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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十六日目③ 後の国教?
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「なるほど……。しかし、私に許可などいりません。レティシア教は開かれた宗教です。信じる心があればそれで十分です。すなわちそれが信仰心という物ですよ。ですが、信仰心とは寄り添う心であり、凭れ掛るひじ掛けではありません。常に自分で考え、常に自分の足で立ち、その進む道を選ぶのです。我等が女神【レティシア】様は、常に見守って下さるのです。それ以上の何を望みましょうか。」
機能停止しているレティシアの代わりにと、ナンディーが答えていた。
右手を胸あたりで手のひらをヘティ殿下に見えるように掲げ、左手にはいつの間にか取り出した極厚の本を持っていたナンディー。
まさに説法。
その威厳に満ちた声色で語り掛けると、ヘティ殿下は花が咲き誇らんばかりの笑みを湛えていた。
「おぉ、なんと慈悲深いお言葉!!まことに感謝いたします!!」
するとヘティ殿下はおもむろに馬車の窓を開けて、周囲の近衛騎士団に聞こえるように声高らかに宣言をした。
「我等主神【レティシア】様が見守って下さるのです!!我等に我が道を歩けと申すのです!!ならば我らは我らの道を歩みましょう!!」
いや、窓から身を乗り出したら危ないからね⁈
もうこれってマジで狂信者だよね?
おいそこでうんうんってもっともらしそうな顔で頷くなよ!!
ほら、ナンディーにつられてアリサも頷いているじゃないか!!
レティシアなんてすでに到着する前にHPが底に尽きかけてるからね⁈
これもうさ、絶対陛下に怒られる奴確定だよね?
俺このまま隠れて逃げ出していい?
きっとこういう時のために習得していったスキルの数々だよね?
「レティシア様万歳!!レティシア様万歳!!レティシア様万歳!!」
何て現実逃避を行っていると、何やら馬車の外からレティシアを讃える声が聞こえてきた。
その声を聴いたレティシアは、両手で耳をふさいでイヤイヤしていた。
なんだかかわいらしくて一瞬ほっこりしたけど、本人からしたら自身が認めていない事が認められていくという最悪な状況が、現在進行形で続いているという地獄だよな。
だがそんな本人の心情など知ってか知らずか、レティシアを湛える声は次第に大きさを増していった。
だが、よく考えてみてほしい。
ここは王都の大通り……
天下の大通りだ……
時間も早いとは言え、人通りがないわけじゃない。
むしろこれから増えてくる時間だ。
そんな中でレティシアを讃えながら行進する近衛兵を見たら、絶対に人々の関心を誘うに決まっている。
案の定、道行く人が足を止め馬車に頭を下げる。
ただまあこれはあれだ、王家の馬車だから百歩譲って問題無いだろう。
むしろ頭を下げなかったら不敬罪で捕まりかねないからね。
しかしだ、道端に避けて手を合わせているのはどうだろうか。
手を合わせないにしても、〝ザ・土下座〟を決めている人もちらほらいた。
あの人たちってもしかしてこの前【森のアナグマ亭】にいた人たちか?
それだったら市中に広がり始めているんだろうか……
真面目にやばいな。
むしろ感染力で言ったら、並大抵のウィルスよりたちが悪いんじゃないだろうか?
すると、今度はレティシアの体に異変が起こった。
レティシアがいきなり光始めたのだ。
「え?え?なんですかこれは⁈」
その現象に戸惑うレティシアなどお構いなしに興奮の度合いを強くしていく面々。
女神になっても扱いが残念なレティシアに少しだけ同情してしまったけど、口に出したらまた面倒になると思い、俺はその思いを飲み込んだのだった。
レティシアから始まった光はますますに強くなってゆき、あまりのまぶしさから目を開けていられないほどになったころ、当の本人からの制御を完全に離れたしまったようだ。
むしろ暴走という物じゃないだろうか。
「なんと神々しいお姿!!さすがはレティシア様です!!」
光り輝くレティシアに祈りをささげる俺以外のメンバー。
当の本人は……、ついに諦めたのか、心ここにあらずといった感じに見えた。
むしろその表情が憂いを帯びて、さらに慈悲深さが増しているではないでしょうか……
さらに光を増していくレティシア。
うん、まさに神様だね。
しばらくするとレティシアを包んでいた光が徐々に落ち着き、やっとの事で完全に収まったのだった。
「カイト様……神気がまた……上昇しました。」
レティシアは虚ろな目でそれを俺に付けると、そのままゆらりと消えてしまった。
これ以上は実体化しているのが無理だと判断したのだろうな。
しかしそれを見たヘティ殿下とリヒター隊長は、「これは奇跡だ!!」と言いだして、さらに信仰心を高めていったのは誤算だったろうね。
そもそもレティシアは精霊だから、実体化している方が仮の姿なんだけど、それは言わぬが華なんだろうな。
それから馬車は大通りを抜けて王城へと向かっていくのだった。
ほんと、どうしてこうなった?
後にその王家の馬車の行進は、女神が王家への加護を授けに来たものと後世に伝えられた。
そしてレティシア教がこのシュミット王国の国教となるとはこの時の俺たちは思いもしなかったのだった。
機能停止しているレティシアの代わりにと、ナンディーが答えていた。
右手を胸あたりで手のひらをヘティ殿下に見えるように掲げ、左手にはいつの間にか取り出した極厚の本を持っていたナンディー。
まさに説法。
その威厳に満ちた声色で語り掛けると、ヘティ殿下は花が咲き誇らんばかりの笑みを湛えていた。
「おぉ、なんと慈悲深いお言葉!!まことに感謝いたします!!」
するとヘティ殿下はおもむろに馬車の窓を開けて、周囲の近衛騎士団に聞こえるように声高らかに宣言をした。
「我等主神【レティシア】様が見守って下さるのです!!我等に我が道を歩けと申すのです!!ならば我らは我らの道を歩みましょう!!」
いや、窓から身を乗り出したら危ないからね⁈
もうこれってマジで狂信者だよね?
おいそこでうんうんってもっともらしそうな顔で頷くなよ!!
ほら、ナンディーにつられてアリサも頷いているじゃないか!!
レティシアなんてすでに到着する前にHPが底に尽きかけてるからね⁈
これもうさ、絶対陛下に怒られる奴確定だよね?
俺このまま隠れて逃げ出していい?
きっとこういう時のために習得していったスキルの数々だよね?
「レティシア様万歳!!レティシア様万歳!!レティシア様万歳!!」
何て現実逃避を行っていると、何やら馬車の外からレティシアを讃える声が聞こえてきた。
その声を聴いたレティシアは、両手で耳をふさいでイヤイヤしていた。
なんだかかわいらしくて一瞬ほっこりしたけど、本人からしたら自身が認めていない事が認められていくという最悪な状況が、現在進行形で続いているという地獄だよな。
だがそんな本人の心情など知ってか知らずか、レティシアを湛える声は次第に大きさを増していった。
だが、よく考えてみてほしい。
ここは王都の大通り……
天下の大通りだ……
時間も早いとは言え、人通りがないわけじゃない。
むしろこれから増えてくる時間だ。
そんな中でレティシアを讃えながら行進する近衛兵を見たら、絶対に人々の関心を誘うに決まっている。
案の定、道行く人が足を止め馬車に頭を下げる。
ただまあこれはあれだ、王家の馬車だから百歩譲って問題無いだろう。
むしろ頭を下げなかったら不敬罪で捕まりかねないからね。
しかしだ、道端に避けて手を合わせているのはどうだろうか。
手を合わせないにしても、〝ザ・土下座〟を決めている人もちらほらいた。
あの人たちってもしかしてこの前【森のアナグマ亭】にいた人たちか?
それだったら市中に広がり始めているんだろうか……
真面目にやばいな。
むしろ感染力で言ったら、並大抵のウィルスよりたちが悪いんじゃないだろうか?
すると、今度はレティシアの体に異変が起こった。
レティシアがいきなり光始めたのだ。
「え?え?なんですかこれは⁈」
その現象に戸惑うレティシアなどお構いなしに興奮の度合いを強くしていく面々。
女神になっても扱いが残念なレティシアに少しだけ同情してしまったけど、口に出したらまた面倒になると思い、俺はその思いを飲み込んだのだった。
レティシアから始まった光はますますに強くなってゆき、あまりのまぶしさから目を開けていられないほどになったころ、当の本人からの制御を完全に離れたしまったようだ。
むしろ暴走という物じゃないだろうか。
「なんと神々しいお姿!!さすがはレティシア様です!!」
光り輝くレティシアに祈りをささげる俺以外のメンバー。
当の本人は……、ついに諦めたのか、心ここにあらずといった感じに見えた。
むしろその表情が憂いを帯びて、さらに慈悲深さが増しているではないでしょうか……
さらに光を増していくレティシア。
うん、まさに神様だね。
しばらくするとレティシアを包んでいた光が徐々に落ち着き、やっとの事で完全に収まったのだった。
「カイト様……神気がまた……上昇しました。」
レティシアは虚ろな目でそれを俺に付けると、そのままゆらりと消えてしまった。
これ以上は実体化しているのが無理だと判断したのだろうな。
しかしそれを見たヘティ殿下とリヒター隊長は、「これは奇跡だ!!」と言いだして、さらに信仰心を高めていったのは誤算だったろうね。
そもそもレティシアは精霊だから、実体化している方が仮の姿なんだけど、それは言わぬが華なんだろうな。
それから馬車は大通りを抜けて王城へと向かっていくのだった。
ほんと、どうしてこうなった?
後にその王家の馬車の行進は、女神が王家への加護を授けに来たものと後世に伝えられた。
そしてレティシア教がこのシュミット王国の国教となるとはこの時の俺たちは思いもしなかったのだった。
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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