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第4章 ここから始まる勇者様?
四十四日目① 朝の珍事
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やっと気持ちが落ち着いたけど、昨日はなんだか良く分からない一日だった。
しかも、小人たちは存在を消すことができるので、どこからか見られているかもと思うと少しそわそわしてしまった。
寝付けなかったわけじゃないんだ。
それでもやっぱり気にはなってしまった。
ま、決まったことは仕方がないので、気持ちを切り替えていくしかないか。
俺は着替えを済ませて一階に降りると見間違いじゃないのかと目を何度もこすってしまった。
正直このまま現実逃避したい気分だ。
食卓の上には豪華な朝食が準備されていた。
つか、朝からこんなに準備しなくてもいいのでは?
「お、おはよう……。いつもより豪華すぎるんじゃないか?」
俺が困惑しながら朝の挨拶をすると、デイジーが少し挙動不審になりながら現状を説明してくれた。
「あ、おはようカイト。それがさぁ~、エルダとキキョウが競い合っちゃって。そうしたらこんなことになったんだよぉ~。」
おいおい。いったい何を競ったらこんなになるのか教えてくれないか?
ジト目でエルダを見ると、舌を出して誤魔化している。
うん、かわいいから許す!!
ってなってたまるか!!
「エルダさんや。俺昨日ちゃんと話し合って決めてほしいってお願いしたよね?作ってもらっている立場だからあまり文句を言うのはどうかと思うけど、さすがにこれはやり過ぎじゃないか?誰が朝からローストポークを食べるっていうんだい?しかもコレ、赤身じゃなくて霜降りだよね?明らかにオークの霜降りだよね?」
さすがに今回は言わざるを得なかったために、心を鬼にしてまくし立てた。
エルダも最初は誤魔化そうとしていたけど、ようやく俺の本気度が伝わったらしく、だんだん俯いてしまった。
ちょっと言い過ぎたかな……
エルダが顔を上げると、少し涙目になっていたのが見えた。
くそ、それは狡いって……
「ごめん、言い過ぎた。だけど反省はしてほしい。それとキキョウもだ。張り切ってくれたのはいいけど、さすがにこれはやり過ぎだからな?」
一緒に作ったキキョウにも釘を刺さないと、同じことを繰り返しかねないからな。
「あらあらあら~。それはエルダ様が作ったんですよ?おいしそうですよねぇ~。私も負けていられないですわねぇ~。」
おいエルダさん、その「ギクッ!!」って態度は何ですか?
もしかして、全力で誤魔化そうとしていませんか?
俺がエルダをジト目で見ていると、額から汗をたらしながら目が泳ぎまくっていた。
更にジト目で見続けると、ついに観念したのか、ごめんなさいと頭を下げて来た。
「で、なんでこんなことになったんだ?」
俺が事情を聞くと、ぽつりぽつりと事情を話はじめた。
「昨日キキョウと話をしていて、私の仕事が無くなるって思っちゃったの……。カイトと暮らし始めてからずっと作っていたでしょ?だからいらないって言われそうで怖かったの……。だから……」
あぁ、そうか。
誰かから不要と言われるのが、怖かったんだな。
なんで気付いてあげられなかったんだろうか……
デイジーと一緒に作っているから問題ないと、勝手に思い込んでいたのかもしれないなぁ。
デイジーと作る時は教える側だから、問題はなかったんだろうな。
でも、キキョウと比べたとき、キキョウの方が料理がうまいと思ってしまったんだろう。
だから、自分の居場所がなくなるって思いこんでしまったのかもしれない。
「エルダ。エルダの居場所はここだろ?俺の家族になってくれたんだろ?だったら問題ないよ。俺はちゃんとここに居る。エルダもここに居ていいんだ。だから大丈夫。な?」
精いっぱいの気持ちを伝えたつもりだけど、ちゃんと伝わったのだろうか……
エルダは俯いたまま、顔を上げてくれなかった。
デイジーがエルダを抱きしめていると、なんだか姉妹みたいだなって思えてきた。
いつもはエルダがお姉さんしているけど、今日は逆になったみたいだ。
「ご主人様。キキョウは何も料理を作らなければならないわけではありません。ですので、これからもエルダ様に一任してはいかがでしょうか?キキョウはエルダ様の補佐につく形で問題ないと考えます。」
ワカタケからの提案は今の状況を考えると、一番正しい選択かもしれないな。
キキョウに目をやると、問題ないと返ってきたので、今後もエルダに料理をお願いする形にしようと思う。
「エルダ。今日の夜を楽しみにしていて良いんだよね?」
俺はいつも通りにエルダに尋ねた。
エルダも俯きながらだけど、首を縦に振ってくれたので問題はないだろう。
「ただし、やり過ぎは勘弁してくれよ。」
俺とエルダのやり取りはこれで終わりになった。
ポールもそれほど心配していなかったようで、普通に自分の席に座っていた。
デイジーがエルダを支えて、席につかせてデイジー自身も席に着いた。
「そうだ、みんなは朝食とかどうするんだ?」
俺が疑問に思ったことを尋ねた。
すると、レティシアがすっと前に出て代表で答えてくれた。
「私たちは精霊ですので、物理的な栄養を必要としていません。ただ、お間違え無きようお伝えすると、食べられないわけではありません。」
「ありがとう。じゃあ、みんなも席についてくれるか?さすがにこの量は四人じゃ食べきれなからさ?」
俺がそう言うと、八人は顔を見合わせてにこりと笑った。
なんだよ、食べたかったんじゃないか。
俺は急遽八人分の机と椅子を作成して、リビングに並べた。
さすがに八人分増えると狭いけど、それでもなんだか楽しい朝食となった。
なんだかんだ言って家族が増えるっていいよなって思ったりなんかしたんだ。
しかも、小人たちは存在を消すことができるので、どこからか見られているかもと思うと少しそわそわしてしまった。
寝付けなかったわけじゃないんだ。
それでもやっぱり気にはなってしまった。
ま、決まったことは仕方がないので、気持ちを切り替えていくしかないか。
俺は着替えを済ませて一階に降りると見間違いじゃないのかと目を何度もこすってしまった。
正直このまま現実逃避したい気分だ。
食卓の上には豪華な朝食が準備されていた。
つか、朝からこんなに準備しなくてもいいのでは?
「お、おはよう……。いつもより豪華すぎるんじゃないか?」
俺が困惑しながら朝の挨拶をすると、デイジーが少し挙動不審になりながら現状を説明してくれた。
「あ、おはようカイト。それがさぁ~、エルダとキキョウが競い合っちゃって。そうしたらこんなことになったんだよぉ~。」
おいおい。いったい何を競ったらこんなになるのか教えてくれないか?
ジト目でエルダを見ると、舌を出して誤魔化している。
うん、かわいいから許す!!
ってなってたまるか!!
「エルダさんや。俺昨日ちゃんと話し合って決めてほしいってお願いしたよね?作ってもらっている立場だからあまり文句を言うのはどうかと思うけど、さすがにこれはやり過ぎじゃないか?誰が朝からローストポークを食べるっていうんだい?しかもコレ、赤身じゃなくて霜降りだよね?明らかにオークの霜降りだよね?」
さすがに今回は言わざるを得なかったために、心を鬼にしてまくし立てた。
エルダも最初は誤魔化そうとしていたけど、ようやく俺の本気度が伝わったらしく、だんだん俯いてしまった。
ちょっと言い過ぎたかな……
エルダが顔を上げると、少し涙目になっていたのが見えた。
くそ、それは狡いって……
「ごめん、言い過ぎた。だけど反省はしてほしい。それとキキョウもだ。張り切ってくれたのはいいけど、さすがにこれはやり過ぎだからな?」
一緒に作ったキキョウにも釘を刺さないと、同じことを繰り返しかねないからな。
「あらあらあら~。それはエルダ様が作ったんですよ?おいしそうですよねぇ~。私も負けていられないですわねぇ~。」
おいエルダさん、その「ギクッ!!」って態度は何ですか?
もしかして、全力で誤魔化そうとしていませんか?
俺がエルダをジト目で見ていると、額から汗をたらしながら目が泳ぎまくっていた。
更にジト目で見続けると、ついに観念したのか、ごめんなさいと頭を下げて来た。
「で、なんでこんなことになったんだ?」
俺が事情を聞くと、ぽつりぽつりと事情を話はじめた。
「昨日キキョウと話をしていて、私の仕事が無くなるって思っちゃったの……。カイトと暮らし始めてからずっと作っていたでしょ?だからいらないって言われそうで怖かったの……。だから……」
あぁ、そうか。
誰かから不要と言われるのが、怖かったんだな。
なんで気付いてあげられなかったんだろうか……
デイジーと一緒に作っているから問題ないと、勝手に思い込んでいたのかもしれないなぁ。
デイジーと作る時は教える側だから、問題はなかったんだろうな。
でも、キキョウと比べたとき、キキョウの方が料理がうまいと思ってしまったんだろう。
だから、自分の居場所がなくなるって思いこんでしまったのかもしれない。
「エルダ。エルダの居場所はここだろ?俺の家族になってくれたんだろ?だったら問題ないよ。俺はちゃんとここに居る。エルダもここに居ていいんだ。だから大丈夫。な?」
精いっぱいの気持ちを伝えたつもりだけど、ちゃんと伝わったのだろうか……
エルダは俯いたまま、顔を上げてくれなかった。
デイジーがエルダを抱きしめていると、なんだか姉妹みたいだなって思えてきた。
いつもはエルダがお姉さんしているけど、今日は逆になったみたいだ。
「ご主人様。キキョウは何も料理を作らなければならないわけではありません。ですので、これからもエルダ様に一任してはいかがでしょうか?キキョウはエルダ様の補佐につく形で問題ないと考えます。」
ワカタケからの提案は今の状況を考えると、一番正しい選択かもしれないな。
キキョウに目をやると、問題ないと返ってきたので、今後もエルダに料理をお願いする形にしようと思う。
「エルダ。今日の夜を楽しみにしていて良いんだよね?」
俺はいつも通りにエルダに尋ねた。
エルダも俯きながらだけど、首を縦に振ってくれたので問題はないだろう。
「ただし、やり過ぎは勘弁してくれよ。」
俺とエルダのやり取りはこれで終わりになった。
ポールもそれほど心配していなかったようで、普通に自分の席に座っていた。
デイジーがエルダを支えて、席につかせてデイジー自身も席に着いた。
「そうだ、みんなは朝食とかどうするんだ?」
俺が疑問に思ったことを尋ねた。
すると、レティシアがすっと前に出て代表で答えてくれた。
「私たちは精霊ですので、物理的な栄養を必要としていません。ただ、お間違え無きようお伝えすると、食べられないわけではありません。」
「ありがとう。じゃあ、みんなも席についてくれるか?さすがにこの量は四人じゃ食べきれなからさ?」
俺がそう言うと、八人は顔を見合わせてにこりと笑った。
なんだよ、食べたかったんじゃないか。
俺は急遽八人分の机と椅子を作成して、リビングに並べた。
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