勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第4章 ここから始まる勇者様?

四十日目④ 森林戦の苦戦からのガチギレ

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サワサワサワサワ

 風がそよぐ音が心地よく耳に届く。

ガサガサガサガサ

 何やら茂みで動く音が聞こえてくる。
 動物でもいるのだろうか?

ヒュン!!
カン!!

 どこからともなく飛んでくる矢。

 はい、絶賛戦闘中です。

 俺たちは第4層に降りると、辺り一面森林ステージであることに驚いた。
 見通しは悪く、360度全方位を警戒しないといけない状況に、いきなり放り込まれたのだ。

 そして運悪いことに、警戒しながら移動していると、モンスターの集団に出くわしたのだ。
 どうやらここはデイジーの感覚が狂わされているらしく、発見までに距離を詰められてしまっていた。
 まあ、それでも400m先の気配を感知するんだから、すごすぎだけどね。

 ただ、問題も発生している。
 デイジーが約400m手前で発見してくれたものの、攻撃手段がデイジーしかいないのだ。
 エルダはと言うと、この森林の中で使用すると森林そのものを壊す恐れがあったのだ。
 正直ダンジョンなんで問題ないのでは?と思ったけど、そうもいかないらしい。
 今ここにどれだけの冒険者が居て、どこにいるかがわからないからだ。
 もしこれが、「連携が取れているパーティー」しかいないのであれば問題なかったのだけれども、今回はそうは行かない。
 ということで、目視出来る距離じゃないとエルダが手を出せなくなったのだ。
 デイジーはスキル【ホークアイ】があるので照準可能だと言っていた。
 俺も【職業:狩人】に変更し、スキル【ホークアイ】を使用している。
 さすがにデイジーほどではないけれど、目視確認は可能になってきていた。

 そして冒頭に戻る状態だった。

  今回相手にしているのは、4匹のゴブリン。
 全てゴブリンハンターという何とも偏った編成だった。
 ゴブリンハンターは森林戦闘に特化した職種ゴブリンらしく、木から木に移動しながら攻撃を仕掛けてくる厄介なゴブリンだった。
 ことこの森林では、それが見事にマッチしてしまったのだ。
 こちらが手を出せない事を良い事に、遠距離から散々好き勝手攻撃してくるのだ。
 しかも誘導を兼ねて、わざと近づいたり離れたりと、いやらしい限りだった。
 まあ救いは攻撃力が低いってところだな。

「ポール!!大丈夫か⁉」
「問題ない!!しかしこうも離れた位置からちまちま攻撃されると、いくらダメージがほとんどないとはいえうざったくて仕方がない!!」

シュパン!!
シュパン!!

 話している間にも、ゴブリンから矢の攻撃が飛んでくる。
 更に幸いだったのが、速射能力が低い事だった。
 おかげで対処は問題ないが、反撃に問題が出てきてしまってる。

 その中で一人、静かに怒りを爆発させようとしている人物がいた……
 エルダだ。
 この森林地帯に入ってからというもの、攻撃に参加できてないせいか、フラストレーションが溜まりに溜まっていたみたいだ。

「あ~~~~も~~~~~~!!!!面倒臭い!!デイジーカモン!!」

 キレたエルダは、自分の側にデイジーを呼び寄せると、何やら耳打ちをした。
 そしてデイジーが周囲の観察に集中し始めた。
 突然のことに驚いた俺とポールは、一旦合流し、エルダのバックアップに回った。
 正直今の状況で固まるのも、また問題がある。
 しかし、二人の状態でそのままにはしておけず、結果集合形態にならざるを得なかった。

「エルダ、前方300m!!」
「凍て付け!!氷牢!!」

 デイジーが教えた場所に、いきなり氷のオブジェが出現した。
 確か【魔光陣】は発動していなかったはず?
 しかしそんなことはお構いなく、エルダはデイジーの指示した場所に【魔光陣】を発動させていく。

「氷牢!!氷牢!!氷牢~~~~~っ!!」

 更に追加で3つのオブジェが完成して、エルダは攻撃の手を止めた。

「エルダ。今のも【魔光陣】なのか?」

 俺はエルダに攻撃の方法を確認していた。
 今まで聞いていたそれとは違ったからだ。

「今のも【魔光陣】よ。ちなみに、発動場所はあてずっぽう。デイジーの感覚を信じて発動させた感じね。でもすべてヒットしたみたいだからデイジー様様ってところかしら。」

 ポールは警戒しつつ、氷のオブジェを確認しに行った。
 俺とデイジーは警戒態勢のまま、現状を維持している。
 するとポールが戻ってきて、魔石(小)3つと壊れた弓二張りを持ってきた。

「間違いなく倒していた。で、これがドロップアイテムだが……。効率は悪すぎるな。これなら森林を薙ぎ払った方がどれだけ楽だったか。」
「そうれはそうだね~。それが無かったらエルダも切れる必要なかったしねぇ~?」

 ポールもいら立ちを隠せなかったようで、口調が荒くなっていた。
 デイジーは場の空気を和ませようと、エルダに話題を振っている。
 この辺はデイジーの天性の感覚だよなって、感心してしまった。

「そうね。正直周辺全部焼け野原にしたい気分よ……」
「そ、そうか。うん、今はやめような?」

 エルダはいまだ怒りが収まらず、本当に焼け野原にしそうな感じがしてしまった。
 俺は慌ててエルダを宥めながら、今後の対応を思案していた。

「ポールはどう思う?ここでの戦闘方法って少し考えないとだめなんじゃないかと思うんだ。」
「そうだな。今のままだと、さっきと同じ状況に陥る可能性が高すぎる。安全とは言えないな。」
「だよなぁ~。」

 いくら俺が思案したところで経験不足の俺は何も案が出てこなかった。
 ということで、俺たちは本日の探索を諦めて一旦脱出することにしたのだった。
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