勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第5章 ここから始まる女神様?

四十九日目⑧ 激闘

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「ふむ。なんと威力の強い事か。まさに強敵です……ね!!」

 ナンディーは受け止めた双剣をはじき返すと、リサのフォローに回っていた。
 双剣をはじかれた【ハイオーク】は、一瞬歪んだ顔をのぞかせたが、次の攻撃態勢に入ろうとしていた。
 しかし、その目論もはデイジーの手によって潰される。

「これでもくらえ!!」

 デイジーの放った魔法の矢は今度こそ直進し、すぐに拡散を始めた。
 これはカナデさんが教えていた【魔導弓】の技で、この密度の魔法の矢を躱すのはさすがに無理だろって思えたものだ。
 【ハイオーク】もさすがに捌き切れないと判断したのか、一気に後方に下がり高速移動での回避行動に移っていた。

 このわずかな隙に、ポールも体勢を立て直し、布陣を元に戻すことに成功した。

「では、こちらから撃って出ますよ!!」

 ナンディーの声がまた心に響いてくる。
 すると徐々に体に活力が戻ってくるのを感じている。
 おそらくこれはナンディーのスキル……もしくは称号の副次効果かもしれないな。
 だけど今ほど助かることはない。

 【ハイオーク】は魔導弓の攻撃が止むと、体勢を整えていた。
 その姿はまるで「今までの攻撃は全く気にならない」と言わんばかりだった。
 身体の傷は徐々に回復していき、今はそこに傷があったのが辛うじてわかる程度にまで回復していった。

 活力が戻ろうとも、その力の差が歴然であることが窺えた。

 【ハイオーク】を睨み付けていると、とても楽しそうに笑っていた。
 この戦闘が楽しくて仕方が無いという感情が、否応なしに伝わってきた。

 おそらく【ハイオーク】からしたら、この戦いは遊びと思っているのかもしれない。

 そして、全員に意味の分からないプレッシャーが襲い掛かる。

 【ハイオーク】がひとしきり笑い終えると、その表情は一変して真剣になった。
 強き者との闘いを楽しもうとしているのかもしれない。

 じりじりと押し寄せる緊張感が、問答無用で精神力を削り取る。
 戦いなれていないリサは、既に限界ぎりぎりだ。
 その中で意外と涼しい顔をしていたのがナンディーだった。
 ずっと【ハイオーク】を見つめ続け、何やら考え事をしているようにも見える。
 ただ、警戒は切れていないようだった。

 そしてその均衡は一瞬にして崩れ去ることになる。
 【ハイオーク】が一気に加速してポールに肉薄していた。
 ポールはいきなりの出来事で対応が若干遅れてしまい、防御態勢が完全ではなかった。
 お陰で思いっきり後方に吹き飛ばされてしまった。

「ポール!!」

 デイジーの声が響き渡る。
 ポールは辛うじて防御が間に合ったおかげでダメージは少なそうだったが、陣形が崩れたことには変わりはない。
 その隙を突くように【ハイオーク】がさらに突進を仕掛けてくる。

「ですから私を忘れては困りますよ?」

 ナンディーはするりと間に入り込むと、その左手に装備したカイトシールドで【ハイオーク】の攻撃をいなしていく。
 【ハイオーク】はまたニヤリと笑うと、攻撃速度を徐々に加速させていく。
 最初はうまく捌けていたものの、速度が上がるうちに追いつけなくなり出していた。

「ポールさん!!」

 僅かに稼いだ時間でポールは俺特製の回復ポーション(低)を煽り飲み、前線に復帰した。
 ナンディーと交代で【ハイオーク】の攻撃を受けると、すべての攻撃を受けきって見せる。
 後退したナンディーはすぐに【回復魔法】を発動させる。

「【リジェネレート】」

 ナンディーが魔法を発動させると、ポールの身体が緑色に輝きだした。
 そして脈動するかのようにドクンドクンと振動を見せた。
 徐々に傷の回復が始まり、ポールの受けるダメージが相殺されていく。

 どうやらそれが面白くなかったようで、【ハイオーク】はさらに攻撃を激化させていく。
 ガリガリと削られるポールの盾は、すでに当初の面影がなくなりつつあった。
 いたるところに傷やへこみが出来ており、再起不能といっても過言ではない状況だ。

 その状況でエルダは静かに【魔光陣】の発動タイミングを待っていた。

 【ハイオーク】の双剣がポールのシールド破壊した瞬間、双剣が盾に絡まり抜けなくなったのだ。

 エルダはここだとばかりに【魔光陣】を発動させた。
 それはエルダが持つ最高の攻撃力を誇る【魔光陣】。

「【鳴雷】!!」

 突如頭上に現れた光の魔方陣に危機感を感じた【ハイオーク】は必死に双剣を抜こうと試みる。
 しかし、ポールがそれを許すはずもなく、【魔光陣】は完成された。
 発動の瞬間、ポールは盾を捨てて後退し、遅れて【ハイオーク】も後退しようとしたが、光の速さを持つ【鳴雷】の直撃を受けることになった。

 バリバリと鳴り響き、眩い光を放った【鳴雷】は、【ハイオーク】を容赦なく攻撃していた。
 その光は一瞬の事で、勝敗が決まると思っていた。
 しかし、【ハイオーク】は生き残った。
 双剣の一本を犠牲にして、生き残ることに成功したのだ。
 しかし、無事とはいかず全身が黒く染まっていた。
 【ハイオーク】はなおも笑っていた。
 強き者と戦う己が欲求がそうさせていたのかもしれない。

 そして俺はその【ハイオーク】の後ろから双剣を振るい、すべてを終わらせたのだった。
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