ殿下?!
そしてそこのおっさん!!何ニヤニヤしてやがる!!仮にも国王だろうが!!
マジでここにエルダ連れてこなくて正解だった。
絶対に俺殺される……
「陛下、さすがに戯れが過ぎます。殿下も困っておいでではありませんか。」
俺はよそ行きの言葉で陛下に苦言を呈してみた。
しかし陛下には暖簾に腕押し。
そう言われるのは分かっていたとでも言いたげな顔をいしていた。
「すまぬすまぬ。どうも状況が打開出来ぬものでな。それと良いものが見れたので良しとしようではないか。」
「お父様!!」
そう言うと陛下は、機嫌よく豪快に笑って見せた。
ヘティ殿下もそんな陛下に普段の口調が表に出ていた。
和やかと言えばいいのか、二人の普段のやり取りが垣間見えた気がする。
「だがなカイトよ、お主ならば任せてもいいと思っているのは本当だ。お主の人柄は〝人畜無害〟〝ヘタレ〟と報告を受けておる。しかも惚れた女の為にはその命を懸ける覚悟すらあると聞いておる。そんな男に嫁げるのは、ある意味で幸せかもしれんからの。」
「陛下……さすがにそれは盛り過ぎです。俺はあくまでもゆったりまったり生きていきたいんです。その為にする努力は惜しみませんが、俺から問題ごとの首を突っ込む気は有りませんよ?」
全く、俺を正義のヒーローみたく担ごうとするのはやめてほしものだな。
「(ですが……カイト様なら……)」
ん?ヘティ殿下が何かつぶやいた気がしたけど、聞き取れなかったな。
とりあえずこの話はきっぱり断らないとな。
「それにです、俺はエルダが好きです。他の女性に目を向ける気は有りませんよ?」
「それはそれは……ヘンリエッテよ、こういった一途な男もよかろう?」
全く諦める様子もない陛下。
さすがにこれ以上は俺も怒っていいよね?
「陛下……そろそろカイトがキレるからやめといた方が得策ですよ?」
「そうであったな。すまんすまん、つい面白くなってしまっての。カイトよ、すまなんだな。」
陛下はくつくつと笑いを堪えつつ、謝辞を述べていた。
どうやら俺は陛下に遊ばれていたらしいな。
俺の純情を返せ!!
「それにしてもエルダも幸せ者だの、これだけ思ってもらえるだからな。」
そんなこんなでグダグダなまま元老院議会は終了したのだった。
ただ一人、ヘティ殿下は終始うつむいたままだったけど。
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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