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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十六日目① 忍び寄る……
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昨日は【イレギュラー】の件もあり、冒険者ギルドから早めに引き上げていた。
さすがに今回は疲れた……というよりは、あまりの情けなさに気落ちしてしまったといった方が良いかもしれない。
シルさんの昔話は気になるところだったけど、今日のギルド間定例会議と元老院会議の出席もあり、早めの就寝となったのだった。
それぞれが思うところもあったようで、起床はいつもよりも遅めだった。
それからゆっくりと朝食を取り、迎えの来る時刻まで皆で寛いでいた。
「それにしてもついに呼び出しだ……。絶対ヘティ殿下が王城内でやらかしたんだよな?」
「カイト様……。それは間違いないかと……。」
俺はレティシアが淹れてくれたお茶を飲むとつい気が緩んでしまったのか、ポツリとぼやいてしまった。
それを聞いていたレティシアは、どこか申し訳なさそうにが答えてくれた。
その声に元気はなく、何やら言い淀むとは違うが、言いづらそうにしていた。
どうやら何か確信があるようで、なんだか気が重そうだった。
「どうしたのさレティシア。体調でも悪いの?なんだか顔色が優れないみたいだけど。」
急かすつもりはなかったんだけど、つい気になってしまった。
いつも笑みを絶やさないレティシアにしては、辛そう……というか何か思い悩む、そんな気がしていたからだ。
「いえ、先日からまた神気が増したようです。ヘンリエッテ様がいらっしゃった次の日から徐々に強くなってきましたので、間違いないかと……」
レティシアはそういうと、顔を下に向けて項垂れていた。
だがそんなレティシアの姿とは裏腹に、レティシアから感じ取れる気配が以前よりわずかばかり強くなっている気がする。
レティシアの神気が強くなっていると聞いたナンディーとアリサは、喜びを顕わにしていた。
当然と言えば当然の結果かな?
二人からすれば、レティシアの神気が強くなるということはレティシアの格が上がったと感じるにほかならなかったのだから。
ただ、両者のこのギャップが如何ともしがたいよね……
とまあ、こんな感じで迎えまでの時間を過ごしていた。
正直な話、俺としてはぜひとも行きたくない。
丁重におかえりいただきたい……と言えないだろうな。
それに行ったら最後、あの狸の化かし合いの中に放りこまれるんだ。
気が重くならないって方が無理がある。
そんな感じでゆったりとした時間(真綿で首を締めるる時間ともいう)を過ごしていると、ヒイロから迎えの馬車の到着を知らせる念話が届いた。
『御屋形様……王城からの迎えの馬車が到着しました……』
『どうしたのさヒイロ?』
『いえ、その……』
言い淀むヒイロに嫌な予感がよぎる。
此処まで言い淀むヒイロは見たことが無かったからだ。
「御屋形様、私とハバナは出迎えの準備を行いますので、これで失礼いたします。準備が整いましたらお呼びします。」
「頼んだ。」
ワカタケとハバナが迎え入れの準備をする為に先行して動いてくれた。
いつもだったらすぐにお呼びがかかるんだが、今回は少しばかり間が開いている気がした。
いったい何があったんだ?
若干の不安を感じながらも、俺たちは準備を整えて【森のアナグマ亭】の玄関口まで移動した。
その間にもヒイロからいろいろ情報が入ってきており、どうやら近衛騎士団のようだった。
リヒター隊長の姿も確認出来たので間違いないだろうとの事だ。
でもなんでリヒター隊長が出張ってきたんだ?
俺はそんな疑問を胸に、玄関まで急いだのだった。
「おはようございます、カイト殿。」
「やっぱりリヒター隊長でしたか。でもどうして隊長が?」
俺の疑問に少し苦笑いを浮かべているリヒター隊長。
そして俺の視線はリヒター隊長の後方へと吸い込まれてしまった。
俺は嫌な予感しかしなかった。
なにせ迎えに来た馬車は、どこからどう見ても4人乗りのサイズじゃなかった。
8人はゆったり乗れる大型の馬車だ。
しかも側面には王家を象徴する紋章が……
絶対面倒ごとが完全武装でやってきているに違いないな……
「カイト様、おはようございます。」
そら来た!!
その馬車から出てきたのは、やはりヘティ殿下だった。
朝から気合が入った装いで、さすがに引いてしまった。
面倒ごとが完全武装でやってきた……
すると、俺と一緒に出てきたナンディーにヘティ殿下とリヒター隊長、それに護衛の騎士団の人たちまで頭を下げていた。
真面目に嫌な予感しかしない……
もう俺の胃の強度は豆腐レベルになっているな。
さらに遅れて出てきたレティシアに取った行動を見て、俺の嫌な予感は的中してしまった事を理解させられた。
「レティシア様!!この度は私共の不手際でその御尊体をお運び頂く事となり、申し訳ございません。信徒としてあるまじき失態でございます!!誠に、誠に申し訳ありません!!」
レティシアの前に、ヘティ殿下をはじめとした騎士団全員が跪いて頭を垂れる。
さすがに【森のアナグマ亭】の前でやるのは勘弁してほしかった。
陰で見ていた、暗部のグリュナー団長も驚きのあまり手にしていた朝食を落としてしまっているじゃないか。
俺がグリュナー団長に視線を向けている事を感じ取ったグリュナー団長は、我に返ると俺を睨み付けていた。
これって俺のせいじゃないからな?!
さすがに今回は疲れた……というよりは、あまりの情けなさに気落ちしてしまったといった方が良いかもしれない。
シルさんの昔話は気になるところだったけど、今日のギルド間定例会議と元老院会議の出席もあり、早めの就寝となったのだった。
それぞれが思うところもあったようで、起床はいつもよりも遅めだった。
それからゆっくりと朝食を取り、迎えの来る時刻まで皆で寛いでいた。
「それにしてもついに呼び出しだ……。絶対ヘティ殿下が王城内でやらかしたんだよな?」
「カイト様……。それは間違いないかと……。」
俺はレティシアが淹れてくれたお茶を飲むとつい気が緩んでしまったのか、ポツリとぼやいてしまった。
それを聞いていたレティシアは、どこか申し訳なさそうにが答えてくれた。
その声に元気はなく、何やら言い淀むとは違うが、言いづらそうにしていた。
どうやら何か確信があるようで、なんだか気が重そうだった。
「どうしたのさレティシア。体調でも悪いの?なんだか顔色が優れないみたいだけど。」
急かすつもりはなかったんだけど、つい気になってしまった。
いつも笑みを絶やさないレティシアにしては、辛そう……というか何か思い悩む、そんな気がしていたからだ。
「いえ、先日からまた神気が増したようです。ヘンリエッテ様がいらっしゃった次の日から徐々に強くなってきましたので、間違いないかと……」
レティシアはそういうと、顔を下に向けて項垂れていた。
だがそんなレティシアの姿とは裏腹に、レティシアから感じ取れる気配が以前よりわずかばかり強くなっている気がする。
レティシアの神気が強くなっていると聞いたナンディーとアリサは、喜びを顕わにしていた。
当然と言えば当然の結果かな?
二人からすれば、レティシアの神気が強くなるということはレティシアの格が上がったと感じるにほかならなかったのだから。
ただ、両者のこのギャップが如何ともしがたいよね……
とまあ、こんな感じで迎えまでの時間を過ごしていた。
正直な話、俺としてはぜひとも行きたくない。
丁重におかえりいただきたい……と言えないだろうな。
それに行ったら最後、あの狸の化かし合いの中に放りこまれるんだ。
気が重くならないって方が無理がある。
そんな感じでゆったりとした時間(真綿で首を締めるる時間ともいう)を過ごしていると、ヒイロから迎えの馬車の到着を知らせる念話が届いた。
『御屋形様……王城からの迎えの馬車が到着しました……』
『どうしたのさヒイロ?』
『いえ、その……』
言い淀むヒイロに嫌な予感がよぎる。
此処まで言い淀むヒイロは見たことが無かったからだ。
「御屋形様、私とハバナは出迎えの準備を行いますので、これで失礼いたします。準備が整いましたらお呼びします。」
「頼んだ。」
ワカタケとハバナが迎え入れの準備をする為に先行して動いてくれた。
いつもだったらすぐにお呼びがかかるんだが、今回は少しばかり間が開いている気がした。
いったい何があったんだ?
若干の不安を感じながらも、俺たちは準備を整えて【森のアナグマ亭】の玄関口まで移動した。
その間にもヒイロからいろいろ情報が入ってきており、どうやら近衛騎士団のようだった。
リヒター隊長の姿も確認出来たので間違いないだろうとの事だ。
でもなんでリヒター隊長が出張ってきたんだ?
俺はそんな疑問を胸に、玄関まで急いだのだった。
「おはようございます、カイト殿。」
「やっぱりリヒター隊長でしたか。でもどうして隊長が?」
俺の疑問に少し苦笑いを浮かべているリヒター隊長。
そして俺の視線はリヒター隊長の後方へと吸い込まれてしまった。
俺は嫌な予感しかしなかった。
なにせ迎えに来た馬車は、どこからどう見ても4人乗りのサイズじゃなかった。
8人はゆったり乗れる大型の馬車だ。
しかも側面には王家を象徴する紋章が……
絶対面倒ごとが完全武装でやってきているに違いないな……
「カイト様、おはようございます。」
そら来た!!
その馬車から出てきたのは、やはりヘティ殿下だった。
朝から気合が入った装いで、さすがに引いてしまった。
面倒ごとが完全武装でやってきた……
すると、俺と一緒に出てきたナンディーにヘティ殿下とリヒター隊長、それに護衛の騎士団の人たちまで頭を下げていた。
真面目に嫌な予感しかしない……
もう俺の胃の強度は豆腐レベルになっているな。
さらに遅れて出てきたレティシアに取った行動を見て、俺の嫌な予感は的中してしまった事を理解させられた。
「レティシア様!!この度は私共の不手際でその御尊体をお運び頂く事となり、申し訳ございません。信徒としてあるまじき失態でございます!!誠に、誠に申し訳ありません!!」
レティシアの前に、ヘティ殿下をはじめとした騎士団全員が跪いて頭を垂れる。
さすがに【森のアナグマ亭】の前でやるのは勘弁してほしかった。
陰で見ていた、暗部のグリュナー団長も驚きのあまり手にしていた朝食を落としてしまっているじゃないか。
俺がグリュナー団長に視線を向けている事を感じ取ったグリュナー団長は、我に返ると俺を睨み付けていた。
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