勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

文字の大きさ
上 下
251 / 322
第5章 ここから始まる女神様?

五十一日目⑧ 俺何も悪い事してないのに……

しおりを挟む
『カイト様!!助けて下さい!!』

 突如として寄せられたレティシアからの救援要請。
 その切羽詰まった声に俺は慌ててしまった。

『何があった⁈』
『それが……その……お願いです。早く戻ってきてください……』

 そう言うとレティシアとの念話が切れてしまった。
 レティシアが意図的に切ったのか、それともふいに何かがあり切れてしまったのか。
 今ある情報だけではそれが読み取れなかった。

「悪い二人とも、聞いての通りだ。急いで戻ろう!!」
「ですな。」
「おう!!」
 
 こうして俺たちは、急ぎ【森のアナグマ亭】へ戻るのだった。
 何事もないといいんだけど……



「あ、カイト!!」
「みんな!!」
 
 途中リサの魔法で移動速度を上げていたエルダ達とも合流し、周囲の人の迷惑も顧みず、全力で大通りを駆け抜けた。
 そして住宅街を抜けて戻った先に、俺たちは予想だにしなかった光景を目の当たりにしてしまった。

 そこに広がっていたのは長蛇の列だった。
 今は時間的にちょうどお昼の時間だ。
 だからと言ってここまで長蛇の列が出来るなんて、今まで無かったはずなんだけどな。
 というよりも、むしろ野次馬のようにも見えた。
 その先に何があるのか気になるのか、後ろ側にいる人たちが背伸びしたり、何か台のようなものを準備したりと、いろいろな方法で覗こうと四苦八苦していた。

『レティシア、これはいったい何があったんだ?こんなの初めてだろ?』
『それが……』

 もう一度レティシアに念話を飛ばすと、今度はちゃんとつながった。
 しかしレティシアは何か歯切れの悪い感じで言い淀んでしまった。
 俺は何かいやな予感がした。
 こういう時の嫌や予感は、大概悪い方に当たってしまうのはなんでだろうな?

「すまない通してくれ!!」

 その人込みをかき分けながら俺たちは先を急いだ。
 その間も野次馬たちに何か言われていたけど、それどころではない気がしていた。
 俺たちは恐る恐る店の入り口付近までやってきた。
 そこには見たことがないほど豪華な馬車が数台停まっていた。
 その馬車に描かれた紋章に俺は嫌な予感が的中したことを確信したのだった。

「カイト様!!」

 そう俺を呼んだ人物は、縦巻きロールの金髪美女……見間違うはずもないヘンリエッテ殿下だった。

「殿下、なぜここに?」

 俺は慌てて質問を投げかけると、ヘンリエッテ殿下はとても不機嫌そうに口元を膨らませていた。
 何か俺まずい事したかな?

「いつまでたっても遊びに来て下さらなかったので、私から参りましたの。お邪魔でしたでしょうか?」

 ヘンリエッテ殿下はとても悲しそうな、でも少し恥ずかしそうに返答してくれた。
 ってか、あれって社交辞令の範疇でしょうに……

「お姉さま。それではカイト様がお困りになってしまいましてよ。まったくもう。これだからお姉さまは……」

 ヘンリエッテ殿下の後ろからもう一人、これまた美少女といっても過言じゃない女の子が出て来た。
 見覚えがある顔……どこで見たっけ?

「その節は助けてくださりありがとうございます。シュミット王国第三王女、リリア・フォン・シュミットです。〝お兄ちゃん〟」

 あ、思い出した。
 あの馬車の子じゃないか。
 確かにシュミット陛下の娘だから王女様だわな。

 なんかもうさ、嵐の予感しかしなんだけど……

 それに俺の後ろではすでに体感温度が10度くらい下がっているんだけどね。

「へぇ~カイトってそんな趣味があったんだぁ~」

 ニマニマとした笑みを浮かべたデイジーが、いたずらっ子のようにこちらを見ていた。
 それを聞いたエルダはさらに表情を凍てつかせていく。
 頼むデイジー、これ以上何も言うな!!

「断じて違う!!この子は以前街道で野党に襲われているところを助けただけだ。ってか、エルダは知ってるはずだろ⁈」

 よくよく考えたら、そのころエルダは俺を監視していたはずなんだから、そのことを知っていておかしくないはずだ。
 なのになんでそんな態度取るんだよ!?

「え?何のこと?」

 白々しく否定したエルダの表情はどこかいたずら成功の雰囲気が感じられた。
 つまりあれだ、二人して俺をからかったってことかよ!!
 なんかもう疲れた……


 
「カイト殿、お久しぶりです。」
「リヒター団長。これはいったい何が有ったんですか。なぜ両殿下がここへ?」

 店の奥からダニエルさんと共に姿を現したのはリヒター団長だった。
 既に疲れ切った俺は、この場の収拾を付ける為に、リヒター団長に助け舟を求めた。

「カイト殿が約束したので、会いに来た……というところだね。」
「あれは社交辞令……」

 と言いかけたところで、ヘンリエッテ殿下から鋭い視線を感じ取った俺はそれ以上言葉を発する事が出来なかった。
 助け船を求めて周りを見回すと、ダニエルさんと視線が合った。
 って、なんで目をそらすの⁉
 だれか助け……
 エルダさんや、なぜそんなに冷たい視線を投げかけるんですか?
 さっきまでと同じで冗談ですよね?ね?
 ……
 …………
 ………………
 俺何も悪い事してないのに……

「と、とりあえず、ここでの立ち話は店の邪魔になってしまうので、部屋に行きませんか?ポール、部屋貸してもらって良いかな?」
「あぁ、構わないぞ。」
「ありがとう。では殿下、参りましょう。」

 俺はそうするのが精いっぱいだった。
 誰か助けて、マジで。

『レティシア、キキョウ。あとでお茶を淹れてくれるか?』
『畏まりました。』

 レティシアが応えてくれたので、お茶は問題無いだろうけど……
 つうか、なぜこうなった!?
しおりを挟む
本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
感想 77

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。