勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

文字の大きさ
上 下
249 / 322
第5章 ここから始まる女神様?

五十一日目⑥ またまたやらかしたらしい

しおりを挟む
「確かにこいつはすげぇ~な。品質も……問題無い。よし、お前ら!!出来る限り続けて製錬するぞ!!品質の確認重視で観察するように!!」
「「「はい!!」」」

 ロベルトさんの指示が飛ぶと、お弟子さんたちが一斉に動き出した。
 これなら問題無く作業が進みそうだな。
 これぞまさにマンパワー。
 ただこれそのうちさらに自動化されるんじゃないかなって一瞬思ったけど、さすがにそこまでご都合主義なわけないよな?
 ……いや、ありえそうで怖いわ……
 考えたらダメだ。
 絶対実現してしまう未来しか見えないから。
 うん、良しこれは忘れよう、うん、そうしよう。
 
 今後インゴットも市場に安価で出回りそうだし、無理に掘りに行く必要も無くなりそうだな。

 しばらく状況を観察していると、驚く声が聞こえて来た。
 それを聞いたロベルトさんは炉の方に確認に行った。

「こいつは……。全部(普通)か……。これは真面目に規格外としか言えんな……」

 ロベルトさんに鉄インゴットを手渡したお弟子さんも、若干焦りの色が見えていた。
 そんなに慌てる事なんだろうか?

「おぉ、すまんのぉ。つい熱が入っちまった様じゃな。すまんすまん。」

 職人モードから好々爺モードへ変わったロベルトさんの手には、二本の鉄インゴットが握られていた。
 俺がいつも作るインゴットと変わりはしなかった。
 良かった、無事に動いてくれて。

「こいつの違いが分かるかの?」
「違い……ですか?俺には同じものにしか見えませんが?」

 ポールとナンディーも確認してみたが、どちらもだった。
 そう、いつも通りだよな?

「やはり分かって無かったようじゃな。つまりは全く同じと言う事が異常なんじゃよ。元は人が手で作ったもの。一つ一つ個体差が出るのが当たり前じゃぞ?それが全て同じ品質、同じ重さというのだから規格外じゃ。」

 そう言われればそうだ。
 現代日本でも微妙な個体差が生まれるはずだけど、この世界なら間違いなく個体差が大きいはずだ。
 そこに個体差の無いインゴットが誕生した。
 ってより、俺がずっと使っているから誕生していたって方が正しいか?
 でもそれだったら、良い事なんじゃないの?

「まだ分かっとらんようじゃな。つまりは鍛冶職人たちがいちいち品質を確認しながら素材として使う必要が無くなったんじゃよ。これは画期的過ぎる事だからのぉ。普通は有り得んのじゃよ。」

 うん、やらかした感が半端無いな。
 俺としては良い物がきちんと市場に出回る事が良い事だと思っていた。
 でもそれはあくまで俺基準であって、この世界の基準じゃない。
 その基準を、俺はぶっ壊してしまったらしいな。
 と言っても現代日本でもありえない状況なんだろうな。
 個体差のない物なんて普通はあり得ないんだから。
 俺どこかゲームっぽいこの世界で、それが当たり前だと勝手に思い込んでいたみたいだ。
 だけどここはゲームの世界じゃなく、ここに生きる人にとってはリアルなんだと痛感した。

「そう言う訳じゃ、カイトもどんどん鉱石に触れていってくれんかのぉ。儂らの扱える素材が増える事は若い冒険者の命を守る事に直結するからのぉ。」
「ロベルトさん、それはずるいですよ。頑張らなくちゃならなくなるじゃないですか。」

 こうなってくると、俺も【鉱山跡地ダンジョン】の攻略を進める必要が出て来たな。
 だけど、【鉱山跡地ダンジョン】の第10層の為にも【湿原のダンジョン】の攻略を進めないといけないって、どんだけ俺は切羽詰まっているんだろうな?
 スローライフはまだ当分先の事らしいね。

「どこまで出来るか分かりませんが、何とか頑張ってみますよ。」
「すまんな。それとこれをキャサリンに渡してくれんかの?」

 そう言うと、ロベルトさんは一枚の書類を手渡してきた。
 納品確認書と書かれた書類にはロベルトさんのサインが書き込まれていた。
 どうやら精錬作業中に書類にサインをしていたらしい。
 見た目はあれとして、さすがはギルドマスターといったところだろうか。
 
 後はこれを冒険者ギルドに提出して依頼の完了となるな。

「それでは俺たちはこれで失礼します。」
「また新しい発見が有ったら必ずここに来るんじゃぞ?」

 俺は「分かりました。」と答えて改めて深くお辞儀をした。
 まだまだ忙しい毎日は続いていくようだった。

「それじゃ、いこっか二人とも。」
「その前に少しギルドホールを覗いていかないか?」

 そう提案してきたのはポールだった。
 意外……っていうわけでもないか。
 確かにあの作品群は気になるしね。
 もしかしたら掘り出し物が見つかるかもしれないしね。

 それから俺たちは時間が許す限り作品を見て回った。
 結論から言うと、買おうと思えるものは無かったものの、ポールとしてはだいぶ収穫があったようだった。
 ガンテツさんに今度相談をしてみるそうだ。
 何かひらめいたことでもあったんだろうか?
 まだ型にはまり切っていない若い鍛冶師の作品はどこか先進めいた物があったのかもしれないな。
 まあ、俺は自分で作ってしまうから特に気になることは無かったんだけど、今度エルダたちを連れてくるのもいいかもしれないと思った。

 こうして少しの時間だったけど満足のいく結果を得た俺たちだったのだった。
しおりを挟む
本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
感想 77

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。