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第6章 ここから始まる第一歩

五十三日目⑩ 青の集団?

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 鍛冶師ギルドでは今日も威勢の良い声と槌と金属の音が鳴り響いている。
 いつ聞いても心躍ってしまうのはロマンを感じるからだろうか。
 
 そんなギルド会館の奥にある受付カウンターには少し筋肉質で姉御肌な受付嬢?がドカリと腰を下ろしていた。

「こんにちは。ギルドマスターのロベルトさんはいますか?」
「ん?あぁ、問題児がきたね。話は聞いているよ。付いてきな。」
 
 そう言うと受付嬢……もう姉御でいいや、姉御は近くの職員に声をかけると、席を離れずかずかと会館のさらに奥へと進んでいった。
 俺たちも置いて行かれるわけにはいかなく、慌てて後を追ったのだった。

「ここだ。ちょっと待ってな。」

 姉御は息を大きく吸うと、腕を大きく振り上げた。

ガンガンガン!!

 これでどうだと殴り合うかのように、ドアを全力で叩く姉御に若干の恐怖を感じてしまった。

「ギルマスいるんだろ!?客人だ!!さっさとここ開けやがれ!!」
「うっせ~ぞ!!今大事なところなんだよ!!」

 部屋の奥からロベルトのおっちゃんの声が聞こえてくる。
 その声の質から大分焦りというか怒りを感じ取ることができた。
 ガチャリと開けられたドアの先には、目に隈を作ったロベルトさんが立っていた。
 その目には覇気が無く、今にも死にそうな感じの男性が佇んでいた。

「ロベルトさんどうしたのその顔!?」

 俺は思わず声をかけてしまった。
 ロベルトさんも苦笑いを浮かべ、なんとか立っているのが精いっぱいそうだ。
 ナンディーにお願いするのは心苦しいんだけど、【回復魔法】で体調を回復させてもらえるように頼んだ。
 そうでもしないと話が進まない気がしたからだ。
 ナンディーも状況を察してくれて、【回復魔法】を使ってくれた。
 効果はすぐに現れたようで体調が回復したことが見て取れた。
 これで何とか話は出来そうな感じになった。

「すまんかったな。【回復魔法】をかけて貰えて助かったわい。それで用事ってのはなんぞ?」
「えっと俺のスキルと職業に関する話です。」

 ロベルトさんは俺の言葉を察してくれて、中に居た職員全員を一度退出させた。
 一部職員は難色を示したけど、ギルマス特権で強制退出させてくれた。
 なんとなくしぶしぶという感じも見えた職員もいたが、姉御に一喝されるとそそくさと部屋を出ていったのだった。
 誰がここの実質的トップかなんとなく理解してしまった一幕であった。
 部屋には防音・防諜の魔道具が設置されており、手早くロベルトさんが起動させた。

「まずはこれで良いじゃろ。で、詳しく聞かせてくれんかの?」

 俺は今日の出来事を詳しく話して聞かせた。
 ロベルトさんもガンテツさんと同じような反応になっていた。
 飽きれと恐れ両方が混在した何とも言えない表情だ。

「こいつは参ったな。カイトや、この話はあと何人知ってるんじゃ?」
「今のところ俺のパーティーメンバーとシャバズのおっちゃん。あとはガンテツさんかな?」

 ロベルトさんは「ふむ」と声を出した後に、目を閉じて思考の海に潜りこんでいく。
 どれくらいたったか分からないけど、浮上していたロベルトさんは何やら一つの決断を下したようだ。

「カイトや。お前さんの技術と作業台シリーズは、秘匿技法に認定されるべきものかもしれんな。薬品や製錬だけならまだしも、装備・服飾が自在に造れるのはいただけん。鍛冶師ギルドとしても作業台シリーズの導入は見送ろう。カイトも鍛冶屋からその話が来ても全て断ってくれて構わん。そうしなければ、この国の鍛冶技能が死に絶えてしまう。お前さんが存命中ならまだいい。しかしだ……お前さんが死んじまった後、技能が途絶えていたらそれはもうこの国の終わりを意味してしまうからのぉ。」

 ロベルトさんの答えを聞いて、改めて事の重大性を再認識させられた。
 確かに俺が生きていれば問題は無い。
 レシピも増えていき、安価で装備が出回るだろう。
 作業台シリーズが壊れたとしても、作業台から創り出せるのだから問題はない。
 しかし、俺が死んで作業台シリーズが壊れた時、修理は不可能だろう。
 むしろ、俺が死んだ段階で俺のスキルから生まれたものが全て機能停止になる可能性すらある。
 つまりそこで終了になってしまう。
 俺はそれをほとんど考慮していなかった。
 便利になればいいやくらいにしか考えていなかったのかもしれない。
 本来はこの世界の技術で再現出来る事が望ましいのだ。
 ロベルトさんが言った、〝薬品や製錬だけならまだまし〟という言こと……
 そう、〝まだまし〟なだけで、〝望ましい〟訳では無い。
 幸い薬師ギルドでも【職業:薬師】を囲い込んで技術継承・研究は続ている。
 だからこその導入だったんだと思う。
 鍛冶師ギルドの簡易溶鉱炉もあくまでも製錬作業だけを導入している。
 おそらくこちらも精錬技術の技術継承・研究は続けているんだろうけど。
 つくづく俺には内政チートは向いていないらしいな。

 裁縫ギルドにも声をかけようとしたけど、ロベルトさんが対応してくれる事になった。
 俺が行くとまた一悶着あって、大変になりそうだからという配慮からだ。
 おそらく後日国王陛下から召喚されるだろうとの話も出ていたので、一応覚悟しておこう。

 それにしても今日一日で一気に疲れが増してしまったな。
 でもまあ、これで目標のリザードマンとの対決の日が近づいてきた気がした。



 ちなみに宿に戻るとエルダから全員分の装備の裏打ちを依頼され、今一度フロッグ退治に行く事になったのだった。
 でもまあ、あの雨合羽を全員できれば問題ないだろうね。
 青いベルトの青い外套集団……
 全員道連れだ……

 くっくっくっく……
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