勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第6章 ここから始まる第一歩

五十五日目① PT名【厨二病患者集団】に改名でもすればいいのかな?

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 新装備の性能テストから一夜明けて、今日は更に下の階層で性能テストをすることにした。
 正直に言って昨日の性能テストは、いまいち評価しにくい結果だったからだ。
 その理由はとても簡単だ。
 今回製作した装備品の性能があまりにも良過ぎて、限界値が分からないという状況だったからだ。
 それもあってか、さらに下層でのテストが必要だろうという結論に至ったのだった。

 昨日のうちに全員分の装備の裏打ちも終わり、準備万端だ。
 
 俺たちはクエストの確認を兼ねて、まずはギルド会館に向かった。
 だけど、なぜか周囲の視線が俺たちに注がれていた。
 それもそのはずで、泥蛙の外套とブーツを装備した俺たちは完全に街の景色から浮いていた。
 見た目的に中二病なのだから仕方がないのかもしれないけど……
 そもそもこの世界でも〝厨二病〟という概念が存在していたのには驚いた。
 どうやらこれも〝勇者様案件〟のうちの1つだったらしい。
 その他にも、〝チート〟や〝リア充〟〝舐めプ〟とかの言葉も存在していて、この【勇者】はどう考えても俺の世代に近いように思えてならなかった。
 きっとその【勇者】様とは気が合いそうだとも思えた。

 ギルド会館に着きクエストを確認すると、めぼしい物はほとんど残っていなかった。
 やはり常時依頼のクエストカードがゆらゆらと揺れていた。
 今日もまたここで冒険者たちの戦闘(奪い合い?)
 というわけで俺たちは受付で忙しそうにしているキャサリンさんとメイリンさんの姿があった。
 軽く挨拶を交わし、今日の目的を伝えると、少々心配されてしまった。
 実力的には問題ないだろうけど、十分に注意を払うようにと念押しまでされてしまった。
 
 そんなこんなで王都を離れ【湿地帯ダンジョン】に到着した俺たちだったが、その道すがらに出会った冒険者たちからも、奇異の目を向けられたのは当然と言えば当然だった。
 しかもダンジョンの受付担当の魔族男性が、必死で笑うのを堪えていたる始末。
 何せ口元に手を当てて、肩が震えているんだからさ。
 
 ぜったいどっかのタイミングでシメタル……
 
 途中から受付の男性は奥へ引っ込み、その後を半笑いの女性受付担当者が対応をしてくれた。
 奥からは男性がゲラゲラと笑う声が聞こえてきたことから、この装備は俺が考えている以上に〝ヤバイ〟らしいね。

 この装備……ダンジョンの中に入ってから装備しない?



 改めて【湿地帯ダンジョン】に侵入した俺たちは、全力で第3層を目指した。
 明日の会議参加の為、今日はあまり遅くまで潜ってもいられないからだ。
 少しでも時間短縮の為にと思って装備してきたけど……
 それがあんな事態を招くとは思ってもみなかったよ。

 それはそうと、第1層第2層は既に相手にならなかった。
 もはやそれは討伐とは呼べないような行為でもあった。
 討伐というよりも処理という方が正しい気がする。
 モンスターたちは出てきたそばから狩られていく。
 むしろその状況に同情を禁じ得なかった気のせいではないはず。
 淡々と進み、第3層への階段までやってきた。

 少し休憩してから第3層へ潜ることにしたんだけど、エルダから一つ注意があった。

「ここからはカイトとアリサは初めての階層よね?今までと違うスライムが出てくるから注意してほしいの。名前は【スライムヘッジホッグ】。見た目はかわいいんだけど……。」

 何故かエルダが言い淀んでいた。
 それほどまでに強力なスライムなんだろうか。

「見た目は普通のスライムなのよ。だけど、攻撃態勢に入ると全身がトゲだらけになるわ。そのトゲを利用して高速移動・急停止をしてかく乱してくるの。それと一番気を付けないといけないのはトゲを飛ばしてくる事よ。」

 マジかよ。
 一瞬ハリネズミとか想像したけど、全然違うじゃん。
 まさかだけど、キュルキュルと回転しながら突進してくるの⁉
 防御しずらいじゃないか。
 あと、トゲを飛ばしてくるとか……
 ま、まさか誘導ミサイル!?
 なんて冗談を考えられるほどの余裕は有るんだけどね。

「【スライムヘッジホッグ】はそのトゲの長さ・硬さ・太さを自在に変えて来るわ。太いトゲを飛ばしてきたと思ったらものすごく細い針に切り替えてきたりとか。だから十分に気を付けて。」
「なるほどね。ポールでもガードするので精いっぱいなのか?」

 俺は前衛のポールに対応を確認してみたが、若干渋い顔をしていた。

「防げないことは無い。ただ、上に細い針を大量にばら撒かれるとかなり厄介だな。さすがに防ぎようが無い。だからそうなる前に倒し切るのが得策だ。」
「それについては私の方で何とかするわ。あれは風の流れに弱いから、最悪風を上に発生させて流してしまうから。」

 エルダはそういうと俺たちの上空に【魔光陣】で風を吹かせた。
 俺の魔法だと面じゃなくて点での攻撃だから、こういった時に全くと言って良いほど役立たないんだよな。
 おそらく上位職業にでもなれれば魔法も増えるんだろうけど……っと、ない物ねだりしたところで始まらないな。

「では参りましょうか。」

 ナンディーの声掛けに俺たちも立ちあがり、気合を入れなおす。
 これでやっと前に進める。
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