勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第5章 ここから始まる女神様?

五十一日目⑦ 王国の成り立ち

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 鍛冶師ギルドを出て周りをよく見ると、この大通りには他のギルドが集中しているのが分かる。
 
 この国の王都は碁盤の目に近い形で道が整備されている。
 まずは王城を囲むように作られた水堀。
 これは有事の際に王城入り口の跳ね橋を上げることで、攻め込みにくくする狙いがあるらしい。
 この辺は現代地球と同じ考えから来てるんだろうな。
 ただ、この世界には魔法という物が存在するから、その堀の広さが尋常じゃないんだけどね。
 その堀の周りを馬車3台くらい通れる幅の石畳が並ぶ。
 なんでそんなものが?って思ってエルダに聞いたことがあった。
 その答えは……〝土系魔法で一気に石の槍に変えてしまう〟らしい。
 でもそれって逆に制御されたら責められるんじゃ?って思ったけど、どうやらこの周辺の石畳の下には魔法陣が設置されていて、王権ですぐさま発動できるらしい。
 って、そんな情報が外に漏れていいのっても思ったけど、それもあえて漏らしているみたいだった。
 ある意味牽制的な狙いがあるんだろうな。
 
 そこから東西南北にこれまた馬車三台分の石畳が伸びている。
 いわゆる大通りってやつだな。
 こっちには罠は仕掛けていないようで、普通の石畳だった。

 王城の周辺は貴族街となっていて、そこもまた四角く区切られていた。
 貴族街の四方は壁で区切られており、防犯の意味も含めて警備用の門が大通りに設置されている。
 通常はこの4つの門だけが出入り口となっているようだ。
 更にその城壁の周囲にまた石畳の道が整備されていた。
 防衛と考えると問題が有りそうだけど、物流面を優先しているのが良く分かる。
 そんな感じでいくつもの四角く区切りられて整備されているのがこの王都だ。

 鍛冶師ギルドも、そんな鍛冶屋街の十字路の角地に建っていた。
 向かいには錬金術ギルド。
 斜め向かいには魔導ギルド。
 最後の角には魔導具ギルドが建っている。
 どうやらここだけで武具の製造を効率的に出来るように整備されているようだった。

「それにしてもよく見ると、かなり効率的に作られているよね。前国王に絶対無理だから、その前の賢王がこうしたんだろうな。」
「あぁ、その事か。」

 ポールはそれを知っているようで、国の成り立ちについて話してくれた。

「もとはこの国の北に位置する【トリスタン王国】の一領地にしか過ぎなかったんだ。しかし、今から600年ほど前に当時この周辺を統括していたデクーノボート辺境伯が、【トリスタン王国】の圧政に耐えかねて決起。独立戦争を起こしたんだ。その時共に戦ってくれたのが、エルフィンドのエルフたちと、西の諸国連合だ。そして教会とのやり取りを止める位置に領地が有った為に、うまく分断作戦をとる事が出来、教国との連携が取れなくなった【トリスタン王国】はやむなく独立を認めたって話だ。」

 へぇ~。
 そう言えばこの国の成り立ちって初めて知ったかも。
 別に知らなくても問題無いから、疑問にすら思わなかったよ。

「それから基本的にはデクーノボート王国は賢王がうまく輩出してくれたおかげで、こうして整備された王都が築かれていったそうだ。」
「ポールはやけに詳しいね?」
「誰でも必ず一度は耳にする昔話だからな。正直言ってしまうと、正しい伝承は失われているってのが通説だ。かなり美化されているらしい。特に400年前に行われた初めての勇者召喚についても、成功したという話しか伝わっていない。【勇者案件】【賢者案件】については口伝として伝わっていたり、レシピが残されていたりするだけだからな。正確には分かっていないようだ。」

 なるほどねぇ~。
 まぁ、そのおかげでうまい飯とかが食べられるからあまり気にしないんだけどね。

「それでしたら私からも。【勇者】【賢者】は共に活動をしていたようですな。しかも教国から亡命した【聖女】も共にしていたそうですよ。そのほかにも【剣神】と呼ばれる剣の達人。【神の目】と呼ばれた凄腕の弓使い。【矛盾の体現者】なる、盾使いが一緒だったと記録を読んだ事が有ります。ただ、全員の名前などの個人を特定する記録が抹消されているかのように見つかりませんでしたが……」

 これってこの世界では当たり前の事なんだろうか。
 男の子なら調べたくなる奴。
 うん、きっとそうなんだろうな。
 ある意味、憧れみたいな何かが作用してしまったのだろう。

「ありがとう二人とも。それにしても記録上で名前が無いってのも不思議な感じだね?普通だったら伝承されていてもおかしく無いのにね?」

 俺の素朴な疑問もまたこの世界の当たり前だったようだ。
 二人ともこれを調べようとしたらしいけど、結局見つける事は出来なかったそうだ。

「じゃあ、このまま冒険者ギルドに戻ろっか?」
「そうだな。」
「ですな。」

 なんだかんだ言って男性陣でまとまる事が出来るのは嬉しい限りだ。
 でもやっぱり違和感が拭えなかった。
 普通は残って然るべき物が残っていない……
 これは誰かが意図してそうしているとしか思えない……
 俺は一瞬思考の海に呑まれそうになるも、ポールが声をかけてくれたおかげで深くダイブせずに済んだ。
 これについてはエルダ達の意見も聞きたいので戻って相談ってなりそうだな。



 冒険者ギルドに着いた俺は、すぐにキャサリンさんの元に向かった。
 あまりの到着の速さに何か問題でも発生したのかと思ったらしく、勢い良くカウンターを飛び出してきた。

「か、カイト君、何があったの?納品で問題でもあった?」
「落ち着いてくださいキャサリンさん。きちんと処理をしてきましたので問題無いですよ。ほらこれ、ちゃんと受け取ってきましたよ?」

 俺はキャサリンさんにロベルトさんから預かった納品確認書を手渡した。
 内容は確かに受領してというものだった。
 
「本当に納品完了してきたのね。試運転は問題無かったのかしら?」
「そうですね。今回の試運転は問題無かったはずです。むしろ早く次の鉱石を探してレシピを増やすように無言の圧力をかけられましたよ。」

 俺が少しおどけた感じで肩を竦めると、キャサリンさんも冗談で後でお仕置きしないとね?と言っていた。
 じょ、冗談だよね?ね?

 ついでとばかりに、面白い依頼が無いか確認してもらった。
 今日は生憎そう言った依頼も無かったみたいだ。

 用事を終えた俺たちは、キャサリンさんに挨拶を済ませてギルドを後にした。
 一度【森のアナグマ亭】に戻り、今日のこれからを確認する必要が有りそうだった。
 おそらくエルダ達も帰ってきてはいるとは思うけど……
 こればっかりは帰ってみないと分からないよね?
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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