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第4章 ここから始まる勇者様?

四十一日目⑤ またも……

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 俺たちは順調に帰還することができた。
 特に危険を感じる場面も少なく、だいぶダンジョンアタックに慣れてきたのかもしれないな。

 第一層を抜け、ダンジョン出口から外に出ると、すでに夕日が傾いていた。
 確か前もこんな感じだったなって感傷に浸っていると……
 聞き覚えのあるあの出会いたくない人物の声……

 そう、またもや【勇者モドキ】。
 マジで勘弁してほしいものだな。
 出来ればさっさと王都を……いや、この国を離れてほしい。
 いつまでいるんだろうかと思い、冒険者ギルドに抗議しようかと真面目に考えてしまった。
 さすがにキャサリンさんの負担になるからやらないけど。
 まあ、シャバズのおっちゃんなら問題ないかな?

「いつになったら我々は中に入れるのだ!!我々には【魔王】討伐という使命があるのだぞ!!その邪魔をするとは、貴様にその権限はない!!」

 うわ~。
 【魔王】管轄のダンジョン受付で、【魔王】の部下である魔人族に対して絶対に言ってはいけない話じゃないかよ?
 本当にあほなのあいつ?
 つうかさ、周りの神官騎士も止めないのが不思議でならないな。

「どうして私たちだけは入れないのよ!!周りの雑魚冒険者は入れるなんておかしいじゃない!!」

 あぁ~、【聖女モドキ】もいたのか。
 あれじゃ、受付の魔人族も可哀想すぎるよな。

「ですから先程から説明させていただいているように、ここの利用規約を読んでいただき、ご納得の上サインを頂かなければ入場は出来ません!!これは規則ですので変わることはありません!!」
「俺は【勇者】だぞ!!その【勇者】のを追い出すとは何たることだ!!これだから穢れた魔人族なんぞにダンジョン管理などさせるべきではないのだ!!この大地は我らが唯一真【ユピテル】様の物!!我が教団が【ユピテル】様に成り代わり治めるが道理であろう!!」

 えぇ~!!
 がっつり内政干渉じゃね?
 一応国王陛下は融和路線を選んだぞ?
 それなのに別の国の人間が宣戦布告って何考えてんだよ!?

「なるほど、わかりました。今言ったことは【魔王】様にお伝えさせていただく。貴殿はゴーヨクォート正教国の【勇者】で間違いないな?」
「その通りだ!!何度言わせれば気が済むのだ!!」
「では、後ほど正式に正教国には抗議状が届くことになるでしょう。っと、あ、はい。わかりました。ではその様に。」

 おや、何か通信らしきものが入ったらしいな。
 魔導具とかそういった物かな?
 出来れば俺もそれほしいけど、売ってもらえないかな?

「【魔王】様よりの伝言だ。これより正教国周辺のダンジョンは一時機能停止にする。機能再開については、正教国次第であるそうだ。正式な話は後日書面を送るそうだ。というわけで、貴殿にはすぐに正教国へ帰ることをお勧めするよ。」

 それを聞いた【勇者モドキ】の顔が見る見るうちに強張り、青ざめていくのが良く分かった。
 【聖女モドキ】も同じで、顔からハイライトが消えていくのが見て取れた。
 周囲を囲む神官騎士なんて、どうしたら良いかわからずおろおろとしているばかりだった。
 本当に嫌になる国だな、正教国って。
 出来れば行きたくない国ランキング1位にしておくことにした。

 それから少し【勇者モドキ】一行は「失礼する!!」と言って立ち去ったので、おそらく国に戻って今回の一件の捏造情報を話すんだろうな……

 で、なんで俺たちがこんないざこざを聞き続けなければならなかったかと言うと、出入り口付近に陣取って奴らはあんなクレームを付けていたのだ。
 お陰で俺たちより先に戻っていた冒険者たちが立ち往生。
 その列で俺たちも身動きが取れなかったってわけだ。

 【勇者モドキ】一行がその場を去ってから、受付員が頭を下げながら作業を行っていた。
 俺たちの番もやっと回ってきたという感じだ。

「それにしても大変でしたね。」
「あぁ。ああいった輩は極稀に来るよ。一番ひどいやつは【勇者】を語ってこの受付内の売上金の3割を毎月寄越せと言い出したのだ。さすがにそんなわけにはいかず、OHANASHIさせていただきまして、ご納得いただけたようです。」

 あぁ~これあれだ。納得しないと帰れないやつ。
 ご愁傷さまとだけ言っておこうかな?

 俺たちは二言三言会話を交わして街に戻った。



「それにしてもなんかものすごく長い冒険でもしたように感じたね。」
「確かにそうだな。まさかこれほどまでに馬鹿な奴らが居ようとは……」

 俺たちは、明日の時間も考えて一旦自宅に戻っていた。
 換金については時期は明確ではないので、明日俺が引き受けることに決まった。

「でもポール。考えようによってはこれで【勇者モドキ】に会わなくてもよくなるかもしれないぞ?」
「確かにそうだな。」

 俺はポールに希望的観測を伝えると、かなり納得してくれた。
 それほどまでにみんなが面倒だなって思える存在って、ある意味稀有なのかもしれない。

「それにしてもあいつらっていったい何しに来たんだ?全く行動の理由がわかんないんだけど?」

 俺はみんなに答えを聞いてみたが、みんなも読めないそうだ。

「まさかだけど、あいつらは誘導係で、実は本命がすでに城に!!ってわけないよね?」

 デイジーからの不可抗力の呪詛が聞こえたしまった。
 まさか……
 まあ、そんなわけになるわけもないと、冗談を言って笑っていたが、目から笑いが消えていたのは言うまでもない。
 居ても居なくても、俺たちの心を折るには十分だったようだ。
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