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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十六日目④ 王城の秘密
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「開門!!開門~~~~~~~!!」
一際大きな声量で馬車の到着をつける近衛騎士団の先触れ。
ゴゴゴゴゴと地鳴りかと思わせるような、重く大きな音があたりに木霊する。
俺たちが案内されて今いる場所は正門ではなく、王家専用の裏門にあたる場所だ。
北側に位置するこの門は、王家関係者以外で出入りする事は無く、常に固く閉ざされていた。
つまり今回は特別という事だろうか。
俺も初めてこっちから入る事になった。
裏門から見た王城は、それはそれは美しい造りとなっていた。
王城に並び立つ尖塔は左右非対称に作られており、正門から見た時には同じ高さに見えていた。
しかし、裏門から見た場合は手前側の尖塔がかなり高く、奥側が低く作られていた。
おそらく遠近法?的な何かの為にわざとそうしたんだろうな。
その辺の美意識もまたこだわりなんだろうか。
「カイト様、どうしまして?」
「いやね、あの尖塔がわざと高さを変えてるのはなんでだろうなって。」
住んでる人に聞くのが一番早いと思った俺は、何の気なしにヘティ殿下に尋ねた。
するとヘティ殿下はニコリと笑いながらその答えを教えてくれた。
「初代国王陛下には二人の王妃がいらっしゃったそうよ。私のご先祖様です。その二人の王妃を模して造られたものだと言われています。一人は背の高いスラリとした姿の女性で正妻のアナスタシア様。もう一人は背がそれほど高くなく、スタイルの良い女性で第二王妃のリリア様。お二方共にお美しかったと言われています。そしてリリア様は、自身が第二王妃だという事を理解しており、常にお二人の一歩後ろを歩いていたとか。初代国王陛下は二人を贔屓なく愛し、そしてこの王城を建築する際に、二人の関係性とそれでも二人お同じだけ愛している事を示す為にこのような構造にしたと言われています。」
話し終えたヘティ殿下の表情は憧れを抱く少女そのものだった。
それだけ初代国王は二人の女性を本気で愛していたんだろうな。
俺には無理だけど。
城内に入った俺は、さらに驚いてしまった。
裏側は実はかなり質素に造られていた事に。
正面側はこれでもかという程の美しい仕上がりになっていた。
しかし裏側の壁や柱で構造上問題無いものについては、装飾を施していなかった。
これについてもヘティ殿下に確認すると、初代国王の意向なんだとか。
もともとトリスタン王国の辺境伯であった初代国王は、自分にお金をかけることをあまり良しとし無かった様だ。
国境沿いにある大領地で、維持管理だけでも莫大な資産が消えていく。
そのため自身の屋敷は二の次になっていたそうだ。
お陰で中央の貴族たちからは田舎の貧乏貴族と蔑まれていたらしい。
それでもなお、自身の領地の領民が安心して暮らせるならば問題は無いと言い放ち、中央貴族を蹴散らしたそうだ。
そのために、今でもこの国の王城は必要な場所に必要なだけ資金を投じるようにしているそうだ。
だから正面は煌びやかでも裏は質素というわけだ。
なんとなくだけど、初代国王に尊敬の念を抱いてしまった。
そこまで領民を愛せる貴族って俺のイメージだといない気がしたから。
だからこそ、陛下はその流れを絶やさないためにもクーデターを起こすことを決意したんだと思う。
「さぁ、無駄話もこれくらいにして中にご案内いたしますわ。」
ヘティ殿下に急かされる様に王城とは別の、真新しい建物へ案内された。
その建物は渡り廊下で王城へと繋がってはいるが、独立した造りとなっていた。
建物はさほど大きくは無く、見える横幅はおおよそ300m有るか無いかだ。
高さも3階建てと、これまた王城から考えればかなり地味な造りとなっている。
「こちらですわ。」
さらに案内されて入り口から中に入ると、短いエントランスの突き当りに大きな扉が一つあるだけだった。
エントランスには特に飾りがあるわけでもなく、左右にくつろげるソファーとサイドテーブル。
あとはちょっとした絵画がかけられているだけだ。
照明も必要最低限度だけつけられており、正直言うと元老院会議場と言われるだけあって、もっと派手派手をイメージしていた。
「驚きましたでしょ?私もこれほど質素になるとは思っていませんでした。しかし、元老院の方々の意向で必要最低限の設備以外は完備されておりませんの。」
ヘティ殿下は少し恥ずかしそうに苦笑いをしていたが、俺としてはむしろ感心してしまった。
ここでも初代国王の意向が強く反映されていたからだ。
基本的に元老院はギルドマスターの集まりだ。貴族でもないのでそれほど派手なのを好まなかったみたいだ。
確かにシャバズのおっちゃんが派手衣装で登場したら、さすがに無いわって思わざるを得ない気がしてならない。
「それにしても真新しい気がするけど、最近建て替えたんですか?」
「はい、陛下が即位後に。」
つまりこれだけの建物を20日も経たずに作り上げたのだ。
工事には俺の収納箱(簡易)がとても役立ったらしく、資材の運搬が通常の10分の1程度まで抑えられたのも時間短縮の要因だったらしい。
それと建築自体は魔法使いが頑張ったそうだ。
重い石材も魔法によって持ち上げられたり、後は高いところには収納箱(簡易)をそのまま上げて、そこから取り出したりとかなり工夫を凝らして作業に当たったそうだ。
木工ギルドのギルマスであるエドワードさんがこれからの主流になるのでは?と考えたらしい。
元老院はこの建物が完成するまでは議会会議室を間借りしていたそうだけど、今は居をこちらに移しているそうだ。
中は大会議室の他にいくつかの小会議室と控室。
あとは王族の控室と係員用の控室があるそうだ。
ちなみに、給湯室は有るものの専属のメイドはいない。
これもギルマスたちの意向を陛下が認めた形となったからだそうだ。
一際大きな声量で馬車の到着をつける近衛騎士団の先触れ。
ゴゴゴゴゴと地鳴りかと思わせるような、重く大きな音があたりに木霊する。
俺たちが案内されて今いる場所は正門ではなく、王家専用の裏門にあたる場所だ。
北側に位置するこの門は、王家関係者以外で出入りする事は無く、常に固く閉ざされていた。
つまり今回は特別という事だろうか。
俺も初めてこっちから入る事になった。
裏門から見た王城は、それはそれは美しい造りとなっていた。
王城に並び立つ尖塔は左右非対称に作られており、正門から見た時には同じ高さに見えていた。
しかし、裏門から見た場合は手前側の尖塔がかなり高く、奥側が低く作られていた。
おそらく遠近法?的な何かの為にわざとそうしたんだろうな。
その辺の美意識もまたこだわりなんだろうか。
「カイト様、どうしまして?」
「いやね、あの尖塔がわざと高さを変えてるのはなんでだろうなって。」
住んでる人に聞くのが一番早いと思った俺は、何の気なしにヘティ殿下に尋ねた。
するとヘティ殿下はニコリと笑いながらその答えを教えてくれた。
「初代国王陛下には二人の王妃がいらっしゃったそうよ。私のご先祖様です。その二人の王妃を模して造られたものだと言われています。一人は背の高いスラリとした姿の女性で正妻のアナスタシア様。もう一人は背がそれほど高くなく、スタイルの良い女性で第二王妃のリリア様。お二方共にお美しかったと言われています。そしてリリア様は、自身が第二王妃だという事を理解しており、常にお二人の一歩後ろを歩いていたとか。初代国王陛下は二人を贔屓なく愛し、そしてこの王城を建築する際に、二人の関係性とそれでも二人お同じだけ愛している事を示す為にこのような構造にしたと言われています。」
話し終えたヘティ殿下の表情は憧れを抱く少女そのものだった。
それだけ初代国王は二人の女性を本気で愛していたんだろうな。
俺には無理だけど。
城内に入った俺は、さらに驚いてしまった。
裏側は実はかなり質素に造られていた事に。
正面側はこれでもかという程の美しい仕上がりになっていた。
しかし裏側の壁や柱で構造上問題無いものについては、装飾を施していなかった。
これについてもヘティ殿下に確認すると、初代国王の意向なんだとか。
もともとトリスタン王国の辺境伯であった初代国王は、自分にお金をかけることをあまり良しとし無かった様だ。
国境沿いにある大領地で、維持管理だけでも莫大な資産が消えていく。
そのため自身の屋敷は二の次になっていたそうだ。
お陰で中央の貴族たちからは田舎の貧乏貴族と蔑まれていたらしい。
それでもなお、自身の領地の領民が安心して暮らせるならば問題は無いと言い放ち、中央貴族を蹴散らしたそうだ。
そのために、今でもこの国の王城は必要な場所に必要なだけ資金を投じるようにしているそうだ。
だから正面は煌びやかでも裏は質素というわけだ。
なんとなくだけど、初代国王に尊敬の念を抱いてしまった。
そこまで領民を愛せる貴族って俺のイメージだといない気がしたから。
だからこそ、陛下はその流れを絶やさないためにもクーデターを起こすことを決意したんだと思う。
「さぁ、無駄話もこれくらいにして中にご案内いたしますわ。」
ヘティ殿下に急かされる様に王城とは別の、真新しい建物へ案内された。
その建物は渡り廊下で王城へと繋がってはいるが、独立した造りとなっていた。
建物はさほど大きくは無く、見える横幅はおおよそ300m有るか無いかだ。
高さも3階建てと、これまた王城から考えればかなり地味な造りとなっている。
「こちらですわ。」
さらに案内されて入り口から中に入ると、短いエントランスの突き当りに大きな扉が一つあるだけだった。
エントランスには特に飾りがあるわけでもなく、左右にくつろげるソファーとサイドテーブル。
あとはちょっとした絵画がかけられているだけだ。
照明も必要最低限度だけつけられており、正直言うと元老院会議場と言われるだけあって、もっと派手派手をイメージしていた。
「驚きましたでしょ?私もこれほど質素になるとは思っていませんでした。しかし、元老院の方々の意向で必要最低限の設備以外は完備されておりませんの。」
ヘティ殿下は少し恥ずかしそうに苦笑いをしていたが、俺としてはむしろ感心してしまった。
ここでも初代国王の意向が強く反映されていたからだ。
基本的に元老院はギルドマスターの集まりだ。貴族でもないのでそれほど派手なのを好まなかったみたいだ。
確かにシャバズのおっちゃんが派手衣装で登場したら、さすがに無いわって思わざるを得ない気がしてならない。
「それにしても真新しい気がするけど、最近建て替えたんですか?」
「はい、陛下が即位後に。」
つまりこれだけの建物を20日も経たずに作り上げたのだ。
工事には俺の収納箱(簡易)がとても役立ったらしく、資材の運搬が通常の10分の1程度まで抑えられたのも時間短縮の要因だったらしい。
それと建築自体は魔法使いが頑張ったそうだ。
重い石材も魔法によって持ち上げられたり、後は高いところには収納箱(簡易)をそのまま上げて、そこから取り出したりとかなり工夫を凝らして作業に当たったそうだ。
木工ギルドのギルマスであるエドワードさんがこれからの主流になるのでは?と考えたらしい。
元老院はこの建物が完成するまでは議会会議室を間借りしていたそうだけど、今は居をこちらに移しているそうだ。
中は大会議室の他にいくつかの小会議室と控室。
あとは王族の控室と係員用の控室があるそうだ。
ちなみに、給湯室は有るものの専属のメイドはいない。
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