122 / 322
第3章 ここから始まる転換点?
三十三日目③ 謁見 その1
しおりを挟む
俺はシュミット国王陛下からの呼び出しで、一人王城へと来ていた。
陛下からは、前々から勇者の捜索を依頼されていたので、その内容確認だと踏んでいた。
城の入り口で門番に召喚状を見せると、門番詰め所の中から一人の兵士がやってきて城の中へと通された。
城内は華美な装飾は少なく、品が良かった。
気品にあふれるって言えばいいんだろうか?
前ここに召喚されたときは、ザ・王城みたいな感じでビカビカだった気がする。
たぶん陛下の意向でこのように落ち着いた趣に変えられたのだろうな。
「だいぶ変わったでしょ?」
そう話しかけてきたのは、第2騎士団団長のリヒター団長だ。
彼はクーデターの際の立役者の一人でもある。
「そうですね。俺が見たときはもっとどぎつい感じでしたから。」
「はははっ。その通りですね。以前は前国王の意向で大見得を張った内装でしたから。今はシックで落ち着きのある内装に統一されれています。」
本当に居心地がいい。
白を基調とした自然色を中心に綺麗にまとめてある。
これをデザインした人のセンスなんだろうな。
「あら?カイトちゃんじゃない?」
この声は……
間違いない、あの人だ。
「お久しぶりです、クリスティーナさん。会議以来ですか?」
「もうカイトちゃん……クリスって呼んでね♪そうね。お店に来てくれないから寂しかったわん。」
そこ、科を作るな科を!!
どう反応すればいいか困るだろうが……
「あはは……。そう言えば、どうしてここに?」
「私がデザインした内装の最終確認よん」
まじか!!
驚き過ぎて声が出なかった。
確かに服飾ギルドのギルマスだからセンスはあると思うけど……
素直に認められない俺は、きっと心が狭いんだろうな。
「カイトちゃん、それじゃあまたね。りっちゃんも……暑い夜を期待しているわ♪」
「はい、また。」
「それはご遠慮いたします。近いうちに妻がお店に伺うそうです。」
「カイト殿も苦労されてますね。」
「お互いに……」
二人してクリスさんを見送ると、深いため息がどちらからともなく漏れ出てしまった。
「って、ちょっと待って!!リヒター団長奥さんいたの!?」
「えぇ、昨年に婚姻を。それとドレスはクリスティーナ殿の店で誂えてからの縁でしょうか。」
なんかいろんな意味でびっくりだよ。
そんなこんなで俺は、リヒター団長の案内で控え室に到着した。
入り口には以前にいろいろ教えてくれた執事さんがいた。
俺の顔を見るなり深く頭を下げてくれた。
何事かと思って慌てると、リヒター団長がこっそり教えてくれた。
どうやら当時元国王の命令とは言え、呼び出したのにも関わらず追い出すことになったことを悔いていたのだとか。
一応ギルドには話を通していたものの、心配していたそうだ。
気に掛けてくれる人がいるって嬉しいもんだな。
その執事さんが案内をリヒター団長から引き継いで、待合室へと通してくれた。
待合室という割にはきちんとした部屋で、こちらも華美になりすぎない調度品でそろえられていた。
促されるままにソファーに座ると、ぴったりのタイミングでお茶が用意されていく。
これぞまさにメイドの仕事とばかりに洗練されていた。
若干緊張気味でお茶を飲むと、茶葉の香りが引き立っており、さっぱりとして印象だった。
ふと気が付いたんだけど、本当にちょうどいい温度で入れられており、熱くて飲めないなどということはなかった。
むしろ飲みやすい温度に調整してあったのだ。
さすがとしか言いようがないきめ細かな配慮だ。
「カイト様。改めてお詫び申し上げます。あなた様は拉致同然でこの世界に呼ばれたのにも関わらず、王城から追い出さんばかりの勢いで退城を命じられてしまいました。私どももどうすることもできず、あのようなことだけしかできませんでした。本当に申し訳ありません。」
執事さんが改めて頭を下げると、同じ部屋にいた数人のメイドと、警護の為の騎士たちも頭を下げた。
俺は何とも言えない感じになっていた。
別に俺は彼らを恨んでいたりはしていない。
王様に理不尽を感じたけど、その後対応してくれた人たちは、皆申し訳なさそうにしていたのを見ていたからだ。
「頭を上げてください。あの時きちんと対応してくれて、どうしたらいいかも教えてくれたから、俺は何とかなりました。今は仲間も増えて楽しくやっています。だからこれで終わりにしましょう。ね?」
「左様でございますか。我々はあなた様のやさしさに救われました。」
なんだかむずがゆくなってきた。
俺は人生の中で、これほどまでに真摯に謝罪されたことはない気がする。
おかげでどうしていいかさっぱりだ。
「そ、そうだ。この後の事を教えてもらえますか?俺、マナーとか良く分かってなくて。陛下に失礼があってもいけないですからね。できればレクチャ―してもらえると助かります。」
「かしこまりました。ただ、カイト様はこの国の臣民ではございませんので、それほど畏まったことは不要でございます。ですので、最低限度の作法をお教えいたします。」
「よろしくお願いします。」
そうして俺は、謁見の時間までみっちりとマナーを教えてもらったのだった。
陛下からは、前々から勇者の捜索を依頼されていたので、その内容確認だと踏んでいた。
城の入り口で門番に召喚状を見せると、門番詰め所の中から一人の兵士がやってきて城の中へと通された。
城内は華美な装飾は少なく、品が良かった。
気品にあふれるって言えばいいんだろうか?
前ここに召喚されたときは、ザ・王城みたいな感じでビカビカだった気がする。
たぶん陛下の意向でこのように落ち着いた趣に変えられたのだろうな。
「だいぶ変わったでしょ?」
そう話しかけてきたのは、第2騎士団団長のリヒター団長だ。
彼はクーデターの際の立役者の一人でもある。
「そうですね。俺が見たときはもっとどぎつい感じでしたから。」
「はははっ。その通りですね。以前は前国王の意向で大見得を張った内装でしたから。今はシックで落ち着きのある内装に統一されれています。」
本当に居心地がいい。
白を基調とした自然色を中心に綺麗にまとめてある。
これをデザインした人のセンスなんだろうな。
「あら?カイトちゃんじゃない?」
この声は……
間違いない、あの人だ。
「お久しぶりです、クリスティーナさん。会議以来ですか?」
「もうカイトちゃん……クリスって呼んでね♪そうね。お店に来てくれないから寂しかったわん。」
そこ、科を作るな科を!!
どう反応すればいいか困るだろうが……
「あはは……。そう言えば、どうしてここに?」
「私がデザインした内装の最終確認よん」
まじか!!
驚き過ぎて声が出なかった。
確かに服飾ギルドのギルマスだからセンスはあると思うけど……
素直に認められない俺は、きっと心が狭いんだろうな。
「カイトちゃん、それじゃあまたね。りっちゃんも……暑い夜を期待しているわ♪」
「はい、また。」
「それはご遠慮いたします。近いうちに妻がお店に伺うそうです。」
「カイト殿も苦労されてますね。」
「お互いに……」
二人してクリスさんを見送ると、深いため息がどちらからともなく漏れ出てしまった。
「って、ちょっと待って!!リヒター団長奥さんいたの!?」
「えぇ、昨年に婚姻を。それとドレスはクリスティーナ殿の店で誂えてからの縁でしょうか。」
なんかいろんな意味でびっくりだよ。
そんなこんなで俺は、リヒター団長の案内で控え室に到着した。
入り口には以前にいろいろ教えてくれた執事さんがいた。
俺の顔を見るなり深く頭を下げてくれた。
何事かと思って慌てると、リヒター団長がこっそり教えてくれた。
どうやら当時元国王の命令とは言え、呼び出したのにも関わらず追い出すことになったことを悔いていたのだとか。
一応ギルドには話を通していたものの、心配していたそうだ。
気に掛けてくれる人がいるって嬉しいもんだな。
その執事さんが案内をリヒター団長から引き継いで、待合室へと通してくれた。
待合室という割にはきちんとした部屋で、こちらも華美になりすぎない調度品でそろえられていた。
促されるままにソファーに座ると、ぴったりのタイミングでお茶が用意されていく。
これぞまさにメイドの仕事とばかりに洗練されていた。
若干緊張気味でお茶を飲むと、茶葉の香りが引き立っており、さっぱりとして印象だった。
ふと気が付いたんだけど、本当にちょうどいい温度で入れられており、熱くて飲めないなどということはなかった。
むしろ飲みやすい温度に調整してあったのだ。
さすがとしか言いようがないきめ細かな配慮だ。
「カイト様。改めてお詫び申し上げます。あなた様は拉致同然でこの世界に呼ばれたのにも関わらず、王城から追い出さんばかりの勢いで退城を命じられてしまいました。私どももどうすることもできず、あのようなことだけしかできませんでした。本当に申し訳ありません。」
執事さんが改めて頭を下げると、同じ部屋にいた数人のメイドと、警護の為の騎士たちも頭を下げた。
俺は何とも言えない感じになっていた。
別に俺は彼らを恨んでいたりはしていない。
王様に理不尽を感じたけど、その後対応してくれた人たちは、皆申し訳なさそうにしていたのを見ていたからだ。
「頭を上げてください。あの時きちんと対応してくれて、どうしたらいいかも教えてくれたから、俺は何とかなりました。今は仲間も増えて楽しくやっています。だからこれで終わりにしましょう。ね?」
「左様でございますか。我々はあなた様のやさしさに救われました。」
なんだかむずがゆくなってきた。
俺は人生の中で、これほどまでに真摯に謝罪されたことはない気がする。
おかげでどうしていいかさっぱりだ。
「そ、そうだ。この後の事を教えてもらえますか?俺、マナーとか良く分かってなくて。陛下に失礼があってもいけないですからね。できればレクチャ―してもらえると助かります。」
「かしこまりました。ただ、カイト様はこの国の臣民ではございませんので、それほど畏まったことは不要でございます。ですので、最低限度の作法をお教えいたします。」
「よろしくお願いします。」
そうして俺は、謁見の時間までみっちりとマナーを教えてもらったのだった。
894
お気に入りに追加
3,346
あなたにおすすめの小説

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。