勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第5章 ここから始まる女神様?

四十九日目④ 連携テスト2 3匹のゴブリン編 実践

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「よし、気合を入れなおしていくぞ。」

 ポールの一声で、一気に空気が変わった。

 最初の一撃はデイジーの射撃からだ。
 狙いは【ゴブリンディフェンダー】。
 理由は盾を先に黙らせたいからと、防御姿勢に入ってほしいってのがある。
 そうすると、アタッカー役の2匹の動きがワンテンポ遅れてくれると予測しての行動だ。

「行くよ!!」
「おう!!」

 デイジーが魔導弓を構えると、虚空から魔法の矢が現れる。
 ゆらゆらと形作られた魔法の矢は、物質のごとく質量を感じさせている。
 最大まで絞りきったデイジーは、一呼吸の後その矢を解き放つ。
 解き放たれた矢は、意志でも持っているかのように、まっすぐに【ゴブリンディフェンダー】へ向かって音もなく飛んでいく。
 その気配に最初に気が付いたのは【ゴブリンファイター】だった。
 手にした棍棒で防御姿勢を取ったのだ。
 それにつられた【ゴブリンソードマン】と【ゴブリンディフェンダー】も防御姿勢に移行した。
 俺たちはそれを確認すると、一気に距離を詰めていく。
 エルダとリサは移動しながら、魔法を構築していく。
 
 発動速度はリサの方が一瞬早かったようで、無属性の魔力球がゴオッと音と共にゴブリン達に向かって飛んでいった。
 その魔力球は先頭のポールをも追い抜いて、防御姿勢のゴブリン達に到達せんと飛んでいった。

ガキン!!

 魔法の矢が当たったにしてはとても硬質な音を響かせて、【ゴブリンディフェンダー】の構えた大盾に魔法の矢が激突した。
 しかし実際には物質ではないので、当たった瞬間にパリンと音を立てて砕け散った。
 そのおかげで、ボブリンたちは何が当たったのかさえ判別出来ずにいた。
 ゴブリン達が理解したのは〝前方から襲撃を受けた〟という事実だけだったようだ。

 前方から俺たちが迫っていることを視認出来たようで、3匹は一斉に戦闘態勢に入ろうとした。
 その途端、ドゴン!!という音と共に魔力球が【ゴブリンファイター】に直撃した。
 咄嗟に棍棒で防御したものの、その威力にもんどりうって倒れてしまった。
 その状況を確認していた【ゴブリンディフェンダー】が、何やらギャァギャァと騒ぎながら前に躍り出た。
 【ゴブリンソードマン】がその後ろに下がったので、おそらく隠れるように指示を出したんだろうということは良く分かった。

 【ゴブリンディフェンダー】が完全に防御を固めた後に、ポールたちがゴブリン達のいる場所に到達したのだ。

「【シールドスマッシュ】!!」

ゴグゴォン!!

 ポールは突進しつつ、体を回転させて【ゴブリンディフェンダー】の大盾に自分の大盾で勢いよく殴りつけた。
 その衝撃はすさまじく、【ゴブリンディフェンダー】は耐えるだけで精いっぱいの様子だった。
 衝撃を支えきれずに3m近く後方に押し込まれたのだ。
 それを苦々しく思ったのか【ゴブリンディフェンダー】の顔は更に醜く歪んでいた。

 【ゴブリンソードマン】がここぞとばかりに【ゴブリンディフェンダー】の横から飛び出て、後方に控えていたデイジーたちに攻撃を仕掛けて来た。
 それをナンディーが許すはずもなく、すぐさま割って入り、左手に装備したカイトシールドで【ゴブリンソードマン】の縦切りをいなした。
 その所作は洗練され流れるようで、見ていて惚れ惚れしてしまった。
 こう離れてみていると、ナンディーのその戦闘技術の高さを再認識することが出来た。
 その僅かな時間の間に、デイジーは第2射目の準備を整えつつあった。

 エルダは既に発動待機状態で、狙いを定めていた。
 その相手は、【ゴブリンファイター】だ。
 おそらく一番速度のあり邪魔になりそうだと判断したんだと思う。

「【土針封身】」

 さすがに密集地帯になりつつある前線で爆発系は使えないと判断したようで、使用した【魔光陣】は土系の針だった。
 【ゴブリンファイター】が倒れこんで、これから起きようとした瞬間にその場の地面が光輝いた。
 【ゴブリンファイター】はやばいと感じたようだがすでに時遅く、その体には無数の針で串刺しとなっていた。
 さすがにちょっとグロテスクだな。

 仲間の1匹がやられたことを理解したゴブリン達の攻撃は、更に威力を増そうとしていた。
 ぶつかり合っていたポールと【ゴブリンディフェンダー】は、仕切り直して再度ぶつかり合っていた。
 何度ガゴンガゴンとぶつかり合ったのだろか、再度【ゴブリンディフェンダー】が当たり負けをしてよろめいていた。

 【ゴブリンソードマン】とナンディーについては言うまでもなく、ナンディーが圧倒していた。
 ただ、攻撃を仕掛けるわけではなく、ずっといなし続けているのだ。
 理由はデイジーとの連携確認だ。
 あえてナンディーは攻撃を仕掛けずに、デイジーの攻撃しやすい射線などを探していた。
 デイジーもその意図に気が付いており、余裕をもって対処してる。
 リサは魔法を発動させる様子はなく、ただ二人の連携を見守っていた。
 その手には拳が握られており、いわば観客の様な立場である意味楽しんでいたのかもしれないな。

 それよりもなんで俺がこんな客観的に見ていられるかと言うと、物凄く簡単だ。
 すでにスキルを発動して、姿を消した状態だからだ。
 俺はみんなの戦闘を見ながら、自分の立ち位置を考えていた。
 おそらくこの場合はステルス状態から、一気に詰め寄って首を刎ねるなどが正解だと思う。

 ポールの方もすでに調整に入っていたので、ここは終了させてよさそうだな。

 俺はすっと【ゴブリンディフェンダー】の後方へ忍び寄り、その首に向けて双剣を振り切ったのだった。

 【ゴブリンディフェンダー】の首は面白い様に空中を舞い、自身に何が起こったかさへ分からないようだった。
 その体もまた切られた事実を忘れていたようにただその場に立ち尽くしていた。
 一拍遅れてドカリと地面に倒れたのだった。

 そのころ、【ゴブリンソードマン】と戯れていたナンディーもこちらが終わったことを確認したようで、【ゴブリンソードマン】が剣を両手で振り上げたタイミングでデイジーの射線をうまく開け、そこにするりと魔法の矢が放たれた。
 【ゴブリンソードマン】は迫りくる魔法の矢を見つめながらその命の最後を散らせていった。
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