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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十六日目⑨ 現人神……って言われたくないらしい
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「まずは当人から話を聞くのがいいでしょうな。カイト殿、詳しいいきさつを教えていただけますかな?」
若干トゲの有る声で、ブルーノ宰相は俺に話を振ってきた。
俺はどう説明して良いか迷ってしまった。
ありのまま説明しても良いけど、いろいろと問題が有りそうだった。
そんな困り顔の俺を見ていたナンディーが、隣で挙手をしていた。
「発言を許していただけますでしょうか。」
「かまいません。」
発現許可の下りたナンディーは、レティシアの存在を軽くだけ説明し、論点をレティシアが女神になってからに持って行った。
これによりレティシアが〝宝石人間〟であることが伏せられたのだ。
俺が説明に困った理由はこれだからだ。
あらかた説明が終わり、レティシアは半分白目になっていた。
ブルーノ宰相以下議員のメンバーで事情を知らなかった者たちは、みな訝し気な眼でナンディーを見つめていた。
ブルーノ宰相はレティシアに断りを入れてから、【鑑定】のスキルを発動させる。
そこには確かに【職業:女神】【称号:レティシア教主神】が明記されていた。
つまり、レティシアは現人神である事が承認された瞬間だったのだ。
「さすがにこれは……。陛下……」
「うむ、認めざるを得ないな……」
ブルーノ宰相は自身が確認した情報を陛下へ伝えた。
陛下もまたその情報を聞き、渋々という様子だった。
その様子に異議を唱えたのはヘティ殿下だった。
「陛下、お言葉ですが何たる言い草ですか!!人間風情が現人神で在らせられるレティシア様を〝認定〟などと何たる暴言!!言語道断!!今すぐ訂正してくださいませ!!」
その言葉をとても強烈で、陛下も少し怖気づいたように見える。
しかしそこはこの国のトップ。
娘に弱いところを見せるわけにはいかなかったのか、すぐにその表情は威厳を醸し出していた。
リヒター隊長も一応近衛騎士として、ヘティ殿下を諫めるが内心は快く思っていないことがその眼から読み取れた。
陛下……
なんで俺を睨むんですか?
俺何もしてませんからね?
陛下としては俺に矛先を向ける以外なかったのかもしれない。
その視線はとても鋭く、俺の胃を直撃してきた。
マジで胃薬が欲しいです……
「シュミット名誉司祭。おやめなさい。ここは元老院です。場をわきまえましょう。」
そう言い放ったのはナンディーだった。
その言葉は〝殿下と臣民〟としてではなく〝教祖と信者〟の関係を現していた。
ナンディーは敢えてそうしたのは良く分かった。
ナンディーの一喝にヘティ殿下はすぐにその矛を収めたのだった。
ヘティ殿下とのやり取りを見ていると、ヘティ殿下が狂信者化しないか本気で心配になってきた。
レティシアは……だめだ、もう意識が飛びかけてる……。
誰も現人神で在るレティシアの意見を聞こうとしないあたりが……レティシアの不憫さを物語っていた。
「まずは現状を理解できたので良しとしよう……」
「さようですな。皆も話は理解出来ましたかな?」
元老院内に無言の肯定が示される。
誰一人異議を唱えなかったのだ。
むしろ、この状況で異議を唱えたところで、現にこうしているわけだから話が通らないのは明白だ。
「しかし……問題は問題だ。正教国が黙ってはいないぞ?」
そう声を上げたのは……確か、ロイドさん!!……だったと思う。
今回はヘティ殿下がまだ少し興奮状態の為、助けが入らなかった。
アリサもいたけど、アリサはまだ人物が理解出来ていなかったのであてには出来なかった。
「あ、あの、ちょっと、い、いいですか?」
何処からともなく聞こえるか細い声……確か宝飾ギルドのギルマス、ガイスラーさんだったかな。
危うく禁句が漏れそうになったよ……
「ガイスラー殿どうされました?」
ブルーノ宰相がガイスラーさんに話を振ると、おどおどとしながら席を立った。
というより、席に立ったという方が正しいのか?
っと、殺気を感じたのは気のせいだろうか?
「ちっ……。あ、あの、正教会ですが……、今の段階だと問題は無いかと思いますです……。宝石関連の仕入れの関係上で……、と、トリスタン王国の情報も入ってきますが、正教国には伝わっていないはずです。ただそれも時間の問題だと思いますです、はい……。」
え?今最初舌打ちから入らなかったの?
しかも俺の方を向いて……気のせいだよな?
とても大事な話なのに終始自信なさげに話すもんだから、最後はシリギレトンボよろしく徐々にかすれていった。
ただ、今のところって限定条件付きなのは気にかかるな。
「陛下、そのあたりは何か情報は有りませんか?」
シャバズのおっちゃんも自前の情報網を持っているはずだけど、敢えて陛下に話を振って見せた。
恐らく答えのすり合わせをしたいのだと思う。
「ふむ、その辺は儂も心配してはおらん。今のところはという事じゃがな。儂の方でも探りは強化するが……冒険者ギルドも何か掴んでいるのであろう?」
「さようですな。今は正教国に直接支部が無いお陰で正確性に欠けますが……帝国の支部からの情報も鑑みれば間違いなく……正教国はかなりごたついているでしょうからな。」
おっと、ここで新たな情報が飛び出したぞ。
そのほかのギルマスも何か頷いていたから、情報を得ているんだろうけど……
俺何にも知らんよ?
話置いてけぼりだよ?
それでも話は続いていった。
若干トゲの有る声で、ブルーノ宰相は俺に話を振ってきた。
俺はどう説明して良いか迷ってしまった。
ありのまま説明しても良いけど、いろいろと問題が有りそうだった。
そんな困り顔の俺を見ていたナンディーが、隣で挙手をしていた。
「発言を許していただけますでしょうか。」
「かまいません。」
発現許可の下りたナンディーは、レティシアの存在を軽くだけ説明し、論点をレティシアが女神になってからに持って行った。
これによりレティシアが〝宝石人間〟であることが伏せられたのだ。
俺が説明に困った理由はこれだからだ。
あらかた説明が終わり、レティシアは半分白目になっていた。
ブルーノ宰相以下議員のメンバーで事情を知らなかった者たちは、みな訝し気な眼でナンディーを見つめていた。
ブルーノ宰相はレティシアに断りを入れてから、【鑑定】のスキルを発動させる。
そこには確かに【職業:女神】【称号:レティシア教主神】が明記されていた。
つまり、レティシアは現人神である事が承認された瞬間だったのだ。
「さすがにこれは……。陛下……」
「うむ、認めざるを得ないな……」
ブルーノ宰相は自身が確認した情報を陛下へ伝えた。
陛下もまたその情報を聞き、渋々という様子だった。
その様子に異議を唱えたのはヘティ殿下だった。
「陛下、お言葉ですが何たる言い草ですか!!人間風情が現人神で在らせられるレティシア様を〝認定〟などと何たる暴言!!言語道断!!今すぐ訂正してくださいませ!!」
その言葉をとても強烈で、陛下も少し怖気づいたように見える。
しかしそこはこの国のトップ。
娘に弱いところを見せるわけにはいかなかったのか、すぐにその表情は威厳を醸し出していた。
リヒター隊長も一応近衛騎士として、ヘティ殿下を諫めるが内心は快く思っていないことがその眼から読み取れた。
陛下……
なんで俺を睨むんですか?
俺何もしてませんからね?
陛下としては俺に矛先を向ける以外なかったのかもしれない。
その視線はとても鋭く、俺の胃を直撃してきた。
マジで胃薬が欲しいです……
「シュミット名誉司祭。おやめなさい。ここは元老院です。場をわきまえましょう。」
そう言い放ったのはナンディーだった。
その言葉は〝殿下と臣民〟としてではなく〝教祖と信者〟の関係を現していた。
ナンディーは敢えてそうしたのは良く分かった。
ナンディーの一喝にヘティ殿下はすぐにその矛を収めたのだった。
ヘティ殿下とのやり取りを見ていると、ヘティ殿下が狂信者化しないか本気で心配になってきた。
レティシアは……だめだ、もう意識が飛びかけてる……。
誰も現人神で在るレティシアの意見を聞こうとしないあたりが……レティシアの不憫さを物語っていた。
「まずは現状を理解できたので良しとしよう……」
「さようですな。皆も話は理解出来ましたかな?」
元老院内に無言の肯定が示される。
誰一人異議を唱えなかったのだ。
むしろ、この状況で異議を唱えたところで、現にこうしているわけだから話が通らないのは明白だ。
「しかし……問題は問題だ。正教国が黙ってはいないぞ?」
そう声を上げたのは……確か、ロイドさん!!……だったと思う。
今回はヘティ殿下がまだ少し興奮状態の為、助けが入らなかった。
アリサもいたけど、アリサはまだ人物が理解出来ていなかったのであてには出来なかった。
「あ、あの、ちょっと、い、いいですか?」
何処からともなく聞こえるか細い声……確か宝飾ギルドのギルマス、ガイスラーさんだったかな。
危うく禁句が漏れそうになったよ……
「ガイスラー殿どうされました?」
ブルーノ宰相がガイスラーさんに話を振ると、おどおどとしながら席を立った。
というより、席に立ったという方が正しいのか?
っと、殺気を感じたのは気のせいだろうか?
「ちっ……。あ、あの、正教会ですが……、今の段階だと問題は無いかと思いますです……。宝石関連の仕入れの関係上で……、と、トリスタン王国の情報も入ってきますが、正教国には伝わっていないはずです。ただそれも時間の問題だと思いますです、はい……。」
え?今最初舌打ちから入らなかったの?
しかも俺の方を向いて……気のせいだよな?
とても大事な話なのに終始自信なさげに話すもんだから、最後はシリギレトンボよろしく徐々にかすれていった。
ただ、今のところって限定条件付きなのは気にかかるな。
「陛下、そのあたりは何か情報は有りませんか?」
シャバズのおっちゃんも自前の情報網を持っているはずだけど、敢えて陛下に話を振って見せた。
恐らく答えのすり合わせをしたいのだと思う。
「ふむ、その辺は儂も心配してはおらん。今のところはという事じゃがな。儂の方でも探りは強化するが……冒険者ギルドも何か掴んでいるのであろう?」
「さようですな。今は正教国に直接支部が無いお陰で正確性に欠けますが……帝国の支部からの情報も鑑みれば間違いなく……正教国はかなりごたついているでしょうからな。」
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俺何にも知らんよ?
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それでも話は続いていった。
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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