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第5章 ここから始まる女神様?
五十一日目⑭ あ、だめだ……どうしてこうなった……
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「つまりだ、もしもだよ……。冒険者ギルドが〝リサの死亡〟を認めたらどうなる?」
全員の表情が一気に驚きの色を見せていた。
少し考えれば分かるはずだけどなって思ったのは内緒だ。
「待ってよカイト。それじゃあ、冒険者ギルドにも一枚かませるって事?」
「そうだね。シャバズのおっちゃんなら話を理解してくれると思うよ。それに【トリスタン王国】・【ゴーヨクォート正教国】にはどの国も迷惑してるんだったら、乗ってくれると思うけどね?どうだろう?」
俺は皆の返事を待った。
俺の話を聞いて黙って考え込んでいたヘンリエッテ殿下は少し悪い人の顔になっていた。
リリア殿下は……、うん、寝てた。
どうやら話に飽きたらしく、後ろでキキョウと遊んでいたらしい。
そしたらキキョウに抱っこされた状態で眠ってしまったようだ。
「カイト様……それはうまく行くとお思いで?」
「行くも行かないも、そうするでしょ殿下が。」
俺は断言した。
必ず殿下は乗ってくると。
おそらく殿下の思考は常に国と臣民に向いている。
そのために多少の犠牲や汚名などまったく気にしていないのだ。
「そこで私に丸投げですか?」
「それはお互い様でしょ?それに、これならだれも苦しまないでしょ?」
俺は肩を竦めながらおどけて見せた。
ヘンリエッテ殿下は深いため息をついて、少し冷めたお茶に手を伸ばした。
一息付けたようで、さらに会話は続いた。
「カイト様、その話では苦しむ人間が出てしまいますわ。私と冒険者ギルド・ギルドマスターです。」
「大丈夫、シャバズのおっちゃんは少しぐらい頑張ったって罰は当たらんですよ。それに殿下が最初に仕掛けた話なんですから、最後まで責任を持って対処してください。」
まさかここまで話をされるとは思わなかったようで、殿下はくすくすと笑いだした……。
と思ったら、淑女がどこかへ旅立ったかのように大笑いを始めた。
その仕草にさすがのリヒター隊長も顔に手を当てて天を仰いでしまった。
「さすがはカイト様。見事な返しですわ。ここまで言われてはね。リヒター、すぐにお父様へ報告を。戻って書類をでっちあげますわよ。」
もうさ、でっちあげると言い切っちゃったよこの殿下は……
「リサさん、ごめんなさいね。あなたに辛い決断をさせるところでしたわ。ポールさんもごめんなさい。」
殿下は頭を下げると、少し吹っ切れた表情をしていた。
そしてその下に隠した黒い部分が見え隠れしていた。
どうもこの人は読み切れないなぁ。
おそらく【トリスタン王国】と【ゴーヨクォート正教国】にどうやって嫌がらせをしてやるか一生懸命考えてるんだろうな……
「そうでしたわ。リサさん。あなた達は新しい名前を考えてくださいな。苗字はポールさんの物で問題はないですが、名前は完全に新しくする必要がありますわ。」
「それでしたら……。レティシア様、私に新たな名前をお授けください。」
リサはレティシアに跪くと祈りを捧げていた。
って、いつからレティシア教の信者になってたの?
「(カイトさん、実は数日前にいきなり祈りを捧げ始めたのです。おそらく自身の身の内を明かすかどうか迷っていたようです。レティシア様も答えはせずに黙って話を聞いていたようですが)。」
そっとその経緯をナンディーが教えてくれた。
うん、地味にレティシア教が広がり出している気がする……
「レティシア様とういうのは……?」
ほら食いついた!?
端に控えていたレティシアもびくりといているじゃないか……
「はい、レティシア様は……」
「あ~っとリサ!!君の名前は後で考えよう!!うん、それが良い!!な?ポールもそう思うよな?」
「あ、あぁ。」
さすがにレティシアの件はばれたらかなり面倒になりそうだったので、多少強引でも押し切ろうと思う。
リサもしまったという顔を浮かべており、俺を見つめる殿下の視線がものすごく痛い。
「カイト様……、ここにいたって秘密はいかがなものかと思いますが?」
殿下の声色は優しさを含んでいたけど、その表情に優しさが感じられなかった。
むしろ、標的を見つけた猛禽類の様に逃がしてはくれなさそうだ。
俺はレティシアに視線を送ると、どこか諦めた表情を浮かべていた。
その流れを読み取ったナンディーが話を引き取ってくれたのだ。
「申し訳ありません。これにはいろいろと事情がございます。」
「その事情とは?」
殿下の視線が細めた目と相まって、凶器とも思える鋭さを持っていた。
ナンディーはそんな視線も何のその、ユラリユラリとかわしながら説明を続ていく。
「カイトさん達と共にするようになったある日、突然私はある職業に目覚めました。それが【職業:教祖】です。そして【称号:伝道師】も同時に得ることができたのです。」
「そこまでは分かりました。つまり新しい宗教家になったと言う事ですね?」
「左様でございます。」
殿下の視線がまた俺とぶつかった。
その視線には憐れみであふれており、「大変なのを拾ったわね?」って言っているようだった。
「そしてその主神たる女神がレティシア様なのです。」
そう言うとナンディーはレティシアの前に跪き、祈りをささげた。
レティシアもあきらめたようで、ナンディーの頭にそっと右手を添えた。
すると、どこからか光が降り注ぎ、聖なる気で部屋が満たされていくのが分かった。
その様子を見ていた殿下は、目が飛び出さんかとばかりに見開いていた。
まあそうだよね、さっきまで女神さまが給仕してたんだから。
「カイト様……。さすがにこれは予想外です。むしろ、今すぐにでも跪きたい衝動に駆られてしまいました。」
「耐えていただいて何よりです。もし跪いたら本気でまずいことになりますからね?」
って、アレ?だんだん殿下の姿勢が下がって……
あ、だめだ……
もう殿下の身体は自然にレティシアに跪いていた。
そしてまたここに一人レティシア教の信者が誕生してしまった。
殿下が跪いたことで神格がまた上がったらしく、降り注ぐ光が一層強くなった。
一人……また一人と近衛騎士の人たちが跪いていく。
そしてこの場に立っていたのは俺たちのパーティーとリヒター隊長だけだった。
リヒター隊長は意地でも跪かないとでもしているかのように耐えていた。
しかしそこに悪魔が現れたのだ……
おい、ギンスズ何やってる!?
ギンスズがニヤリと俺の方を見ると、見事な膝カックンをリヒター隊長に決めたのだった。
リヒター隊長は不意を突かれ膝を地面に付いてしまった。
そこには立派な信者が誕生したのだった。
どうしてこうなった……
全員の表情が一気に驚きの色を見せていた。
少し考えれば分かるはずだけどなって思ったのは内緒だ。
「待ってよカイト。それじゃあ、冒険者ギルドにも一枚かませるって事?」
「そうだね。シャバズのおっちゃんなら話を理解してくれると思うよ。それに【トリスタン王国】・【ゴーヨクォート正教国】にはどの国も迷惑してるんだったら、乗ってくれると思うけどね?どうだろう?」
俺は皆の返事を待った。
俺の話を聞いて黙って考え込んでいたヘンリエッテ殿下は少し悪い人の顔になっていた。
リリア殿下は……、うん、寝てた。
どうやら話に飽きたらしく、後ろでキキョウと遊んでいたらしい。
そしたらキキョウに抱っこされた状態で眠ってしまったようだ。
「カイト様……それはうまく行くとお思いで?」
「行くも行かないも、そうするでしょ殿下が。」
俺は断言した。
必ず殿下は乗ってくると。
おそらく殿下の思考は常に国と臣民に向いている。
そのために多少の犠牲や汚名などまったく気にしていないのだ。
「そこで私に丸投げですか?」
「それはお互い様でしょ?それに、これならだれも苦しまないでしょ?」
俺は肩を竦めながらおどけて見せた。
ヘンリエッテ殿下は深いため息をついて、少し冷めたお茶に手を伸ばした。
一息付けたようで、さらに会話は続いた。
「カイト様、その話では苦しむ人間が出てしまいますわ。私と冒険者ギルド・ギルドマスターです。」
「大丈夫、シャバズのおっちゃんは少しぐらい頑張ったって罰は当たらんですよ。それに殿下が最初に仕掛けた話なんですから、最後まで責任を持って対処してください。」
まさかここまで話をされるとは思わなかったようで、殿下はくすくすと笑いだした……。
と思ったら、淑女がどこかへ旅立ったかのように大笑いを始めた。
その仕草にさすがのリヒター隊長も顔に手を当てて天を仰いでしまった。
「さすがはカイト様。見事な返しですわ。ここまで言われてはね。リヒター、すぐにお父様へ報告を。戻って書類をでっちあげますわよ。」
もうさ、でっちあげると言い切っちゃったよこの殿下は……
「リサさん、ごめんなさいね。あなたに辛い決断をさせるところでしたわ。ポールさんもごめんなさい。」
殿下は頭を下げると、少し吹っ切れた表情をしていた。
そしてその下に隠した黒い部分が見え隠れしていた。
どうもこの人は読み切れないなぁ。
おそらく【トリスタン王国】と【ゴーヨクォート正教国】にどうやって嫌がらせをしてやるか一生懸命考えてるんだろうな……
「そうでしたわ。リサさん。あなた達は新しい名前を考えてくださいな。苗字はポールさんの物で問題はないですが、名前は完全に新しくする必要がありますわ。」
「それでしたら……。レティシア様、私に新たな名前をお授けください。」
リサはレティシアに跪くと祈りを捧げていた。
って、いつからレティシア教の信者になってたの?
「(カイトさん、実は数日前にいきなり祈りを捧げ始めたのです。おそらく自身の身の内を明かすかどうか迷っていたようです。レティシア様も答えはせずに黙って話を聞いていたようですが)。」
そっとその経緯をナンディーが教えてくれた。
うん、地味にレティシア教が広がり出している気がする……
「レティシア様とういうのは……?」
ほら食いついた!?
端に控えていたレティシアもびくりといているじゃないか……
「はい、レティシア様は……」
「あ~っとリサ!!君の名前は後で考えよう!!うん、それが良い!!な?ポールもそう思うよな?」
「あ、あぁ。」
さすがにレティシアの件はばれたらかなり面倒になりそうだったので、多少強引でも押し切ろうと思う。
リサもしまったという顔を浮かべており、俺を見つめる殿下の視線がものすごく痛い。
「カイト様……、ここにいたって秘密はいかがなものかと思いますが?」
殿下の声色は優しさを含んでいたけど、その表情に優しさが感じられなかった。
むしろ、標的を見つけた猛禽類の様に逃がしてはくれなさそうだ。
俺はレティシアに視線を送ると、どこか諦めた表情を浮かべていた。
その流れを読み取ったナンディーが話を引き取ってくれたのだ。
「申し訳ありません。これにはいろいろと事情がございます。」
「その事情とは?」
殿下の視線が細めた目と相まって、凶器とも思える鋭さを持っていた。
ナンディーはそんな視線も何のその、ユラリユラリとかわしながら説明を続ていく。
「カイトさん達と共にするようになったある日、突然私はある職業に目覚めました。それが【職業:教祖】です。そして【称号:伝道師】も同時に得ることができたのです。」
「そこまでは分かりました。つまり新しい宗教家になったと言う事ですね?」
「左様でございます。」
殿下の視線がまた俺とぶつかった。
その視線には憐れみであふれており、「大変なのを拾ったわね?」って言っているようだった。
「そしてその主神たる女神がレティシア様なのです。」
そう言うとナンディーはレティシアの前に跪き、祈りをささげた。
レティシアもあきらめたようで、ナンディーの頭にそっと右手を添えた。
すると、どこからか光が降り注ぎ、聖なる気で部屋が満たされていくのが分かった。
その様子を見ていた殿下は、目が飛び出さんかとばかりに見開いていた。
まあそうだよね、さっきまで女神さまが給仕してたんだから。
「カイト様……。さすがにこれは予想外です。むしろ、今すぐにでも跪きたい衝動に駆られてしまいました。」
「耐えていただいて何よりです。もし跪いたら本気でまずいことになりますからね?」
って、アレ?だんだん殿下の姿勢が下がって……
あ、だめだ……
もう殿下の身体は自然にレティシアに跪いていた。
そしてまたここに一人レティシア教の信者が誕生してしまった。
殿下が跪いたことで神格がまた上がったらしく、降り注ぐ光が一層強くなった。
一人……また一人と近衛騎士の人たちが跪いていく。
そしてこの場に立っていたのは俺たちのパーティーとリヒター隊長だけだった。
リヒター隊長は意地でも跪かないとでもしているかのように耐えていた。
しかしそこに悪魔が現れたのだ……
おい、ギンスズ何やってる!?
ギンスズがニヤリと俺の方を見ると、見事な膝カックンをリヒター隊長に決めたのだった。
リヒター隊長は不意を突かれ膝を地面に付いてしまった。
そこには立派な信者が誕生したのだった。
どうしてこうなった……
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