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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十六日目⑤ タンクトップのおっさんは国王クラス⁈
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俺たちが玄関フロアを抜けた先にある正面の大きな扉に近づくと、入り口に立っていた係員がその扉を開けてくれた。
大きく開かれた扉の先には円卓が設置されていた。
既にギルマスたちは揃っており、何かの話し合いの真っ最中だったようだ。
タイミングを外したかな?
「遅れてしまい申し訳ありません。」
ヘティ殿下は深く一礼すると、謝罪の言葉を述べたのだ。
さすがにこれには俺も焦ってしまい、なぜ頭を下げたのかわからなかった。
慌てる俺を見てヘティ殿下は、不思議そうな顔でのぞき込んできた。
「どうされまして?カイト様はなぜ焦っておいでなのですか?」
「それはいきなり殿下が頭を下げたからですよ!!」
殿下はそれで納得したのか、くすくすと笑い始めた。
俺はさらに訳が分からなかった。
王族が一般人に頭を下げるなどあり得ないと教わっていたからだ。
「これについては元老院の事をお話ししなくてはいけませんわね。彼らは国から離れた独立機関です。そしてこの国で唯一、国王陛下に対等に意見が言える立場にあります。その為元老院開催中限定でその地位が国王に並ぶことになっているのです。」
マジでか!?
つまりシャバズのおっちゃんは、今だけ国王クラスって事なのか?
それはそれで面白いな。
「やっと来たな、早く入ってくるといい。」
最初に俺たちに声をかけてきたのはシャバズのおっちゃんだった。
さすがに今日はマッチョを意識した服装ではなく、きちんとした正装をしていたので若干の違和感を感じてしまった。
ただサイズ感が……無理やり着ているような感じで、今にもはち切れんばかりになっていた。
というよりも、前のギルド間定例会議の時はタンクトップだったくせに。
「ミスターウィリアムズ。今日の進行役はミーですよ?」
円卓の一番の上座に座っていた男性が席を立って、シャバズのおっちゃんに物言いをつけていた。
確かの人は……
「ハロルド・エル・クラクネル様ですわ。錬金術ギルドマスターです。」
「ありがとうございます。」
ヘティ殿下が小声でフォローをしてくれた。
俺が小声で礼を述べると、少し照れたように顔を俯かせていた。
「(カイト様の役に立てた。カイト様の役に立てた。)」
何か小声でヘティ殿下が呟いていたけど、何を言っているかはわからなかった。
「いいじゃねぇ~か。細かい事きにすんじゃねぇ~よ。おうカイト、こっちの事前会議も終わったから気にすんな。それとお前たちの席は最初はあっちになるから始まるまで寛いでてくれ。殿下もありがとうござます。ご一緒に寛いでいてください。」
「はい、ですがおじさま。なんだか不思議な気分が致しますわ。いつも通り接してくださいまし。」
シャバズのおっちゃんの口調が殿下に対してだけ若干敬った感じになっていた。
それに違和感というか疎外感を覚えたらしく、ヘティ殿下が抗議の意を示したのだ。
「あぁ~なんだ。わかったわかった。そう睨むな。せっかくのかわいい顔が台無しだぞ?」
「おじさま!!」
そう言うとシャバズのおっちゃんはゲラゲラと笑い出し、ヘティ殿下の頭を思いっきりなでつけた。
いつものおっちゃんの雰囲気に切り替わっていた。
一応抗議をしてみたものの、一気に崩されるとは思ってもみなかったので、ヘティ殿下は慌てていた。
「おっほん!!ミスターウィリアムズ!!席についてください!!」
「わ~たよ。じゃあ、もう少しだけ席で待っててくれや。」
そう言うとおっちゃんは自分の席に足早に戻っていった。
クラクネルさんはそれを不快そうに睨み付けていた。
「えぇ~ではこれよりギルド間定例会議を行います。事前説明をした通り、ギルド間定例会議の後に元老院会議も行います。定例会議はミーが議長を務めます。異存は有りますかな?」
クラクネルさんの宣言をメンバーは無言の肯定で承認した。
それから事前に教えてもらっていた通り、ギルド間の交渉や情報のやり取り。
シャバズのおっちゃんからは素材関連の情報が開示されていく。
各地に散らばっているAランクおよびSランク冒険者たちが日夜新素材を集めてきているのだ。
その情報をもとに各ギルドは今後の予定を立てていくらしい。
冒険者ギルドの話だけではなく、各ギルドで何か新たな動きがあったかなどが話し合われた。
俺たちにはあまり関係の無い話のようで、若干暇を持て余していた。
気を利かせたレティシアがお茶の準備を始めようとしたところ、ヘティ殿下が慌ててそれを静止。
うちではこれが当たり前だったので、特に違和感などは無かった。
直ぐに呼ばれたのはヘティ殿下のメイドだ。
レティシアからティーセットを受け取ると、手早くお茶の準備を進めてくれた。
うん、美味い。
レティシアもお茶を受け取り一口すすると、その美味さに驚きを隠せなかった。
直ぐにメイドを捕まえると、お茶の入れ方についていろいろ質問攻めをしていた。
あまりの熱量に若干引き気味のメイドさんは、レティシアにいろいろ教えてくれたのだった。
これで今度からお茶がまた美味くなると思うと、少しだけラッキーだと思ってしまった。
大きく開かれた扉の先には円卓が設置されていた。
既にギルマスたちは揃っており、何かの話し合いの真っ最中だったようだ。
タイミングを外したかな?
「遅れてしまい申し訳ありません。」
ヘティ殿下は深く一礼すると、謝罪の言葉を述べたのだ。
さすがにこれには俺も焦ってしまい、なぜ頭を下げたのかわからなかった。
慌てる俺を見てヘティ殿下は、不思議そうな顔でのぞき込んできた。
「どうされまして?カイト様はなぜ焦っておいでなのですか?」
「それはいきなり殿下が頭を下げたからですよ!!」
殿下はそれで納得したのか、くすくすと笑い始めた。
俺はさらに訳が分からなかった。
王族が一般人に頭を下げるなどあり得ないと教わっていたからだ。
「これについては元老院の事をお話ししなくてはいけませんわね。彼らは国から離れた独立機関です。そしてこの国で唯一、国王陛下に対等に意見が言える立場にあります。その為元老院開催中限定でその地位が国王に並ぶことになっているのです。」
マジでか!?
つまりシャバズのおっちゃんは、今だけ国王クラスって事なのか?
それはそれで面白いな。
「やっと来たな、早く入ってくるといい。」
最初に俺たちに声をかけてきたのはシャバズのおっちゃんだった。
さすがに今日はマッチョを意識した服装ではなく、きちんとした正装をしていたので若干の違和感を感じてしまった。
ただサイズ感が……無理やり着ているような感じで、今にもはち切れんばかりになっていた。
というよりも、前のギルド間定例会議の時はタンクトップだったくせに。
「ミスターウィリアムズ。今日の進行役はミーですよ?」
円卓の一番の上座に座っていた男性が席を立って、シャバズのおっちゃんに物言いをつけていた。
確かの人は……
「ハロルド・エル・クラクネル様ですわ。錬金術ギルドマスターです。」
「ありがとうございます。」
ヘティ殿下が小声でフォローをしてくれた。
俺が小声で礼を述べると、少し照れたように顔を俯かせていた。
「(カイト様の役に立てた。カイト様の役に立てた。)」
何か小声でヘティ殿下が呟いていたけど、何を言っているかはわからなかった。
「いいじゃねぇ~か。細かい事きにすんじゃねぇ~よ。おうカイト、こっちの事前会議も終わったから気にすんな。それとお前たちの席は最初はあっちになるから始まるまで寛いでてくれ。殿下もありがとうござます。ご一緒に寛いでいてください。」
「はい、ですがおじさま。なんだか不思議な気分が致しますわ。いつも通り接してくださいまし。」
シャバズのおっちゃんの口調が殿下に対してだけ若干敬った感じになっていた。
それに違和感というか疎外感を覚えたらしく、ヘティ殿下が抗議の意を示したのだ。
「あぁ~なんだ。わかったわかった。そう睨むな。せっかくのかわいい顔が台無しだぞ?」
「おじさま!!」
そう言うとシャバズのおっちゃんはゲラゲラと笑い出し、ヘティ殿下の頭を思いっきりなでつけた。
いつものおっちゃんの雰囲気に切り替わっていた。
一応抗議をしてみたものの、一気に崩されるとは思ってもみなかったので、ヘティ殿下は慌てていた。
「おっほん!!ミスターウィリアムズ!!席についてください!!」
「わ~たよ。じゃあ、もう少しだけ席で待っててくれや。」
そう言うとおっちゃんは自分の席に足早に戻っていった。
クラクネルさんはそれを不快そうに睨み付けていた。
「えぇ~ではこれよりギルド間定例会議を行います。事前説明をした通り、ギルド間定例会議の後に元老院会議も行います。定例会議はミーが議長を務めます。異存は有りますかな?」
クラクネルさんの宣言をメンバーは無言の肯定で承認した。
それから事前に教えてもらっていた通り、ギルド間の交渉や情報のやり取り。
シャバズのおっちゃんからは素材関連の情報が開示されていく。
各地に散らばっているAランクおよびSランク冒険者たちが日夜新素材を集めてきているのだ。
その情報をもとに各ギルドは今後の予定を立てていくらしい。
冒険者ギルドの話だけではなく、各ギルドで何か新たな動きがあったかなどが話し合われた。
俺たちにはあまり関係の無い話のようで、若干暇を持て余していた。
気を利かせたレティシアがお茶の準備を始めようとしたところ、ヘティ殿下が慌ててそれを静止。
うちではこれが当たり前だったので、特に違和感などは無かった。
直ぐに呼ばれたのはヘティ殿下のメイドだ。
レティシアからティーセットを受け取ると、手早くお茶の準備を進めてくれた。
うん、美味い。
レティシアもお茶を受け取り一口すすると、その美味さに驚きを隠せなかった。
直ぐにメイドを捕まえると、お茶の入れ方についていろいろ質問攻めをしていた。
あまりの熱量に若干引き気味のメイドさんは、レティシアにいろいろ教えてくれたのだった。
これで今度からお茶がまた美味くなると思うと、少しだけラッキーだと思ってしまった。
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