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第4章 ここから始まる勇者様?
四十二日目⑨ 襲撃を終えて
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「ごめんダニエルさん。言った側から厄介ごとに巻き込ませちゃって。」
俺はダニエルさんに頭を下げて謝罪した。
今回は完全にこちらの問題で、それにこの店を巻き込んだ形だ。
だからこそきちんと謝罪は必要だと思った。
エルダ達も同じ思いで、一緒に頭を下げてくれた。
それを見たダニエルさんは、大きく深呼吸をして俺たちの頭を軽く叩いて言った。
「お前たちが謝ることじゃないから気にするな。それにだ、誰もけがひとつしちゃいない。なら問題はないぞ。なぁ、メアリー。」
「……そう、ね。私も反省しないといけないわね。」
ダニエルさんはなんてことないと言いたげだったが、メアリーさんは違ったようだ。
何かに灯が付いたのか、目がギラギラしていた。
今まで見たことの無い目に、俺たちは少しひるんでしまった。
メアリーさんの印象を180度変えるには十分な目つきだった。
そう、今にも人を射殺そうとしているよな……
「おう、食事中に悪かったな。今日の代金は俺が持つ。迷惑料だと思って食っていけ!!」
ダニエルさんは、今回のゴタゴタで食事を中断していた客たちに聞こえるように大声で叫んでいた。
俺たちは悪いと思って、代金を持つと言ったが聞き入れてはもらえなかった。
本当にダニエルさんは漢気の塊のような人だな。
「デイジー、普通の方のオーク肉まだあるよな?」
「うん、意味わかんないくらい大量にあるよ~。」
ダンジョンの薬草採取以外だと俺たちの食料になるんだが、それでも全く減らないから不思議だ。
俺はデイジーからオーク肉が詰まった収納箱(簡易)を2箱受け取り、ダニエルさんに渡した。
それを見たダニエルさんは訝しんでいたが、迷惑料だといって無理やり受け取ってもらった。
それを厨房へ運んで中身を確認したダニエルさんが、厨房から慌てて飛び出してきた。
「おい!!あんなに受け取れるわけねぇ~だろうが!!」
「大丈夫ですよ。この店だったら使い切れるでしょうし。約100kgなんて店ではあっという間でしょ?それより俺腹減っちゃって。ダニエルさんの旨い豚丼が食いたいんですけどいいですか?」
俺は苦情を受け付けないように、ダニエルさんに追加注文をした。
皆も気になったようで、同じものを結局4つ注文することにした。
ダニエルさんもしぶしぶ受け取ってくれて、当分肉には困らない状態になったんではないだろうか。
しばらくすると、厨房からリリーちゃんが豚丼を運んできてくれた。
さすがに一人では持てなかったようで、メアリーさんも一緒に運んできてくれた。
「エルダおねぇちゃんたちお待ちどうさま!!」
そう言うと、リリーちゃんが配膳をしてくれた。
並べられたのは豚丼と漬物みたいな副菜、それとスープだ。
豚丼から立ち昇る湯気は、香ばしくもあり、それでいて食欲をガンガンに刺激する。
見た目は少し高価な醤油のような調味料を使ったたれを纏い、光り輝くようにキラキラとしていた。
俺は我慢ができなくなってきた。
周りを見たら、3人とも豚丼に釘付けだった。
いや、オークを使ったからオーク丼か?
「「「「いただきます」」」」
俺は箸を右手に持ち、ドンブリにぶすりと突き刺す。
そして救い上げるようにして持つと、ふわりとご飯のいい香りがしてくる。
甘くもあり、芳醇な香り。
一口口に含めばもう止めることができなかった。
オーク肉の油の旨味。
醤油のような調味料をベースにした、甘辛く味付けされたタレ。
それをすべて包み込むようにご飯の味わい。
もう、止まれという方が無理だと思わぜるを得ない。
難しい話はよそう。
この旨さの前にはすべてが無駄だ。
無粋でしかない。
などと、脳内ナレーションが聞こえてきそうなくらいうまかった。
デイジーなんて結果4杯食べきった。
俺たちもなんだかんだで3杯食べたのだった。
しかしそれだけで終わるわけはなかった。
俺たちがうまそうに食べているのを見て、周りの客も頼み始めたのだ。
あとはお察しの通り。
注文が殺到。
厨房は目まぐるしい勢いで回転を始めている。
ダニエルさんはずっと料理のしっぱなしだ。
リリーちゃんとメアリーさんも、テーブルと厨房を行ったり来たり。
見ているだけで忙しいのが手に取るようにわかった。
「「「「ごちそうさまでした!!」」」」
夕食を食べ終えた俺たちは大満足だった。
厨房を見ると、すでに死にかけているダニエルさんの姿が見える。
リリーちゃんも空いた席に座って、溶けたチーズの様に突っ伏していた。
メアリーさんは……やっぱりダウン中だった。
なんていうか、戦場を見た気分になったのは俺だけだろうか?
「それじゃあ、俺たちはそろそろ帰りますね。来週にはお世話になると思うのでお願いします。」
「おう、待ってるぞ。」
「みんなばいば~い。」
「またいらっしゃいね。」
俺たちはダニエルさん一家に見送られて、店を後にした。
店の外ではやはり暗部が見張っているんだろうな。
俺も俺で気を引き締めていかないとだめなんだろうな。
すると、いきなりポールから背中にバシンと一発貰った。
「すまないカイト。俺たちが気を付けなくてはならない状況だったのに。だが大丈夫だ……なぁ?」
みんなを見ると、頷いていた。
うん、そうだな。
みんながいるから何とかなる。
そう思えた一日だった。
俺はダニエルさんに頭を下げて謝罪した。
今回は完全にこちらの問題で、それにこの店を巻き込んだ形だ。
だからこそきちんと謝罪は必要だと思った。
エルダ達も同じ思いで、一緒に頭を下げてくれた。
それを見たダニエルさんは、大きく深呼吸をして俺たちの頭を軽く叩いて言った。
「お前たちが謝ることじゃないから気にするな。それにだ、誰もけがひとつしちゃいない。なら問題はないぞ。なぁ、メアリー。」
「……そう、ね。私も反省しないといけないわね。」
ダニエルさんはなんてことないと言いたげだったが、メアリーさんは違ったようだ。
何かに灯が付いたのか、目がギラギラしていた。
今まで見たことの無い目に、俺たちは少しひるんでしまった。
メアリーさんの印象を180度変えるには十分な目つきだった。
そう、今にも人を射殺そうとしているよな……
「おう、食事中に悪かったな。今日の代金は俺が持つ。迷惑料だと思って食っていけ!!」
ダニエルさんは、今回のゴタゴタで食事を中断していた客たちに聞こえるように大声で叫んでいた。
俺たちは悪いと思って、代金を持つと言ったが聞き入れてはもらえなかった。
本当にダニエルさんは漢気の塊のような人だな。
「デイジー、普通の方のオーク肉まだあるよな?」
「うん、意味わかんないくらい大量にあるよ~。」
ダンジョンの薬草採取以外だと俺たちの食料になるんだが、それでも全く減らないから不思議だ。
俺はデイジーからオーク肉が詰まった収納箱(簡易)を2箱受け取り、ダニエルさんに渡した。
それを見たダニエルさんは訝しんでいたが、迷惑料だといって無理やり受け取ってもらった。
それを厨房へ運んで中身を確認したダニエルさんが、厨房から慌てて飛び出してきた。
「おい!!あんなに受け取れるわけねぇ~だろうが!!」
「大丈夫ですよ。この店だったら使い切れるでしょうし。約100kgなんて店ではあっという間でしょ?それより俺腹減っちゃって。ダニエルさんの旨い豚丼が食いたいんですけどいいですか?」
俺は苦情を受け付けないように、ダニエルさんに追加注文をした。
皆も気になったようで、同じものを結局4つ注文することにした。
ダニエルさんもしぶしぶ受け取ってくれて、当分肉には困らない状態になったんではないだろうか。
しばらくすると、厨房からリリーちゃんが豚丼を運んできてくれた。
さすがに一人では持てなかったようで、メアリーさんも一緒に運んできてくれた。
「エルダおねぇちゃんたちお待ちどうさま!!」
そう言うと、リリーちゃんが配膳をしてくれた。
並べられたのは豚丼と漬物みたいな副菜、それとスープだ。
豚丼から立ち昇る湯気は、香ばしくもあり、それでいて食欲をガンガンに刺激する。
見た目は少し高価な醤油のような調味料を使ったたれを纏い、光り輝くようにキラキラとしていた。
俺は我慢ができなくなってきた。
周りを見たら、3人とも豚丼に釘付けだった。
いや、オークを使ったからオーク丼か?
「「「「いただきます」」」」
俺は箸を右手に持ち、ドンブリにぶすりと突き刺す。
そして救い上げるようにして持つと、ふわりとご飯のいい香りがしてくる。
甘くもあり、芳醇な香り。
一口口に含めばもう止めることができなかった。
オーク肉の油の旨味。
醤油のような調味料をベースにした、甘辛く味付けされたタレ。
それをすべて包み込むようにご飯の味わい。
もう、止まれという方が無理だと思わぜるを得ない。
難しい話はよそう。
この旨さの前にはすべてが無駄だ。
無粋でしかない。
などと、脳内ナレーションが聞こえてきそうなくらいうまかった。
デイジーなんて結果4杯食べきった。
俺たちもなんだかんだで3杯食べたのだった。
しかしそれだけで終わるわけはなかった。
俺たちがうまそうに食べているのを見て、周りの客も頼み始めたのだ。
あとはお察しの通り。
注文が殺到。
厨房は目まぐるしい勢いで回転を始めている。
ダニエルさんはずっと料理のしっぱなしだ。
リリーちゃんとメアリーさんも、テーブルと厨房を行ったり来たり。
見ているだけで忙しいのが手に取るようにわかった。
「「「「ごちそうさまでした!!」」」」
夕食を食べ終えた俺たちは大満足だった。
厨房を見ると、すでに死にかけているダニエルさんの姿が見える。
リリーちゃんも空いた席に座って、溶けたチーズの様に突っ伏していた。
メアリーさんは……やっぱりダウン中だった。
なんていうか、戦場を見た気分になったのは俺だけだろうか?
「それじゃあ、俺たちはそろそろ帰りますね。来週にはお世話になると思うのでお願いします。」
「おう、待ってるぞ。」
「みんなばいば~い。」
「またいらっしゃいね。」
俺たちはダニエルさん一家に見送られて、店を後にした。
店の外ではやはり暗部が見張っているんだろうな。
俺も俺で気を引き締めていかないとだめなんだろうな。
すると、いきなりポールから背中にバシンと一発貰った。
「すまないカイト。俺たちが気を付けなくてはならない状況だったのに。だが大丈夫だ……なぁ?」
みんなを見ると、頷いていた。
うん、そうだな。
みんながいるから何とかなる。
そう思えた一日だった。
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