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第6章 ここから始まる第一歩
五十五日目⑧ 油断大敵針剣山
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今回の【魔双剣】は火属性の【ファイアバレット】を選択してある。
基本スライム種は打撃・斬撃が効きにくい。
水属性や、電撃なども効きにくいそうなので、今回はこのセレクトとなった。
そして刺突攻撃は問題無く通るので、【魔双剣】を利用した火属性の串刺しを狙っている。
俺はそっとパーティーを離れ、【ヒーリングスライム】の後ろへと回り込む。
今回は開けた場所で周囲に沼などもなく、背の高い草も存在しなかった。
俺は慎重に……息を殺して近づいていく。
あと少し……
もう少しで俺の領域……
この時の俺は、どうやら焦っていたようだ。
【ヒーリングスライム】に夢中になり過ぎて、【マッピング】のマップに映る新しい影を見落としていた。
ギュルギュルギュル!!
「ぐわぁ!!」
俺が攻撃に移ろうとした瞬間、後方からの衝撃で盛大に吹き飛ばされた。
その衝撃たるや、俺が今まで経験した中で断トツに激しいものだった。
何度か地面をバウンドしながら、ゴロゴロと転がされた。
気が付いた時には入り口付近まで押し戻されていた。
どうしても攻撃の瞬間に姿を現してしまうハイド系特有の弱点を、今回は狙われた形になった。
だけどどうしてそれがばれたんだ?
「カイト!!」
「【クイックヒール】!!」
エルダの悲鳴に似た声とともに、ナンディーの【回復魔法】が俺の傷を癒していく。
まだ体に痛みが有るものの、ギリギリ動けたのでアイテムボックスから回復ポーションを何本か取り出して、体にぶっかけた。
手にしていた最後の一本を飲み干す頃には、怪我は全く無くなっていた。
さすがファンタジーだな。
普通だったら死んでもおかしくないはずなんだけどな。
おそらく装備のお陰だろうか、吹っ飛ばされた割には衝撃によるダメージが少なかった。
これが衝撃緩和(強)の効果なのかもしれない。
ただ、衝撃は緩和出来てこれなんだから、実際はかなりやばい衝撃が来たはずだな。
俺は先程まで自分がいた場所を睨み見る。
そこに現れたのは、2匹の【スライムヘッジホッグ】だった。
最初に食らいそうになってエルダにフォローされたあの突進を、完璧な形で2匹同時に食らったのだ。
おそらく俺が負った傷の大半は、【スライムヘッジホッグ】の無数に飛び出たトゲによる引っ掻き傷や刺突傷だったんだろうな。
俺の怪我が問題無いと分かると、皆も戦闘に注力していく。
俺も作戦が失敗に終わったので、パーティー戦線に復帰する。
「ごめん、完全に見落としてた。」
俺はスライム軍団に視線を合わせたまま、皆に謝罪した。
「カイトだけのせいじゃないよ。私も見落としてたし。」
デイジーも苦虫を嚙み潰したように悔しがっていた。
デイジーの探査範囲外から一気に突進してきたことになる。
だからこそデイジーも見落とした。
状況的に若干の違和感を感じたが、今はそれを追及している場合じゃなかった。
スライム軍団も全員揃ったようで、こちらのと距離をじりじりと詰めるよに蠢いていた。
【スライムヘッジホッグ】が3匹。
【マッドスライム】2匹。
【ヒーリングスライム】1匹。
あとは……うん、反応しない。
これで全部なはずだ。
デイジーも感じなかったようで、その視線はスライム軍団に向けられていた。
「スライム6匹ですか……現状では厳しいですね。」
「確かに【スライムヘッジホッグ】3匹は厳しいな。今回はあきらめよう。」
ナンディーは状況を観察しつつ、ポールに判断をゆだねた。
ポールもまた状況分析をした結果、無理だと判断し、撤退の決断を下した。
俺もそれに賛成で、倒し切れるビジョンがわかない。
むしろ追い詰められる確率の方が高いようにさえ思えた。
それほどまでに俺とアリサが足を引っ張っている状況なんだろうな。
俺たちはじりじりと迫るスライム軍団と対峙しながら、距離を一定に保ってじりじりと後退する。
そして最後のポールが階段を上り始めると、スライム軍団は興味を失ったかのようにばらばらに散っていった。
おそらくまた足を踏み入れると、さっきのように一気に仕掛けてくるのは想像に易い。
「これで大丈夫だろう。皆上に戻って少し休もう。」
「そうね、これほどまでとは思わなかったわ。私の見立てが甘かったようね。」
ポールは追撃がないことを確認すると、戦闘態勢を解除した。
それに合わせて俺たちも解除したわけだけど、エルダが申し訳なさそうにしていた。
何せ第4層を提案したのがエルダだからだ。
それについては俺を含めポールたちも納得してのことだ。
だけどまじめなエルダは気に病んでしまったらしい。
ここで慰めの言葉一つかけられたらいいんだけど、その原因の一端となっている俺では何もかける言葉を持ち合わせていなかった。
それにしても本当にポールが階段を下りるときにした宣言通りになってしまった。
本当に不甲斐ないな……
もっと強くならなくちゃ……
アリサに視線を送ると、俺と同じように考えていたようだ。
その眼にはリベンジを誓うとばかりに強く輝いていた。
俺たちは第3層に上がると、階段付近で一度休憩をとることにした。
さすがにこのまま戻るには気力を削られ過ぎていたからだ。
「ん?お、珍しいとこで会ったな。どうしたこんなところで。」
しばらく休息しつつ反省会をしていると、前方の通路から見知った顔が見えた。
シルさんたち「乾坤一擲」のメンバーだ。
基本スライム種は打撃・斬撃が効きにくい。
水属性や、電撃なども効きにくいそうなので、今回はこのセレクトとなった。
そして刺突攻撃は問題無く通るので、【魔双剣】を利用した火属性の串刺しを狙っている。
俺はそっとパーティーを離れ、【ヒーリングスライム】の後ろへと回り込む。
今回は開けた場所で周囲に沼などもなく、背の高い草も存在しなかった。
俺は慎重に……息を殺して近づいていく。
あと少し……
もう少しで俺の領域……
この時の俺は、どうやら焦っていたようだ。
【ヒーリングスライム】に夢中になり過ぎて、【マッピング】のマップに映る新しい影を見落としていた。
ギュルギュルギュル!!
「ぐわぁ!!」
俺が攻撃に移ろうとした瞬間、後方からの衝撃で盛大に吹き飛ばされた。
その衝撃たるや、俺が今まで経験した中で断トツに激しいものだった。
何度か地面をバウンドしながら、ゴロゴロと転がされた。
気が付いた時には入り口付近まで押し戻されていた。
どうしても攻撃の瞬間に姿を現してしまうハイド系特有の弱点を、今回は狙われた形になった。
だけどどうしてそれがばれたんだ?
「カイト!!」
「【クイックヒール】!!」
エルダの悲鳴に似た声とともに、ナンディーの【回復魔法】が俺の傷を癒していく。
まだ体に痛みが有るものの、ギリギリ動けたのでアイテムボックスから回復ポーションを何本か取り出して、体にぶっかけた。
手にしていた最後の一本を飲み干す頃には、怪我は全く無くなっていた。
さすがファンタジーだな。
普通だったら死んでもおかしくないはずなんだけどな。
おそらく装備のお陰だろうか、吹っ飛ばされた割には衝撃によるダメージが少なかった。
これが衝撃緩和(強)の効果なのかもしれない。
ただ、衝撃は緩和出来てこれなんだから、実際はかなりやばい衝撃が来たはずだな。
俺は先程まで自分がいた場所を睨み見る。
そこに現れたのは、2匹の【スライムヘッジホッグ】だった。
最初に食らいそうになってエルダにフォローされたあの突進を、完璧な形で2匹同時に食らったのだ。
おそらく俺が負った傷の大半は、【スライムヘッジホッグ】の無数に飛び出たトゲによる引っ掻き傷や刺突傷だったんだろうな。
俺の怪我が問題無いと分かると、皆も戦闘に注力していく。
俺も作戦が失敗に終わったので、パーティー戦線に復帰する。
「ごめん、完全に見落としてた。」
俺はスライム軍団に視線を合わせたまま、皆に謝罪した。
「カイトだけのせいじゃないよ。私も見落としてたし。」
デイジーも苦虫を嚙み潰したように悔しがっていた。
デイジーの探査範囲外から一気に突進してきたことになる。
だからこそデイジーも見落とした。
状況的に若干の違和感を感じたが、今はそれを追及している場合じゃなかった。
スライム軍団も全員揃ったようで、こちらのと距離をじりじりと詰めるよに蠢いていた。
【スライムヘッジホッグ】が3匹。
【マッドスライム】2匹。
【ヒーリングスライム】1匹。
あとは……うん、反応しない。
これで全部なはずだ。
デイジーも感じなかったようで、その視線はスライム軍団に向けられていた。
「スライム6匹ですか……現状では厳しいですね。」
「確かに【スライムヘッジホッグ】3匹は厳しいな。今回はあきらめよう。」
ナンディーは状況を観察しつつ、ポールに判断をゆだねた。
ポールもまた状況分析をした結果、無理だと判断し、撤退の決断を下した。
俺もそれに賛成で、倒し切れるビジョンがわかない。
むしろ追い詰められる確率の方が高いようにさえ思えた。
それほどまでに俺とアリサが足を引っ張っている状況なんだろうな。
俺たちはじりじりと迫るスライム軍団と対峙しながら、距離を一定に保ってじりじりと後退する。
そして最後のポールが階段を上り始めると、スライム軍団は興味を失ったかのようにばらばらに散っていった。
おそらくまた足を踏み入れると、さっきのように一気に仕掛けてくるのは想像に易い。
「これで大丈夫だろう。皆上に戻って少し休もう。」
「そうね、これほどまでとは思わなかったわ。私の見立てが甘かったようね。」
ポールは追撃がないことを確認すると、戦闘態勢を解除した。
それに合わせて俺たちも解除したわけだけど、エルダが申し訳なさそうにしていた。
何せ第4層を提案したのがエルダだからだ。
それについては俺を含めポールたちも納得してのことだ。
だけどまじめなエルダは気に病んでしまったらしい。
ここで慰めの言葉一つかけられたらいいんだけど、その原因の一端となっている俺では何もかける言葉を持ち合わせていなかった。
それにしても本当にポールが階段を下りるときにした宣言通りになってしまった。
本当に不甲斐ないな……
もっと強くならなくちゃ……
アリサに視線を送ると、俺と同じように考えていたようだ。
その眼にはリベンジを誓うとばかりに強く輝いていた。
俺たちは第3層に上がると、階段付近で一度休憩をとることにした。
さすがにこのまま戻るには気力を削られ過ぎていたからだ。
「ん?お、珍しいとこで会ったな。どうしたこんなところで。」
しばらく休息しつつ反省会をしていると、前方の通路から見知った顔が見えた。
シルさんたち「乾坤一擲」のメンバーだ。
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