勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第3章 ここから始まる転換点?

三十三日目③ 謁見 その1

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 俺はシュミット国王陛下からの呼び出しで、一人王城へと来ていた。
 陛下からは、前々から勇者の捜索を依頼されていたので、その内容確認だと踏んでいた。

 城の入り口で門番に召喚状を見せると、門番詰め所の中から一人の兵士がやってきて城の中へと通された。
 城内は華美な装飾は少なく、品が良かった。
 気品にあふれるって言えばいいんだろうか?
 前ここに召喚されたときは、ザ・王城みたいな感じでビカビカだった気がする。
 たぶん陛下の意向でこのように落ち着いた趣に変えられたのだろうな。

「だいぶ変わったでしょ?」

 そう話しかけてきたのは、第2騎士団団長のリヒター団長だ。
 彼はクーデターの際の立役者の一人でもある。

「そうですね。俺が見たときはもっとどぎつい感じでしたから。」
「はははっ。その通りですね。以前は前国王の意向で大見得を張った内装でしたから。今はシックで落ち着きのある内装に統一されれています。」

 本当に居心地がいい。
 白を基調とした自然色を中心に綺麗にまとめてある。
 これをデザインした人のセンスなんだろうな。

「あら?カイトちゃんじゃない?」

 この声は……
 間違いない、あの人だ。

「お久しぶりです、クリスティーナさん。会議以来ですか?」
「もうカイトちゃん……クリスって呼んでね♪そうね。お店に来てくれないから寂しかったわん。」

 そこ、科を作るな科を!!
 どう反応すればいいか困るだろうが……
 
「あはは……。そう言えば、どうしてここに?」
「私がデザインした内装の最終確認よん」

 まじか!!
 驚き過ぎて声が出なかった。
 確かに服飾ギルドのギルマスだからセンスはあると思うけど……
 素直に認められない俺は、きっと心が狭いんだろうな。

「カイトちゃん、それじゃあまたね。りっちゃんも……暑い夜を期待しているわ♪」
「はい、また。」
「それはご遠慮いたします。近いうちに妻がお店に伺うそうです。」


 
「カイト殿も苦労されてますね。」
「お互いに……」

 二人してクリスさんを見送ると、深いため息がどちらからともなく漏れ出てしまった。
 
「って、ちょっと待って!!リヒター団長奥さんいたの!?」
「えぇ、昨年に婚姻を。それとドレスはクリスティーナ殿の店で誂えてからの縁でしょうか。」
 
 なんかいろんな意味でびっくりだよ。
 

 
 そんなこんなで俺は、リヒター団長の案内で控え室に到着した。

 入り口には以前にいろいろ教えてくれた執事さんがいた。
 俺の顔を見るなり深く頭を下げてくれた。
 何事かと思って慌てると、リヒター団長がこっそり教えてくれた。
 どうやら当時元国王の命令とは言え、呼び出したのにも関わらず追い出すことになったことを悔いていたのだとか。
 一応ギルドには話を通していたものの、心配していたそうだ。
 気に掛けてくれる人がいるって嬉しいもんだな。

 その執事さんが案内をリヒター団長から引き継いで、待合室へと通してくれた。
 待合室という割にはきちんとした部屋で、こちらも華美になりすぎない調度品でそろえられていた。
 促されるままにソファーに座ると、ぴったりのタイミングでお茶が用意されていく。
 これぞまさにメイドの仕事とばかりに洗練されていた。
 若干緊張気味でお茶を飲むと、茶葉の香りが引き立っており、さっぱりとして印象だった。
 ふと気が付いたんだけど、本当にちょうどいい温度で入れられており、熱くて飲めないなどということはなかった。
 むしろ飲みやすい温度に調整してあったのだ。
 さすがとしか言いようがないきめ細かな配慮だ。

「カイト様。改めてお詫び申し上げます。あなた様は拉致同然でこの世界に呼ばれたのにも関わらず、王城から追い出さんばかりの勢いで退城を命じられてしまいました。私どももどうすることもできず、あのようなことだけしかできませんでした。本当に申し訳ありません。」

 執事さんが改めて頭を下げると、同じ部屋にいた数人のメイドと、警護の為の騎士たちも頭を下げた。
 俺は何とも言えない感じになっていた。
 別に俺は彼らを恨んでいたりはしていない。
 王様に理不尽を感じたけど、その後対応してくれた人たちは、皆申し訳なさそうにしていたのを見ていたからだ。

「頭を上げてください。あの時きちんと対応してくれて、どうしたらいいかも教えてくれたから、俺は何とかなりました。今は仲間も増えて楽しくやっています。だからこれで終わりにしましょう。ね?」
「左様でございますか。我々はあなた様のやさしさに救われました。」

 なんだかむずがゆくなってきた。
 俺は人生の中で、これほどまでに真摯に謝罪されたことはない気がする。
 おかげでどうしていいかさっぱりだ。

「そ、そうだ。この後の事を教えてもらえますか?俺、マナーとか良く分かってなくて。陛下に失礼があってもいけないですからね。できればレクチャ―してもらえると助かります。」
「かしこまりました。ただ、カイト様はこの国の臣民ではございませんので、それほど畏まったことは不要でございます。ですので、最低限度の作法をお教えいたします。」
「よろしくお願いします。」

 そうして俺は、謁見の時間までみっちりとマナーを教えてもらったのだった。
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