勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第5章 ここから始まる女神様?

五十一日目③ ない物ねだり

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 キャサリンさんの驚いた表情を尻目に、俺は順調に簡易溶鉱炉を制作していった。
 ただSP残量の問題もあり、残りの製作は作業台を使用して行った。
 なんで最初から使わなかったんだって突っ込みは不要ですからね?
 完全に忘れていただけです……
 キャサリンさんの驚いた表情が、今度はかわいそうなものを見る目に変わっていた。
 泣いてもいいですか?
 
 おっほん!!
 俺は誤魔化すように咳ばらいをすると、更にSPの回復速度を上げるために机(簡易)と椅子(簡易)を準備。
 もう驚くことを諦めたのか、ならばとキャサリンさんがティーセットを準備してくれた。
 ゆっくりと待つ事が出来たのでとても助かるよね。

 ちなみに作業台を使うことで消費SPが2減少する。
 つまり簡易溶鉱炉はSP:18で作ることができる。
 大して変わらないって最初は思ったんだけど、数をこなすとこれが塵も積もれば山となる状態になってくる。
 更に机(簡易)と椅子(簡易)のおかげでSPの回復量は2/分上昇し、元の4/分と合わせて6回復する事になる。
 計算上は3分に1つ出来る計算なのだ。
 残り12基だと36分……余裕をもって40分で制作出来る事になる。
 うん、順調順調。

「それにしてもカイト君は規格外ね。こんな設備がポンポン作れるんだから。」
「そのせいで、どれか一つ極めた人たちには逆立ちしても勝てませんよ。この前、木工ギルドのエドワードさんに石釜戸でレンガを成形してもらったんですけど、飾りレンガの形が俺じゃマネ出来ませんでした。一流……それも超の付く一流の人には追い付く事すら出来そうに無いです。」

 肩を竦めながら俺がそう応えると、キャサリンさんは意外そうな顔をしていた。
 どうしてそんな表情になるのか気になるところだよね。

「もう少し誇るったり偉ぶったりするのかと思ったけどそうでもなさそうね。少し安心したわ。」
「誇るも何も、常にパーティーメンバーに先を行かれてますから、偉ぶる暇なんてありませんよ。」

 俺が若干自嘲気味に話をしていると、ポールが話を遮ってきた。

「カイト、さすがにそれは言い過ぎだ。あまりに低すぎる自己評価は、逆に嫌味に聞こえる。少し気を付けた方が良いだろうな。」
「ごめん。言い過ぎた。」

 どうやら度が過ぎたようで、ポールから叱られてしまった。
 だけど、これだけ有能なメンバーが揃っているのに、自己評価を上げるというのもまた無理な話な気がしてならないのは気のせいだろうか。

 少し微妙な空気になり始めたところで、これまた有能なナンディーが話に入ってきた。

「ふむ。カイトさんの悪い癖でもありますな。自信を持つ事は、実は難しい事だと思いますよ。かといって慢心していいわけではありませんからね。〝何をしても周りに勝てない〟と思うと、それはそれで辛いモノです。しかし私はカイトさんにクラフト関連では勝てませんよ?」
「確かにな。俺も同じだ。それに魔法を使えるカイトが羨ましい。」

 俺は二人の言葉に耳を疑った。
 二人の言葉は俺にとって、嬉しい言葉だったからだ。
 何をやっても周りに勝てない。
 あとから来た人に追い抜かされていく。
 俺は器用貧乏を地で行く人生だった。
 可もなく不可もなく……
 それが俺の転移前の他人からの評価。
 一番にも二番にもなれなかった。
 それでも二人は俺を羨ましいと言ってくれた。

「カイト君……」
「カイト……」
「カイトさん……」

 いつの間にか俺の頬を温かい涙が伝っていた。
 拭っても拭っても乾く事はなかった。
 ただただ嬉しかったんだと思う。
 俺はここに呼ばれて良かったんだなって……

「ごめん。ありがとう……みんな……」
 
 なんだかしんみりした空気になってしまった。
 作業台ではすでに簡易溶鉱炉が出来上がっており、次の製作スタンバイ状態だった。
 俺は慌てて次の分をセットしたけど、すでに大分時間が経っており、3つ作れるほどにSPが回復していた。
 それからたわいもない話を4人でしながら、まったりと依頼品を制作していった。



「よし、これで完成っと。」

 俺が取り出した最後の一個を並べると、倉庫には簡易溶鉱炉が20基並べられていた。
 もう精錬所って言っても過言じゃない感じがしてしまった。

「うん、これで大丈夫そうね。カイト君、悪いんだけど鍛冶師ギルドに行って納品をお願いできるかしら。さすがにこのサイズでこの量だと運ぶのが大変過ぎるわ。」
「わかりました。直接納品って形を取りますね。納品確認書を作ってもらっていいですか?確認完了後に鍛冶師ギルドにサインをしてもらいますので。」
「わかったわ。先に戻って準備しておくわね。」

 そう言うと、キャサリンさんは急いで受付カウンターへ戻っていった。
 さすがに一瞬で書類が準備終わる訳が無いので、俺はゆっくりと納品する簡易溶鉱炉20基をアイテムボックスの中に仕舞っていく。

 全て仕舞い終えた俺は、ポールたちとキャサリンさんがいるカウンターへと向かった。
 カウンターでは書類を作成しているキャサリンさんが居て、少し待ってほしいとの事だった。
 少しすると、キャサリンさんが書類を片手にこちらに来てくれた。

「じゃあ、この書類を鍛冶師ギルドのギルドマスター、ロベルト様に渡してください。」
「わかりました。では行ってきます。」

 そう言ってキャサリンさんと別れて、冒険者ギルドを後にした。
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