勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第6章 ここから始まる第一歩

五十五日目⑨ 【乾坤一擲】

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 「ん?お、珍しいとこで会ったな。どうしたこんなところで。」

 しばらく休息しつつ反省会をしていると、前方の通路から見知った顔が見えた。
 シルさんたち【乾坤一擲 】のメンバーだ。

 シルさんが俺たちの様子を見て、不思議そうにしていた。
 ただ、俺の装備が汚れているのに気が付いたらしく、その眼が真剣さを増した。

「どうやらカイトはこの下の層で洗礼を浴びたってところか?」
「洗礼ですか……。言い得て妙ですね。」

 シルさんの口ぶりからすると、低ランク冒険者が通る道なのかもしれないと思ってしまった。

「でもまぁ、生きて戻れたんだからよしとしておけ。年に数組の初心者はここで命を落とすんだからよ。」

 シルさんの軽い調子の言葉に俺はドキッとしてしまった。
 俺は今回装備を改修していた。
 そしてそれによって命拾いをした。
 もしこれがなかったら、あのバカでかい衝撃をまともに食らって命を落としていた可能性が高い。
 いや、むしろ俺は……俺たちはダンジョンの餌になっていたに違いなかった。

 第3層でも【スライムヘッジホッグ】と対峙したけど、それは1匹だけだ。
 数匹まとめてとなると、話が全然変わってくる事を身をもって知る事が出来た。
 まさに、命あっての物種というやつかもしれない。
 こうやって反省会出来ている時点で俺は恵まれているのかもしれないな。
 
 俺がシルさんの言葉にうなだれていると、それもまた経験だと笑って話していたシルさん。
 なんとなく格好良く見えたのは気のせいだろうか。

「それよりもだ、ここより下に到達したことのある3人がいてどうして防げなかったかって方が問題だろうな。」
「それについては言い訳しようがありません。」

 シルさんの言葉にポールが頭を下げた。
 そこで何か言い訳するわけでもなく、ただただ自分の非を認めた形だ。

「別に責めてるわけじゃねぇ~よ。3人がいたからこうして全員無事に戻ってこれたわけだしな。ただ、それがずっと続くというわけじゃない。その辺はカイトも理解しているだろ?」
「そう……ですね。今回の一件で身に沁みました。」

 シルさんは「そうか」と言うと、パーティーメンバーに近寄っていき、何かを相談しているようだった。
 それからしばらくして俺たちの前に戻ってきたシルさん。
 その目はいつもの頼りなさは視えず、一介の冒険者然とした眼差しだった。
 ただ何か言いたそうだけど、迷っている……そんな感じがした。

「はいはい、そう睨まないの。カイト君。丁度良い機会だし、私たちの戦闘を見ていく?少しは参考になるかもしれないわよ?」

 ヒーラーのキャスバニアさんが、そんな提案をしてきた。
 よくよく考えると、上位パーティーの戦闘を俺はちゃんと見た事がなかった。
 エルダたちは何度か合同で戦闘をしたことがあるらしいけど、俺としてはこのパーティー以外の事をよく知らない。

「キャスバニアさん、お言葉に甘えて勉強させてください。」

 俺は深々とキャスバニアさんに頭を下げた。

「カイトはリッドの動きをちゃんと確認しておくと良いぞ。こいつの動きはマジでやばいから。」
「そんなに持ち上げても、後の酒代は増やしませんよ?」

 そんなリッドさんの返しに舌打ちをしていたシルさん見て、なんとなく格好良く見えたのは気のせいだだったようだ。

 ちなみに戦闘に入る前にシルさんたち【乾坤一擲】のパーティー編成を改めて教えてもらった。
 基本的には前衛から1・2・1・2というある意味オーソドックスな陣形を取っていた。
 前衛のシルさんは大剣使いで、盾は装備していない。
 身のこなしで相手の攻撃を捌いていくスタイルらしい。

 その後ろに控えるのはグリードさん。
 顎に立派な髭を蓄えたドワーフで、大槌を肩に担いでいる。
 戦闘の際はシルさんが切り込んで、その後にグリードさんが討ち漏らしやら、ばらけたのを潰して回るそうだ。

 そのグリードさんに並び立つのがキャスバニアさん。
 ヒーラーを自称しているけど、装備は完全に格闘家にしか見えない。
 自身の【回復魔法】を駆使して、全力で殴ったり蹴ったりしているそうだ。
 たまにモーニングスターとか使うらしいけど、正直爆発四散するから強敵以外は使いたくないと言っていた。
 どんだけの膂力で殴っているんだろうか……
 ちなみにキャスバニアさんの字名は〝バトルヒーラー〟だそうな。
 うん、まんまだね。
 
 その後ろの中衛にはリッドさん。
 斥候役で戦闘力は皆無だと言っていたけど、どんな戦い方をするかはお楽しみだとシルさんに言われてしまった。
 
 一番最後尾、後衛には二人の女性が並んでいた。
 ブロンドヘアのナイスバディ―の女性は、リンダさん。
 大きな両手持ちの杖と体の線が分かるドレスの様な戦闘服と上から下まで覆うローブを装備していた。
 魔法使いで基本4属性をまんべんなく使えるそうだ。
 見た目と相まって〝ザ・魔女〟って感じがする。
 
 最後に同じくブロンドヘアのスレンダー美人がリンネさん。
 リンダさんの妹で【職業:結界師】という珍しい職業だそうだ。
 これでシルさんたちに盾持ちがいない理由がはっきりとした。
 常にリンネさんが結界を張ることによって、盾職が必要なくなっているのだ。
 ただ、欠点も考えられる。
 その結界を突破されたら無防備になるということだ。
 その辺は上位に来たシルさんたちなら対策はしているだろけど。
 
「それじゃいっちょ、先輩の戦い方ってのを見せてあげましょうかね!!」

 シルさんの掛け声と共に、俺たちは今一度第4層へと足を踏み入れたのだった。
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