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第4章 ここから始まる勇者様?
三十五日目⑦ 俺は悪くない!!その2
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「おや、カイト殿ではありませんか。」
「あ、リヒター団長。お疲れ様です。」
俺に気が付いた団長は、こちらに近づいてきた。
服装がラフなところを見ると、今日はどうやら非番だったらしい。
昼食を取りに家族で屋台村にやってきたようだ。
「カイト殿。とりあえず状況説明をお願いできるかい?」
俺は見ていた限りを要約して伝えた。
その内容を聞いて、リヒター団長は頭を抱えていた。
リヒター団長も対応に困ってしまったらしい。
「とりあえず、ここは私に任せてもらっていいかい?」
「はい、こっちとしては全く問題ないですよ。むしろ、巻き込まれただけですから。ポールもいいよね?」
ポールに団長が対応してくれるので問題ないか確認した。
特に問題ないみたいで、後処理を丸投げすることにした。
リヒター団長は、丸腰のままで【勇者モドキ】のそばまで近寄っていく。
仮にも武装した相手に丸腰って……
まあ、それだけの力量さがあるんだけどね。
「初めまして。私はこの国の王国軍第2騎士団団長の任を預かるハンス・リヒターと申します。まずはお名前をうかがっても?」
「はん!!貴様などに名のる名など無い!!」
【勇者モドキ】はそう言うと、リヒター団長にまで切っ先を向けた。
これは明らかにやってはいけない行為だと、小さな子供でも分かることだ。
リヒター団長はきちんと【王国軍第2騎士団団長】と名のっているのだ。
それに対して剣を向けるということは、宣戦布告と受け取られても致し方ない行為だ。
「なるほど、貴方は【ゴーヨクォート正教国の勇者】ということは、【ゴーヨクォート正教国】の代表としての行為として受け取ってよいのですね?」
「なっ?!」
【勇者モドキ】はやっと理解したらしい。
リヒター団長が出て来た時点で、引くべきだったのだ。
ここで意地を張れば完全に外交問題に発展するだろう。
むしろ、こいつはそこまで考えているのだろうか?
顔を真っ赤にしたまま、【勇者モドキ】は名乗りを上げた。
「我が名はイーバル・フォン・ディケーダ!!ゴーヨクォート正教国のディケーダ辺境伯3男にして、【ユピテル真教】が認めた【勇者】だ!!」
「私はエリザベート・ボーゲンですわ。【ユピテル真教】の特別司祭にして、【聖女】に正式に認定されましてよ。」
頭が高い的な態度で、自己紹介をしてきた二人を見て笑いそうになった。
これもエルダが教えてくれたことだけど、そもそも【勇者】も【聖女】も【ユピテル真教】が認定するものじゃないそうだ。
あくまでも職業診断で判る【職業】なのだそうだ。
つまり、こいつらの【職業】を確認すれば一目瞭然なのだ。
「なるほど、【ユピテル真教】〝が〟認めた方々ですね。国としても同意見ととってもよろしいので?」
「当たり前じゃない?何を言っているのかしら。この世界で【ユピテル真教】の上の存在など、ユピテル様以外いらっしゃらないわ。」
うん、思っている以上に教会は傲慢なんだなと思ってしまった。
こいつが言っていることが本当だとしたら、教義自体がそうなんだろうな。
「まあいい。我らはこれで失礼する!!実に不愉快だ!!」
「行きますわよ、この愚図が!!」
二人は数人の神官騎士を従えてこの場を後にした。
やじ馬で集まった人たちは【勇者】の横暴に憤慨し、この街での教会の権威はさらに下がっていくのであった。
「リヒター団長、ありがとうございました!!」
「気にしなくてもいい。それより、ここの片付けの手伝いをお願いできるかい?さすがに街の人たちだけでっていうのも外聞が悪いからね。」
「はっ!!」
憲兵隊長は即座に部下に指示を与えて、周辺の整備に当たった。
といっても壊れたものの確認や、片付け等なんだけど、屋台村の人からしたらとてもありがたいことだった。
俺たちも片付けを手伝って、すぐに終わることができた。
「カイト殿、申し訳ない。片付けまで手伝ってもらってしまって。」
「これくらいいいですよ。それにしても【勇者様】ねぇ……」
それを言ったらあなたも非番でしょうに、リヒター団長。
俺たちはたまたま居合わせただけだしね。
見て見ぬふりってわけにもいかないし、何せ被害にあったのは屋台のおっちゃんのいるブースだからね。
手伝わないって選択肢は全く持ってあり得なかった。
それがつぶやいた言葉に一瞬きょとんとしたリヒター団長。
それからすぐに言葉の意味に気が付きクスクスと笑い始めた。
「はははっ。それについてはこの国の上層部とギルドマスターくらいしか知らないからね。彼らは強く出ることができるんですよ。」
「確かに。」
俺とリヒターさんは周りに聞こえないレベルの小声で話をしていた。
「では、私はこれで失礼するよ。家内と息子が待っているのでね。」
「あ、家族との時間を奪ってしまって申し訳ありません。」
俺たちはリヒターさんの家族団らんを邪魔してしまったことを詫びたが、問題ないとさわやかに話していた。
「あ、そうだカイト殿。どうやら君はトラブルに愛されているようだ。行動には気を付けておいた方がいいかもしれないね。」
「あはははは……」
うん、俺のせいじゃないよね!?
「あ、リヒター団長。お疲れ様です。」
俺に気が付いた団長は、こちらに近づいてきた。
服装がラフなところを見ると、今日はどうやら非番だったらしい。
昼食を取りに家族で屋台村にやってきたようだ。
「カイト殿。とりあえず状況説明をお願いできるかい?」
俺は見ていた限りを要約して伝えた。
その内容を聞いて、リヒター団長は頭を抱えていた。
リヒター団長も対応に困ってしまったらしい。
「とりあえず、ここは私に任せてもらっていいかい?」
「はい、こっちとしては全く問題ないですよ。むしろ、巻き込まれただけですから。ポールもいいよね?」
ポールに団長が対応してくれるので問題ないか確認した。
特に問題ないみたいで、後処理を丸投げすることにした。
リヒター団長は、丸腰のままで【勇者モドキ】のそばまで近寄っていく。
仮にも武装した相手に丸腰って……
まあ、それだけの力量さがあるんだけどね。
「初めまして。私はこの国の王国軍第2騎士団団長の任を預かるハンス・リヒターと申します。まずはお名前をうかがっても?」
「はん!!貴様などに名のる名など無い!!」
【勇者モドキ】はそう言うと、リヒター団長にまで切っ先を向けた。
これは明らかにやってはいけない行為だと、小さな子供でも分かることだ。
リヒター団長はきちんと【王国軍第2騎士団団長】と名のっているのだ。
それに対して剣を向けるということは、宣戦布告と受け取られても致し方ない行為だ。
「なるほど、貴方は【ゴーヨクォート正教国の勇者】ということは、【ゴーヨクォート正教国】の代表としての行為として受け取ってよいのですね?」
「なっ?!」
【勇者モドキ】はやっと理解したらしい。
リヒター団長が出て来た時点で、引くべきだったのだ。
ここで意地を張れば完全に外交問題に発展するだろう。
むしろ、こいつはそこまで考えているのだろうか?
顔を真っ赤にしたまま、【勇者モドキ】は名乗りを上げた。
「我が名はイーバル・フォン・ディケーダ!!ゴーヨクォート正教国のディケーダ辺境伯3男にして、【ユピテル真教】が認めた【勇者】だ!!」
「私はエリザベート・ボーゲンですわ。【ユピテル真教】の特別司祭にして、【聖女】に正式に認定されましてよ。」
頭が高い的な態度で、自己紹介をしてきた二人を見て笑いそうになった。
これもエルダが教えてくれたことだけど、そもそも【勇者】も【聖女】も【ユピテル真教】が認定するものじゃないそうだ。
あくまでも職業診断で判る【職業】なのだそうだ。
つまり、こいつらの【職業】を確認すれば一目瞭然なのだ。
「なるほど、【ユピテル真教】〝が〟認めた方々ですね。国としても同意見ととってもよろしいので?」
「当たり前じゃない?何を言っているのかしら。この世界で【ユピテル真教】の上の存在など、ユピテル様以外いらっしゃらないわ。」
うん、思っている以上に教会は傲慢なんだなと思ってしまった。
こいつが言っていることが本当だとしたら、教義自体がそうなんだろうな。
「まあいい。我らはこれで失礼する!!実に不愉快だ!!」
「行きますわよ、この愚図が!!」
二人は数人の神官騎士を従えてこの場を後にした。
やじ馬で集まった人たちは【勇者】の横暴に憤慨し、この街での教会の権威はさらに下がっていくのであった。
「リヒター団長、ありがとうございました!!」
「気にしなくてもいい。それより、ここの片付けの手伝いをお願いできるかい?さすがに街の人たちだけでっていうのも外聞が悪いからね。」
「はっ!!」
憲兵隊長は即座に部下に指示を与えて、周辺の整備に当たった。
といっても壊れたものの確認や、片付け等なんだけど、屋台村の人からしたらとてもありがたいことだった。
俺たちも片付けを手伝って、すぐに終わることができた。
「カイト殿、申し訳ない。片付けまで手伝ってもらってしまって。」
「これくらいいいですよ。それにしても【勇者様】ねぇ……」
それを言ったらあなたも非番でしょうに、リヒター団長。
俺たちはたまたま居合わせただけだしね。
見て見ぬふりってわけにもいかないし、何せ被害にあったのは屋台のおっちゃんのいるブースだからね。
手伝わないって選択肢は全く持ってあり得なかった。
それがつぶやいた言葉に一瞬きょとんとしたリヒター団長。
それからすぐに言葉の意味に気が付きクスクスと笑い始めた。
「はははっ。それについてはこの国の上層部とギルドマスターくらいしか知らないからね。彼らは強く出ることができるんですよ。」
「確かに。」
俺とリヒターさんは周りに聞こえないレベルの小声で話をしていた。
「では、私はこれで失礼するよ。家内と息子が待っているのでね。」
「あ、家族との時間を奪ってしまって申し訳ありません。」
俺たちはリヒターさんの家族団らんを邪魔してしまったことを詫びたが、問題ないとさわやかに話していた。
「あ、そうだカイト殿。どうやら君はトラブルに愛されているようだ。行動には気を付けておいた方がいいかもしれないね。」
「あはははは……」
うん、俺のせいじゃないよね!?
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