勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第3章 ここから始まる転換点?

三十四日目③ 轟く雷鳴。漂う香り。

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「ブブ!!ブブヒ?!」
「ブヒ!!ブヒ!!」

 これがオークの鳴き声か?どう聞いても豚じゃんよ。
 オークたちは俺たちが近づくと、こちらの気配に気が付いたのか、怒りを顕わに騒ぎ出した。
 ポールは構わず盾を構えた状態で突進していく。

「スキル【シールドチャージ】!!」

 ちょっと待って!!あんた盾役のディフェンダーじゃないの?!
 盾役が前に出たら……ってあれ?

 ポールの【シールドチャージ】で2匹のオークは体勢を大きく崩すことになったってより吹っ飛んだぞ?
 ポールはさらにヘイトコントロールをしていく。
 普通の盾職だったらここでスキル【ウォークライ】を発動させるらしいんだろうけど、それに近いことを技術としてこなしていく。
 この辺はムーさんから教えてもらってことが役に立っているみたいだ。
 大きなタワーシールドで俺をオークたちの視界から遮っている。
 おかげで俺はオークから標的にされずにいた。
 俺はポールの陰でエルダの準備が終わるのを静かに待った。

 俺たちの後方ではエルダが【魔光陣】の準備を始めていた。
 まだ実践的に使うには難しいようで、補助としてレンさんから譲り受けた【魔導書】を開き、雷撃の【魔光陣】を上空に展開していく。

ガンガン!!
ドガン!!
ガギン!!

 次々と繰り出されるオークからの斬撃やら打撃やらを、ポールはタワーシールドを巧みに操り受け止め、いなしていく。
 オークの表情からは、思い通りにいかないためか苛立ちの感情が伝わってくる。
 ってよりもさ、オークにも〝感情〟があるんじゃないかとさえ思えてしまった……
 そのおかげで、上空への注意がおろそかになっていた。

 

 そして上空には光の魔方陣が形成れていく。
 次の瞬間。

ピカ!!

「雷鳴!!」

ゴロゴロゴロゴロ~~~!!

 エルダの声が聞こえるよりも先に、光の柱が目の前に落ちる。
 遅れて爆音が俺たちを襲った。

「ぐわ!?」
「ぐッ!!」

 俺とポールは視覚と聴覚を一気にやられてしまった。
 これでも一番簡単な魔方陣だっていうんだからやばいよな。

 徐々に視覚が回復していき、状況がわかってきた。

 目の前には焦げた豚の丸焼きが2匹転がっていた。
 一瞬いい匂いだと思ったのは内緒だ。

 南無さんいただきます
 違った……
 
 それにしても、いまだに耳が聞こえないので、かなり困った状態だ。

 後ろを振り向くとエルダが慌てた様子で駆け寄ってきた。
 その顔には焦りが浮かんでいた。
 そして何か話しているんだけど、何言ってるかよくわからなかった。
 とりあえず謝罪の気持ちは伝わってきた。
 だって涙目なんだもの。



 少しして、聴覚も回復してきた。
 その間に【職業:解体業】に変更するのは忘れていなかった。
 ドロップアイテムはオーク3匹で

・魔石(小)が1つ
・オークの外皮が1枚
・オークの肉(500g)が1つ

 だった。

ピコン

「ごめんなさい!!出力調整を間違えました!!」

 エルダは全力で謝り倒した。
 実はこれは由々しき事態でもある。
 今回は運よくオークを倒せたからよかった。
 しかし、俺とポールは五感のうち2つをつぶされた状態になってしまったのだ。
 それほどまでにエルダの【魔光陣】の威力がすさまじかったのだ。
 予定では1匹をしびれさせる程度にとどめるつもりだった。
 だが、蓋を開けたら2匹を丸焼きにするほどの威力になってしまったのだ。

「エルダ……、さすがにやり過ぎよ。」
「ごめん……」

 デイジーは後方警戒を兼ねてエルダより後方に陣取っていた。
 そのおかげで、災難に巻き込まれずに済んだのだ。

「でもどうしてこんな威力になったの?」

 俺はエルダに問題を確認した。
 それによっては【魔光陣】のテストはこれで終了せざる得ないのだ。

「それが……。初めての実践投入で気合を入れ過ぎました。」

 つまり、気合を入れ過ぎて、MPを注ぎ過ぎたと?
 魔力調整をもう少しうまくしてもらわないといけないかもしれないな。
 エルダも反省しているようで、今回は不問としたが、次使う時は威力を上げ過ぎないようにと釘は刺しておいた。
 それにしても【魔光陣】……すさまじい威力だな。
 これがスキルじゃなくて〝技術〟だっていうんだから、かなりばかげた性能だよな。

「エルダ、さすがに目と耳をやられるとは思わなかった。」
「ごめんポール。」

 ポールはもろにその光を直視してしまい、今もまだ完全に視界が回復していなかった。
 俺はダメもとで回復ポーション(低)を取り出し、ポールと一緒に飲み干した。
 するとどうだろうか。
 いまだに見辛かった視界がクリアになっていったのだ。
 ポールもその性能に驚き、二人で目を見合わせてしまったほどだ。

「とりあえず、これで大丈夫そうだね。ポールも大丈夫そうか?」
「あぁ、何とか元に戻った。しかし、まさか閃光による目つぶしにも効くとはな。」

 確かに俺もそう思う。
 普通こういったのって違う回復系ポーションがお約束なはずなんだけど……
 これも俺のポーションが異常なせいなのかもしれない。
 あとでちゃんと検証しないとな。
 
「おそらく、目にダメージを負ったって判定で、ポーションが作用したのかもしれないな。」
「なるほどな。」

 俺とポールはそう納得することにした。
 俺の作るポーションは、考えるだけ無駄なような気がしたからだ。

 そして俺はシステム音を聞き逃していたのだった。
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