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第4章 ここから始まる勇者様?

四十三日目① ホラーは突然に

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 昨日一日、怒涛の勢いで過ぎていったな。
 改築するつもりが、新築になった。
 奴隷少女を身請けするはずが、さらに一名追加。
 終いには【森のアナグマ亭】での暗部から、襲撃という名の説教。

 うん、濃すぎるでしょ。
 おかげさまであまりいい夢を見なかった。

 よく覚えていないけど、誰かが呼んでいた気がした。
 まあ、よく覚えてないけど、きっと気のせいだろう。
 これまたテンプレで、『女神さまが夢に出てくる』なんてあり得んだろう。
 さすがにもう勘弁してほしい。
 ただでさえ今はテンプレ祭りで、情報の大渋滞が発生してるんだから。
 さすがの俺でもいっぱいいっぱいだから。

 朝からあまりいい気がしないでリビングに降りると、皆も一様に疲れた様子をしていた。
 あのエルダさえ疲れた表情を浮かべているんだから、もうだめらしいな。

「おはようみんな。」

 俺はリビングでくつろいでいるみんなに挨拶をしたが、返事に覇気はなかった。
 今日はダンジョンを見送ったほうが良さげだな。

「なんだかみんな疲れ気味だな。大丈夫か?」
「大丈夫って言えば大丈夫かなぁ~」

 デイジーは気の抜けた声で答えてくれたが、やはり元気はなかった。
 答えるだけで精いっぱいって感じだな。

「ポールは?」
「あぁ。夢見が悪くてな。あまり眠れていない。」

 ポールが体調がすぐれない理由に言及した。
 アレ?ポールも?

「ポール。あなたもなの?」
「そういうエルダもか?」

 おっと、エルダとポールも夢見が悪かったのか。
 もしかして……

「あたしも変な夢だったなぁ~。ずっと誰かに呼ばれてる感じがしたんだけど、はっきりしないんだよねぇ~。」

 おいおいおいおい。
 まじかよ。
 全員揃って同じような夢見るなんてありえないだろ?

「なぁ、なんか変じゃないか?俺も同じような夢を見た。4人そろって同じような夢ってありえないだろ?」
「や、やめてよカイト。そういうの苦手なんだからさぁ~。」

 デイジーの弱点が浮き彫りになったけど、それどころじゃないよな。
 ポールもエルダも何かを感じているのだろうか。

「カイト、こういう時って大概この家に何かあってってお決まりのパターンじゃない?」
「エルダ!!それ以上言うのはやめるんだ!!絶対現実になるから!!」

 俺は慌ててエルダを止めた。
 これ以上言えば絶対にフラグが建つ!!
 マジで勘弁してほしいよ。

「よし、このことは忘れよう!!今日は全員調子も悪いようだし、ダンジョンへは明日または明後日いくことにしよう。うん、それがいい!!」

 俺は、勢いに任せて今日の予定を強制的に決めた。
 俺は一度冒険者ギルドに行って、依頼を正式に受領してくる。
 エルダは、デイジーと一緒に買い物。
 ポールは俺の護衛兼身請けの調整だ。

 食事も家でとるのが何となく嫌な感じがしたので、外で食べることにした。
 いつものようにいつもの店で。
 皆もそれに賛成し、すぐに家を出ようとしたその時だった。

バチン!!

 玄関のドアが触れなかったのだ……
 何か結界でも張られているかの如く、ドアノブに触れようとするとはじかれる。
 俺たちは慌てて、窓を開けようと試みるも同じ結果になった。

 うん、フラグ成立だ!!
 こんちくしょうめ!!

「カイト……どうするの?」

 エルダが心配そうに俺を見つめてくる。
 俺はエルダをそっと抱き寄せて、心配ないと背中をさすりながら抱きしめた……
 ってできる状態じゃなかったので、頭を2回ポンポンと叩くと、周辺を見渡した。
 しかし、いつもと変わっている場所はなかった。

「みんな念のため、フル装備になっておこう。」

 俺とデイジーはアイテムボックスにしまってあったので、その場で装着を整えた。
 エルダとポールは自室の収納箱(簡易)に収めているので、一度部屋に戻ることにした。
 念のため4人で移動をしていると、どこからか見られている気配が感じられる。
 デイジーはもう使い物にならないだろうな。
 ポールにしがみついて震えていた。
 俺は念のため【気配探知】を発動させる。
 しかし、敵の気配は全く感じなかった。
 じゃあ、さっきの視線は何だったんだ?

 ゆっくりと階段を上り2階へと移動する。
 階段を上がるたびに、『ぎしぎし』と音を立てる。
 デイジーはもう完全に腰が引けており、ポールをがっちりつかんで離さない勢いだ。
 ポールもそんなデイジーをしっかりと抱きとめていた。
 なんだかリア充過ぎて、若干殺気が湧いてきたのは気のせいだろうか……
 エルダを見ると、なんだか苦虫をかみ殺したような表情を浮かべている。
 早い事解決しないと、なんかやばい気がするな。

 二階に上がると、近場のエルダの部屋へ向かった。
 エルダが部屋の扉を触ると、突然がばっ!!ッて勢いで扉が開いた。
 デイジーはあまりの出来事に飛び上がり、そのまま床に倒れてしまった。
 ポールが慌てて抱き寄せると、がくがくと震え腰が抜けてしまったようだ。
 ポールがデイジーを抱える形となり、俺が先頭で中に入ってみる。
 中には特に変わった様子もなく、いつものエルダの部屋だった。
 エルダも変わった様子が無いことを確認した。
 デイジーはまだ足取りはおぼつかない様子で、ポールに支えられながら周辺警戒を行ってくれた。
 エルダはその間に収納箱(簡易)から装備を取り出し、装着していく。

 エルダの装備の装着も終わり、次にポールの部屋へ移動することにした。
 その時ふと、俺はエルダの鏡台の鏡に目が行った。
 それも何の気なしにだ。

『みつけて』

 それは鏡に映し出された血の跡のようだった……
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