勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

文字の大きさ
上 下
179 / 322
第4章 ここから始まる勇者様?

四十一日目① 原因は俺でした

しおりを挟む
 昨日の夜に、【緑人の住処ダンジョン】の第1層から第3層までのマップを書き上げた俺は、帰り際にキャサリンさんに提出した。
 それを見たキャサリンさんは、目が飛び出るほど驚いていたが、俺もかなりビックリだ。
 まさかこんなに正確に書けるとは、思っていなかったから。
 一応、まだ9割くらいであることを伝えると、それでも十分すぎると褒められた。
 これをもとに、ほかの冒険者に確認作業を依頼し、依頼達成となるそうだ。
 なので、報酬等は後日になることを教えてもらった。



 それで、今日はどうするか。
 朝食後にミーティングを行うことになった。

「で、どうしよっかカイト。昨日のままだと、また第4層でストップになっちゃうよ?」
「そうなんだよなぁ。正直なところ、迷ってる。【新緑のダンジョン】を進めるのも一つなんだよな。今の装備だとその先の湿地帯にあるダンジョン【湿原のダンジョン】には行けないだろうし。その辺どう思うエルダ?」

 俺は朝食を片付けて戻ってきたエルダに、今後の動きについて意見を聞いた。
 エルダも今の状況に少し迷っており、思案顔だった。

「そうね、正直手詰まりではあるわね。【新緑のダンジョン】でオーク装備が作れたから、その先の【湿原のダンジョン】も進めたいところだわ。カイト、装備は確か明日点検の完了だったかしら?」
「だね。明日は改築の件で木工ギルドと魔道具ギルドが話し合いに来るから、終日休暇かな。その空いた時間でガンテツさんのところに取りに行く予定だよ。」

 三人とも、どうしたものかと考えこんでいた。
 これについては、俺もどうしたら良いか迷っていた。
 おそらく【新緑のダンジョン】も【緑人の住処ダンジョン】もこれ以上進むのは難しいと思う。
 その辺は装備の更新が急がれるけど、今のところは危険を冒す必要は感じられない。
 むしろ無理をして怪我したら、ダンジョン探索どころじゃなくなってしまうからね。
 そうなると【鉱山跡地ダンジョン】なんだけど……
 ここも【湿原のダンジョン】の攻略を待ってからになる。
 これぞまさに八方塞がりだ。

「一度冒険者ギルドに行ってみてはどうだ?掲示板の状況を見て考えたらいいんじゃないか?」
「「「確かに。」」」

 というわけで、ポールの指摘に納得した俺たちは、そのまま冒険者ギルドに向かことにした。



 ギルド会館につくと、何かいつもよりも騒がしい気がした。
 なんとなく嫌な予感を覚えて皆の顔を見ると、同じように嫌そうな顔をしていた。
 何事もなければいいんだけど……

ドン!!

「なんでこの情報にこれしか貰えないんだよ!!こっちは必死に情報集めて来たんだぞ!!」
「ちゃんと説明してくれ!!」
「そうだそうだ!!」

 何やら数人の冒険者が、受付嬢……キャサリンさんに食って掛かっていた。
 俺は見たことの無い顔だったんで、周りの冒険者に聞いてみたが、知り合いではないそうだ。
 どうやら、新規ダンジョンの攻略に、他の街から流れて来た冒険者だったらしい。
 あいつら絶対後悔することになるのにな……

「ですから、すでに第1層から第3層については、初日でほぼすべての情報が集まっております。この情報ではこれが妥当な報酬です。」

 キャサリンさんは極めて丁寧に、やさし~く教えてあげていた。
 それでもその冒険者パーティーは納得がいかなかったようだ。

「おかしいだろ?!こっちは必死にマッピングして来たんだぞ⁉しかも第3層までの分!!どんだけ苦労したかわかってんのかよ!!」

 あ~、うん。
 ごめんなさい、キャサリンさん。
 俺が悪いんですね、はい。

 彼らは完全に、俺の被害者だったらしい。
 大きくため息をついたキャサリンさんは、一度席を立つと3枚の紙を持ってきた。
 あれは……
 俺が書いたマップだ。

「ではこちらをご覧ください。昨日提供されたマップです。本日から確認作業に入りますが、その他の方からの提供情報と照らし合わせても、一番正確に記載されています。これに記載されていない部分があれば、それなりの報酬でしたが、これよりも劣る情報でしたので妥当な金額がそちらです。ご理解いただけましたか?」
「このくそあまぁ~~~~!!俺たちを誰だと思ってんだ!!Cランクパーティーの【ブラックハウンド】だぞ!!」

 自分たちが調べた情報よりも正確なマップを見せられて、赤面を通り越して憤怒の表情になっていく冒険者たち。
 その冒険者たちは、腰にぶら下げている剣に手をかけようとしていた。

 その時だった。

「はいはい、ストップストップ。そこまでだ。ギルド内では剣を抜くのはご法度だぞ?それもわかんないのか?」

 騒ぎを止めたのはシルさんだった。
 シルさん達のパーティー【乾坤一擲】は、今帰ってきたみたいだった。
 ポーターも一緒で、だいぶ疲れてそうだったけど、ケガなどはなさそうだ。
 さすがCランクって感じがした。

「誰だお前!!俺は……」
「【ブラックハウンド】って言えばガイさんのところのだろ?いいのかこんなことして。絶対キレられるぞ?ガイさんはキャサリンさんのファンなんだからよ。」

 えっと、止め方が何とも言えないのですが。
 出来ればバシッと止めてほしかった!!と、思ってしまったのは俺だけではないはずだ。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。