勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第4章 ここから始まる勇者様?

四十五日目⑥ リサと神官騎士その3

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 一直線でぶつかってもそらされるのがわかっているから、俺は【職業:双剣士】に切り替えておいた。
 そらされるならその前に畳みかける。
 それが俺の選んだ作戦だ。
 スキル【ラッシュ】と【ミラージュ】を重ね掛けして縦横無尽に駆け回る。
 一撃
 二撃
 三撃
 俺はひたすら剣を振り続けた。
 でも届かない。
 何度隙を突いて剣を振り下ろそうとも届かない。
 どこで見ているのかわからないけど、的確に俺の剣に盾を合わせてくる。
 そらされることは少ないけど、それでも受け止められてしまう。
 いくらこちらが手数を増やそうとも、ことごとくカイトシールドが割り込んでくる。

 一旦俺は仕切り直しの為に距離を取った。
 こちらは息切れを起こしかけているのに、ナンディーモにはその兆候すら見受けられなかった。
 むしろ涼しい顔さえ見える。
 おっちゃんが言っていた意味が分かったよ。
 明らかに俺よりも格上だ。
 しかも戦闘に慣れてやがる。
 しかも対人戦のだ。

「ふむ。これはこれは……なかなか面白いですね。さすがにスキルを使わないと追いつけませんでしたよ。」
「それはご丁寧にどうも。こっちは攻めきれずに息も絶え絶えだよ。認めるよ、あんたは強い。俺なんかが背伸びしたところでまだ届かない。だけど最後まで足掻かせてもらうからな!!」

 俺は左手の剣をしまいながら、また駆け出した。
 今度は左手に魔法を発動させながらだけどな!!

 俺が魔法を使い始めたことに少し驚いた様子のナンディーモは、この戦いで初めて本気と思える防御態勢を取った。
 ナンディーモの構えた盾が一瞬光り、何かのスキルが発動していることがうかがえる。
 そんな場所に誰が打ち込むかってんだよ!!

 俺は左手に【ファイアバレッド】をチャージしている。
 命中精度の問題で、まだ遠くから撃てないが、至近距離なら問題ないはずだ。
 【ミラージュ】を使いながら、ナンディーモの警戒エリアに飛び込んだ。
 するとナンディーモも反応せざるを得ずに、俺に盾を向けようとしてくる。
 その反応の速さに、これがさっきのスキルの正体だと推測した。

「【ステップイン】!!」

 俺は今まで使ってこなかったスキルを発動する。
 俺の攻撃に合わせて盾を突き出していたナンディーモの隙を突くことができた。
 ナンディーモもしまったといった感じの表情を浮かべていた。
 俺は左手の盾を躱しつつ懐に入り込んだ。
 それがだと知らずに。

 俺はナンディーモの懐で【ファイアバレッド】を発動させる。
 それに合わせて右手に握りしめていた、ショートソードも下から振り上げる。
 しかし、そこにナンディーモの身体はなかった。
 そう、突き出された盾は“投げられていた”のだ。
 それに気が付かず踏み込んだ俺は格好の的になってしまった。
 しかも剣をしたから振り上げているから、その勢いを殺すことが出来ずにいた。

 ナンディーモは俺が放った魔法を十分に余裕をもってひらりと躱していた。
 そしてその右手に持っていたバスターソードを両手で握りしめ、勢いよく振り下ろした。

 さすがに俺もこれは躱せない。
 そう思って衝撃に備えた。
 しかし、その衝撃が来ることはなかった。
 おっちゃんが割って入って、ナンディーモの腕を押さえていたのだ。

「おや、止められましたね。これで終わりでいいですか?」
「おう、まだやり足りないか?」

 ナンディーモはおそらく本気を出していない。
 それをわかったからおっちゃんは割って入ったんだろうな。
 完全に完敗だわ。
 なんだか逆にうれしいとさえ思えた。

「ではこれで合格でいいでしょうか?」
「カイト、どうだ?」

 どうだって言われたってね?
 決まっていることなんだし聞くまでもないでしょうよ……

「大丈夫ですよ。ポールもいいよね?実力的には俺が最弱だし。」
「カイト、それは言い過ぎだ。カイトはカイトの持ち味がある。それに、カイトは戦闘だけじゃないだろ?」

 やばいな、少しいじわるが過ぎたかもしれない。
 ポールから諫められてしまった。

「すまん、言い過ぎた。えぇっとナンディーモさん……で良いんですよね?一応俺がリーダーってことになってますが、指導はここに居るポールとデイジー、あとはエルダという女性が担当します。どうしますか?」
「ふむ。この話は既に決まっている話です。今更どうこうするつもりはありませんよ。それに、私はあなたを嫌いになったわけでもありませんし。むしろ感謝しています。あの時私を助けてくれてありがとう。こうしてここに居ることができるのもあなた方のお陰です。」

 そう言うとナンディーモさんは深く頭を下げた。
 この人はきっと悪い人間じゃないんだろうな。
 でなきゃ、あそこで死にそうになりながらも殿を勤め上げるなんてしないから。

「じゃあ、改めてようこそ……って、しまったパーティー名決めてなかった!!」
「ふむ、何やら最後で決まらない辺りが、このパーティーなんでしょうか?」

 もうさ、ナンディーモさんにも変な認識されてしまったよ……

「リサは……。って、もしかしてずっとデイジーと話してたの?」

 リサとデイジーを見ると、模擬戦には興味がなかったようで、観客席で二人で何かを話をしていたようだ。
 俺たちの視線に気が付いたようで、二人は観客席からこちらに降りてきた。
 なんだか仲が良くなったように見える。
 っていうか、手をつないで降りて来ているから仲が良くなったんだね。
 うん、良かった良かった。

「ごめんごめん。リサと話し込んじゃった。ポール、リサに話はしたから、あとでちゃんと自分から伝えてね?」
「あ、あぁ。」

 この調子だと、ポールも尻に敷かれそうだな。

「ふむ。これはこれは。なかなか面白いことになっていますね。」

 少し離れた位置でこのやり取りを見ていたナンディーモさんは、あごひげをさすりながら楽しげだったのが印象的だった。

「じゃあ、これで顔合わせはおしまいだ。あとは書類を書いて終わりってとこだな。」

 それから俺たちは執務室に戻り、書類の作成を行った。
 リサとナンディーモさんには俺の特殊性についての説明をおこない、魔導契約書にサインをしてもらった。
 2人とも特に嫌がることはなく、すんなりと契約は締結された。



 冒険者ギルドを後にした俺たちは、予定通り【森のアナグマ亭】に向かった。
 エルダが受け入れ準備を進めてくれていたおかげで、スムーズに話を進めることができた。
 新築を建てることを説明すると、なんだか申し訳なさそうにリサとナンディーモさんがしていたが、気にしないでほしいことは伝えておいた。

 明日から本格的に活動を再開するので、今日はこれでおしまいにした。
 結局ライラさんの店には行けずじまいで、魔道具購入はお預けとなったのだった。

 そして俺は、翌朝に起こる事件について全く予想できないまま眠りについたのだった。
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