勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第7章 ここから始まる雁字搦め

五十六日目⑧ 元老院議会

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 ギルド間連絡会議が終わってから少し時間が経つと、休憩の為各々の部屋に戻っていたギルドマスターたちが会議場へ戻ってきた。
 それと時同じくして、もう一人の男性が入ってきた。
 その人はさっきまでクラクネルさんが座っていた議長席に腰を下ろしていた。
 周りの人も何も言わないことから、それが当たり前の事なんだと思うけど……

 だれ?

「カイト様……。宰相のブルーノ・リンゲンですわ。元老院議会議長を務めています。ただし発言権は無く、あくまでも司会進行役としているだけですが。」

 ここでも殿下がそっと耳打ちしてくれた。
 ほんと助かります。

「へぇ~、発言権もない感じ?」
「そうですね。ブルーノは王族に連なるもんですから、ここで発言権を持ってしまうと元老院の中立性が崩れかねませんから。」

 つまりあくまで中立の立場で議会運営をする人って事か。
 よくもここまで徹底できたもんだよね。
 シュミット陛下ががんばったんだろうね。
 国民に開かれた政治と言えば聞こえはいいけど、それだけ周囲に信の置けるものがそろっていないとできはしないことだろうね。
 もしこれが欲にまみれた家臣が多かったら、この会だってただのお飾りになってしまう。
 だけど、今は各ギルドのギルドマスターが主体となって話し合いが行われ、臣民に対していろんな意味での利益配分が行われている。
 その施策の一環として孤児院や養護施設などの拡充も進めている。
 平民用の〝学校〟も運営を開始した。
 貴族用の〝学園〟とは違い、この先生きていくのに必要な基礎知識などを学ぶことが出来るそうだ。
 それもこれもこの元老院がきちんと機能して無駄な議題や予算が一気に削られた余剰資金が当てられているんだそうな。

 そんな感じで殿下からの説明を聞いていると、ブルーノ宰相の咳払いが聞こえてきた。
 どうやらついに始まるらしいね。
 元老院議会狸の化かし合いが……

「それではこれより元老院議会の開催を宣言します。」

 年はおそらく60代くらい?
 背中もしゃきっとしていて、ロマンスグレーの紳士然として、ちょっと憧れる年の取り方をした人物だ。
 声も良く通り、覇気も感じさせる。
 ちょっと気の弱い人なら、委縮してしまいそうになるだろうな。
 
 リンゲン宰相は、元老院議会を始めるにあたり出席者全員の出欠を確認した。
 どうやら、非可決にかかわることらしいので毎度行われるらしい。
 なんだか学校のホームルームみたいに思えた。

「参加者は11議員中11となり、この会議は成立するものとする。」

 この宣言をもって議会が始められるそうだ。

 それからいくつか王国議会から上がってきた議題の精査が行われていた。
 ただ、あくまでもここは中立な立場が求められ、上がってきた議題について話し合われる。
 その中にはなんで議会を通ったのか分からないものも含まれる。
 恐らく多数派工作が成功した議題だったりするんだろうけど……
 前の議会なら通ったらしいが、今ではここでシャットダウンされるそうだ。
 そこもまたヘティ殿下が教えてくれた。

「ではこれにて王国議会からの議題に伴う、決議を終了といたします。続いては緊急議題として取り上げます、〝レティシア教〟についてです。ではヘンリエッテ・フォン・シュミット殿下、レティシア殿、ナンディーモ・コークル殿、アリサ・トーマン殿、カイト・イシダテ殿。オブザーバー席へどうぞ。」

 ついに俺たちにもお呼びがかかった。
 ブルーノ宰相から示されたのは議員席の周りに設置されている席だった。
 案内役の職員に連れられて、俺たちはその席に移動したのだった。

「それではカール・フォン・シュミット国王陛下もご臨席となるので、今しばらくお待ちください。」
 
 って、まだ開始しないのかい⁈
 
 ……どうやらまだ陛下が到着していなかったので、少しばかり時間が空いてしまったようだった。
 その間ずっと視線を感じていた。
 その出どころは考えるまでもなくブルーノ宰相だった。
 なんだか俺はいたたまれなくなってしまった。
 
 敢えて俺はその視線を無視することにした。
 そんなことよりも、レティシアの表情がすぐれないのだ。
 そりゃそうだろ、いきなり意味わかんなく担ぎ上げられて、さらにこんな場所へ招聘されるんだから。
 俺だったら全力で逃げたいと思うよ、本当に……

 ナンディーとヘティ殿下は特に気にした様子もなく、平然としていた。
 護衛として後ろに控えるハンス隊長もあまり気にした様子は無かった。
 まあ、よく顔を合わせてるからあまり緊張は無いんだろうけど……



 しばらくすると、入り口から陛下の来場を知らせる声が聞こえてきた。
 俺は立ち上がろうとしたが、殿下からストップがかかる。
 ここでは陛下も俺たちも立場は同じになるんだとか。
 あくまでも元老院は国王と同列。
 それが決まりなんだとか。
 宰相のリンゲンさんも立ち上がろうとはしなかった。
 これが元老院と王国の立場を明確にしている証なのかもしれない。

「すまん、遅れてしもうたようだな。申し訳ない。」

 入場の第一声が謝罪というから驚きである。
 国王なんだから遅れた事を詫びる事など本来は無いはずである。
 俺はそのことに驚きを隠せなかった。

 そんな俺を見て陛下はニヤリと笑っていた。
 恐らく俺が驚くところを見たいがために行ったいたずらだったんだろうか。

「陛下、お戯れはそこまでにしてください。話が進みません。」

 リンゲンさんは陛下に対して毅然とした態度で臨んでいた。
 あくまでもいまは元老院として立場でいるからだろうけど、俺からしたらそれもびっくりであった。

「それではこれより、先ほどももうした通りの〝レティシア教〟についての議論を始めたいと思います。」

 陛下が対面側のオブザーバー席に着くのを確認したリンゲンさんが、再開の宣言を行い、元老院議会は再開されたのだった。
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